Always Smile "日々の戯言"

高校時代~社会人のブログです。毎日の日記をつらつらと…。

今日はちょっと雑談のように

2014-02-14 22:11:39 | 社会人っす!
こんにちは。こんばんは。エナンことエナンです。たまです。

今日はバレンタインデーですが、甘いもの食べ過ぎると身体によくないです。

今週は 静かな季節に耳をすませて を2度?更新しました。
変換ミスが多くてすみません。「あちゃー」と思いながら投稿後は放っています。

終わり方がすこし、見えにくいのですがきちんと終わりまでかければもう一度推敲して、
ちゃんとしたものを仕上げるつもりです。なんだかんだで「読んでますニヤニヤ」みたいなご意見を
数名からいただいたので、その方に失望されないように、きちんと進めていきます。

なんか、感想とかここはこうした方が面白いみたいな意見とかあったら是非ともコメント欄を活用いただければと思いますtwitterでもお待ちしてます。

このブログは1日にきたIPのカウントをしてくれるのですが、
たまに100とかを超える日があって…。これはなんか?スパムでも来てるのかなーって思うほど。
どれくらいの人が読んでるのかとか、結構気になるよね。そりゃそうですとも。
読んで欲しいけど、別に僕の妄想に付き合ってもらってるわけで、ちょと恥ずかしいのも事実。

でもなにかしらの形でレスポンスをいただけれな僕も真摯に受けとめます。
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基本的に、僕はマイナス思考なんだと思います。それは認める。だいたい不安症だし、脅迫観念に駆られることもしばしば。だから、ある程度ねじが緩んでいたほうがちょうどいいんだろうっておもって最近はゆるい方向へと少しシフトしました。
特に何か辞めるとかそういう意味ではありませんが、リラックマ好きを高らかに公言しているのも、子どもにもどりたいっていうのも全部、そういう自分の弱さを見せることで防衛線を張っているに過ぎないんですね。

自分で言うのもどうかと思いますが、真面目馬鹿でいてもいいことはあまりないので
少し呆れられるくらいで、少し馬鹿げたくらいでいたいってのも願いではあります。
こう空想に浸っていると、現実に向き合わずに済むまで行かずとも…少しの間だけ現実に対して横を向くようなことは出来る。だからいいのかな?

