花餅屋廼徒然書附帖

歌舞伎の世界に魅入られた男の、余りにも刺激的でグダグダ過ぎる日々…

『第17回 上方歌舞伎会』に行って参りました。

2007年08月19日 22時48分52秒 | 徒然に歌舞伎噺なと…
ハイ、1年ぶりの『上方歌舞伎会』です。
此の公演…本公演よりも楽しみだったりと…。
で、先程帰って来ましたので…早速、珍しく今のうちに♪

ドウコウ言う人もいましょうが…私は此の公演好きです。

今回も昨年に引き続いて松嶋屋三兄弟による御指導です…。
あと、舞踊にて上方舞の山村若さんによる振り付けです…。

三演目でして…
一、『一條大蔵譚』-大蔵館奥殿-
二、双蝶々曲輪日記-道行-『乱朝恋山崎』
三、『新版歌祭文』-座摩社・野崎村-
どれも此れも、存分に楽しめました♪
国立文楽劇場…文楽を観る為の劇場なので、其れ程大きな劇場ではない…。
また、客席は前後の観客の頭が被らないように巧いこと配列されていて、嫌な思いをしないで観劇できます。
今回の席は…7列の18番…ど真ん中です♪
良い席をまた用意して頂きました。
舞台からも、程々の距離でして…ただ、席が列の真ん中辺りなので…幕間に外に出難い…ホンマ、今回も殆んど座ってばっかりでした…(汗)

詳しいレポは…また後程に…書けましたら…(汗)

今回一番印象に残ったのは、『野崎村』です。
実際、私は此の演目を観るのは初めてです。
今迄観る機会も無かったし…どうしてでしょうか…其の他の『お染久松物』は色々と観たことがあるのに…此の『新版歌祭文』は…本公演を含めて、初めてです。
よかったですっ!
ホンマに…ホンマに…ホンマに、此処まで良かったと思えるお芝居を観たのは…初めてじゃないでしょうか?
何故か…わからないですが…。
幹部俳優が演じる『野崎村』を観たことがありません…だから、幹部俳優の演じる『野崎村』はどれほどに素晴らしいものなのかは…わかりません…。
しかし、意外と…かえって、彼ら若衆たちが演じた今回の『野崎村』…本来の登場人物の実年齢に近い彼らが演じた『野崎村』だからこそ、胸にグッと来たのではないでしょうか?
そう思えて…なりません。
久松に鴈さん…去年の上方歌舞伎会では…『角力場』での与五郎…つっころばしで難しいお役でした…で、まだ上方の此の手の柔らかいお役は難しいものだなぁ…と思っていまして、今回も久松…まぁ、あんな軽い感じのお役じゃぁないが、どうだろうか…???と実際思っていました。
しかし、何の何のっ!いやぁ…凄く良かったと思います。
何でしょうか…適度に柔らかい…と言って、軽くない。
成駒屋~っ!
大向こうが掛かるのが、凄く気持ちいいです♪
お染は、りき彌さん…線が細いし、どうでしょうか?と思っていました…登場したときは些か艶っぽい感じが強かったが…しかし、じっと見ていると…何とも言えずシックリとしているのですよ…。
あの若いお染…確か実年齢は16歳だったとか…何となく見えてしまうと言うのも、ただ単におぼこい娘ではなく、恋をしている商家の娘…些か早熟感も窺えます…。
しかし、いいよね…お二人さん、お似合いで…♪
久作役に鴈大さんでして…こう言った老け役向きなんでしょうか…?
確か去年も…これまた『角力場』で、茶屋の主人役で…此の時は流石に若過ぎる…台詞がどうも、若過ぎて高い声になって…難有りな配役だなぁ…と、思ったものでした。
しかし今回は…流石に若いのはしょうがない、でも、何か違う…去年とは全く違って、良い味出してるぞっ!と思って観てました。
難しい役どころです…十三世がなさっている写真を観たことがあります…大きな役ですが、あと少しっ!って感じで…違和感はそう湧きませんでした。
さて…最後にお光…純弥さんでした。
ホンマによかったっ!
其れに尽きます。
いやぁ…何でしょうか…ホンマ、美吉屋さん頑張ってらっしゃるっ!って感じがグイグイって来ています。
去年は…道行恋苧環でのお三輪でして…今回も良く考えれば同じような役どころですね…。
今迄少し線が細いって思っていましたし…いや、どうでしょうか…アレコレと考えていましたが、凄いですよ…。
ホンマ…凄い。良いですね。
良い…活き活きと…お光を演じている、いや成り切っているのか?
此の狂言の中で一番光っていました。
そりゃ…此の場でのヒロインですから…でも、そんなこと関係なく、舞台の中でお芝居の中で、誰にも引けを取らずに…いいお光が其処にいます。

