雨過天青

のんびり更新中。

ナルサイ・5

2010-03-07 | ナルサイ(タイトル未定)
「ね…熱血…?」
「うん」
手酌でクイクイと飲んでいたナルトが、会話の接ぎ穂に徳利を傾けたが、いつの間にやら空になってしまっていたらしく逆さにしてようやく二・三的が落ちてくるのを残念そうに眺めた。
「あれ…もう無い…」
すかさず追加を頼むナルトに、思わず、
「ちょっと、ペース早過ぎだよ」
と、声を掛けると、
「え…?そっかな…?」
不思議そうな呟きと共に、きょとんとした瞳を向けられた。
…そういえば、先だって木ノ葉の同年代の忍たちが集まって開いてくれた祝いの席で、どんな話の流れだったか、今や火影の懐刀として外交に手腕を発揮しているシカマルが、多忙につき不在の火影について、
『ナルトが潰れたところって見た事ねーな、ほろ酔いのまま無限に飲み続けんだ、アイツは。あれは…九尾のチャクラがアルコール分解してんじゃねーか、って、オレは思ってるんだけど』
などと、大真面目な顔で語っていたのを思い出した。
その時はそんな、まさか…と笑ってしまったが、今まさに目の前で上機嫌で酒を飲み干し続けるナルトを見ていると、シカマルの推測もあり得るかも、などと思えてしまう。
「なんかさー、今日の酒は、妙に美味いんだってばよ」
―――そんな無邪気に、昔の面影を残した姿で、子供の頃の口癖で笑い掛けないで欲しい。
長い時間をかけてやっとの思いで鎮めたはずの彼への想いが、その笑顔一つで簡単に心の真ん中まで戻ってきてしまうから。
思わず、遣る瀬無いため息を落としてしまいそうになって、ぐっと堪えた。
そんな自分の様子に気付く事も無く、ナルトは机の上に並んでいた漬物を指で摘まんで口に運びながら、
「で、えと…何の話してたんだっけ」
などと、呑気な調子で問い返してきた。