すこぶる…日記 

室長のアートな日々

甲斐庄楠音

2017-05-23 21:33:17 | 日記
 画家「甲斐庄楠音(かいのしょうただおと)」(1894~1978)は、謎が多く常に気になる存在でしたので自分なりに資料を集めていました。鷲田清一著「京都の平熱」に、京都の様な熟した街には奇人が生まれやすいと書かれていましたが、この画家も、男色家で女装癖があったとか、まさに京都人!京都は奥が深い。

 この画家の絵を初めて見たのが、作家岩井志麻子のホラー小説「ぼっけえきょうてえ」の表紙に使われていた「横櫛」だと思います。とても不気味な遊女の立ち姿に強烈な印象が残りました。

 美術雑誌「芸術新潮」の特集デロリの血脈(強烈で、エグく、妖しく、ギトギトの血)では、蘇我簫白、河鍋暁斎、月岡芳年、岸田劉生と共に紹介されていました。そこに掲載された花魁の絵も強烈でした。

 この画家の作品が京都国立近代美術館に収蔵されているので、いままでに常設展で何点かを見たこともあります。その作品もインパクトがありました。

 また、京都偏愛ガイドコラム集「京都の迷い方」(京阪神エルマガジン社)の後藤繁雄氏のコラムで掲載されていた、甲斐庄楠音のスクラップブック(舞妓、芸妓、歌舞伎の舞台の白黒写真、自身が女形になった写真、西洋の名画、日本画、仏画などが貼られている)も、とてもインパクトのあるものでした。

 でもこの画家の全貌が書かれた文献がないのでよく解らなかったのですが、先日大阪の古書店で、栗田勇著「女人讚歌 甲斐庄楠音の生涯」(新潮社)を見つけました。

 この画家は、大正時代の京都画壇で活躍し、その後映画界に転身し、溝口健二監督の名作映画「雨月物語」の衣装・美術などを担当する。この本で、この画家の人となりや画業、映画界での活躍などを知ることができてとても良かったです。後は、この画家の回顧展が見れたらうれしいですけれど...。