舞台が廻って…久作の家の裏手になります…お染と久松が其々に別れて大坂に向かって帰る段ですが…本来は仮花道を使っての演出らしい…。
本花道にお染と其の母を乗せた船が…仮花道には久松を乗せた駕籠がと…為るらしいが…今回は劇場の構成上…無理なことですし、まぁ…余程でなきゃ、観れない演出ですね…。
ちょうど私の隣に座っていた歌舞伎通の方がボソッと呟きました。
『反対やなぁ。』
そう、本来は先述の通りに、花道を船が行くのですが…今回は花道に駕籠が置かれています。
舞台には、船が…義太夫の床を前に向いて…其々が別れて、其々の乗り物に乗ります…。
此処から太棹の連れ弾きとなります…賑やかになるのですが…(汗)
野崎詣り…桂春團治さんの高座の出囃子に使われている浄瑠璃だなぁ…とか思っているうちに…賑やかに駕籠は出て行く…七三まで進んで賑やかに賑やかに…駕籠かきの二人も着物を脱いで下帯姿…色々と面白く見せているが…駕籠に中の久松は…(涙)
本舞台では船に乗ったお染…久松の方を物憂げに…見詰めながらも…駕籠の動きと合わせたかのように揺れ動く船…。
其れを見詰めている…土手の上から…お光…おっ白な顔が儚い…手にした数珠が…(涙)
アップテンポな太棹に合わせて…しかし、舞台の上では悲しい別れ…お光の心を思うと…駕籠かきの声に合わせて、一気に鳥屋に向かう駕籠…見詰めるお光…。
駕籠が去ると今度は船が…舞台上手に消えて…残された二人…お光と久作。
先程までの賑やかさが一転、静まり返った野崎村に…現実に戻される。
呆然と立ち尽くすお光…其の手から数珠が…ポトリと落ちる…。
其れを拾い上げ…久作はお光の手に握り締めてやるのだが…切なく…悲しい。
『ととさんっ』
久作に抱き付いて…堰が切れたかのような…泣き崩れる、お光…。
幕切れです…。
満場の拍手ですよ…。
見渡せば、手にハンカチを…目頭を押さえている方々が…どれほどおられたか…。
斯く言う私も…ははは(涙)
のめり込んでいました。

再び定式幕が引かれて…其処には本日出演の役者さんに、そして指導者さん。
我當さんに、山村若さんに…今回は秀太郎さんは歌舞伎座出演のためにおられませんが、仁左衛門さんがご挨拶です。

