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ひからびん通信

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小沢幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡る裏献金問題の落とし所を探る(1)

2010年01月20日 | 事件・裁判
 民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」が世田谷区深沢の土地を3億4000万円で購入するにあたり,不透明な経理操作を行って政治資金収支報告書に虚偽の記載がなされていることについては,連日報道がなされている。
 そして小沢氏の元秘書で国会議員の石川地知祐及び西松建設の違法献金事件で公判中の大久保保隆らが逮捕され,小沢氏も特捜部から任意の事情聴取を求められるなどして多くの国民の関心を集めているが,その着地点がどこに行き着くのかは判然としない。

 石川の供述等によると,陸山会は2004(平成16)年9月秘書の寮の建設予定地として小沢氏の自宅近くある世田谷区深沢の土地購入を計画し,翌10月上旬石川が陸山会の持っている資金では土地代金が足りないことから,小沢氏に相談して同人から都内の事務所で紙袋に入った4億円を受け取った。その後石川は10月5日手付金として1000万円余りを支払い,10月中旬以降残りの資金を一旦陸山会の複数の銀行口座に分散して入金した後1つの口座にまとめ,その資金を使って10月29日午前土地代金の残金3億3000万円を支払った。
 ところが石川は当日の午後,土地代金の支払い後他の小沢氏関連の政治団体から陸山会に計1億8000万円を移動させ,残っていた他の資金と合わせ4億円の定期預金を組み,この定期預金を担保に銀行から小沢氏個人名義で同額の融資を受けた(融資関係書類には小沢氏の署名がある)。
 その後融資された4億円をそのまま陸山会に貸付け,貸付金は05年,06年に上記定期預金を解約して小沢氏に返済されているが,その際陸山会は預金金利と融資利息の差額につき約500万円の差損を生じさせている。

 このように石川は,土地代金が支払われた直後に,別途4億円の定期預金を組んで同額の銀行融資を受けたり,小沢氏から受け取った4億円を複数の陸山会の口座に分散させて入金した後,1つの口座にまとめてから土地代金の支払いをする等不自然な資金移動を行っているが,この資金移動について,石川は,複数の陸山会の口座に4億円を分散入金したのは一度に入金すると銀行がびっくりすると思ったからであり,4億円を収支報告書に記載しなかったのは,民主党の代表選に立候補する予定の小沢氏が多額のお金を持っていることを公表したくなかったからであり,4億の預金を担保にして銀行から同額の融資を受けたのはできるだけ多くの資金があることを装いたかったからだなどと説明している。

 一方小沢氏も土地代金の原資は当初は4億円の預金を担保にして銀行から融資された資金を使って買ったといいながら,その後同土地は以前から個人的に蓄えてきた資金を使って買った旨異なる説明をしている。

 そこでこれまでに判明した事情を前提にすると,まず石川が小沢氏から受け取った紙袋に入った4億円は政治資金収支報告書に記載されていない簿外資金に当たるから,石川自身の収支報告書に4億円があったことを記載しなかったという事実は動かない事実と認定できる。
 次に小沢氏が石川の収支報告書の不記載に関与していたかどうかが問題となる。
 特捜部は,小沢氏が散歩の途中近所でこの土地を見つけ購入を指示していること,4億円の資金は小沢氏が提供していること,銀行の融資書類に小沢氏が署名していることなど一連の土地取引には小沢氏が深く関与しているので,小沢氏自身に収支報告の不記載につき共犯としての関与があったのではないかと疑っている。
 さらに水谷建設の元会長らが特捜部に対し,世田谷区深沢の土地取引のあった同じ04年10月に5000万円,05年4月に5000万円をそれぞれ小沢氏の地元の胆沢ダム工事に関してその下請け工事の受注ができた謝礼として石川に渡した旨供述していることから,特捜部は,そもそも石川が小沢氏から紙袋に入った4億円を受け取ったという供述内容の信用性を疑い,少なくとも土地購入代金の原資には04年10月に石川が水谷建設からの裏献金として受け取った5000万円が入っているのではないか(5000万円は3日後の銀行の翌営業日に陸山会の口座に入金)と見て,小沢氏からも紙袋の4億円の不記載の関与のほか同4億円の原資についても任意で事情聴取をしようとしている。

 小沢氏の4億円の不記載の関与は上記一連の不動産取引の経緯からすると強くその共犯性が推測されるが,石川が小沢氏から簿外資金の不記載を具体的に指示された旨供述でもしなければ,上記状況証拠だけで共犯の立件は行うのはなかなか難しいだろう。
 次に土地購入資金の一部に水谷建設の裏献金が使用されたかどうかについても,裏献金をしたとする水谷建設の元会長らは現在脱税事件で受刑中の身であり検察側に阿った供述をしている可能性がある上,佐藤福島県知事の実弟が経営する会社の土地を相場より高い値段で買って知事側に利益供与したことなどが問題となった別の裁判で水谷建設の元役員らの供述の信用性が否定されていることなどの事情に鑑みると,同人らの供述の信用性に問題があると言うべきである。
 もちろん石井らは水谷建設からの裏献金の受領を否定し,それを裏付ける証拠はない。

 さらに石井は逮捕前,知人に「こんなことで逮捕かよ。もし本当のことが分かったらこんなことで大騒ぎになっていたのかとみんな呆れてしまうだろう。わざと記載しなかった理由が分かったら小沢先生は激怒するだろう。」などと打ち明けている。
 そして逮捕直前の3回目の事情聴取が終わり,15日の4回目の聴取に応じることを約束して帰った後,石川は旧知の鈴木宗男議員に電話を掛けて「もう耐えられない。自分がいくら話しても信用してもらえない。死にたい。」などと涙ながらに話した。
 そこで鈴木議員が石川の自殺を危惧し,その旨検察に連絡したことから,急遽16日に石川の逮捕に至ったという経緯にある。
 なお石川が事前に小沢氏の了承を得ていた可能性があり,本日の読売新聞夕刊に,不記載については事前に小沢氏の了承があった旨の記事が掲載されたが,弁護人は強くこれを否定している。

 上記石川の弁解はなるほどと思わせる説得力はないが,あえて排斥できるほど不自然だとも言えない。
 資金の流れは紙袋の4億円の存在を隠すための巧妙な工作であると見ることができるが,逆に誰が見ても不自然さを覚えさせるような稚拙なやり方であると言える。複雑な資金移動等が簿外資金の存在さらに簿外資金に水沢建設からの裏献金が混入していることを隠すための偽装工作であったとするためには,どうしても偽装工作と簿外資金や裏献金とを繋げる石川の供述が必要であるが,石川は否認を続けている。
 
 特捜部は,陸山会の土地購入を巡る不自然な資金移動を発見するや,4億円の簿外資金の存在とその資金の中に水谷建設からの裏献金が入っているのではないかと色めき立ったことが想像できるが,証拠の客観的評価と整合性の検討を十分行って石川の取り調べを進めなければならないだろう。
 結局,現在のころ,土地代金の原資の一部に水谷建設からの裏献金が入っていることの立証は困難な状況にあると言え,今後ぎりぎりの攻防が続くことになる。








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