(むしろ、内野に芝が敷かれているのが野球本来の姿だ)
大阪府の橋下知事が普及に積極的な小学校校庭の芝生化事業に、「内野グラウンドは土が基本と、難色を示す声が上がっているという。
http://www.asahi.com/politics/update/0514/OSK200905140001.html
芝生の管理には手間も費用もかかるので、維持管理が重荷となる学校側が消極的になる気持ちは分からないではないが、芝生化に難色を示しているのは、野球関係者(おそらく少年野球のオーナーや監督を務めている人たちと思われる)が多い各小学校のPTA役員だという。
「野球の聖地・甲子園の内野は土なので、勝つために練習場所も同じ条件を求める。芝が多いラグビー場やサッカー場との文化の違いは壁だ」
というのが彼らの言い分なのだが、これはおかしい。メジャーリーグの天然芝球場を見てもらえば一目瞭然なのだが、野球はラグビーやサッカーと同じく「芝のスポーツ文化」だ。アメリカに行くと、プロの球場だけでなく、大学やハイスクール、リトルリーグの球場に至るまで、ほとんど内野にも芝が敷き詰められている。
ベースボールの草創期には、サッカーやラグビーと同じく、フィールド全面が芝で、その後、マウンドや走路、ベースの周辺など、スパイクで掘り返されやすい部分に芝が敷かれなくなったというのが正しい経緯だ。
彼らが根拠にしている甲子園にしても、実は戦前は内野に芝が敷かれていたことを、戦前戦後を通じて名グラウンドキーパーとして知られた藤本治一郎さんが生前証言している。神宮や西宮にも戦前は芝が敷かれていたし、戦後は後楽園や東京スタジアムがそうだった。
リニューアル工事を終えた甲子園の内野に芝が再敷設されないという話を聞いた時には大いに落胆した。春夏の甲子園大会が行なわれるため、芝の維持管理が難しいというのがその理由なのだろうが、これは本末転倒というものだろう。甲子園にも神戸や広島と同じように内野の芝が敷かれたら、名実ともに世界一の球場になると思うのだが。
校庭芝生化に反発する野球関係者の「内野が芝生だとボールがイレギュラーする」 という言い分もお笑い草だ。屋外で行なわれる球技は、必ず自然の影響を受けるものだ。もちろんフィールドは万全を尽くして整備されるべきだが、それでも100%はあり得ない。少年野球のレベルで露骨に「勝利至上主義」を口にする姿勢にも嫌悪感を覚えますね。いずれにしても、「自然の影響」を皆無にしようというのは、接待ゴルフの顧客にばかり配慮して、易しいコースばかり建設している日本のゴルフ界にも通じる発想ではないか。
もし甲子園球場を「アリバイ」の根拠にしているのなら、むしろ彼らは甲子園球場を運営・管理する阪神電鉄に、「甲子園の内野芝生化」を働きかけるべきだ。日本ではサッカーJリーグの発足以来、芝生の育成管理技術は飛躍的に進歩している。また、もし春夏の甲子園大会で内野の芝が傷むというのであれば、それは芝生の維持管理以前に、高校野球の過密日程、さらには選手の健康・体調維持管理ができていないことでもあるのだし、そちらのほうがはるかに大きな問題だろう。
学校側の金銭的・人的負担を無視して頭越しに芝生化を推進する知事閣下の姿勢にも大いに疑問はあるが、少なくとも「野球関係者」を自称する以上は、野球が「芝のスポーツ文化」であることをきちんと認識し、むしろ「土まみれ」「人工芝まみれ」になっている日本野球の現状を改善する方向へ発想を転換してもらいたいものだ。
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日本で活躍してるプレーヤーの質は高いのに、国民の質が低いのはもったいないですね
私もMLBの球場や内野が天然芝の球場を見ているので、それが普通なのかなと思っていましたが、どうやら‘野球関係者”と名乗る人たちの常識は違っていたようですね。
今まで野球に携わってきましたが、「内野は土が基本」なんて言葉、聞いた事がありません。可哀想なのは「内野は土が基本」だと教えられる野球少年たちですね…。
こんな常識も知らないで、大阪の野球関係者は野球王国と名乗るのですから、呆れてものがいえません。
