矢島慎の詩

詩作をお楽しみください。

雑踏の中でみつけたもの

2005-05-06 22:14:31 | Weblog
僕が彼女を好きになったのは
旅行とか音楽の趣味が合っただけではない
彼女が周りにどれほど気遣いを与え
僕が旅行でどれほど苦しい思いをしたかが
互いに言葉を労することなく分かり合えたからだ

彼女が今までに悩んだこと喜んだことに素直に共感し
その一つ一つにいたわりの気持ちや同じように
喜ぼうとする気持ちを彼女に投げかけてやりたかったからだ
そして僕に対しても同じような気持ちを
与えてくれると思ったからだ

 僕の彼女への愛は自然と言葉になった
 愛は言葉を越えて手のぬくもりとなった

彼女が今まで辛かったことで流した涙を
一つ一つ拭ってやろうとは思わぬ
僕もまた同じようにして欲しいと思わぬ
ただ今尚澄んだ目を僕はいとおしいと思う
小さな喜びに笑いこけるのがいとおしいと思う

 信じ合えるという事はかくも嬉しいことなのか
 分かり合えるという事はかくも安らぎを覚えることなのか

 愛とは言葉を越えた手のぬくもりだ
 愛とは相手の揺れ動く心にそっと寄り添うことなのだ

僕が彼女を好きになったのは
春風に冷たさの残る雑踏の中であった
僕が彼女を好きになったのは
幾つも通り過ぎる魂のなか
寂しく不安そうで温かい輝きを見つけた時だった