さて、明日もあさっても会社の集まりが神戸であるのであまり夜更かしできません。
でもま、そろそろ真剣に考えなければならない頃合なのだろうと感じております。

それでは、part15にご期待ください。


【静かな季節に耳を澄ませて】part14

2014-02-13 19:32:13 | 社会人っす!
呆気にとられている最中、ガラスに映った私―のはずだが、見た目はどう見てもハルちゃん。私が右手を上げると反射する彼女も、右手を上げるのだ。周りを見回しても私以外には誰一人として居なかった。点々とシャッターが閉められている商店街のような通りに私は今ひとりのはずであった。遂に気まで狂ってしまったのだろうか、信じられない。どうなっているの?これは夢なの?覚醒がはっきりと伝わる夢なの?寒空の下私は浮き足立っていた。すると、さらに奇妙なことに、ガラスに映っているハルちゃんが左手を胸に当てた。すると、私の意志とは無関係に私の左手もゆっくりと左の胸へと吸い寄せられていったのだ。
「今、私はお姉さんと一心同体。わかるでしょ…?ごめんなさい、怖い思いをさせてしまっているよね。」
はっきりと声が聞こえているのに、どこから誰に喋りかけられているのかは判別が出来ない。全方位から声が聞こえるような感覚であった。私は喋っていいのだろうか。赤の他人が通りかかってしまったら、どう思われるのだろうか?夜の七時を過ぎた頃だ、人気が全くないわけではない。
「あ…あの。ハル…ちゃん?どこなの?どこに居るの…」
私は電車内で電話をするときのように自分にも聞こえないくらいの声で問いかけをした。
「どこって…。ここよ。私は私。お姉さんはお姉さん。それは見る人と見られる人で変わるもの。私を見ようとすれば、私が見える。お姉さんを見ようとする人にはお姉さんが見える。私を知らない人には私を見ることが出来ないもの。それが『季節』なの。」
淡々と喋り続けるハルちゃん。彼女は懇切丁寧に説明をしてくれたのだろうが、いまの私にとってはお経のように謎の文言が並ぶにすぎなかった。
「あ、そうだわ。小鳥が―。さっき追っていたでしょ?小鳥。ナツを追い回していたのもそう。」
あの小鳥はいつの間にか居なくなってしまった。辺りが暗がりに包まれ始めて、街灯が灯り始める。冷たい色の水銀灯だ。
「さっきの鳥がどうかしたの?追いかけていった方が良かったのかしら?」
「ううん…。大丈夫。私がお姉さんと一緒に居ることが分かればきっとそれで大丈夫。フユが見つけだしてくれるから。」
え?あ!さっきの小鳥はフユさんが出したものなんだ!
「あの、いつから私と一緒に居たの…?と言うよりも、どうやって一体になっているの?ハルちゃんだから、まだそうでもないけれど。ちょっとだけ、怖いから。」
このままこの場所で喋っていても流石にまずいように思ったので、私はとりあえず携帯電話を耳に当てながら自宅の方向へと足を進めることにした。
「シェ ルジェリ ジルアスト。」
「え?何て言ったの…?」
「『神聖に話を聴く』って意味なの。」
「う、うん。それってあなたたちが使う言語ってことでいいのかな?きっとそれを日本語訳してくれているんでしょうけども。それで、そのナントカっていう言葉がどうしたの?」
ナツ君を見つけた交差点はいつも曲がる小道を通過しているため私は商店街を逆行する形になった。駅の方角から疎らに人が歩いてくる。何人かとすれ違うことはあったけれど、電話をあてているだけあって、私の陥っている摩訶不思議な状況がわかるはずもない。
「私たちは滅多に姿を見せないって話は以前したでしょ…。でも、数十年とかもっと頻度は低いかもしれないけど、ときどき…人間に姿を見せることもあるの。多くの場合には正体を明かさないから、姿が見えていても『人間』としてやり過ごして、おしまい。」
いつもの小道―数日前にフユさんとアキが舞い降りてきた小道だ。
「でも…。」
でも。の後には大概悲観的内容がくるって私の直感が捉えていた。だから下腹に少し力を入れた

「『季節』の言葉を伝えてくれる人が必要なの…。いや、別に人間社会であれば『人』だけど、森林であれば『樹』だったりもするし、魚とか、雲とか、鳥とか、なんでも…そう。私たちの言葉を伝えてくれるモノが必要なの。」
「う、うん。分かったような、わからないような―」
「その役割を担う対象のことを私たちは『シェ ルジェリ ジルアスト』と読んでいるの…」
住宅街に帰ってきた。小学生の頃から、毎日通る道だけど私ももういい大人なんだなぁっていつも思ってしまう。この家、改修したんだ!とか、あそこの家引っ越ししちゃったのか。と周りの代謝がゆっくりと進んでいく。それでも自宅の玄関に頼りなげに明かりが点いていると、安心するのは人間だけ―私だけではないはずだ。玄関まで残り数百メートル。
『シェ ルジェリ ジルアスト』…。私はゆっくりと復唱した。
「縮めて、『シェジル』って呼ぶの。」
シェジル。
「もしかして、その…私が…シェジルって役に晴れて任命されちゃったってこと…?」
もしかして、と言ったものの。頭の中では「つまりそういうこと」と諦念で満たされていた。べつに人助け―人ではないみたいだけど。それ自体は私は嫌いじゃないし。役に立てるなら、協力するって言っちゃったしな。そんな勇者みたいな称号をわざわざいただかなくとも―
 とその瞬間、眩暈ののような感覚が私の身体を貫いた。耳が遠くなり、視界が少し眩む。
何とか凌いで私は頭を抱えていた。通話のフリをしていた携帯電話は地面に落としたようだった。携帯を拾い顔を上げると、目の前に女の子―ハルちゃんがいた。
「ハルちゃん。」
彼女は悪戯がばれて怒っている親に向かう子どものような顔をして、今にも涙があふれそうな眼をしている。彼女の眼を深く捉えると、水槽に入れたガラス球のごとく光っている。もう暗いはずなのに。
「実は、シェジルは…断れないの。断るってことが想定されてないから。」
「あ…うん。」
ばつの悪い答え方をした。
「適性とかがあるけど、最終的に決めるのはフユ…なんだ。だから多分、お姉さんになる。」
もう自宅まで数十メートルなんだけどな。流石に寒いから家の中で話さない?ってことを考えている私とは逆にハルちゃんは喋り続けた。
「誰でもシェジルになれるわけじゃないんだよ!本当に。初めて私を見つけてくれたのもお姉さんだったし。アキもナツも…そしてフユも普通に対応できるなんて、お姉さんすごい…。だから私もお姉さんがシェジルだったらなってずっと思ってた。」
「ならいいじゃない!大船に乗ったつもりでいなさいよー。ハルちゃんみたいな子が困っていたらね、私もほうっておかないって」
「うん。」
彼女の頬に一筋の涙。
「一緒にベンチで食べたおでん美味しかった。嬉しかった。あんなことしてくれた人はお姉さんが始めて…。」
私は、鞄を逆の肩にかけなおして間を持たせてしまった。
「そうだ!家で一緒にご飯食べようよ。」
私は彼女に駆け寄って、両肩に手を添えた。しかし、彼女の顔は曇天のままだ。また一筋。
涙があごまで走りぬけた。
「あのね…」
「うん。……」
沈黙。悲しいほど静かな空間があったのかと思うほどの時間がすぎた気分だった。
「ハルちゃん。寒いから私の家で―」
「シェジルはね……役目が終わると、『季節』の一部になるの…」
意を決して搾り出した言葉は震えて、耳に届いても数秒の間はよく理解が及ばなかった。
「え?…うん。…それって?」
「それは、お姉さんが『半霊』になるってことなの。だから…周りのひとからも見えなくなっちゃうし、多分この社会でいままでの生き方をすることは出来ない…。」
静かに涙を流しながら、ハルちゃんは教えてくれたのだ。『半霊』になる。それがどれくらい辛いのか私にはよくわからない。あまりに実感の沸かない話には人間、感情がついていかないということをはじめて知った。

