すこぶる…日記 

室長のアートな日々

最近読んで面白かった本!

2018-01-30 20:52:58 | 日記
それが、小沢信男著「東京骨灰紀行」(筑摩書房)です。

 小沢氏の著書を読むのは初めてで、杉浦日向子著「合葬」の解説をこの人が書いていて、それがとても面白かったのでこの本を読もうと思いました。

 小沢信男氏は、1927年(昭和2年)生まれで、東京新橋出身、今年91歳である。この本を読んで江戸・東京の歴史に関する氏の博識ぶりに驚かされました。そして作家(芥川龍之介、太宰治、田山花袋、永井荷風、林芙美子など)の東京に関する文章の引用も秀逸です。また著書の体験談(特に東京大空襲)も面白い。何よりその文章から滲み出るユーモアやシニカルさが良い。

 この本では、両国、日本橋、千住、築地、谷中、多摩、新宿の町歩きをしながら、帯に書かれている様に、無数の骨灰をめぐり忘れられた東京の記憶を掘り起こす鎮魂行。

 この骨灰とは、江戸の大火、牢屋敷跡、仕置場所、関東大震災、東京大空襲などで亡くなられた人々のこと。それが、アスファルトの下に累々....。その地層の上に現在の東京が立っている。

 昨年、その東京に行きました。そこで築地本願寺(伊東忠太設計)が見たくて、東京メトロで築地駅に行きましたが、この本を読んでこの駅があの地下鉄サリン事件の現場だったことを知りびっくりしたり、上野の東京国立博物館へ行き「運慶展」を見ましたが、ここが彰義隊の若者たちが命を散らした場所と知り、感じ入りました。

 この本で、いっぺんに小沢信男氏のファンになりました。今、小沢信男著「ぼくの東京大全集」(ちくま文庫)を読み始めています。今年は、この人の著書にハマりそうです。うれしいな!

アート情報

2018-01-23 21:23:06 | 日記
 「小杉武久 音楽のピクニック」展 芦屋市立美術博物館 2月12日(月・祝)まで。

 世界的に活躍する音楽家・演奏家小杉武久の半世紀以上にわたる活動を紹介する展覧会。豊富な資料、映像、サウンドインスタレーション、オブジェ・ビジュアル作品、ドローイング などを展示。

 私が興味を持ったのが、私の興味のある60年代後半から70年代の熱きカルチャーシーン(アート、映画、演劇、音楽、文学、デザイン、漫画、舞踏)の中心にいた音楽集団「タージ・マハール」のメンバーだったのが小杉氏であり、その頃高校生であった私は、美術雑誌「美術手帳」にたびたび登場するこの音楽集団がとても気になっていました。メンバーのファッションはヒッピースタイルだし、実験音楽、即興音楽、を演奏しながら世界を放浪するなんてあの時代を象徴する存在でした。

 で、展覧会で資料を見ていくと、私のアンテナに引っかかるキーワードばかりでした!羅列すると。

 ネオダダ、ハイレッドセンター、粟津潔、杉浦康平、土方巽、赤瀬川源平、寺山修司、芦屋ルナホール、ジャスパー・ジョーンズ、野口久光、植草甚一、フルクサス、オノヨーコ、高橋悠治、一柳彗、武満徹、ジョン・ケージ、マース・カニングハム舞踊団、松本俊男、モジョウエスト、木村英樹(キーヤン)、山下洋輔、阿部薫、飯村隆彦、ナムジュンパイク、内科画廊etc。

 これだけで、ワクワクしました。私にとってとても興味深い展覧会でした。

 「木彫家 藤戸竹喜の世界」 国立民族学博物館 3月13日(火)まで。

 美術番組「日曜美術館」で、紹介されていたのを見て行きたいなと思いました。そして先日行ってきました。この作家は、北海道で民芸品の「熊掘り」を生業とする家に生まれ、そこから木刻家として独自の道を開いていく。

 動物(熊、狼、鹿、蟹、蝦、鯨、鮫、ラッコなど)やアイヌ文化を伝承してきた先人たちの姿を彫ったこの人の作品は、その卓越した技巧とイメージ力で表されていて、その存在感、迫力、生き生きとした生命力が感じられて感動しました!

 作品は、本館で展示してあるので、常設展示(世界の民族衣装、道具、仮面、楽器、住まい、宗教儀式、日用品)もみれます。楽器のコーナーには、大阪が誇るブルースマン「木村充輝(優歌団)」のギターも展示しています。

 今年も、どんな展覧会が開催されるのか楽しみです。グッドアートライフを!