我當さん…相変わらずフリートークは苦手みたいですね。
仁左衛門さんに促されて挨拶になったのは、山村若さん…。
去年に引き続いて上方の振り付けにて舞踊をってことです…。
最後に仁左衛門さんがご挨拶で…また感動です。
以前に、去年の此の公演の指導の模様がNHKで放映されました…。
厳しい姿…芸に対する真摯な姿勢が…上方歌舞伎の伝承と、亡き十三世の志を継いでの三兄弟の意気込みが…。
仁左衛門さんが言いました。
稽古の時間が少ない…其れはまた、指導をする時間も少ない。
そうですね、自分たちの本業…本興行では名題下でも出番はあります。
其れ以外にも師匠の身の廻りの仕事…其々に踊りの稽古や義太夫の稽古…其れをこなして初めて、今回の『上方歌舞伎会』の演目の稽古に入るのですから…。
しかし、稽古が出来なくて当たり前ではダメです…。
一生懸命…頑張っている姿が、よく見えます。
頑張っていれば良いものではないです…舞台を、役の性根をわからねば…良いお芝居は出来ません。
仁左衛門さんが言いました…。
此の人たち(今回の出演者)が(稽古もママならずに)此の芝居が出来たのは、此処におられるお客様の温かい応援があるからです。
歌舞伎の演目は学芸会ではありません。
稽古したからと言って、出来るものではありません。
今回の舞台…本当に楽しめましたし、本当に良かったと思います。
私が言うのもなんですが…本当に、年々と成長していくのが目に見えているようです。
上方歌舞伎会を愛するものは…ホンマにある種、家族みたいなものですね…。
此の公演が好きだから…本公演も好きですが…此の若衆たちが頑張っている姿を観ることが出来る此の上方歌舞伎会を、此れだけたくさんの人が観に来るのでしょうね…。

以前…何年か前です…あるブログで上方歌舞伎会のことを書いている人がいた。
その人も見に行ったようだ…上方歌舞伎会…で、其の感想らしきものを…いや、批評か?わからんが…論評していた。
へたくそだ。
見ていても面白くない。
面白くないのがわかっていたが、見に行ったが、やはりへたくそだった。
と…書き捲くっていました。
はぁ…私も其の年も観に行っています。
そりゃ…幹部俳優の演じる本興行と比べたら不味い部分も多々あるでしょう。
でも、其の中に光るものを探して…私はいつも此の公演を楽しみにしているのです。
でも、此処数年…ホンマに成長していると私も思います。
何年か前に当時の鴈治郎さんが最後の挨拶で、『皆が成長してきている』と言うことを嬉しそうに楽しくご挨拶されていました。
今回の…『野崎村』良い味を出してましたよ!
若いから出来るお芝居なのかもしれません…でも、学芸会ではこの様なお芝居は出来ません。
幹部俳優の演じる深みのある舞台と違って…荒削りでも、今回のように心に迫る舞台は…嬉しいですね(感涙)

あのときに、ほざいた奴っ!今回は来ているのか!
見たのかっ!
それでも、へたくそだっ!と言うのかっ!!!!

今、一番に言いたい…。

少しのつもりが…長々と…(汗)


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10 Comments

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Unknown (恵美)
2007-08-20 12:34:57
本当に泣けましたねーーーー。
お光がかわいくってかわいそうで、まわりも泣いたり笑ったりしてる方ばかりでした。
一番しんどかったのは久作@鴈大さんやったと思いますが、この4回公演だけでもすっごく成長してしまう素晴しさをお持ちです。
早くも来年が楽しみです!!
よかったです!! (rika)
2007-08-20 16:20:52
太夫元さん、こんにちは。

よかったですね~今年の「上方歌舞伎会」。
太夫元さんが熱く語られるのがわかる気がします。

幕が閉まった後近くの方が「ほんまにうまなったなぁ~。」
ってボソッとおしゃってましたが、
長く観ている方はみなさんそう思ってらっしゃるんでしょうね。
これからもますます楽しみです。
素晴らしかったです。 (るみ)
2007-08-20 21:07:31
太夫元様、こんばんは。
ホントにホントに素晴らしかったですね。
私も野崎村では涙が出てしまいました。
一人一人が歌舞伎が大好きで、本当に頑張ろうという気持ちがあるから、舞台でも輝けるのでしょうね。
見終わってとても爽やかな気分になれました。
「ありがとう」と役者さん一人一人に言いたいです。


泣けました…涙腺が弱くなった(涙) (太夫元)
2007-08-21 01:06:34
恵美さん、こんばんは。

>お光がかわいくってかわいそうで、
>まわりも泣いたり笑ったりしてる方ばかりでした。

うん、うん(涙)ホンマに(涙)

>一番しんどかったのは久作@鴈大さんやったと思いますが…

そうですね…でも、大健闘だと思いますね。
やはり、役者は舞台でお客さんに育てられるって言うことは…本当のことですね。

>早くも来年が楽しみです!!

