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走行条件によって大きく変わる電気自動車のタブー「航続距離」の正体

2010年08月14日 05時53分41秒 | ニュースの感想

走行条件によって大きく変わる
電気自動車のタブー「航続距離」の正体
http://diamond.jp/articles/-/9038
ついに、「真剣に速さを競う」電気自動車レースが始まった。

 海の日で祝日だった2010年7月19日、袖ヶ浦レースウエイ(1周2.4km/千葉県袖ヶ浦市)で全日本EV選手権第1戦が開催されたのだ。


7月19日に袖ヶ浦レースウェイで開催された全日本EV選手権第1戦の様子。

「全日本」と銘打つも、参加車はたったの9台。市販車クラスが6台で、2台が全日本GTカー選手権の老舗プライベーター「チームタイサン」のテスラ「ロードスター」。残り4台が三菱「i-MiEV」で、そのうち3台は三菱自動車工業本社の広報車両だ。その他、改造車クラスに、自動車整備の専門学校/千葉自動車総合大学校から「カローラEV」とスバルの軽自動車「ビビオEV」、さらに「チームタイサン」のポルシェ「916EV」が参加した。

 これまで、日本で電気自動車レースというと、毎年11月に筑波サーキットで開催される「EVフェスティバル」に代表されるように、「速さ」より自主改造の技術向上を狙うことを基盤に運営されてきた。対して、こちら「全日本EV選手権」は、電気自動車の高速走行パフォーマンスを前面に押し出すものだ。

路面温度67度で性能ダウン
まるでガソリン車の創世記
 大会当日の午前10時過ぎ、各車が練習走行を開始するころには、気温34度、路面温度67度に達した。

 そうしたなか、各車は大きな壁にブチあたった。

「全開走行だと、2周もたない。バッテリーの警告ランプがつくし、モーターの警告ランプが付いた、それまで200Nmだった最大トルクが、コンピュータ制御がかかって一気に4分の1程度まで落ちて、加速できなくなった」(テスラロードスター、飯田章選手)。

「警告灯はつくし、クルマが重いし、リアの重心は高いし。コーナーの入り口ではアンダーステアが強くて曲がりづらいし、コーナーの出口ではいきなりオーバーステアでリアが大きく流れるし。とにかく大変だ、このクルマを速く走らせるのは」(テスラロードスター、植田正幸選手)。

「バッテリーの過熱も課題だが、思ったより電気を食ってしまって。決勝ではかなりペースダウンしないと完走出来ないかもしれない」(三菱i-MiEVでの出場者)。また、デモンストレーション走行を行った、BMW「Mini E」も「各種警告灯がついてしまって2周もたない」と、早々にピットインした。

 居合わせたベテランのレース関係者は「こりゃまるで1962年、鈴鹿サーキットが開業した頃みたいだ。あの頃、量産車はブレーキも、トランスミッションも、エンジンも弱くて、鈴鹿を全開で1周出来なかったンだから」と、日本のガソリン車創世記を回想した。

 つまりはこの全日本EV選手権第1戦、日本の自動車産業の新たなるステージへの幕開けなのかもしれない。

テスラは扇風機と氷で冷却
i-MiEVは充電に苦労
 だが、そうしたメランコリックな感情とは別に、レース関係者の多くから「テスラの性能に対する疑問の声」も上がった。アメリカ在住で、過去に数回テスラ取材をし、本連載を含めて同社関連の様々な記事を提供してきた筆者に、旧知のレース関係者たちから質問が浴びせかけられた。

「むこう(=アメリカ)では、こうしたレースはやっていないのか?」、「テスラでサーキット走行するユーザーもいるはずだが、今日のようなトラブルは発生していないのか?」、「テスラは量産車なのだから、大手自動車メーカーが耐熱試験を行っているデスバレー(ラスベガスに近い高温地帯)に行ってテストしているのではないのか?」、「所詮ベンチャーということで、このレベルで許されるのか?」、「リコール問題は発生していないのか?」などなど。

 こうした各種の課題は、テスラと技術提携を結んだトヨタにとっても、テスラの技術詳細を解析している現時点で、浮上してきている「悩みの種」に違いない。

テスラ陣営は走行後、過熱したモーターとリチウムイオン2次電池が収納された車両後部に、氷の入った袋をいくつも乗せた。そこに向かって大型扇風機で送風した。リチウムイオン2次電池の電池パックは、周囲を冷却水が流れる仕組みだが、今日のような状況ではその効果が低い。(BMW Mini Eは、水冷装置はなく空冷式)。


