殆ど拗ねた子供のような有様のサスケを宥めるのに四苦八苦しながらも、どうあっても「帰っていい」とは言わない辺りがナルトもナルトだ、と、呆れ半分感心半分で眺めながら、一人ちびちびと呑み進めていると、
「なぁ、お前も何とか言ってくれよ」
と、机の下からナルトに助けを求められた。
この状況で何とか、と言われても…と言葉を探すうち、ふと脳裏に浮かんだのはやはり、昔読んだ本に載っていた「空腹は人を短気にさせる」の一文で、
「…うん、…とりあえず」
ずり、と座ったまま壁側に寄り、ベンチ式の座席に一人分のスペースを空け、
「サスケくんも座ったら? ここのごはん、美味しいよ」
と、あっけにとられた顔で見上げてくる二人に、にっこりと笑み返してやった。
若い頃からナルトに散々「空気が読めない」と揶揄されてきたが、今となってはその性格が結構良い武器になっているかもしれない。
「あのな…」
我に返り苦々しげに眉を寄せながらも、空腹だったのは図星だったらしく口ごもってしまったサスケに、
「ごはん食べてから一緒に仕事に戻ればいいじゃない。何なら、僕も手伝うし」
だから、駄々をこねてナルトの気を引くのはこの辺にしておいて欲しいな、という意趣までもが伝わったかどうかは分からないが、含みを込めた笑顔で和解案を提示してやると、ややあって、サスケはその整いすぎているほど秀麗な顔に、ニヤリ、と、かの大蛇丸仕込みの極悪な笑みを浮かべたのだった。