月刊「祭御宅(祭オタク)」

一番後を行くマツオタ月刊誌

太鼓に込める願い、韓国編(月刊「祭」47号.2015.10月)

2015-09-16 16:16:05 | コリア、外国

祭シーズンが近づいて来ました。

我々が太鼓に熱き思いを乗せていろんな祭りをするように、韓国でもいろんな場面で太鼓が使われます。それを今回は見ていきます。

◎殺牛の代わりとしての太鼓
 太鼓が演奏される前、牛を生贄にし雨乞いなどをする信仰が日韓両国にあったそうです。 日本霊異記や日本書紀から、日本では仏教導入の影響でその習慣は廃れたことが分かります。また、韓国でも農作業に牛を使うことから、古代よりは少なくなったと管理人は推測しています。ただ、韓国では仏教の勢力が日本ほど強くなく、牛肉を食べる習慣は朝鮮時代から続いています。それにともない、あまり多くはなかったと思われますが、戦前の論文には韓国で殺牛信仰が続いていたという報告もなされています。 仏教信仰の強弱はあるものの、その影響で両国とも殺牛信仰はへったと思われます。牛の皮を使う太鼓は殺牛の代替物として使われているのではと管理人は推測しています。


◎祭での太鼓
  韓国では地車や屋台、太鼓台など我々のように乗り物に太鼓を乗せて練り歩くという様子はほとんど見られません。中国やインドでも山車のようなものはある、もしくはあったようですが、なぜ韓国・朝鮮だけ?という謎が残ります。祭で太鼓が使われる一番多いと思われるのが踊りや劇、歌を伴う農楽などと呼ばれる芸能です。

●慶尚北道安東市河回村 両班劇
  有名なのがチャンゴと呼ばれる太鼓で、ある時は踊りながら、ある時は座ったままで太鼓が打たれます。豊作や大漁など、生産活動の盛況を願うことが多いようです。
 砂時計型の締め太鼓で、左右違う形の長さ30cmほバチを持ちます。 左側-クンピョン 低音面で、鉦のバチのように先に丸いかたまりのついたバチを使います。小指側に先が来るように下向きにバチを持ちます。右手で打つことはないようです。 右側-チェピョン 高音面で、先が細いバチを使います。親指側にバチの先がくるように上向きに持ちます。左手も交えながら打ちます。

●両班劇の演奏者、右側がチャンゴ

●全体のリズムをとる鉦


 踊りながらの場合は広島の花田植や、沖縄のエイサーなどを彷彿とさせます。画像はないのでネットなどをご参考にしてください。
 

◎寺院の太鼓 -生きとし生けるもののために-
鐘、木魚、雲板とセットで太鼓が寺院に設置されます。聞くところによると、木魚が水の生き物、鐘は人間、雲板は空の生き物、そして太鼓は4本足の生き物のために演奏されるそうです。 今まで見たことあるのは全て鋲太鼓でした。鏡面は1メートルをゆうに超えるものがほとんどです。カラフルな装飾が施されています。

●慶尚北道海印寺の太鼓

◎統一祈願太鼓
 韓国西北部、京畿道パジュ市(坡州市、파주시) のイムジン河(임진강.臨仁江)ほとり、つまり南北国境間近に作られています。この太鼓が置かれている施設は統一展望台。そこから、北の様子が見ることが出来る施設です。 また、統一を祈願し、やがて実現するまでを展望する施設ともいえるでしょう。国が分断された戦争があったことで、日本の経済復興がなされた一面を考えると、複雑な思いがします。いつの日か平和的に統一され自由に行き来できる日がくることを願ってやみません。
⚫編集後記
 今年の夏は6回目の渡韓にして、初めてソウルに行きました。相変わらず韓国の人は優しくて、益々この国を好きになりました。 我が国の祭においても朝鮮や韓国にルーツを持つ人たちが、今も欠かすことができない役割を果たしている例にいくつか出会いました。 政治的な批判や議論はお互いに大いに行うべきです。が、人格を否定する差別発言で、実はあなたの隣の人を傷つけているかおしれません。そのような想像力が我々祭り人にも求められている時代が来ているように感じます。


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