別冊「バビル2世」マガジン

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アシェラッド、死してなお「ヴィンランド・サガ」12巻

2012-12-02 21:39:19 | コミック作品

おおよそ10ヶ月に一巻刊行される「ヴィンランド・サガ」、きっちりペースを守って12巻目。
12巻目にもなるんか!しかし、まだまだ道半ばです。
すっかり草食系となったトルフィンですが、同じ主人の下で使役されている奴隷仲間の美女、アルネイズ関連の大事件が起きてしまってエラいことに、というのが今回の主要なストーリーです。

いやあ・・・もうこれ・・・凄いですね。純文学まっつぁお!な展開でございます。
幸村先生、最初っからこういう構想だったのかな?・・・だよなぁ。最初から「西の大海の果て、豊かな土地が広がる場所」ってのが出てくるし。
今回、ついにその“土地”のことをトルフィンが思い出しますが、ここから真の物語が始まるんですな。
「水平線の向こう、どんな権力も届かない、どんな奴隷商人も知らない」
そこを目指す。国を作る。戦争も奴隷もない国を。

ところでトルフィンは、もう絶対に誰も傷つけたくないし、ましてや殺すなんて論外、と思ってます。
でも、攻撃されたらどうするのか?無抵抗ならば自分が殺されてしまう─という局面で、なんとトルフィンのかりそめの父、アシェラッドの亡霊、キター!
亡霊は、トルフィンにこう語りかけます。この場合は人助けだし?まあ一戦ぶちかましてもいいんじゃね?と。
それとも非暴力の誓いを貫くか?「考える時間はねェぞ」
相変わらずシブいっす、アシェラッド

でもね、これ亡霊じゃないっすね。トルフィンの内なる声が、アシェラッドの姿をとっているだけ。
ようするに、自分に語りかけるもう一人の自分が、アシェラッドの姿をしているわけですね。やっぱりかりそめの父、だもんなぁ

相手を傷つけず、それでいて暴力から逃れるには、どうすればいいか?
そりゃもう徒手空拳しかないでしょ~?って、ほらほらトルフィン、格闘技
格闘技ってのは、もともとそういう意味合いで出来上がったものです。ようするに、相手を傷つけずに暴力を抑止する(=罪を犯させない)、という。仏教(禅宗)の修行の一環でもあったわけです。
ちなみに、日本には格闘技を伴う宗派は入ってきませんでした。日本の禅宗はもっぱら座禅ですが、中国では少林寺に代表される座禅+格闘技の宗派が興隆しました。

というところで次巻へ続く。
しかし現在発売中の「アフタヌーン」誌では、アルネイズさんが大変なことに。おまけに、せっかくトルフィンを見つけた(以下ネタバレにつき自粛)


余談
冒頭、トルフィンが聖書の朗読に聞き入るシーンがあります。
「敵を愛し、自分を迫害するもののために祈りなさい」
愛してくれる人を愛するって、それ普通じゃん。自分に良くしてくれる人と仲良くするのは楽チンじゃん!
そうじゃなくってさあ、自分を攻撃しようとしている連中を愛したり、仲良くできたりしたら、それって凄いことじゃね?─という具合に、トルフィンの中に聖書の言葉がしみ込んでいく様子がわかります。
う~ん、いい場面だなあ。マジで泣けます。

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