大连どこでも学校

大連で日本語を学ぶ中国の学生たちと中国語を学ぼうとしている日本語教師の相互学習のブログです。

『ひよこの眼』中国国訳②

2016-09-30 05:20:40 | 『ひよこの眼』中国語訳
『ひよこの眼』中国語訳②です。9月25日の確定版です。


「けっこう、すてきだよね、相沢くんて。」
「大人っぽい気がする。」

“相泽同学好棒啊。”
“有没有觉得他很成熟?”


私と仲のよい女の子たちは、口々に、そんなことをささやいていた。転校生は、いつも見慣れた男子生徒たちより、どうしても格好よく見えるものだ。私はそんなふうに思った。私は、むしろ、彼の瞳に遭遇した時のあの懐かしい感情について考えていた。初めて出会う人間に対して、なぜ、そんな思いが心をよぎるのかが不思議でならなかった。自分の内のつたない記憶をたどってみるのだが、解決しなかった。まるで、解けない問題を一つ抱えているような気分になり、私は、自分自身をもどかしく思った。

跟我关系要好的女生们,异口同声般地对我说了这些悄悄话。我知道,比起那些每天都见面且已经很熟悉了的男生们来说,转校生他无论做什么都很有魅力。与之相比,我更在乎的是,跟他目光撞上时,那种似曾相识的感觉到底是怎么回事。对于初次见面的人而言,为什么会闪现出这种念头呢,实在是不可思议。我试图在我的记忆里探索却未果。它就好像是一个无法解开的谜题,使我变得有点烦躁不安了。


その日以来、私は、少しばかりいらだちながら、毎日を送るようになった。私は、授業中、あるいは休み時間、つまり学校にいる間は、ほとんど一日じゅう幹生を盗み見るようになった。もちろん、転校生の彼は、いつも、生徒たちの注目を集めていたが、私が彼を見つめるのは好奇心からではなかった。私は、どうしても、心の中のもどかしさを取り去りたかった。思い出そうとして、思い出せないものを抱えるほど、腹立たしいことはない。私は、時には、歯がみをしたいくらいの気持ちで、幹生を見つめ続けた。

从那天开始,我每天都在一些焦躁中度过。在课堂上,以及课间休息的时间,总之只要是在学校,我几乎一整天都在偷偷地看着干生。当然,他是转校生,一直都备受同学们的关注,但是我并不是出于好奇才注视他的。我无论如何也想除去内心深处那种急不可耐的感觉。想要想起一件事却怎么也想不起来是最令人气愤的了。我有时候,是抱着咬牙切齿的心情,注视着干生的。

『ひよこの眼』中国語訳①

2016-09-18 20:47:18 | 『ひよこの眼』中国語訳
本日、今学期3回目のどこでも学校を開講しました。

今学期、これまでやって来た『西游记』の日本語訳とは別に『ひよこの眼』の中国語訳を始めることになりました。

『西游记』は、中国の学生なら誰でも知っている話で、日本語に翻訳するという語学的な面白さ(面白くなさ?)しかなく、それよりは日本や日本人のことがいろいろ発見できる日本の小説を中国訳した方が面白いと、ある学生が言ったことがきっかけでした。

『西游记』の場合は担当の学生が日本語訳したものを私が読み、日本語表現として不敵であったり、わかりにくいところを指摘し、みんなで考え、それに代わる表現を出しながら日本語訳を決定するという方法で進めて来ましたが、今回は、まず日本語を読み、それを理解しながら、Aさんが既に中国語訳したものをもとにみんなで考え確定していくという方法で進めることにしました。

本日確定した中国語訳を掲載します。

『ひよこの眼』①

その男子生徒の目を見た時、なぜか懐かしい気持ちに包まれたのだが、それがいったいどのような記憶から端を発しているのかが、私にはとっさに思い出せなかった。私は、その時、まだ中学三年生だったし、その年齢で懐かしがるべきことなど、ひとつもないように思えたから、せつない感情が霧のように胸を覆い、心を湿らせた時、私は驚き、そして混乱した。

当我看到那个男生眼睛的时候,不知为何有一种似曾相识的感觉,一时间我突然想不起来在记忆里的那种似曾相识来自何处。我那时还是初三的学生,在那个年龄段里,并没什么有可供我怀念的东西,可是当难过的心情就像水雾一样覆上心头并浸湿了我的心田的时候,我感到了惊讶并有些慌乱了。


