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スカパー!MLBライブ出演予定&なぜ日本のメディアは「レイズ躍進」の“真実”を伝えないのか?

2008年10月22日 | Baseball/MLB

 

 スカパー!MLBライブのワールドシリーズ中継(当日録画放送)出演予定です。

 

10/23(木)午後10:00~
ch185スカチャン

タンパベイ・レイズ (TB)
vs
フィラデルフィア・フィリーズ (PHI)

実況:近藤祐司/解説:牛込惟浩 上田 龍

 

10/31(金)24::00(11/1午前0:00)~
ch185スカチャン

タンパベイ・レイズ (TB)
vs
フィラデルフィア・フィリーズ (PHI)

実況:節丸裕一/解説:小島克典 上田 龍

 

放送でご一緒する牛込さんと小島さんは、ともに元大洋ホエールズ、横浜ベイスターズのフロント出身で、「月刊ホエールズ」編集部に勤務していた私には縁の深いお二人です。
思い起こしてみると、社会人になって四半世紀が経ちましたが、いまお付き合いのある方で、大学卒業後、20代の時の私を知っていらっしゃるのは牛込さんだけなんですね。スカパー!MLBでご一緒する前年、取材で十数年ぶりにお目にかかった際も、きちんと私のことを憶えてくださっていたのには感激でした。

小島さんは私が「月刊ホエールズ」編集部を退職したあと、横浜のフロントに入られたので入れ違いだったのですが、1999年の宜野湾キャンプでの取材でお世話になっており、また大学も同窓です。

 

 

 

さてレイズとフィリーズの顔合わせとなった今年のワールドシリーズですが、2年前、私はフィラデルフィアのシチズンズバンク・パークで、この両チームが対戦したインターリーグを観戦しています。しかもデビルレイズ(当時)の先発は明日登板するスコット・カズミアーで、フィリーズフロントのご配慮で、短時間でしたが、ネット裏の特別席で彼の剛速球と高速スライダーを目の当たりにすることができました。

両チームにはその時のメンバーがまだ数多く残っているのですが、そのときにはまさか2年後にこの組み合わせのワールドシリーズが実現するとは想像もできませんでした。

 

昨年、私は自分が担当したスカパー!MLBライブで、インターリーグのデビルレイズ対パドレス戦を担当した際、両チーム(というよりも先発のジェイク・ビービーとエドウィン・ジャクソン)のあまりの実力差に愕然とし、「格差は試合をつまらなくする」いうエントリーを、「スポーツナビ+」に投稿したことがあります。
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/kairi1958/article/13

 

それから1年で、レイズはほぼ同じメンバーで万年最下位から地区優勝を果たし、公式戦でもポストシーズンでも、レベルの高い、しかも面白い試合を見せてくれました。上記のエントリーで取り上げたジャクソンも、今年は二ケタ勝利をあげるまでに成長しています。

 

レイズがワールドシリーズにまで進出することまでは予測できませんでしたが、それでも今年のオープン戦を終わった段階で、勝率5割以上、Aクラス、運が良ければワイルドカードでのポストシーズン進出は想定できました。

 

MLBのドラフト制度は、前年の勝率下位チームから順番に指名権が与えられる「勝率下位球団優先指名制度」です。また前年の勝率15位以上のチームがFA選手を獲得した場合には、その選手の実力ランクによって、ドラフト1位指名権を旧所属チームに譲渡するシステムになっています。


レイズ、あるいはナ・リーグのワイルドカードでプレーオフ進出を果たしたブリュワーズ、昨年のナ・リーグ西地区王者ダイヤモンドバックス、一昨年のア・リーグ王者タイガースなどは、このシステムを活用し、しかし制度の恩恵にただ甘えるだけでなく、きちんとグランドデザイン(青写真、展望図)を描いてドラフトやトレードによるチーム作りを行ない、低迷を脱出してポストシーズンを狙えるチームに成長してきたのです。

 

レイズの躍進は日本の野球ファンもかなり関心を抱いているようですが、少なくともここ数週間、私が目にした新聞やテレビニュースなどで、バド・セリグ・コミッショナーを中心に、戦力均衡化と収益の分配を推し進めてきたMLBの政策やシステムがその背景にあることを紹介した媒体はほとんど目にしていません。

 

うがった見方をすれば、そうした制度によって弱小チームが躍進したという事実は、メディアとチーム(イベント)が経済的に強く結び付いている日本のプロ野球(とその関係メディア・企業)にとっては「都合の悪い」話なのでしょう。

