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カナダ政府は終身刑のうち性的暴行やテロ等重大犯罪者の仮釈放を限定する刑法等改正法案を上程 (その2完) 

2015-04-22 15:41:25 | 信頼性の高い情報とは

(執筆途上)

(2)参考:立法技術的な内容になるが、連邦議会のサイトにおける刑法等改正法案のsummary  部を仮訳する。興味のある読者は読まれたい。 

 本法案(Bill C-53)は、大逆罪(hight treason)ならびにカナダ刑法(R.S.C., 1985, c. C-46)) の第231条(4)項および第(5)項(note14)または(6.01) (note15)に定める計画的な故意殺人に対し、被告人の犯罪と関連した行為が将来被告人のふるまい・行動に関する制限につき通常人の標準によって抑制されそうもないという結論を強要するような残忍な性格によるものであるとして結論づけられる場合について、法に定める仮釈放制度の適用に関し、仮釈放の適用可能性のない終身刑(life sentence of imprisonment without eligibility=絶対的終身刑・絶対的無期刑とも呼ばれ、恩赦がない限り社会復帰の可能性はない)が宣告できるよう、刑法を一部改正するものである。 

 本立法は、被告人が第一級謀殺犯である場合、または本事件以前に謀殺による有罪判決を受けていたとき、あるいは国際的な殺人行為において「人道に対する罪及び戦争犯罪法」第4条または第6条に定める犯罪行為を行ったときは、裁判官に釈放を認めない絶対的終身刑を言い渡す裁量権を与えるべく刑法を一部改正する。 本立法は裁判所の決定は、被告人の年齢と性格、犯罪の性質、その犯罪をめぐる状況およびあらゆる陪審の勧告に基づくことを定める。 (note16) 

 また本法の制定に関し、裁判官に被告の刑期35年務めた後の釈放を申し込むために釈放権なしで拘禁終身刑を申し渡される犯罪者に「特例釈放(executive release)」*を認めるため、「矯正および条件付仮釈放法」を一部改正する。 本釈放決定は、枢密院総監(note17)により認められるか、または拒否される。 

 最後に、本制定にあたり「国防法(National Defence Act)」「人道に対する罪及び戦争犯罪法」ならびに「犯罪者の国家間の移送法(International Transfer of Offenders Act)」 (note18)の関連して結果として生じる改正を行う。

*”Executive Release”の用語は、本改正法案(Bill C-53)で初めて出てきたものである。わが国ではまだ言及した論文等はないと思われるので本ブログでは「特例釈放」の訳語を用いて、関係条文に即して説明しておく。なお、一部改正法案であるので、現行規定と読み比べて確認されたい。

 ①法案第Ⅱ.1 編 EXECUTIVE RELEASE 

〔解釈〕

156.01条 本編で用いる用語

〔特例釈放の適用申請手続き〕156.02 特例釈放は犯罪者が35年の刑期を終えた後、書面をもって公共安全・非常事態準備大臣に対し申請を行う。

〔仮釈放委員会による調査〕

156.03条,156.04条,156.05条、156.06条

〔公共安全・非常事態準備大臣による精査〕

156.07条、156.08条、156.09条、156.1条

〔枢密院総監の決定〕

156.11条、156.12条

〔仮釈放委員会が付す条件〕

156.13条、156.14条、156.15条

〔特例釈放の延期、停止、取消〕

156.16条、156.17,156.18条、156.19条、156.2条

〔委員会の釈放の延期等にかかる犯罪者からの意見聴取〕

156.21条

〔釈放の延期等に関する情報の開示〕

156.22条 

(以下、略す) 

(2)連邦議会の審議の最新動向

 Open parliament サイト: 法案に対する政府、議会の議員等の意見が逐一確認できる。なお、意見内容の逐次の確認は誰でもRSS登録することで可能となる。 

3 .関係者やメデイアの法案に対する意見

(1)カナダ刑事司法協会の2人の担当大臣への2015年2月27日付け意見書(CCJA部長(Executive Director) アーヴィング・クーリック(Irving Kulik)署名)