【静かな季節に耳を澄ませて】part13

2014-02-09 08:27:53 | 社会人っす!
しまった。私は頭を抱える他に手が思い当たらない。そういえば、以前ナツくんと約束をしていたのだった。駅のロータリーのお祭りで確か千人近くの人を集めるって話。覚えていたような、でも半分現実離れしたその条件を冗談のように考えていたのは私の甘さだったかもしれない。千人集まらなかったら、ハルちゃんも残念がるだろうか。ナツくんはまた勝手にどこかに姿をくらましてしまい、『季節』のメンバーが揃わなくなってしまう。そうすれば彼らの本来の目的にも到達できず、まして例の環境ドーム計画を阻止することも出来ないのではないだろうか?…。
「おぉっ!小芝さん!こんなところで何してるんですか!?」
コンビニで見てはいけないものを見てしまってたじろぐ楠野君。私は力のない眼で彼を見上げた…と思う。
「あぁ、楠野君か。ごめんねー。バックももう少し広かったら休憩スペースと倉庫とがきちんと分離できるんだけどね。これはどうにもならないから…。」
「いやいや、そんなこと言ってるわけじゃないですよ。」
楠野くんは裏にたまっている清涼飲料水のストック用のダンボールをどすっと地面において私の前にしゃがみこむ。
「小芝さんなんか、顔色悪いですよ?風邪でも引きましたか?最近寒いですしね、年も暮れてくるとさらに忙しくなりますし、体調が悪いようでしたら病院いったほうがいいですよ。」
と、私の顔を覗き込むように彼の眼が既に眼前にあった。私は別に胸の鼓動が高鳴ることもなく、また、嫌がるわけでもなく「あ、楠野くんの虹彩って、結構茶色なんだな」なんてことを暢気に考えているほどであった。しかし、それの意味するところ、私の思考がこの頭に存在していないような感覚に陥っていることに他ならなかった。
「あぁ、うん。まあ、そうかも知れない。ちょっとね、人との約束忘れてて。どうしようかなって悩んでいただけ、それで少し考えすぎちゃった。明日からお祭りだしさ、もっと忙しくなるからこんなんじゃ駄目だよねぇ。」
はははと顔と声だけは笑って見せた。手に持っているカップのカフェモカも適温を通り過ぎで少しぬるい。温度がおちると甘さがくどくなってしまう。
とりあえず、無理だけはしないでくださいね。と楠野君は言い残して、冷蔵庫の裏へダンボールを運び入れていった。彼はかなりまめで優男。顔立ちも平均以上だから冷静に考えたらとても男前なんだろうけど…私には響かないのよねぇ。なんて妙に姉さんぶっても現状が変わるわけでもない。
 明日明後日のお祭りにあわせて、在庫もかなり多くとってある。その分、今日はそれを置く場所がなくなるくらいにバックヤードは込み合っているのだ。特に飲料。また酒類、それに付随するようにつまみも多い。さらには、ビニールシートや紙コップなどの雑貨類。とにかく明日からの二日間は何でも売れるというくらい人が入ってくる。もちろん、当店も全線体制で取り掛かることになる。そんな中、人集めなど行っている時間はどう考えても無いのだ。

