Foreign Media Analyst in Japan

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電子出版におけるプライバシー保護および電子図書館での保護の具体的取組みの日米比較(その1)

2016-08-26 01:05:25 | 信頼性の高い情報とは

 筆者は、たまたま米国の人権擁護団体であるEFF(Electronic Frontier Foundation)のサイトで、主要電子出版社のプライバシー保護内容の比較を行った結果を一覧にしたもの(2012年版)を読んだ。 

 他方、わが国の公立図書館の電子図書館への取り組みの例として、千代田区図書館は2007年11月にインターネットを活用した日本初のインターネットを使用して電子図書の貸出返却が可能な国内サービスとして千代田Web図書館サービスを開始したという記事を読んだ。

 また、同図書館は「千代田Web図書館は、インターネット上で電子書籍の貸出・返却ができるサービスです。・・このページでは、現在所蔵している約7,500タイトルのコンテンツ(電子書籍)の中から、代表的なコンテンツをリストで紹介しますので、ぜひお試しください。」と謳っている。 

 ところが、千代田区立図書館サイトを見ても、横浜市立図書館の「個人情報保護に関する方針(プライバシー・ポリシー)」のような「プライバシー・ポリシー」が見当たらない。 

 そのような状況下で、筆者はわが国の国立国会図書館サイトで「米国図書館協会(American Library Association:ALA)がデジタル環境下での利用者のプライバシー保護を目的とした4つのプラーバシー・ガイドラインを公表」したというの記事を読んだ。 

 今回のブログは、第一に米電子出版社のプライバシー保護内容の比較を行い、第二にALAのプライバシー保護にかかるガイドラインの内容を検証した。特にALAのガイドランはIT化が進んだ米国の図書館サービスの実態に即した内容であり、他方わが国の国会図書館も翻訳する予定が見えないことから、先行して仮訳したものである。なお、ALAのガイドラインに内容は決して平易なものではない。筆者なりにIT分野の注記を加えたが、専門家による補記を期待する。

  なお、今回のブログは2回に分ける。

1.EFFが独自に行った主要電子出版社のプライバシー保護内容の比較

 2012年版ではあるが、EFFが独自に主要電子出版社のプライバシー保護内容の比較を行った結果を一覧にしたもの( 「EFF「E-Reader Privacy Chart, 2012 Edition 」)を公表している。

 米国の以下の主要電子出版社9社につき、Q1~Q7の各項目につき比較を行っている。 

(1)調査対象の出版社

「Google Books」

「Amazon Kindle」

「Barnes & Noble Nook」

「Kobo」

「Sony」8/22(26)  (note1)

「OverDrive」

「IndieBound」

「Internet Archive」

「Adobe Content Server」 

(2)質問事項

 以下の質問事項につき「Yes 」, 「No」,「Unclear」という回答ならびに簡単な補足説明がある。 

Q1:ユーザーの電子書籍の検索内容を追跡しているか? 

Q2:ユーザーが書籍購入後に、何を読んだり、どのように読んだかにつきモニタリングしたり、またその情報を読者に還元すべくリンクをはっているか? 

 Q3:端末に関し、提携する電子書籍ストアーから買わないことにつきどのような互換性を持っているか? 

Q4:書籍の購入記録を保持しているか?電子書籍以外の購入や取得につき追跡しているか? 

Q5:非統合の様式で集めるた個人情報を誰と共有しているか? 

Q6:顧客に対し、個人情報へのアクセス、収集および削除につきいかなるメカニズムを用意しているか? 

Q7:顧客の同意なし自社以外と顧客情報を共有しうるか? 

2.アリゾナ州の例で見る電子書籍のE-booksも含むライブラリアンに対するプライバシー保護義務や罰則規定 

 アリゾナ州「41-151.22. Privacy of user records; violation; classification; definition」の例で見てみた。わが国においても電子書籍の閲覧が公共図書館等でも開放されるること広く行われていることから、保護ルールの明確化の検討が喫緊に取り組むべき時期に入っていると考える。 

 なお、アリゾナ州では違反者に対し、次の刑罰が科される。

・Sentencing Range for Class 3 Misdemeanor Offensesクラス3の軽犯罪 

・Maximum Probation:最高1年の執行猶予 

・Maximum Jail:最高30日の拘禁刑 

・Maximum Fine for a Person個人の違反行為:500ドル(約5万円)+課徴金(surcharges) 

・Maximum Fine for an Enterprise法人の違反行為:2,000ドル(約20万円)+課徴金 

3.わが国の電子書籍会社のプライバシー・ポリシーに見る顧客情報の取扱い

  2社の例で、内容を見ておく。 

電子書籍「ADTHREE」のプライバシー・ポリシー

 次に挙げるソニーの利用規約の内容と比較されたい。Sonyの米国等法人は2014年に顧客をKoboに引き継いだが、やはり米国並みのプライバシーポリシーや利用規約の内容を持っていると考えざるを得ない。 