全日本EV選手権で件でモーター電池を冷やすテスラ 

対する三菱陣営は、さすが大手メーカーの量産車だけあって、特別な冷却対策は施さなかった。それよりも課題は航続距離。急速充電器が設置されていないこのレース場では、決勝に向けて一般電源からの数時間の充電が必要。練習走行で思いのほか電池を消耗した1台のi-MiEVは決勝開始までに満充電になるかどうか分からない状態だった。

 午後3時過ぎからの決勝(50km)。テスラ2台が「熱への懸念」からレース序盤/中盤で様子見走行するも、レース後半には「航続距離への懸念」でペースダウンする「i-MiEV」たちを一気に引き離した。「i-MiEV」の電池消耗量は、ハイペースで走行すると電池残量表示の1目盛(全部で16目盛)でコース1周(2.4km)だった。つまり、満充電状態での航続距離は、16×2.4=38.4kmとなった。これは、同車のカタログ値(10・15モード)の160kmの4分の1以下だ。

 だが、同カタログには注意書きとして「10・15モードは定められた試験条件での値です。お客様の使用環境(気象、渋滞等)や運転方法(急発進、エアコン使用等)に応じて値は異なります」と、赤字で記載されている。決勝前に満充電に達しなかった1台の「i-MiEV」は、レース終了直前にコース上で、ガス欠ならぬ「電欠」して停止した。

また、テスラ「ロードスター」の航続距離は、390km(米国LA4モード)。だが、今回のようなサーキット走行では極端に航続距離は落ちるため、チーム側は商用の大型発電機をピットに持ち込み充電作業にあたっていた。

 また、テスラ「ロードスター」と同様、18650(直径18mm×長さ65mmの円筒型/いわゆるパソコン用電池)のリチウムイオン2次電池を大量搭載するBMW「Mini E」の航続距離は、240km(米国LA4モード)だ。両社の基本技術が米ベンチャーのACプロパルジョン社によるという事実は、本連載第45回「世界の自動車業界関係者もびっくり仰天! トヨタと米電気自動車ベンチャー・テスラ提携の真実」他に詳しい。

 なお今回出場の改造車クラスの3台は鉛蓄電池搭載で、50kmを完走するためにかなりペースダウン。量産型電気自動車に何度となく周回遅れにされた。

マスコミも明確に伝えない
日産リーフの条件別航続距離
 量産型電気自動車の航続距離については、日産が今年6月11日~19日、同社追浜工場(神奈川県横須賀市)敷地内でマスコミ、アナリスト、株主等向けに開催した「リーフ試乗会」でも波紋を呼んだ。日産側は同車の航続距離の詳細を初めて公開したからだ。これまでの同車資料では、航続距離は米LA4モードで100マイル(160km)とされてきた。だが使用条件で航続距離は大幅に変化するという。

 例えば、北海道の草原地帯を時速60kmで定速走行すると、航続距離は220km。対して、夏場で都心などで渋滞になりエアコンをつけて時速10km程度でノロノロ走行すると、航続距離は75km。また欧州走行モードとして、平均時速81kmで走行すると、航続距離は76km。こうした「走行条件別の航続距離」について、同試乗会に参加したマスコミ多くが明確に伝えなかった。

ほとんどの場合、これまで公開されてきた「航続距離160km」を強調し、上記にあるような「走行条件別の航続距離」を主体とした「電気自動車の本質」を考える報道が極めて少なかった。本稿執筆時、ウエブ上で「リーフ、航続距離」で検索してみても、上記の「走行条件別の航続距離」について、トヨタ系のgazoo.comで日刊自動車新聞の記事を掲載しているのが目立つ程度だ。

 こうした状況について、日産自動車・執行役員・グローバルゼロエミッションビークルビジネスユニット・渡部英朗氏に7月31日、同社本社内でのイベント直後に聞いた。同氏は、神奈川県松沢成文県知事の「同県の電気自動車への取り組み」の講演の後、一般ユーザー向けの「リーフ及び、日産の電気自動車ビジネス」関連の講演を行った。しかし、そのなかで、「走行条件別の航続距離」については触れなかった。