あえてキツい言い方をするならば、「土が基本」などとおっしゃる野球関係者のある意味犠牲となったのが、メジャー移籍後の松井稼頭央ではなかったのでしょうか。高校野球時代の「土」、西武時代の「人工芝」のために、あれほどの野球センスの持ち主でも、天然芝球場への対応に苦しみました。それでもセカンドにコンバートされたあとはレギュラーを確保し、ワールドシリーズにも出場できたのは、彼の人並み外れた努力があったからなのでしょう。
せめて甲子園、横浜、神宮はこれから全面天然芝にできないものかと思いますけどね。
それこそ、何故か右打ちのシューレス・ジョーがよみがえる「Field of Dreams」と言えるのだと思います。
大リーグでの松井稼頭央を怪我の多い選手にしたのも、日本の人工芝球場だと強く感じています。
だから、人工芝こそ無くして欲しいいちばんのものです。
でも、東京ドームをはじめとして、日本の場合、野球場をイベント会場兼用にしないと運営していけない現実を考えると(←この私の考えは正しいですか?)、
人工芝より土ならまだいいかなと考えている自分がいます。
>野球場をイベント会場兼用にしないと運営していけない現実
これは逆に「多目的」競技場として建設・運営しているがゆえに、コストが高くなっているのです。プロ野球の本拠地球場なら、年間約70試合、メジャーの場合なら81試合を開催できますが、これはサッカーなどに比べるとかなり効率的です。しかもサッカーやラグビーのように天然芝の上を縦横無尽に走り回るわけではないので、それなりに大変とはいえ、サッカー場や競馬場の芝に比べればコンディショニングはやりやすいのです。もちろん一番大切な選手の体を守れますし、人工芝に比べるとボールも傷みません。土は人工芝よりはましですが、それでも天然芝のようにクッションにはならないんですね。また野球専用にすれば、使用しない日は光熱費や人件費もかかりませんからね。
現在の日産スタジアムは、結局サッカーにも陸上競技にもコンサートにも使おうという「ゼネコン」的発想で設計されたので、スタンドのあちこちにフィールド全体が見渡せないエリアがあるなど、スタジアムとしてはかなり落第点が多い施設です。あれはみなとみらい地区に建設して、アトランタのターナーフィールドのように、W杯が終わったあと、野球場に改装すればよかったんです。そして横浜スタジアムを天然芝のサッカー場にすれば……まあ、当時の市長は「ドーム球場」にこだわりまくっていたそうなので、提案しても黙殺されたでしょうが。
人工芝の犠牲者、ということで付け加えるならば、松井秀喜も当然そのリストに入れることができますし、さらに振り返れば原監督もその中に入るでしょうね。
芝生の方が子供達も喜ぶと思うのだけど。
その意味で今の阪神が苦戦しているのは、内野も天然芝にしなかった罰なのかもしれない。
そういうことも含めて、やはり内野も天然芝にしなければ、野球のみならずほかのスポーツからも子供たちは敬遠してしまうだろう。
どうぞよろしくお願いします。
「野球の内野は芝生が基本」は私も同意見です。
やる側からすればプレイの質。
見る側からすれば芝生の美しさ、心地よさ。
これらを鑑みても、天然芝は不可欠じゃないかと考えます。
以前アメリカで草野球(アメリカの場合はスローピッチソフトボールでしょうか)
レベルの球場の内野に芝が敷かれていたのを観たことがあります。
一方で日本のような内野が土の球場もありましたが、「その辺の公園」に
内野に芝が敷かれていた球場があったのには感動しました。
ぜひ日本でも拡がってほしいですね。
ところで、甲子園球場について、戦前に内野に芝が敷かれていたとのことですが、
藤本氏の証言以外のもの、例えば写真は残ってるんでしょうか?
コメントありがとうございます。
戦前の甲子園の内野についてのご質問ですが、私自身は戦前の甲子園大会の写真で内野に芝が貼られたと思われる「痕跡」を確認しています。ただ不鮮明なモノクロ写真なので、さらに詳しい調査が必要だとは考えております。
藤本治一郎さんについてはご存知かもしれませんが、戦前戦後を通じて、甲子園の「主」とも呼ばれた名キーパーで、現在目に見える功績としては、「オーバーシード」を実現させ、外野の芝を一年中緑の状態に保っていることでしょうか。
水島新司先生の「男どアホウ甲子園」に登場する主人公藤村甲子園の祖父・球之進のモデルではないかともいわれている方です。