 この日の仕事が終わり、私は午後六時半に店を後にした。明日があるからゆっくり休んでと店長に言われた。ロータリーは既に半分お祭りムードが漂っている。自治体の白いテント。受付なども準備が進められている。この時期にお祭りがあるというのはかなり珍しいことのように思うが、この町では「秋祭り」と称して少し遅れたこの時期にこの祭りを行う。今年も寒いねえと町の人がなんとなくやり取りをしながら、年に一度の倹しい祭典を小ぢんまりと楽しんでいる。
そこに千人もの人がきたら、交通渋滞だけでなく混乱も起こりえてしまうのだ…。どうしよう。
悩みながら、歩道を歩いていると空からパタパタと二羽の小鳥が私の足元に舞い降りた。その小鳥は場所を確かめるようにきょろきょろと辺りを見回し、何かを確認しあっているように思えた。これって、…ハルちゃんが前に出してくれた鳥かな?青い羽をしたものと少し薄い緑色の羽をしたもの。大きさは雀くらいで、私の足の前から動かない。
「…ね、ねぇ。君たちハルちゃんの…鳥さんかな?」
私はいい年して小鳥に話かけるようになってしまった。そろそろ周りの目が気になってくるところだが、もう今はそんなことは認識している暇も無い。
当然の結果だが、鳥から返事が返ってくることはない。チュンとも鳴かない。しかし、突如足元に居た二羽の小鳥がせわしなく飛び立っていく。前方へ。忙しく羽を羽ばたかせて、何かに気づいたのだろうか。
数十メートル先の交差点でその鳥たちは忙しなく飛び回っている。近づいてみると、先の二羽に加えてあと四羽程度数が増しているように思う。そこに近づいていると、特に何かがあるわけでもなさそうだった。が依然として激しく飛び回っていた。
「あーあーあー煩い!煩い!うるさーーーーいっ!」
大きな声が聞こえてきた。人影は見当たらない割りに、かなり近距離からの声のようだった。
すると突如として、気温があがったように思われた。それも三十度近い熱気。豊満な湿度。一気にサウナにでも入ったかのような暑さだ。忙しく飛び回っていた小鳥たちもさすがに上昇し、空へと逃げて行った。
「ハル姉さんさっ!なんのマネなんだよ!もう俺を追い回すなって言ってるだろ!いつまでも子ども扱いして」
『しょうがないじゃない。ナツはまだ子どもなんだから、それにアキとフユも探してる…。』
?ナツくんにハルちゃん?…。どこに居るのだろう。視認はできて居ない。しかし、この暑さはナツくんの仕業なのは理解できそうだ。
「こっちだ!」
声は背後から聞こえた。
首だけをひねるように振り替えると、やはりナツくんが立っていた。顔には、不機嫌と書いてある。
『ナツ。からかうのはもうおしまい。いい加減にして…。時間もあまりないの。』
「うっるさいなあ。なんで毎回毎回俺の邪魔ばっかすんだ!姉ちゃんにかんけーねーじゃん」
とナツくんはひょいと人差し指を下から上になぞるように振った。すると彼の周りに黒雲が渦巻き始めた。私は姿の見えないハルちゃんを必死に探しながらもその場から去ろうと試みた。しかし、なぜ…足が動かない…!
「いけー!」
ナツくんがそういうと、彼の周りの黒雲はもやもやしながらこちらへと向かって来た。それは徐々に縦横に広がり、近づく。距離が縮まるとその黒雲がただの煙のようなものではないことがわかる。それは、小さな羽虫の集団なのだ。
「うっそ…!嫌だ気持ちわるい!」
私は文字どおり苦虫でも噛んだような顔になって手で顔を覆った。と思ったとたん、私の左手がふっと前に突き出され。手のひらをおわんのようにして上に向けた。私の意志とは反して。半信半疑の私の頭にふっと浮かびあがる情景。春の訪れと思わせる雨、嵐、その光景は鮮明で私の目でいま見ているように感じられた。
「春・・・雷・・・」
差し出した左手に小さな渦巻きのようなものが生じそれが徐々に大きくなる。辺りの空気を取り込んでさらに風は強くなっていく。わずらわしい虫も、風流され散っていく。風とともに、稲妻と轟音が響き始めた。暫くして、あたりの看板やごみ、枯葉なども散らかして嵐は収まった。
ナツくんは一歩引いて、下唇をかみ締めている。
『もう逃げないで。どうせ、同じことの繰り返しよ…。』
「うるせぇハル姉!」
ハル姉?私が?…?
走り去るナツ。ふと横を見ると、ショウウィンドウがある。なんということか…。ガラスに反射した私の姿はハルちゃんそのものなのだ!え!?どういうこと!なんで…。
実際の私は私なのに…、鞄も靴も洋服も…。一体どうなっているの・・・。