 

正月、2、3の出来事。

2018-01-16 21:07:59 | 日記
 2日に、京都上賀茂神社に参拝に行きました。出町柳から神社までの行き帰りをウォーキングしました。鴨川デルタから北にある神社に向かう鴨川の河原は人も少なく静かなのでとても好きなエリアです。野鳥や風景を見たりしてほっこりしました。が、今年は寒かった!

 帰りに三条にある大型新古書店Bが正月セールをやっていたのでのぞきました。すると前から読みたいと思っていた細野晴臣と星野源の対談集「地平線の相談」(文藝春秋社)を見つけゲット!即読了(この対談集は、ゆるいトークが多いんですが、時々本質をついた鋭いトークもありとても面白く読めました)。そして、もう一冊ゲットしたのが、井浦新著「井浦新の日曜美術館」(青幻舎)です。井浦氏が司会をする美術番組「日曜美術館」が好きなのでこの本も楽しみです。

 お正月NHKーBSで放映されていた映画「合葬」を見ました。この映画の原作が杉浦日向子著コミック「合葬」(ちくま文庫)です。このコミックを読んだ時は、感激してその年の年間ベストブック10に選びました。ですから、映画化された作品も是非見たいと思っていましたので、今回の放映がありうれしかったです!

 映画の方もとても良かったです!彰義隊に入隊した若者たちの数奇な運命や江戸時代が終わり明治が始まる変換の状況に悲哀を感じました。映画を見てまた原作を読みたくなり再読するとさらに感動を味わうことができました。その上、小沢信男氏の解説がとても良かったので、現在小沢信男著「東京骨灰紀行」(筑摩書房)を読んでいます。江戸、東京の歴史を書いたこの本もスコブル面白い!

 先日、以前アート情報で紹介した展覧会「藤田嗣治 本のしごと」を見に西宮市大谷記念美術館に行って来ました。この展覧会へ行きたいと思った動機は、以前に読んだ林洋子著「藤田嗣治 本の仕事」(集英社新書ビジュアル版)を読んで、とても面白かったのと、本の装丁や挿絵が図版で多数紹介されていて感激しました。そして、今回この展覧会でその本物を見る機会ができたからです。今回じっくりと作品が見れてとても興味深く、そして見応えがありました。

 中でも、「イメージのたたかい」の挿絵の女性像は、本当に美しく描かれていて魅せられました。

 うれしいことに、この展覧会のイベントで、「藤田嗣治 本のしごと」の著者林洋子氏の講演会が1月28日(日)午後2時よりあります。申込不要 定員100名だそうです。興味のある方はぜひぜひ!

 この展覧会は、2月25日(日)までです。おすすめです!

最近読んで面白かった本!

2018-01-09 21:33:46 | 日記
 最近、村松友視著「夢の始末書」(ちくま文庫)を読了。この本は、ずいぶん以前に買ったまま未読でしたが、武田百合子著「富士日記」(中公文庫)を読んだ時に、百合子さんの夫作家武田泰淳の担当者だったムラマツさんがよく登場していたので読みたくなりました。

 この本は、中央公論の文芸雑誌担当者であった村松氏の編集者時代(18年8ヶ月勤める)に担当した作家たちとの交流を綴ったもの。

 その作家たちと言うのが凄タマ揃い!武田泰淳、武田百合子、吉行淳之介、野坂昭如、舟橋聖一、水上勉などなど。なかでも私の好きな作家 色川武大、田中小実昌、唐十郎、赤瀬川源平、草森紳一とのエピソードがスコブル面白かった!

 また、石井妙子著「おそめ」(新潮文庫)を読んで知った銀座の文壇バー「おそめ」や「レスポワール」がこの本の中に登場したのも興味深かったです。

 特に面白かったのが、唐十郎と関釜フェリーで韓国向かった時の船上でのエピソードです。

 ー 船の揺れは軀で味わっていたが、デッキへ出るとその揺れがいきなり目に飛び込んできた。大きな擂鉢の底にいるみたいなもの、そこで上下しながら進んで行くのだから、木の葉が浮いているようなものだ。

 「ムラマツさん、波がしらはどこでしょう」唐十郎は、手摺をしっかり握りながら、私に向かって言った。「はい?」「波がしらはどこでしょう」「さぁ...」「あそこですよムラマツさん!」

 唐十郎が、手摺から片手を離して叫んだので、私はびっくりした。唐十郎が天空を指さしているのだ。その唐十郎の指先には、たしかに波がしらがあった。擂鉢の底に浮く木の葉のごとき関釜フェリーのデッキからは、波がしらははるか宙空のかなたにあるのだ。しかも、その波がしらは荒々しく騒いでおり、それを月の光が照らし出している。

 「あれが波がしらですよ!」唐十郎は、天空を指さしたままそう叫んだ。「はぁ....」私は、かろうじて絞り出した。「まるで、炎のメリーゴーランドだ.....」唐十郎は、歌うように言ってぐいと顔を波がしらに向けて突き出した。炎のメリーゴーランド....関釜フェリーから見た玄界灘は、その形容がピッタリのけしきだった。このさなかにこんなセリフを吐ける唐十郎に、私はあらためて感じ入った。 ー  「夢の始末書」より

 これって、まるで状況劇場の劇中の一シーンではないか(笑)。素晴らしい!!