彼、相沢幹生は、教壇に立ち、澄んだ瞳で、教室を見下ろしていた。私たちは、好奇心にあふれた様子で、その転校生を見つめて、ひそひそと内緒話を続けていたが、彼は、まったく動じない様子で、担任の教師が自分を紹介するのを聞いていた。

他叫相泽干生。班主任正在向我们介绍着他,我们看着这位转校生,大家按捺不住好奇心,在下边小声私语地谈论着他。而他则不动声色,用清澈的眼眸俯视着讲台下的一切,听着老师介绍。


「……というわけで、相沢は、きみたちと同じ場所で学ぶことになったわけだ。卒業までの短い間だが、どうか仲よくしてあげてくれたまえ。じゃ相沢、きみからも何か挨拶があるだろう。」

“……所以说,相泽要和你们在一起学习,距离毕业还有一段时间,大家要和他友好相处。那么,相泽,你也跟大家打声招呼吧。”


教師は促すように彼を見た。けれど、彼は、ただ立ち尽くしているだけだった。緊張してしまったのだろうかと、私は顔を上げて彼の顔を見た。ところがそうではなかった。彼は、落ち着いていた。そして、その澄んだ瞳をまばたきもせずに大きく見開いて何かを見ているようだった。何を見ていたのかは、まったくわからない。私には、彼が、空気中にある彼自身にしか見えないものを見つめているように思えた。つまり、彼は、教師のことばなどまったく耳に入れていないのを明らかに周囲にわからせてしまうほどに、うわのそらだったのだ。

老师投来殷切的目光,但是他还是一言不发地站在那里。我心想他一定是紧张了吧,于是抬起头来看了他一眼。然而并不是那么回事。他很镇定,而且,他一眨也不眨地睁大那双清澈的眼睛,好像是在看着什么。至于他看到了什么,我完全无从得知。我想是他在看空气中看到了只有他自己才能看到的东西。也就是说,老师说的话他完全没有听进去,大家都能看的出来,他一副心不在焉的样子。


教師は、顔を赤らめて、咳払いをした。
「おい、相沢、おい、聞いているのか」
彼は、ふと我に返ったように、怪訝な表情で、教師を見た。
「挨拶ぐらいできんのか、おまえは。」

老师脸有点泛红,他清了清嗓子继续说道:“喂,相泽,喂,你有在听我说话吗?”
他这才一下子回过神来,用诧异的眼神看向老师。
“你连跟大家打声招呼都做不到吗?”


彼は、小さく肩をすくめて、頭を下げた。私たちは、いっせいに吹き出した。同じ年齢にしては、妙に超然とした雰囲気が、おかしかった。私たちのほとんどが、担任教師を嫌っていたので、彼のような態度は、私たちの気に入った。教室のいちばん後ろに用意された席に、彼が歩いて行く時、私たちは、目配せを交わし合った。こうして、幹生は、私たちのクラスの一員になった。

听了老师的话,他缩紧小小的肩膀,低下了头。我们一齐笑出了声。他明明跟我们一个年纪,对此却毫不在乎的样子,真的很奇怪。班上大部分人都不喜欢班主任,所以我们对他不把老师当回事的态度很满意。在他走向教室最后一排为他安排的座位时,我和周围的同学们互相使了个眼色。此后,干生成了我们班的一员。


幹生は、自分から、他の生徒と積極的にことばを交わそうとはしなかったが、そのひょうひょうとした様子は、みんなの気を引くのに十分だった。休み時間になると、何人かの男子生徒が彼のところに行き、彼を質問責めにした。そして、少し離れた場所で、女子生徒が彼らの会話に耳を傾けた。みんな、季節外れの転校生の秘密を知りたがっていた。けれど、幹生は、個人的な事情などは、うまいぐあいに、避けてことばを選びながら会話を交わしていたので、私たちは、彼の前の学校でのことを少しばかり知るだけだった。

干生在班级里并不会主动地和其他同学聊天,但他悠然的样子足够引起大家对他的兴趣。一到课间休息时间,就会有几个男生去他座位边上,问他一些问题。然后,在离他不远的地方,女生们就聚在一起细听他们在聊什么。大家都想知道,不在开学季转学的转校生有什么秘密。可是,干生总是巧妙地避开自己事情和男生聊天。因此我们对他在之前的学校里发生过什么事情知之甚少。