  法案の重要な人権保護上の論点を論じているので、原文に即し忠実に仮訳しておく。

「 私は、カナダ刑事司法協会(Canadian Criminal Justice Association :CCJA)を代表してこの手紙を書いていている。ご承知の通り、CCJAはカナダの刑事司法に関係する法律専門家や市民のため犯罪司法の在り方に寄与すべく取り組んできており、1919年にその業務を開始し、これまで多数の関係する問題につき議会の委員会等で証言してきた最も歴史をもつNPOの1つである。CCJAは、カナダの全域でから700人のメンバー代表を擁する。 

 CCJAは、マスコミで政府が現在2つの重要かつ問題をかかえる内容の制度変更をわが国の刑事司法制度に導入することを検討しているという穏やかならぬレポートを読んだことから、本手紙を書いた。すなわち、①殺人の有罪判決を受ける犯罪者のための仮釈放の申請不適用期間の更なる長期化、②特定の犯罪者において法仮釈放用の適用の廃止(仮釈放のない絶対的終身刑)という2点である。CCJAは、政府がそのような措置の影響をどのように考慮しているかにつき尋ねるために本手紙を書いた。

  第一に、仮釈放の不適用期間の延長に関して、カナダで謀殺(murder)の有罪判決を受ける誰でもすでに強制的な終身刑(mandatory life sentence)の対象となる点に注意することから始めたい。

 その有罪判決文は文字通り終身刑で、犯罪者の生きている間は、決して釈放といった期限切れにならない。現在の終身刑は人が刑務所で彼らの全ての人生を過ごすことを必ずしも意味するというわけではない。しかし、多くはすでに死ぬまでの終身刑である。長年の監禁の後、彼らが再犯リスクが低いと考えられるならば、当該犯罪者はカナダ仮釈放委員員会(Parole Board of Canada)によって仮解放されることができるのみである。

 これらの状況下でさえ、彼らは文字通り彼らの死ぬまでの残りの拘禁時間および仮釈放監察委員会によって強要される条件を守らないことにより、彼らの釈放の潜在的取り消しの間は監督下におかれる。 

 我々は、「生きる希望」がどんな生命でも必須の要素でもあると思う。たとえ犯罪者が過去に恐ろしい犯罪を犯したとしても、人は変わることができると思っている。個人がそのような変化を示して、彼らがもはやコミュニティにとって危険でないことの一歩手前まで改善されたことを示す機会に値すると思う。犯罪者が改め、改善するという誘因を取り除くことは、社会にとっても逆効果である。 

 CCJAは、仮釈放に関してその後釈放された殺人の有罪判決を受けた者の再犯率について、最近の統計にはアクセスしない。そのような統計は、間違いなくカナダとカナダ仮釈放監察委員会の矯正部( Correctional Service of Canada and Canada Parole Board)を通して、あなたが利用できることを意味しよう。

  しかし、我々が利用できる以前のデータに基づいて、その最近の統計は仮釈放に関してその後釈放される殺人の有罪判決を受けた人がほとんどもう一つの殺人または重い暴力犯罪を犯し続けないことをかなり確実に証明できることは確かである。これらの予想された提案が議会で持ち出されそうであるならば、我々はカナダ人がそのような手段の必要性についての完全なかたちでの議論をすることができるよう、殺人の有罪判決を受ける犯罪者の再犯率の統計が一般公開されるよう求める。 

 第二に、特定の犯罪者に対して、法定釈放( statutory release )の適用範囲を削減・機会を取り上げるという本法案の提案に関して意見を述べる。

 法定釈放の目的が、仮釈放に関して解放されない犯罪者が彼らの判決文にある終わりの前にコミュニティでそれでも監督下の義務的期間の影響を受けることを確実とすることであることを思い出すことは重要である。監督下におかれるこの期間は、犯罪者のための特権でなく、いずれにしても刑期満了のコミュニティへの開放であるにちがいない犯罪者の成功した再統合のチャンスを増やすメカニズムである。その監視と強要された状況で、法定釈放は成功した再統合のチャンスを増やして、それゆえに、公共の安全を増強させる。我々の意見は、そのような監視が最も必要であるそれら犯罪者のための法定釈放の機会の排除は、逆効果であり、それらの犯罪者がおよぶ市民への危険を増やすというものである。