講演する日産の渡辺英明執行役員

「本日の講演は電気自動車事業の全般的な内容のため、航続距離の詳細には触れなかった。(リーフの走行条件で航続距離で大幅に変わることは)先日の試乗会でマスコミ対象に公表しており、それが一般ユーザーへの公開とイコールだと思っている。今後はユーザーに対して、航続距離に対してより詳しい説明が必要だと考えている」(渡部氏)

 本稿ここまでで、読者の多くは、各社が航続距離に関して提示する「走行モード」というものが理解できないはずだ。そこで日本における「走行モード」に関して、中心的役割を果たす機構の方に説明をお願いした。

走行モードについて
交通研の専門家に聞く
 この機構とは、国土交通省所管の「独立行政法人 交通安全環境研究所」(東京都府中市)だ。通称、交通研と呼ばれている。ここでは鉄道、自動車に関する各種の試験検査を行っている。自動車については、国の安全・環境基準への適合性の審査を、公正・中立な立場で行う日本で唯一の自動車審査機関だ。

 自動車の燃費基準については、国土交通省と経済産業省の双方が協力し、省エネルギー法に基づいて決定。同研究所は、燃費測定方法、試験方法の策定について技術的なサポートを行っている。つまり、自動車のカタログ等で記載されている「10・15モード(一般的に『じゅう・じゅうごモード』と読まれる」など日本国内での燃費モードは事実上、同研究所が策定している。

 この「10・15モード」は、10種類の市街地走行パターン、15種類の郊外走行パターンを持つ。試験計測については、交通研内の試験設備(シャーシダイナモと呼ばれる機器、固定されたローラーの上で自動車が駆動輪を回して計測)で行うことが多い。だが自動車メーカーなどの所有する試験設備で、公式認証試験に使用可能と確認できた場合、交通研の審査部審査官が立ち会い試験を行う。

 また最近、自動車のカタログ等で「JC08モード」という表記を見かける。これは「10・15モード」をさらに実走行状態に近付けるもの。ここ数年、これら2モードは併用されてきたが、2010年8月2日、当初は今年秋口といわれて来た「JC08への完全移行」が決定した。

 以下、交通研・環境研究領域・領域長補佐・河合英直氏の回答だ。同氏には筆者著書「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ」の取材にて、同領域所属の新国哲也氏と共に、プラグインハイブリッドの燃費(交通研の表現では、電費)効率測定方法の説明、及び電気自動車の法規の問題点について指摘を頂いた経緯がある

Q 電気自動車の航続距離について、カタログなどに表記しなければならない法規があるのか?

 A (量産車としての)許可時に提出する諸元表への記載項目となる。また、公正取引委員会の指導の下、原則として、国土交通省での審査値でなければ、自動車のカタログ等に表記できない。本研究所としては、ユーザーの方々により正確で、より分かりやすい車両性能を伝えることのできる各種性能値の試験方法を日夜研究している。

 Q 現状で、電気自動車の航続距離の試験方法はどうなっているのか?

 A 試験方法は定まっている。現状では10・15モードでの繰り返しで行っている。だが、ガソリン車では、現実的な走行状況に反映できるJC08モードに移行しており、電気自動車の航続距離試験法についてもJC08モードへ移行するべく改定作業を行っている。(筆者注:同質問は8月2日のJC08モード完全移行決定の前。つまり、既に販売されている「i-MiEV」は10・15モードのまま、今年12月発売の「リーフ」はJC08モードが義務付けられる)

 Q 「10・15モード」、「JC08モード」、「米国LA4モード」で、電気自動車の航続距離に大きな差が生じるのか?

 A 我々が「i-MiEV」で実験した結果では、「JC08モード」での航続距離は「10・15モード」の場合より若干短くなった。「米国LA4モード」は、(カリフォルニア州)ロサンゼルスのダウンタウンで、朝の通勤時間での走行状況を反映したモード。これは都市内走行と高速道路走行が組み合わさっている。「10・15モード」と比較して、平均車速も最高速度も高いため(ガソリン車の場合、アイドリング比率も米国LA4モードの方が低い)、「米国LA4モード」での電気自動車の航続距離は、「10・15モード」より短い値になることが想像出来る。

(筆者注:つまり、「10・15モード」は、「JC08モード」、「米国LA4モード」どちらに対しても、電気自動車での航続距離は長くなる。また、「リーフ」メディア向け試乗に関する報道で、日産関係者はリーフは「JC08モード」で200km程度になる、と予測している。つまり、現状日産が提示している「米国LA4モード(100マイル=160km)」より「JC08モード」の方が数値として上になるということだ)

Q プラグインハイブリッドについては燃費(=電費)について昨年、交通研が試験方法を策定し、国土交通省で認証された(企業向けリースされている「プラグインプリウス」のカタログに表記済み)。電気自動車に関して、航続距離だけではなく、電費に関する試験法/走行基準を策定する計画はあるか?