【静かな季節に耳を澄ませて】part12

2014-02-07 20:05:58 | 社会人っす!
「なんだか、話が進んだのか、進んでないのかわからない状況だったね。」
ふぅ。と白い息を吐きながら、外套を脱ぎながらフユは呟いた。それを聴いているのかいないのか、アキは横目でフユのことを睨んでいる。
「なんだ?その眼は、お前はまた嫌味でも考えてるんだろ。そういう態度でいるから、周りのひとに嫌われるんだぞ。もうちょっと仲良くするとか、空気を読むこととか考えた方がいいぞ。お前とハルを足して2で割りたいくらいだ。」
アキは苦い薬でも飲んだような顔をして、足を速めただけである。
「おいおい。困るなー。そうすぐに機嫌を損ねるなって…」
株式会社マステクノロジーの出口から駅まで歩く途中であった。歩道の並木は寂しいほどの裸の枝。それでも植物は冬を越える。冬は寒い、厳しいようであるがそういう季節があるからこそ、暖のありがたさが分かるのかもしれない。
「ハルとナツはどこに行ったのか分かったのか?…」
そうか、忘れていた。
「あ。あぁ…。そだ。」
フユは足を止めた。空を見上げる。空気にはチリひとつない、いや真空の様に澄んでいる。
「探してもらうか!」
アキに視線を合わせてそういった。秋は、怪訝な表情で首を傾げている。フユはゆっくりと一呼吸をして、右手の人差し指を天球の頂点に向けた。ニコッと笑ったフユの指から閃光が点に飛んでいった。花火のように、空で弾けた光は白いもやに変化して、その中から青と薄緑色の小さな鳥が数十匹現れたのだ。
「シアヌラス、久々だったね。」
「なんだ鳥かよ…。」
出てきたのは、ルリビタキだった。雄は藍色、メスは薄い緑色をしている。しかし実はそれは羽の色。羽の下はオレンジ色の毛に覆われているため比較的市街地などに現れれば目立ってしまうのだ。
「鳥かよとは、さすがアキだねー。もっと他の動物にも優しくしなさい。」
とアキを説教しているフユの両肩、頭、組んだ腕の上、つぎつぎにルリビタキが舞い降りていて、まじめな説教に真剣さが欠けてしまう。
「やるならもっとはっきり力ずくでも見つけるほうがいい。どうせそんな鳥ナツも気づいて身を隠すだろうしな。それよりも、なんか賑やかな場所とかに行けば会えるんじゃないか?」
「たしかに。まぁまぁ、それはそれで…あ!あのお姉さんが知ってるんはないかな!?」
またあの女か…とアキはあからさまに嫌な顔をしている。
「とりあえず、皆は皆でナツとハルを探してー。」
その合図でルリビタキは三々五々と散っていく。賑やかさえずりが過ぎ去って、辺りは静かになってしまった。ったく、なんであんな女に。アキはそういって駅の階段を上がっていく。
「でも、彼女にはシェジルの力があるってアキも感じてるはずだけど?いい加減認めればいいのにさ。食事したときにもいろいろ感じていたはずだけど?なんのためにわざわざ食事に誘ってあんなに長い時間一緒にいたんだと思っているのかな?」
うるさい。と言いながら、アキは改札を通り過ぎてしまった。
フユは改札を過ぎたアキの背中を見ていた。笑いもなく、怒りもない。フユの眼はアキの何かを捉えていた。