はい!来年も、ドップリと浸かってしまうくらいな濃厚な上方若衆であって欲しいです♪
それに尽きますね。 (太夫元)
2007-08-21 01:11:53
rikaさん、こんばんは。

>よかったですね~今年の「上方歌舞伎会」。
>太夫元さんが熱く語られるのがわかる気がします。

イヤハヤ…(汗)お恥ずかしいです(苦笑)

>幕が閉まった後近くの方が「ほんまにうまなったなぁ~。」
>ってボソッとおしゃってましたが、
>長く観ている方はみなさんそう思ってらっしゃるんでしょうね。

そうですか…此の会は結構と長きに亘って観に来られている方が多いようですね…。
お客さんが育てたと言っても良いくらいに、皆が温かい眼差しで見守っているのですね。

>これからもますます楽しみです。

そうですね♪
また来年、良いお芝居を期待します!

素晴らしいお芝居でした。 (太夫元)
2007-08-21 01:18:49
るみさん、こんばんは。

>ホントにホントに素晴らしかったですね。

お客様を其れだけ釘付けにしたお芝居でしたね♪

>一人一人が歌舞伎が大好きで、
>本当に頑張ろうという気持ちがあるから、
>舞台でも輝けるのでしょうね。

気持ちですね…私もホンマ見習わなければ…仕事も気持ちを入れて!輝けるように気合をいれてっ!

>「ありがとう」と役者さん一人一人に言いたいです。

一人一人がバラバラでなく、同じ方向を目指したからこそ、この様な素晴らしいお芝居が観れたのですね。
主役も脇役も関係ない。
皆が心を一つにして、盛り上げてこそお芝居になるのですね…。
ホンマ、よくわかりました。
そして、『ありがとう』ですね…ホンマに『ありがとう』
感動とったはりました。 (とみ(風知草))
2007-08-21 12:56:05
>大夫元さま
コメントありがとうございました。ワタクシも千秋楽を拝見しました。こんなに客席を泣かしておられる野崎村初めてです。どこか,理不尽でナットクできないところがあるのですが,典型的な娘役二人の対決という綺麗なお芝居になってました。ほんま良かった~。
皆様にお礼申し上げたいです。
ほんに、感動物でしたね…。 (太夫元)
2007-08-21 23:34:30
おとみさん、こんばんは。

>コメントありがとうございました。
>ワタクシも千秋楽を拝見しました。

イエイエ…此方こそ、有難う御座います。
千秋楽…いいものですね。

>こんなに客席を泣かしておられる野崎村初めてです。

そうでしたか…でも、皆さん、本当に食い入るように観ていたのですね…いいお芝居でした。

>典型的な娘役二人の対決という綺麗なお芝居になってました。
>ほんま良かった~。

女の対決…そうですね…まぁ、お染にはそんな気はサラサラなかったようですが…でも、かえって燃え上がるのかも…。
観ていて意地らしくもなりましたが…でも、良かったですね。

>皆様にお礼申し上げたいです。

まさしく、出演者、指導者の皆さん、スタッフの皆さん、そしてこの素晴らしいお芝居の陰の立役者…お客様に有難うと言いたいですね。
ああ……。 (紅染屋)
2007-08-22 19:12:16
太夫元がこんなにも絶賛されているのならば今年はさぞかし良かったんでしょうねぇ……。
南国行ってる場合じゃなかったか?(笑)
でも力の入ったレポで今年の完成度の高さがうかがい知れます。
来年にも期待ですね~。
へぇ……。 (太夫元)
2007-08-23 01:10:04
紅染屋さん、こんばんは。
よくぞ、ご無事で…(涙)

>太夫元がこんなにも絶賛されているのならば今年はさぞかし良かったんでしょうねぇ……。

へぇ…そうでしてん(苦笑)

>南国行ってる場合じゃなかったか?(笑)

ありゃりゃ…南方戦線でしたか(違)

>でも力の入ったレポで今年の完成度の高さがうかがい知れます。
>来年にも期待ですね~。

此の充実をまた来年に繋いでもらいたいですね…。

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