 A プラグインハイブリッド試験法において、電費(航続距離〈等価プラグイン距離〉、充電電力)を規定したが、これと同等の考え方を電気自動車にも導入する必要があると考えている。具体的な試験法としての策定については、現時点では決まっていない。

 Q 電気自動車の航続距離は、搭載される電池の劣化によって大きな影響を受ける。現状で、自動車メーカー、または蓄電池メーカーが交通研、または国の機関に、電池劣化に関するデータを提供する義務はあるか?

 A 自動車メーカー、蓄電池メーカーが、国の機関に電池劣化データ、もしくは電気自動車等において、駆動用バッテリー劣化に伴う性能変化について提出する義務はない。

一般ユーザーの認識を高めるために
条件別の航続距離を明示すべし
 このように日本において、電気自動車の各種規定は「発展途上」にある。さらに「走行条件別での航続距離」に至っては、国としての基準は皆無であり、自動車メーカー側から、ユーザーに対する「説明責任」のあり方も不透明だ。

 前述の日産・渡部執行役員の講演の前、同社は日本では初めてとなる一般ユーザー向けの「リーフ」試乗会を開催した。その現場で参加者の声を30人強(参加者は約100人)拾ってみると「160km走るそうなので、それなら一応安心」という方が多かった。だが「走行条件別での航続距離の大幅な変化」について認識している人はほとんどいなかった。

 こうした状況について、日産自動車マーケティング本部・マーケティングダイレクター(兼)ゼロエミッション事業本部事業部長(兼)渉外部担当部長、島田哲夫氏は、次のように説明した。

「使用条件で電気自動車はガソリン車より航続距離が変わる、ということをまずユーザーに(今後)伝える。そのうえで、どういう条件で変わるのかを理解して頂くことが、電気自動車を使って頂く際のポイントだと思う。一般的にガソリン車の場合、ユーザーの方の多くがカタログ燃費を鵜呑みにはしていない。実燃費がカタログ値の2~3割減が当たり前、という風潮がある。電気自動車の場合、そのような『世間相場』がない。

 それ(=世間相場)を我々メーカーとして作るつもりはない。(事例として)初期にi-MiEVを購入した顧客から(実際の走行条件で、10・15モードの160kmの)『なんだ半分しか走らないではないか』という声があったとも認識している。そうしたなか、我々としては、ユーザー側とより密接なコミュニケーションをとっていく。(航続距離の変化を理解してもらうには)時間はかかると思うが、今後ジックリと説明していくつもりだ」(島田氏)

 具体的なコミュニケーション方法として、同氏は以下の例を示した。

●「リーフ」にエコモード切り替えスイッチがあり、同機構が作動すると、エネルギー効率が約10%向上。これにより、エアコンの風量が落ちたり、加速が落ちるが、市街地走行の距離が伸びることを説明。

●急加速、急減速をしない、いわゆるエコドライブを心がければ、ガソリン車以上にエネルギー効率が良くなることを説明。

●最終的には、ユーザー側の様々な使用シチュエーションで、航続距離とバッテリーの残量がどうなるのか、何パターンか示していく。

 世界的な電気自動車普及の立役者である日産におかれては、「走行条件別の航続距離」について今後、是非ともユーザーと真正面から向き合って頂きたい。

 長年にわたり「(事実上の)タブー視」されてきた、「電気自動車の航続距離問題」。日本が電気自動車の本格普及期を目指すいまこそ、自動車メーカー各社は自社の電気自動車の「ありのままの姿」を公の場にさらすべきだ。さもなければ、「鶏と卵」といわれる、電気自動車のインフラ整備の明確な事業計画も立たず、日本全体の成長戦略が大きく崩れてしまう。



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