写真追加(7月30日)
さつきすぎ 水無月の名は いつはりか まだ衣手は 梅雨にぬれつつ
少し早めの7月号です。今のところなんとか、毎月出せています。
■半期末の祇園祭と天神祭
7月になると、京都では「あの祭」の話題でもちきりになります。「あの祭とはもちろん「祇園祭」。祇園祭は7月頭の吉符入りから17日の山鉾巡行、24日還幸祭、月末の茅の輪くぐりや神事済報告まで7月を通して行われます。これは旧暦の5月半ばから、6月半ばころにおおよそあたります。江戸時代の「日次記事」などによると、もともとはこのころに行われていたことがわかります。
そして、大阪では7月には「例の祭」が行われます。「例の祭」とはもちろん「天神祭」で、こちらも旧暦では6月に行われていたようです。
京都の「祇園祭」と大阪の「天神祭」。ともに1年=12ヶ月の半分の6月・半期末の祭ということになります。
■祇園祭と天神祭と松
さて、これら旧暦6月末の祭には共通点があります。
まず一点目は、御霊信仰、つまり疫病を鎮めることや、怨霊を鎮めるための祭であることです。この季節は不衛生になりやすく、疫病が蔓延しやすい季節であることからも納得はいくでしょう。祇園会(祇園祭の旧称)は菅原道真(天神)の祟りが恐れられた時期に定例化されたものです。菅公に関連の深い動物「牛」の神・牛頭天王をまつる点も天神祭と共通するといえるでしょう(参照1、参照2<1章2節 祇園社と藤原氏参照> いずれも拙稿)。
もう一点が、今回の主題となる「松」とのかかわりです。
天神の紋は有名な梅鉢だけではありません。もう一つが左三階松です。しかも天神祭が行われる大阪天満宮の創建伝承にも松が深くかかわります。菅原道真公が現在の大阪天満宮横の大将軍社にお参りしたときに、七本の松が生え、そこが後の大阪天満宮になったといいます。
一方の祇園祭では、山鉾の山には松がたてられており、中野町では松の枝をさした山形の作り物が祭壇の両脇に奉られ、そこに長刀鉾の稚児が舞を奉納にやってきます。播州の加東市東古瀬の八坂神社で行われる祇園祭でも、松の飾り山が拝殿両脇に祭られます。
では、なぜこのような「松」の祭りがこの時期に集中するのでしょうか。
その謎を解くヒントは、旅の巨人といわれる民俗学者・宮元常一の著書「民間暦」にありました。次からは、この書を手がかりにその謎をさぐります。
祇園祭の木賊山 描-管理人
大阪天満宮内の大将軍社
七本の霊松がここに生えたことから天満宮が鎮座したという伝承を持つ
加東市東古瀬八坂神社の祇園祭 拝殿前に松をさした山の作り物が飾られる
■米の二期作と松、そして、一年の儀礼サイクル
松の祭が、旧暦六月に集中する理由を考えるキーワードがあります。それは「稲の二期作」。稲の原産地は中国南西部からインドあたりといわれており、元来は熱帯の植物であったと考えられます。温暖な地域では、稲の二期作が一般的となり、一年を2回のサイクルに分けて考えることになります。そうなると、それにともなう祭儀も2回のサイクルに分けられます。収穫後、次の田植えの前に神を向かえ、送り返すということを年に2回おこなうのです。
稲作に伴って、この習慣も日本に伝わったようです。現在の7月、旧暦の6月には祇園祭や天神祭などの松の祭が行われます。また、門松ももともとは年末に立てられるものであったようです。そうなると下のようなサイクルが出来上がります。
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旧暦12月に門松で神を向かえ、正月祭の後、とんどでお焚きあげをして神を送り返す→→田植え→稲刈り。
旧暦6月に天神祭や祇園祭にみられる松で神を向かえ、旧暦7月のおぼんの送り火で神を送り返す→→田植え→稲刈り →旧暦12月にもどる。
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天神祭や祇園祭に見られる松は、このような米の二期作を基調とした儀礼サイクルから発展したものだった可能性が見えてきます。
しかし、熱帯には生えない針葉樹の松が、なぜ熱帯地域の儀礼習慣のサイクルに組み込まれたのでしょうか。
■防風林としての松
さて、上記の熱帯の影響がある儀礼習慣に、なぜ針葉樹の松が重要な役割をはたすのか? その答え!?・・・にはならないかもしれませんが、少し播州に目を移してみましょう。
播州の海沿いには松の名所や信仰にかんけいする東の加古川から、尾上の松、高砂の松、曽根の松、大塩天満宮、「松」原八幡宮、浜の宮・津田・恵美須の宮・中島などの飾磨の天満宮、魚吹八幡宮の一の氏子地域・興浜の大覚寺の松、室津の賀茂神社で行われる夏越祭(旧暦6月にあたる)でだされる松を載せた荷い式屋根なし太鼓台も見られます。
海岸では防風林として松が用いられており、このように松が重宝されたことから神の宿る木とされたのでしょうか。
兵庫県龍野市室津の賀茂神社 賀茂神社すぐ裏の海-松に関わる神社が播磨沿岸に並ぶ
賀茂神社に奉納される、松をとりつけた屋台(夏越祭 H24.7.29sun.)
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