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ライフスタイル雑談ブログ
by hamarie_february

ロボットとは何か(追記あり)

2007-02-04 22:34:00 | サイカフェ神戸

何かと問われると,定義はあります.あるんですけど...実はかなり悩ましいという話.

本日の「サイエンスカフェ神戸」のテーマは「ロボット開発と社会」.哲学カフェをされている「カフェフィロ」さんとのコラボでした.以前にお知らせのエントリーで予告したように

そこでゲストの方には,現在進められている社会実証実験の一事例をご提示いただく予定です.それを参加者の方々の共通認識(土台)にして,とりあえずはその土台の上で話を進めていくことになります.

ということで,一事例を語っていただきました.さてさて今回の「ロボット」は...ジャーン!

「ユビキタス街角見守りロボット」

大阪府報道発表資料 平成17年12月12日(月)

ユビキタス環境研究室(Nishio Lab)

上記,ウェブページによりますと,「防犯機能と通信機能を備えた自動販売機を通学路に設置し、防犯用ICタグを連携させ、通過検知や緊急時の通報等をおこなうもの」だそうです.

つまり,通学路の自動販売機が登下校の子どもたちを見守るロボットになるそうです.

で,前回(1/27)に続いて参加していただいた小学生の女の子から,またまた鋭い質問が出ました...「自動販売機がなかったらどうするんですか?」...いやぁホントに...

この新しい技術の目的は「安心・安全なまちづくり」ですが,自動販売機がすべての通学路にあるとは限りません.おっしゃるとおりです.ゲストの方,タジタジでした...

あっとそれから,ネット・セキュリティの脆弱性が克服されていない場合は,「逆にもっと危険なまちづくり」になりかねません....と,こちらはゲストの方が,メリットだけではなく,デメリットまでをしっかりお伝えいただけました.すばらしい!このブログの昨日のエントリーを読んでくださったかのよう......なんて,自意識過剰ですね.

んで,このような「新しい技術の導入に際して,みなさんはどういった関わり方をしていきたいですか」というのが,今回のゲストの方からの最終的な問いかけでしたが...

どこがロボットやねんというツッコミが来るかも~という予測は,ゲストの方もされていて,かなりの程度,ご心配だったようですが,そんなことにはお構いなくツッコませていただいたワタシでした...(スンマセン)...するとタイトルのように「ロボットとは何か」という「ロボット定義」がいろいろと出されたわけです.

しかしまぁ,ワタシにとっての興味関心は,(哲学カフェの方にフォローしていただきましたが)コトバの持つ概念の広がりが何故生じるのかということでした.テクノロジーの進歩によって必然的に含まざるを得なくなるものなのか,むしろ人間側(研究者・技術者)が戦略的に含みうるものなのか.そうだとすれば,それはどのようにして.

つまりサイボーグやアンドロイド,バイオロイドなどのコト細かい名称分けと比べて(攻殻機動隊的世界!),ロボットという名で呼ばれるものの対象の広がりには,どうも違和感を感じずにはいれないというのが,第一の率直な感想でした.この上,自動販売機までをロボットと呼ぼうとなったら,ロボットじゃないものを探すほうが大変じゃないですか!って思うので.

ロボット-Wikipedia

...と,まぁ他者との意思疎通のうえでの手間暇の話でもありますが...

むしろ,もっと重要だったのは,(またまた哲学カフェの方にフォローしていただいたのですが^^;;;)ICタグを使って管理・監視をする「システム」に過ぎないものを,「ロボット」と呼ぶことによってもたらされる過誤はないのかという点です...などと自分で書きつつハタと気づきましたが,ロボットとはそもそもシステム全体を象徴するものとも言えますね.ex.産業用ロボット

「システム」に過ぎないものを,「ロボット」と呼ぶことに対する危惧(アトムやドラえもんを生み出した日本人に特有の,「ロボット一般」への親密感・愛着に乗っかろうという意図から「ロボット」と呼ぶのであれば何故か?)を,ワタシはとりあえず表明してみたわけなんですが,ある参加者の方が言われたように「各々のロボットが持つ機能によって愛着度は変わるものだ」というのは,よく考えればまぁその通りです. 