「株式会社 アドスリーは、 個人情報保護の重要性に鑑み、「個人情報の保護に関する法律」及び本プライバシーポリシーを遵守し、お客さまのプライバシー保護に努めます。  

個人情報の定義

お客さま個人に関する情報(以下「個人情報」といいます)であって、お客さまのお名前、住所、電話番号など当該お客さま個人を識別することができる情報をさします。他の情報と組み合わせて照合することにより個人を識別することができる情報も含まれます。」 

 ・・・これだけである。 

②ソニーJP「Reader™ Storeサービス利用規約」から一部抜粋 

第5章:ご利用者の情報の取り扱い 

第27条(本サービス収集情報の取り扱い)

1.当社は、本サービスにもとづく取引を通じてご利用者から収集した、クレジットカード情報、メールアドレス、コミュニケーション機能利用時のユーザー名その他個人を識別または特定できる情報(以下「本サービス個人情報」といいます)および取引情報(ご利用者のコンテンツの購入履歴、本サービスのご利用状況、クッキーを利用して収集する本ウェブサイトの閲覧履歴等に関する情報を含む)を、本サービスを提供する目的、ご利用者に対して、当社ならびにソニー株式会社およびその子会社のコンテンツやサービスを紹介する目的、およびご利用者の属性(年齢、住所など)ごとに分類された統計的資料を作成する目的のために利用させていただきます。

また、当社は、潜在的な情報セキュリティ上の脅威を特定し、かかる脅威からお客様および当社を保護する目的で、当社が必要と判断する分析を実施するために、本サービス個人情報を利用することがあります。 

2.当社は、以下のいずれかに該当する場合を除き、本サービス個人情報を第三者に開示いたしません。尚、第1号、第2号および第6号に基づく開示にあたっては、開示先に対して、本サービス個人情報を厳重な管理体制のもとで保持させかつ他の第三者への開示または当社が承認した目的以外の利用は行わせないようにします。 

(1) ご利用者に本サービスを提供するうえで必要となる業務委託先に開示する場合

(2) 前項に定める利用目的のために、ソニーグループ会社に開示する場合

(3) ご利用者が事前に承諾された場合

(4) 法令により開示が要求される場合

(5) 当社、ご利用者または第三者の権利または財産を保護するために開示する必要がある場合

(6) クレジットカードの第三者による不正使用を防止するために、クレジットカード会社からの要請に応じて当該クレジットカード会社に開示する場合(当該クレジットカード会社からクレジットカードを発行している会社に対して再開示する場合を含みます)

(7) 合併、会社分割、事業譲渡その他の事業承継の場合 

3.当社は、本サービス個人情報を、厳重な管理体制のもとで管理、保管し、上記に定める場合以外で、本サービス個人情報が第三者に漏洩することのないように、合理的な範囲内でセキュリティの強化に努めます。

4.本サービス個人情報については、「購入履歴確認」のウェブページより検索・照会いただけます。なお、ご利用者が当該ウェブサイトを利用できない場合、第38条(お問い合わせ先)に定めるお客様窓口(以下「お客様窓口」といいます)宛てにご連絡ください。当社は、可能な限り対処するものとします。

5.ご利用者が当社による本サービス個人情報の利用目的の通知、開示、内容の訂正、追加または削除、利用の全部または一部の停止、消去または第三者への提供の停止その他の対応を希望される場合には、お客様窓口宛てにご連絡ください。当社は、可能な限り対処するものとします。

6.ご利用者が、個人情報をご提供されない場合、利用目的に基づくご利用者への本サービスの提供その他ご案内等が行えないことがあります。 

 第28条(My Sony IDご登録情報の取り扱い)

1.当社は、本サービスの提供にあたり、ご利用者がMy Sony IDにご登録いただいた情報を利用いたします。当該情報のうち、個人を識別または特定できる情報については、ソニーマーケティング株式会社が別途定めるMy Sony ID利用規約「第5章個人情報の取り扱い」の第27条(共同利用)(こちらの内容をご確認願います)その他の規定に従い、適切に管理のうえ、共同利用いたします。なお、この場合、My Sony ID利用規約「第5章個人情報の取り扱い」の各条項における「ソニー製品等」の用語は、本規約にて定義する「本サービス」を意味します。

 前項に定めるほか、当社は、前条第1項に定めるご利用者の属性(年齢、住所など)ごとに分類された統計的資料を作成する際に、本サービス個人情報とMy Sony IDにご登録いただいている情報とを参照することがございます。 

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(note1)EFFが調査したのが2012年でありSonyをとりあげていたが、その後、米国やカナダに展開していたSony Reader Store はカナダのトロントに本社を置くKoboに顧客を引き継いだ。

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