 「いらっしゃいませー。」
私の変わった日常はまだまだ続いていた。なんとか昨日はぐっすりと眠ることができた。しかし、ハルちゃんはどこにいたのだろう。まあ、無事ならいいけど、それに私から連絡を取ることも出来ないし…。
「小芝さん、小芝さん。」
小声で店長に呼んでいた。何かな?私は、プライベートブランドのパンを陳列していた手を止めて、レジ奥の店長のもとへと駆け寄った。
「小芝さんさ、明日と明後日も入れるってことでいいんだよね?」
「あ・・・シフトの話でしょうか?特に・・・問題ないと思いますけど、何かあるんですか?いつもどおりじゃまずい理由とか?誰か風邪でもひいたとか?」
「え!?小芝さんそりゃないよ!明日は駅の祭りでしょうが。鬼のように混む二日間だよ。」
「あ!!そうでしたっけ?もうそんな…。」
ん?ロータリーのお祭り…。何か約束していたような?誰かとお祭りいくんだっけ?いやいや、私にそんな誘いの言葉をかけてくれる人は居ない居ない。
「ん?どうにかしたの?…やっぱり都合悪いとか…?」
「…い、いや!大丈夫です!そのはずです。あ、お客さん」
何かあったように思うけれど、忘れてしまった。私は物事を忘れても『忘れてしまう程度のこと』と割り切ってしまうタイプである。
「ありがとうございましたー。次のお客様どうぞ―」
「…」
カウンターに置かれたのは、うまい棒。そうあのスナック菓子。しかも、当店に置かれている種類が一本ずつ。計八本。面倒だな…。
「以上で八十…」
私はそこでお客さんと目が合った。忘れていた記憶を戻しに来ました。そんなような顔。悪戯好きで、やんちゃ。ニカニカと笑っている白い八重歯が印象的な子ども。あ、そうだ!という顔をしているのだろう。
「やっと気づいた!お姉さんお客さんの顔はみないとだめだって!ついに明日だね!覚えてる?俺との約束?まぁ、忘れてたら忘れててもいいんだけどさ、はい。お金。お会計してよ。」
「あ、う、うん。あ…おつり!」
少年丸出しのナツくんはうまい棒八本が入った袋をぶんぶん振り回しながらコンビニを後にした。そうだった!もうどうしようか…。
そう思ってナツくんの後を目で追っていると、彼の姿はもう見えなかったが変わりに綺麗な小鳥が一羽コンビニの前にとまっていた。見慣れないと思うけれど、どこか会話できるような気がした。


【静かな季節に耳を澄ませて】part11

2014-01-31 19:22:54 | 社会人っす!
 どこかで聴いたことのあるような音が私を包んでいる。身体は浴槽に浮かべて考え事をしていた。浴室はとても静謐だったけれど、私の頭の中には誰かの呼び声と甲高い叫び声が遠くの方に聞こえている感覚で満たされていた。
手の平あった蹄形の桃色の花びらは一枚、二枚と増えていって、気づけば浴槽一面に広がっていた。お湯から腕を出すと、腕の追うように花びらが肌にくっついてきたのだった。こんなことが出来るのは、やはりハルちゃんだけなのだが、彼女は何を…私に伝えたいのだろう。私に聞こえているのは、彼女の悲鳴なのだろうか。失われいく季節の苦渋が声にならずに直接私に届いているのだろうか。さすがにちょっと私も恐くなってきた。今日は早く寝てしまおう。


 その部屋には厳かで重厚な雰囲気が張り詰めていた。部屋はそこまで大きくないものの中央を突き抜けるように、長方形の机が綺麗な木目とつやを持ち合わせていた。イスも一つ一つが本皮を使っていて、一日座っていても疲れないような作りになっている。その部屋に高級なスーツを身にまとった、初老の男性が五、六人集まっていた。
「いやいや、ついに構想から現実に移すとはね・・・」
一番初めに席についた男がいった。彼は、目の前にある資料をめくりながら、「ほっほう」と関心したように声を上げながら満足そうな笑みを浮かべていた。全員が席に着くと司会役のような一人の男が話の口火を切った。
「さて、みなさんお集まりになったのは、お伝えしたとおりの案件です。目の前の資料をご覧ください。」
残り四人も資料を手にしする。司会役の男が資料に漏れがないかを確認を始めた。全員が同じタイミングでめがねをはずし眼を細める。余程の老眼のようだ。資料の確認ができたところで、具体的な話を始めていくようだった。
「規模はどれくらいにするんだ。結局は都県との調整が要になってくるだろう?」
「いやいや、場合によっては国にも認可が必要になる。市町村ひとつを丸々ひとつ覆うような大きさなら絶対だろう」
「いや、その前にまず小さなスケールで実験を進めていくことが必至だろう」
「問題ありません、その実験については既に第三ステップまで進行中であり、その結果ももうあと半年もあれば出ます。」
「住民などの反対意見などは?無理やりやって、反対運動されても困るだろう。」
「それは結構大きな問題なのですが、地道な説明会や宣伝活動などメリットを着実に住民に知らしめれば必ず理解は得られるはずです。ゆくゆく将来は私たちの手を離れ自治体などでの管理などになってくれればいいと考えています。そうなれば、ドームのある自治体の税金は少し高めになることが予想されます。」
「そうだな。そういう部分は数年単位で理解を得ていかないといけないはずだ。」
その後、会議は2時間程度続いた。