つまり,アトムの理想からはかけ離れているロボットに対して愛着はわかない?

 

さらに一歩深めてみると(おそらく他の参加者の方も言われていましたが),その機能が個々人とどう関わっているのかが,個々人の愛着度の決め手だろうと思います.

まぁペットロボットは置いておいて...たとえば,ゲストが導入失敗の事例として話された「介護ロボット」.参加者の一人が話された戦争を代行してくれる「兵士ロボット」.これらのロボットの機能に,みなさんは愛着を感じるでしょうか.逆に言えば,どういった関わりであれば愛着をもたれるのかということを考えることが,新しいロボット(システム・技術)が社会に受け入れられるカギなのだとワタシは思いますが,その関わりを考える前提として,「各ロボットに代行してもらっていること」を,個々人が,やれる/やれない,やりたい/やりたくない,と分類することをやってみたら面白いのではないかと思いました.

もちろん,「テクノロジーが社会にリードしてしまうのは必然」(=つまり,個々人の意思や善悪を超えてテクノロジーは浸透する)とか,「導入の際には信頼関係が重要」(=つまり,個々人の意思よりも他者との関係が重要)との意見もあり,それももっともだと思う今日この頃なわけですが...

 

(追記)ことばについて,ずんずん考えていたんですけど,ある論文の冒頭部分だけつまみ読みして,ふむふむと思っています.(『メタファは文字通りのことを意味する―語用論の観点からメタファを考える』 辻大介 2002 『日本認知言語学会論文集』第2巻,pp.276-279)

§1.ことばの意味と使用(抜粋)

  • ことばの(文字通りの)“意味”とは、そのことばが用いられた状況や文脈──コンテクスト──にかかわらず、つねに一定に保たれるべき(1)ものである。
  • 一方、ことばが何をするために“使用”されているかはコンテクストとのかかわりにおいて決定される。

(1)コンテクストとは独立に決まることばの「文字通りの意味」を想定することに対し、それを実際に取り出しえない(いかなることばも何らかのコンテクストのなかに置かれざるをえない)ことをもって異議が唱えられることもあるが、ことばにコンテクストから独立した意味がないとすれば、同じコンテクストではどんなことばも同じ意味(または使用の効果)をもつ──「カゼをひいた」と言おうが「ミカンがほしい」と言おうが違いはない──ことになってしまう。これは明らかに実情と異なる。「文字通りの意味」の実例を呈示することはできないにせよ、それは「物理学における完全な真空状態や完全に摩擦のない面といった概念と同様」に「ひとつの理念型(idealization)」(Katz[1977:ppxii-xiii])として想定せざるをえないのである。

こういう話が入ってくると,ロボット関連はかなり面白いです 

基本,なっとくなんですが,上の註釈内で,「同じコンテクストではどんなことばも同じ意味(または使用の効果)」は,けっこう有り得る(つまり,「カゼをひいた」と言おうが「ミカンがほしい」と言おうが同じ意味が伝わる)かもしれないと思ってしまいます.つまり,上の註釈のように「これは明らかに実情と異なる」と断定まではできないような気がします.状況がすべてで,言葉に価値はないというわけではありません.むしろ逆で,言葉は発せられさえすれば存在価値がある(役目を果たした/価値に上下関係はない)と言えるのです.「状況そのもの」とは,まるで成り立ちから違います.うまく言えませんが...(もちろん,言ったもん勝ちという話ではありません)

語用論 統語論 意味論 @フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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6 コメント

