ハーベスト・タイム『収穫の時』

毎月発行の月刊紙『収穫のとき』掲載の聖書のお話など。

『信念を貫いたこの七人のビジネス戦略』を執筆して

2004-03-18 | 番組ゲストのお話
◆3月号◆平野編集工房 平野 誠 氏(1月3週放映)

 私は、40年の編集者生活を経て初めて、『信念を貫いたこの七人のビジネス戦略』という本を執筆しましたが、ここに至るまでの道のりを振り返ってみると、すべて神様のご計画によるものと思わされます。

 若い頃、小さな出版社を経営していました。少部数の発行で少しずつ基礎を築いていた時にベストセラー的に売れるものが出て、歯車が狂いました。大量の注文に合わせて印刷した本が、ある時返品となり、この大きな雪崩は小さな事務所を押しつぶし、倒産しました。
 未熟な経営手腕が引き起こした当然の結果とはいえ、辛い日々が続きました。一時、別の仕事をしながら再起をはかっていた頃、鈴木留蔵氏の『キリストを土台として』の編集の仕事をしましたが、その本に氏が引用されたみことば「向きを変えて、出発せよ」(申命記1・7)が、私のその後を決定づけました。

 洗礼を受けたのはその少し前でした。クリスチャンの友人に誘われて偶然参加した昼食会で、たった一つ空いていた席の正面に牧師が座っておられ、後日その教会を訪ね、受洗に導かれました。神様が用意してくださった席でした。
 神様は、遠大なご計画を持っておられました。小学校の教師をしていた母に代わってオッパイを飲ませてくれていた小母さんは、クリスチャンでした。聖霊様がオッパイといっしょに私の中に入って来ていたのです。中学はミッションスクールに通い、聖書の勉強会にも出ていました。そして受洗は、48歳にもなってからでした。神様が用意してくださった席にやっと座りました。ここまで私を待ってくださったことに感謝しました。

 出版社の再建は困難を極め、向きを変えて編集者の道を歩むことにしました。生涯に100冊の証しの編集をすることを目標にし、現在までに約30冊、編集しました。『信念を貫いたこの七人のビジネス戦略』も、その一冊になるはずでしたが、出版元の堀切社長の勧めで、初めて執筆者の仲間入りをすることになりました。晴れがましい気持ちと、長年他人の文章にクレームをつけてきた私に、こんな大役が務まるだろうかという不安もありました。

 ビジネスマンが、厳しい経済環境の中で倒産、リストラ等に捲き込まれ、生きる目標を失いつつある現在、聖書をバックボーンにしたビジネス書を書けないかと思いました。
 七人の方に、まずビジネスの戦略を語っていただき、その背後に信仰があり、共通の神がおられることを記しました。七人の方々とその内容は、次の通りです。

 MKグループ副会長 青木秀雄氏=タクシーの運転手さんが、自分の職業に誇りを持ち、「ご乗車ありがとうございます」と言えるようになるまで。
 近江兄弟社社長 岩原侑氏=ワゴン車に自転車を積み込み、短期間で一万軒の薬局を廻り、倒産から再建したこと。

 チュチュアンナ社長 上田利昭氏=バブルがはじけてから、売上が増え利益を出しているという、その経営の秘訣。
 右近サービス社社長 右近勝吉氏=元祖便利屋の人心掌握術とは何か。
 元相模鉄道副社長 岡 幸男氏=巨大な横浜駅西口繁栄の第一歩は、どこから始まったか。
 めぐみ堂社長 西本誠一郎氏=家内工業の囲碁・将棋がビッグ・ビジネスに発展するまで。
 元カネボウ専務の三谷康人氏=ピーター・ドラッカーに学んだ顧客の創造。

 取材を続けて、本当に驚きました。この七人の方々が直面された試練、立ちはだかった大きな障害を前にして、神の前にどのように祈って切り開いて行ったか。そのゆるぎない信仰は、厳しい環境に置かれているビジネスマンに、勇気と確信を与えるだろうと思ったのです。

 一流企業のトップの方にこの本をお送りしたところ、ていねいに読んでくださり、「お客様のお役に立つことを見つけて提供して行く、ということは弊社の『お役立ち思想』に通じるものが多く、我が意を得たりでした。しかし、この方々に比べるとまだまだ反省しきれていないと思います」という思いがけない感想文をいただきました。
 中川健一先生は、この本を読んでくださって、「万人のための人生戦略」というキーワードをつけられましたが、まさに試練は万人にあり、またそれを打開する戦略もここにあると言われたのでしょう。

 神は、試練と同時に脱出の道も備えてくださると聖書は記していますが、この七人の人生の中に、生きた証しがあると言えます。私の信仰にも、大きな励ましを頂いたことを感謝するものです。

 「あらゆる恵みに満ちた神、すなわち、あなたがたをキリストにあってその永遠の栄光の中に招き入れてくださった神ご自身が、あなたがたをしばらくの苦しみのあとで完全にし、堅く立たせ、強くし、不動の者としてくださいます」(ペテロの手紙第一5・10)