ふとしたきっかけで手塚治虫さんがナチスの時代を描いた「アドルフに告ぐ」(全5巻)を読んだ。手塚さんの作品に非常に興味を覚え、「ブッダ」(全8巻)を続けて入手して一気に読み終えた。そして、ここに紹介する本としては、「ブッダ」こそ相応しいと感じた。
ユーモアもちりばめながら、子どもから大人まで読める本だ。大人なら、断片的に知っていた仏教の知識がひとつに繫がり、その真理が見えてくることだろう。最終の8巻の「あとがきにかえて」で著者自身が語っているように、この漫画本の中に登場する主要人物の多くは、手塚さんの創作した人物で、仏典に沿っていない話も多いと分かる。だが、その伝えている精神、死生観はまさに本来の仏教そのものなのだろうと思えた。そして、この精神に人間が達せられれば、人が無益に殺し合う戦争が世界から根絶できるだろうにとも思えた。
私は仏教の素養がないので何ともいえないが、この「ブッダ」は誰でもその教えの世界に入れてもらえる素晴らしい本だと思えた。覚え書きの羅列のようになってしまうけれど、この本から私が受けたメッセージを下に書いてみた。すでに、読んでみようと思っている方は、ほんの触りにすぎない下の文は読まずに、壮大な話へ直接飛び込んでみてください。
「ブッダ」?と読むのを迷う方は、ちょっと下の文を読んで興味を持って頂けたら、幸いです。
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・あの恐ろしいトラだって おなかがいっぱいのときは ねそべって 虫一ぴき殺さないわ どんなおいしそうな獲物が近づいても知らない顔をしてるのよ それは無意味な殺し合いはしないおきてだからだよ そのおきてをやぶっているのは 人間だけ!
・川の流れがつねに動いているように 運命というものは はじめから決まってはいない つぎつぎ変わっていくものだ・・・災難はさけられないものと さけられるものとがある さけられるものは 人間が自らの手で予測してさけることができます その予測をする人間がほしい・・・今の世の中にはひつようなのです。
・人が心の苦しみからのがれるには 八つの道を守ればよい・・・正しい見かた、正しい思い、正しいことば、正しい行い、正しい生活、正しい努力、正しい判断 そして、正しい考えかたである
・(ブッダから教えをうけた富豪が、ブッダのための僧園の土地を買うために財産を使い果たし・・・)財産をもっていたときはいつその財産がなくなるか とられるかという心配で1日とても心が安まりませんでした だけどいまはなんにもないのです それだけいっさいの苦しみがなくて 毎日じつにたのしいのです
・(薬をのまず自然に死ぬことをえらんだナラダッタの死を見て、ブッダは) 自分もやがて年老いて病魔におかされて死ぬであろう そのときは自然にゆだねて あのように死にたいと思った
・シャカ族の人々は私の説く教えを聞いたにもかかわらず 自分でおろかな自殺行為に走って滅びてしまった 人間という動物はどんなすばらしい知識や道徳を持っていても かならずだれかがそれを無視しておろかな行動へ突っ走るものなのだ 千年・・・二千年経ってもこの点では人間はちっとも進歩しないであろう どうか私の教えを生涯わすれないように
・あなた方が心から信じて疑ってはならぬものがある 仏・・・天の教え 法・・・真理の教え 僧・・・正しい人々の集い この3つに従い、信じ 犯すことがなければ いつかさとりを持てる。
・生あるものはかならず死ぬ・・・これは運命なのだ
上のような言葉の羅列では、まったく伝えきれない壮大な「ブッダ」の物語。是非 あなた自身で読んで確かめてみて下さい。