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技術屋のファンタジー (complex_cat)
2007-02-06 23:41:02
ロボットでセキュリティなんぞ,大人の幻想だと思います。何でも有りの社会になりつつある今の時代,自販機の破壊や重機を使った盗難など見ると,そのシステムの先,一体おいくらぐらいのロボットか分かりませんが,それ自体を破壊して部品盗ったり,かっぱらって売り飛ばされるという危機的状況を,私みたいな天の邪鬼は簡単に想像してしまいますが。
 重火器や自爆装置を持ったロボ・コップの敵方ぐらいの危ないロボットなら,少しは大丈夫でしょうか。いや,やはり弱点を突かれてお船に乗せられて売られるな。
 日本は何か問題があれば,テクノロジーで何とかするのだという信仰を捨てられないし,そういった分野にお金を着けて,技術者が本当に頑張ってきた社会です。技術屋らしい答の求め方ですけど,そういった子供の質問に答えられないようで,本当に子供の安全や安全な街作りを考えているのか,やや疑問です。
 ロケーションシステムのある携帯のを持たせてますけど,お前に何かあって,お父さんが駆けつけて,そいつの眼球を思いっきりえぐるまで余裕があるかどうかは別問題で,表版タメして,ダメなときは裏版の「いかのおすし」を実行して自分と兄弟の身は守れ,と長男に言ってます。もちろん,そんなものを必要とする世界を大人が作った時点で本当は失敗で,大人の責任としてなんとかしなければなりませんけど。
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SFじゃない世界 (hamarie_february)
2007-02-07 00:51:21
「いかのおすし」のC_Cさんバージョン,スゴイですね やはり携帯を持たせておられますか.心配ですよね.子どものプライバシーを守れとか言ってる場合じゃないですか^^;;;

深刻なのはICタグやICチップを人間の身体に埋め込むことですが,たしかアメリカではもう実用化されているのかな?(不正確)物流に応用するのは在庫管理や生産地管理などがカンタンにできるので便利だろうけど,受刑者などに強制される余地を残せば,かなり際どい技術になると言わせざるを得ないと思っています.

ただ書かれているように「テクノロジーで何とかするのだという信仰」が日本全体にあるので,為されるがままになってしまうのかな.個人的に『攻殻機動隊』のような世界も有り得るのかな~と思ってしまうところが並列化させられている証拠というものでもあり...(『攻殻機動隊』面白いですよ)
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まっぴらご免 (complex_cat)
2007-02-08 22:23:28
「攻殻機動隊」知ってます。一応,一通りのアニメ,SFも見てます。
 あれだけ,作品世界を緻密に描こうとするアニメは日本の世界に誇れる資産だと思います。サイバーパンクの映像化は,アニメ表現の素晴らしさは別にして,遙か前のウィリアム・ギブスン作ニューロマンサー(1984年)的SF世界であって,古くから繰り返し使われてきたプロットの焼き直しだと思います。
 唯,現実にああいった世界に近づく都市生活を予測できるものの,あれが現実世界となるならばまっぴらご免だと思ったりします。
 若い世代は「掌の上」を否定するべきものと思っていましたが,今時は,「既成事実」になんでそんなに弱いのか,いつも少し不思議になります。
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変えられるんですか (hamarie_february)
2007-02-09 00:31:08
C_Cさん,知ってるんですか.観てるんですか.そっかぁ.すごいなぁ.
あの世界になったら,コミュニケーションが超カンタンになりますよ.どうですか?
ちなみにワタシは若い世代ではありませんが^^;;;

面白いblog見つけました!こんにちはこんにちは!(って流行ってるみたいです)
<Episode26 はまちちゃんのもとを素子が訪れるシーン>http://anond.hatelabo.jp/20070202191406

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バトー (complex_cat)
2007-02-09 22:03:14
士郎正宗氏と世代は近いですので,仕込んでいるものも近いのです。2000年ぐらいまでフューゴー,ネビラ賞はフォローしてます。
 海外の研究者も含めて生態屋,私が知る限り,多方面に無節操?な人間は少なくないです。

 バトーのフィギアが,私の職場のデスクトップの上に乗ってます。
http://complexcat.exblog.jp/6182024/
草薙の乗ったタチコマもありますが。

 リンク先,私にはおもしろさが分かりませんでした。やっぱりお若い世代だと思います。
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やっぱりタチコマ (hamarie_february)
2007-02-10 00:20:10
バトー好きというほうが,かっこいいとは思うのですが...タチコマとかいうキャラに弱いんですよね~だいたい悟られてますよね.

バトーのフィギアがあるなんて,いい職場環境ですね(^^)

リンク先は,「STAND ALONE COMPLEX」に出てきた「笑い男」エピソードをなぞってるんですよね,たぶん(実はあまりよくわかっていない,はまちちゃんて誰?)
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