 こんな個性的で、一癖も二癖もある作家とのライブを綴ったこの本の内容はスリリングでとても面白かったです。

 この本、オススメです!! 村松友視の著書は、今後も読んでいきたいです。

ブック 2017 ベスト10

2018-01-02 21:48:59 | 日記
 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 で、昨年読んだ本の中で、特に面白かった本10冊を発表します!

 1 鷲田清一著「京都の平熱」
   この本で、京都のアンダーグラウンドの面を垣間見ることが出来ました。特に町々に3奇人(河原町のジュリーの事   は私も聞いたことがあります)がいるエピソードは、本当に面白かった。奇人を受け入れる町は、文化度が深いと思   います。

 2 沢木耕太郎著「キャパの十字架」
   世界的な報道写真家キャパの代表的写真「崩れ落ちる兵士」が、本当は違う人物が撮ったのではないかと言う疑惑を   著者が追い求めたスリリングな追跡行。

 3 澁澤龍彦著「玩物草子」
   この本は、著者が日常そばに置いて愛でる物について書かれたエッセイ。私は、澁澤氏のこう言ったテーマのエッセ   イが好きです。今年は、この他に「都心ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト」や「澁澤龍彦の少年世界」「澁澤龍彦との    日々」などを読みました。そして、東京の世田谷文学館で開催された「澁澤龍彦 ドラコ二アの地平」を見れて感激   しました。

 4 小林信彦著「おかしな男 渥美清」
   柄本佑が渥美清役でテレビでドラマ化されたのを見て、ぜひ原作を読んでみたいとこの本を読みました。著者が若     き放送作家時代に売り出し中の喜劇役者渥美清の出会いと交流が綴られていてとても興味深く読みました。

 5 開高健・山口瞳著「やってみなはれ みてくんなはれ」
   この本は、かつてサントリー宣伝部だったこの二人の著者が創業者「鳥井信治郎」と二代目の「佐治敬三」について   書かれたもの。昨年見た「柳原良平(かつてサントリー宣伝部のデザイナー・イラストレーター)アンクルトリス船   長の夢展」で、サントリーと言う企業にハマり、関連の本(「新しきこと 面白きこと」「洋酒天国とその時代」    「係長 山口瞳の処世術」)を読みました。最近出版された伊集院静著「琥珀の夢 小説 鳥井信治郎」も読みたい    なと思っています。 

 6 四方田犬彦著「母の母、その彼方に」
   この本は、四方田氏のファミリーヒストリーで、とても興味深く読みました。この本は読んで、以前読んだ身辺の事   を綴った著書「四方田犬彦の引っ越し人生」「再会と離別」「ハイスクール1968」を再読し、より理解出来まし   た。

 7 「全面自供 赤瀬川源平」
    この本は、赤瀬川源平氏のインタビュー集で、氏の自伝的内容で非常に面白かった。中でも、美学校講師時代や路    上観察学会発足のエピソードはスコブル面白かった!ちなみに、美学校の卒業生に、南伸坊と久住昌之(孤独のグ    ルメの原作者)がいる。

 8 武田百合子著「富士日記」
   この本を読んで、百合子さんの事をもっと知りたくて、かつて武田泰淳の担当者だった編集者「松村友視」の著書   「百合子さんは何色」イッキ読みし、現在編集者時代の事を綴った「夢の始末書」を読んでいますが、これもとても面   白い!
 
 9 武田花著「イカ干しは日向の匂い」
   時々、サクサクと読めるエッセイを読みたくなります、そんな時は、安西水丸氏のイラスト入りエッセイがありまし   た。今は、花さんの写真入りエッセイがお気に入りです。先日、「猫のお化けは怖くない」と言うフォトエッセイ集   を見つけたので今から読むのが楽しみです。

 10 原島広至著 「神戸今昔散歩」
    この本では、神戸、西ノ宮、宝塚、芦屋、明石など明治、大正、昭和の絵はがきと現代の写真を見比べて検証する    内容で、かつての神戸がどうだったのが分かってとても興味深くかったです。中でも、湊川神社内に凄くりっぱな    建物の水族館があったこととか、新開地には、かつてたくさんの劇場、映画館があったことがわかり、今の新開地    を知る私は、感慨深い物がありました。この本を持って神戸を巡りたいと思っています。
  
   今年も、どんな面白い本に出会えるか楽しみです!