  さらに、法定釈放の機会が減らされるか除かれるならば、わが国の経済面での経費削減の時に、経費増の影響を精査することが重要である。数年前、カナダ刑事司法協会は、潜在的経費の見積りを当時の公共安全・非常事態準備相に提供した。母数(parameters)がそれ以来変わる一方で、法定釈放の完全な廃止の費用がインプリメントされてかつて完全に資本と運用面の支出において10億ドルに簡単に達すると見積ることは確実である。一部の犯罪者への法定釈放の機会のどんな削減でも、結果的には巨大な費用増をもたらすといえる。 

 結論としては、CCJAがよく考えた上の意見として、これらの制度改正は公共の安全を増やすことなく、経費をシステム的に増やすだけで、我々がカナダで現在楽しむ公安のレベルをたぶん低下させるであろう。我々は、あなたが高くついて潜在的に危険な公共政策のこの通り道を追求するためにあるいかなる法案でも再考することを求める。 

(2)議会での審議や各党首等のコメント

 Huffting post記事ほか 

 

 

(3)カナダのメデイアによる批判

 メデイア名とURLのみ記す。

①2015.3.4 National Post 記事「Harper crime bill to throw away the key for ‘repulsive’ murderers could prove unnecessary and harmful: critics」:法案に批判的である。 

②2015.3.4 CTV news「'Life without parole' bill targets Canada's most heinous criminals: Harper 」 

③2015.3.4 The Grobe and Mail「Ottawa to introduce life sentences without parole under new legislation」

 4.カナダにおける釈放制度と重大犯罪の規制の在り方の論議

 本ブログをまとめる中で筆者が感じたままの意見を整理しておく。機会を見て本格的にまとめてみたい。

 

(1)カナダ旧刑法第745.6に定められていた「早期釈放申請に関する規定」の改正経緯4/12(53)である。これまでカナダ国内で多くの重大犯罪者により、悪用されたとして議会などが動きを紹介

ウィキペデイアの解説4/12(43)等に基づき制度の概要を整理する。 

 

 

 

(2)犯罪捜査と起訴、有罪、量刑にいたる手続きの効率化と厳格化

 

 

なお、カナダの陪審制度についての一般的説明は省略する。

 

(3)

 

 

 

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(note14)カナダ刑法第231(4)条、第231(5)条に見る謀殺カテゴリー区分

Murder of peace officer, etc.

(4) Irrespective of whether a murder is planned and deliberate on the part of any person, murder is first degree murder when the victim is

 (a) a police officer, police constable, constable, sheriff, deputy sheriff, sheriffs officer or other person employed for the preservation and maintenance of the public peace, acting in the course of his duties;

 (b) a warden, deputy warden, instructor, keeper, jailer, guard or other officer or a permanent employee of a prison, acting in the course of his duties; or

 (c) a person working in a prison with the permission of the prison authorities and acting in the course of his work therein.

 Marginal note:Hijacking, sexual assault or kidnapping 

(5) Irrespective of whether a murder is planned and deliberate on the part of any person, murder is first degree murder in respect of a person when the death is caused by that person while committing or attempting to commit an offence under one of the following sections:

 (a) section 76 (hijacking an aircraft);

 (b) section 271 (sexual assault);

 (c) section 272 (sexual assault with a weapon, threats to a third party or causing bodily harm);

 (d) section 273 (aggravated sexual assault);

 (e) section 279 (kidnapping and forcible confinement); or

 (f) section 279.1 (hostage taking) 

(note15) Murder — terrorist activity

(6.01) Irrespective of whether a murder is planned and deliberate on the part of a person, murder is first degree murder when the death is caused by that person while committing or attempting to commit an indictable offence under this or any other Act of Parliament if the act or omission constituting the offence also constitutes a terrorist activity.

 

(note16)

 

 

 

(note17)

枢密院勅令(Oder of Council),名目上は女王によって制定されるが、実務上、国王裁可は形式的なものでしかない。カナダにおいては、総督(Governor General)の名においてカナダ枢密院(Queen's Privy Council for Canada)により署名、制定される。

議会公式議事録(Miniutes of Council)

 

(note18) 

 

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