 

東北楽天ゴールデンイーグルスが誕生した際、オリックスとの間で行なわれた「分配ドラフト」で、あらかじめオリックスが旧近鉄の主だった選手をプロテクトした上での不公平なものだったこと、そもそも新球団が誕生した際、MLBのような「拡張ドラフト」も実施されなかったことなど、90年代以降、不完全FAの導入や逆指名・自由枠の導入によって骨抜きにされたドラフト制度などで、戦力均衡と収益の分配が「社会主義的悪平等」と決めつけられた日本プロ野球界では、いまのところ、レイズのような奇跡が起こる予感は残念ながらありません(まあ、今年のオリックスが少しはそれに当たるのかもしれませんが、あの「根なし草」ぶりでは爆発的にファンが増えるとは思えませんしね)。

 

戦力の均衡や収益の分配をこのBlogなどで訴えると、「強い球団の成績や収益を弱いチームに合わせろというのか」などと、読解力不足丸出しのコメントを寄せてくる人たちも(ごくごく少数ですが)います。言うまでもないことですが、戦力の均衡化や収益の分配は、最も強く、収益力のあるチームのレベルに全体を引き上げるということです。

それが一朝一夕で成し遂げられるものでないのはもちろんですが、少なくとも日本球界全体が一体となって、その目標に向かって進んでいく姿勢を見せることは必要でしょう。

にもかかわらず、NPBはトップが交代しても、メジャー志向のアマチュア選手を締め出す了見の狭いシステムを考える能力はあっても、オールスターゲーム、クライマックスシリーズ、日本シリーズの独占放送権を一括して現金化したり、魅力ある商品化ビジネスやインターネット事業の展開も依然としてできない状態です。

 

WBCの監督問題にしても、依然として監督や代表選びを直接行なう「強化(技術)委員会」を設置しようという動きすらありません。

「強化(技術)委員会」の設置がなぜ必要なのか? 北京五輪以来の日本野球で象徴的なシーンを思い出してください。

 

・北京五輪で、試合序盤に無死もしくは一死で走者二塁の場面でも、送りバントのサインを出し、結果としてビッグイニングを作れず、終盤相手に逆転を許してしまう野球。

・セ・リーグのクライマックスシリーズ第1ラウンド、ストレートに狙いを絞っているウッズに対し、しかもベースが空いているにもかかわらず、オフスピードピッチを投げられず(別にボールになってウッズを歩かせても構わない状況だったのに)無謀な速球勝負を挑んで決勝2ランアーチを浴びた阪神タイガースのクローザー藤川球児。

 

まあ個人的にはこれに、「シーズンを通じて最下位に沈みっぱなしだったのに、監督が留任したチーム」を付け加えたいところですが、もうファンを返上しているので(笑)。

 

日本が国際大会で頂点に立つため、というより野球が「点取りゲーム」としての球技(ボールゲーム)の原点に立ち返るために、野球界全体が「ビッグイニングを演出できる野球」を、それこそリトルリーグや高校野球の段階から作り上げていかなければならない時期に、日本球界はさしかかっています。

 

「スモールボール」は「イコール、バントの多様にあらず」。たとえホームラン打者がいなくても、大量得点を生み出せる野球は存在するのですが、それはいずれまた当Blogで紹介していくことにしましょう。

 

では、明日からのワールドシリーズ中継、ぜひお楽しみに!

 

(スカパー!MLBライブ10月放送スケジュール)
http://baseball.skyperfectv.co.jp/mlb/schedule/mlb_200810.html
(スカパー!MLBライブコメンタリー陣プロフィール)
http://baseball.skyperfectv.co.jp/mlb/commentators/index.html
(スカパー!MLBライブ公式ブログ「MLBマガジン」)

http://blog.skyperfectv.co.jp/mlb

 

 

 

 

 

 



 


 

 

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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
経済優先? (Kazuhiko Miyano)
2008-10-30 05:42:30
CSの一部(なんで全部やらないんでしょうね?)がたまたま地上波で中継していたので、観ていたのですが、「ここでバントかよ」な箇所はありましたね。

個人的には原監督は、悪しき体育会系のノリがあるように感じられるので、WBCの監督にはあまり好ましくないように思えます。
"北京"の方よりはマシだとは思えますが…

本気で勝とう!という気があれば、ボビ-さんやオチアイさんなどの選択肢はあるように思えるんですけどね。
アトは森さんや広岡さんのような人とか…

まぁ、きっと”上の人"が許さないんでしょうけどね。
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