「あーあー。また長い会議しちゃって、こっちはくたびれるんだけどなぁ。ねぇアキはそうは思わないかい?」
「ま、無駄な時間だ満足いくまで話させておけばいい。どうせ俺たちが勝手に待ってるだけなんだ」
「それもそうだな」
株式会社マステクノロジーと書かれた金看板の前に、スーツ姿のフユといつもの黒いコート姿のアキが立っていた。秋はコートの襟に口を隠しながら、白い息を吐き出している。フユは寒い寒いと言いながら軽く足踏みをしている。スーツにスーツ用の灰色のコート、そしてマフラー。髪型も少し堅めの印象を与えるためにセットをしてある。
「でもさすがに、そろそろ出てきてもいいんじゃないか?」
「雪でも降らせれば会議終わるんじゃないか」
「お前なぁ、そんなに適当言うなよ。それよりハルは見つかったのか?あいつおとといから行方不明じゃないか?ナツといいハルといい、一番大切な時期なのになぁ。何やってるんだ。」
「またあの女のとこにいったんじゃないか?」
「それならいいんだけどな。…あれ、あの車じゃないか?」
高層ビルの玄関から、光るような黒いセダンがゆっくりと走ってくる。遠くからやっと視認することができたが、そこには重役らしき男が乗っていることがフユの眼で確認できた。
「あれだあれだ。では参りますか。」
そういうと、フユはネクタイを締めなおし、車に向かって悠々と歩いていった。黒いセダンもゆっくりではあるものの門の方へと進んできて、もしこのまま進めばフユを轢いてしまうことになる。三十メートル、二十メートル、フユと車の距離は徐々に縮まっていく。運転手は眉間に皺を寄せながらクラクションを鳴らす。しかし、そんなことには動じず近寄っていくフユに後部座席の重役も少し異常を感じたのか、携帯電話を取り出しどこかに電話をかけ始めた。運転手は窓を開け、顔だけだして「危ないじゃないか!」と冬に向かって叫んだ。
「いやいや、すみません少々そちらの方に用事がございまして…」
「はぁ?君冗談で言ってるの?この方が君みたいな常識知らずなんかとお会いするわけがない。それに見た感じではアポイントも取ってないようだしね!」
「いやー、残念ですねぇ。私環境ドームの件で是非お話をお聞きしたと申し上げた都庁の遣いなんですが…都庁の方もあまり関心を寄せてなく、乗り気でもない見たいですね。なんていったって私みたいな新入りを向かわせるくらいですし。このまま『門前払いされました』と報告してもよろしいならぜんぜん私はかまわないので、そういたしましょう。」
さすがに、これを聴いた重役は身を乗り出した。
「き、君本当に県からきたのか?」
驚きと疑いが半分半分の顔だった。
「はい、申し送れましたが、私こういうもので…」
フユは胸ポケットから名刺を出した。もちろん、ニセモノだったけれど、いまそれを確認する方法はない。すると、ビルの方から中年の男が三人出てきて、走りながらセダンまできた。すぐさま男たちは、フユを取り囲み威圧をする。
「取締役!大丈夫でしょうか!?」
「うむ…なんともない、ただ話をしていただけだ。…私がアポをもらったことを忘れてしまったらしい。きみ、また来てくれるかな?この名刺のアドレスに連絡をすればいいのかな?」
「それで構わないですよ。」
それでは、と言い残しフユはゆっくりと門へ歩き出した。
「さて、これからこれから。」
寒い空気の中でぱらぱらと雪が降り始めたが、どこか暖かな雪であった。