会社帰り、地元の駅に降りたときに声は聞こえた。
「○○中学校です!世界の恵まれない子供たちのために募金をお願いします!」
私は駅構内の本屋に入った。
目当ての本を探した後、店から出るのをためらって棚の前をウロウロしていた。
店を出れば、あの中学校の生徒が募金箱を持って大勢並んでいるのだろう。
募金をするのが嫌なのではない…
ひとつの疑問を抱いているために、すんなり募金が出来ないでいたのだ。
その日の朝、私は勤務先の最寄り駅に着いたとき、長い階段を大きなスーツケースを
持って一人でウンウンと頑張って降りている私と同じくらい小柄な女の子を見た。
その駅はエスカレータがない不親切な造りだという事も、重い荷物を一人で運んでいる
時の辛さも私は身を持って知っているのに、知らん顔をして彼女を追い抜いていったのだ。
こんな冷たい世間で子供が産めるか、と思ってきたが、私自身が冷たい世間の
構成員であると実感した。
そんな私が世界の恵まれない子供たちのためにお金を差し出すこと…
目の前の困っている人を助けることはしなかったくせに、目に見えない遠くに
いる人のために気軽に出来る募金はするということ…
日本にも恵まれない子供がいること…
日本にも貧しい人がいること…
ここで募金をして、自分の中の解答をなげやりに隠してしまうことは出来ないと
決意し、財布をしまって本屋を出た。
中学生の声は聞こえていたが、我が出口とは逆の方に立っていたらしく遭遇しなかった。
心臓がドキドキして、息苦しく、早足で家路に着いた。
募金をするべきかしないべきか、目の前の人を助けるか助けないか。
今でもずっとやりきれない感情がこみ上げて、自分を嫌いになりそうだ。
「○○中学校です!世界の恵まれない子供たちのために募金をお願いします!」
私は駅構内の本屋に入った。
目当ての本を探した後、店から出るのをためらって棚の前をウロウロしていた。
店を出れば、あの中学校の生徒が募金箱を持って大勢並んでいるのだろう。
募金をするのが嫌なのではない…
ひとつの疑問を抱いているために、すんなり募金が出来ないでいたのだ。
その日の朝、私は勤務先の最寄り駅に着いたとき、長い階段を大きなスーツケースを
持って一人でウンウンと頑張って降りている私と同じくらい小柄な女の子を見た。
その駅はエスカレータがない不親切な造りだという事も、重い荷物を一人で運んでいる
時の辛さも私は身を持って知っているのに、知らん顔をして彼女を追い抜いていったのだ。
こんな冷たい世間で子供が産めるか、と思ってきたが、私自身が冷たい世間の
構成員であると実感した。
そんな私が世界の恵まれない子供たちのためにお金を差し出すこと…
目の前の困っている人を助けることはしなかったくせに、目に見えない遠くに
いる人のために気軽に出来る募金はするということ…
日本にも恵まれない子供がいること…
日本にも貧しい人がいること…
ここで募金をして、自分の中の解答をなげやりに隠してしまうことは出来ないと
決意し、財布をしまって本屋を出た。
中学生の声は聞こえていたが、我が出口とは逆の方に立っていたらしく遭遇しなかった。
心臓がドキドキして、息苦しく、早足で家路に着いた。
募金をするべきかしないべきか、目の前の人を助けるか助けないか。
今でもずっとやりきれない感情がこみ上げて、自分を嫌いになりそうだ。