クワガタ~スズメバチ等の覚書

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朽木屑を運ぶオレゴンルリクワガタ♂

オレゴンルリクワガタ

2023-02-15 22:15:49 | オレゴンルリクワガタ(CA)
オレゴンルリクワガタ platycerus oregonensis Westwood,1844
 
分布:カナダ南部〜アメリカ合衆国カリフォルニア州(メキシコ湾に沿った低地〜低山地)
体長:オス11.0〜16.0㎜ メス11.8〜14.3㎜
発生期:5〜11月頃までの約5ヶ月
分布地の気候:地中海性気候
 5〜10月=11〜24度前後(雨少ない)・11〜4月=8〜18度前後(前期より雨多い)
 
 
オレゴンルリクワガタ platycerus oregonensis は、ルリクワガタ属最大の種で
学名を地名で表しているので語尾はensisになります。
大図鑑(2010)では、差異は連続的になる可能性を示唆したうえで
以下の2亜種に整理されています。
platycerus oregonensis oregonensis Westwood,1844(カナダ南部〜オレゴン州)
platycerus oregonensis coerulescens LeConte,1861(カリフォルニア州)
 
今回飼育を開始したオレゴンルリクワガタは、カリフォルニア州リージョナルパーク産で
形態からすると、後者のcoerulescensに該当すると判断しました(以下オレゴンルリ)
累代は、野外個体からの1代目です。
*あまり見かけない種につき、今回は画像を多く掲載しています。
 
↓ オレゴンルリのおおよその分布域と飼育種の産地
出典:Google map
 
よくわからない生態
オレゴンルリは、特に少ない種というわけでもなさそうですが
その生態に関してはあまり知られていません。
西山保典著,2000.「世界のクワガタG」を開いてみると
アメリカ東部メキシコ湾〜カナダ東部にはオレゴンルリと似たような大アゴをした
ビレスケンスルリクワガタPlatycerus Virescensという種がおり
そのクワガタは、洋ナシの新芽や若葉を食したり、桜の花に集まるそうです。
オレゴンルリもまた、似たような生態ではないかと想像します。
 
↓ 日本のルリ系とは異なる大アゴ形状
 
色と質感
雌雄ともに体表の点刻と上翅の筋がよく目立ち、鈍い光沢があります。
頭・胸・脚部は黒みがあり、上翅は深みのある青系で
光の加減で青墨(せいぼく)や緑がかっても見えます。
日本のルリ系の場合、体がソフトな感じで指で摘まむのは怖いですが
オレゴンルリは、しっかりとした質感で、やや重く感じられ
一般的なルリクワガタ属のイメージとは少し違います。
別の言い方をすれば、小さなゴミ虫を摘まんだ感じです。
 
↓ オレゴンルリとルリクワガタ 
↓ メスの形は似ている
↓ 12㎜前後でやや小ぶりの個体
 
↓ 雌雄ほぼ同じ色合い
↓ 光りの加減で瑠璃色の上翅は青黒くも見える
↓ 腹面は雌雄ともに黒系〜こげ茶で符節はより茶色みがある
↓ 硬い質感で、重量感もある
↓ 大アゴは先端にかけて上向き
↓ メス 雌雄ともにお尻にかけて幅広な形
 
産卵セット
オレゴンルリの資料を探すと、記載や分布などについてはある程度見つかりますが
生態に関しての満足できる資料は、国内外含め見つけることができませんでした。
わかったことは、野外では幼虫は朽ち木から発見されるということ。
そこで、赤枯れ材・コナラ材・バクテリア材の3種の産卵木を用意し
容器底部に詰めたマットの上に置いてみました(コルリクワガタと同様のセット)
野外での発生は5月あたりであるため、現在新成虫は休眠期と思われましたが
寿命のわからない種につき、早々に産卵セットを組みました。
管理温度は他種との兼ね合いで18度前後です。
 
↓ バクテリア材・コナラ材・赤枯れ材
↓ ゼリーの上にて 後食開始?(2023.1.28)

 ↓ 近づけると反応するが性成熟しているかは不明(1月割り出し)
 
オレゴンルリの交尾はコルリクワガタなどと同様のスタイルですが
交尾時間は非常に長く、約56分繋がっていました。
ではコルリクワガタの交尾時間はというと・・・?
見慣れているはずなのですがよくわかりません。
コルリクワガタの野外や飼育下での観察では、複数のオスによる多回交尾が多いため
感覚的な認識での交尾時間としては、〜数分といったところでしょうか?
仮に、メスを独占できた場合はもっと時間をかけるものと思いますが。
 
↓ 交尾成立
↓ 交尾中のオスは小アゴ髭を小刻みに動かす
↓ 交尾終了、所要時間は約56分
↓ 交尾後もメスを追いかける
↓ メスの飛翔(交尾直後)
↓ メスは産卵マークを残すのか?
↓ それぞれの朽ち木は隙間を確保
 
最後に
「世界のクワガタムシ大図鑑(1994)」で初めて見た変なルリクワガタ
北アメリカにはルリクワガタの仲間がいくつかいるようですが
オレゴンルリや、ビレスケンスルリなどは
アジアに分布する一般的なルリクワガタ属とは少し違った風に感じます。
未知なる部分が多く、手にするチャンスもほとんどない種の飼育は
それなりのリスクも伴いますが、かきたたされるものが多く、魅力にあふれています。
 
 
参考文献:
 西山保典著,2000.世界のクワガタG. 有限会社木曜社.
 藤田宏,2010.世界のクワガタムシ大図鑑6. むし社.
 
参考URL:生物多様性データへの自由でオープンなアクセス

 プラティセラス・オレゴネンシス・ウェストウッド、1844年 (gbif.org)



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2 コメント

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Unknown (瓢箪坊主)
2023-02-07 18:25:48
こんばんは。
オレゴンルリが生体で入ってきているのですね❗
交尾の様子など
とてもワクワクしながら読ませて頂きました。

産卵痕も国産と同じくなるのか興味深いです。
経過の記事を楽しみにしております。
Unknown (こよみ)
2023-02-07 22:57:34
こんばんは
瓢箪坊主さん、ありがとうございます。
はじめてオレゴンルリを見た印象は、図鑑などで見るほど青くないと思いましたが、それでもきれいな青黒です。
体も硬く、触った感じは日本のルリとは違う感じで丈夫そうです。
今はほとんど動かないので春頃までは活動しないかもしれませんが、少しでも生態に迫ることができたらと思っています。

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