アルバイト含む61名採用でスタート
「県内離島初のコールセンター進出」と話題を集めた(株)ビジネスサポート社が、オフィスとなる旧有川港ターミナルビル二階の改修も順調に進み、3月28日をもって正式に業務をスタート。雇用状況が極端に悪化する中、150名余の応募者から61名(うちアルバイト15名)採用、久し振りに明るい材料となった。ここでは誘致の内実と意味、そして少し気になる問題点を含め報告する。
コールセンターとは
コールセンターはごく簡単にいえば、商品の受発注、諸種の受付など電話による応対業務の代行である。電話回線のデジタル化と自由化によって通信費は劇的に下がり、電話サービス業務などは拠点を都会に置く必要はなくなった。他方、パソコンとインターネットの普及で、リストラの一環として企業内部の事務・管理・営業などを外部委託(アウトソーシング)する動きが活発化。そこに生まれたのがコールセンター事業の分野である。
コールセンターの業務分野は大きく分けて二つ。インバウンドとアウトバウンドという。横文字で難しくいう必要はない。前者はイン=電話の受け入れで、例えば通信販売の受注、セミナーなどの際の参加者受け付け、秘書代行など向こうから掛かってくる電話への応対業務。後者はアウト=電話を掛ける方、市場調査、テレマーケティング、ダイレクトメールを打った後のフォローなどだが、つまりは電話による営業活動代行と考えたらよい。
電話での営業代行
今回誘致が決まったビジネスサポート社は、久留米に本社を置くベルディオ・アットマーク(株)の子会社。ベルディオ社は1979年に設立し、NTTドコモ代理店として携帯電話販売を中心に業容を拡大する一方、OA機器、生損保、自動車などの代理店事業にも進出。こうした取引先の蓄積と販売ノウハウを生かして、昨05年にビジネスサポート社を設立、久留米でコールセンターをスタートし、第二弾として本町への進出となったものだ。本町での業務は先の分類では後者、営業業務で、通信会社日本テレコムの“お得ライン”を全国の法人向けに電話で紹介する仕事が100%という。完全な電話営業代行だが、成約まで担当するわけではなく、見込みありそうな客に対する詰めの営業は久留米の本社に回される(開設準備室担当・小田哲也氏=ベルディオ社)。
県の助成手厚く
さて、ビジネスサポート社の本町への進出メリットは何か。小田氏はこの質問に「人件費と交通費負担の安さ」と即座に返答。たしかに9時~6時半の9時間半勤務で固定給151、000円(試用期間2000円減)は日給換算で6000円強、日給月給制だから休んだらその分引かれる。これに成果給が加わるが、ノルマがあるかとの問いには「目標は設定しますがノルマではない」とのこと。とすれば成果給加算率は低いとして、島では平均的な水準といえるものの、都会では低い額だろう。ちなみに61名採用者は男18名、女43名、年齢は男性は20代14、30代3、10代1、女性は30代18、20代11、40代6、50代5。意外に男性が多い。
ところで、誘致企業へは通常各種の公的補助がある。県の「情報通信関連企業立地促進補助金」に則した助成、これに町単独の補助金も含め、ビジネスサポート社に対する助成措置は別表のようになっている。
事業計画 見込補助金
人件費 100人(新規採用/2年間) 60万円/人
(採用1人につき町15万・県45万)
通信費 2600万円(年額) 1950万円×3年間(補助75%)
(含フリーダイヤル)
賃借料 318万円(年額) 119万円×3年間(補助35.5%)
投資額 1億3500万円 2025万円(投資額の15%補助)
この額をどうみるかはいろいろ意見はあろう。町の助成はせいぜい3年間で最大1000万円、見返りに遊んでいた旧有川港ターミナルビルの賃借料が入るわけだから、町にとっては好条件の誘致といえようが、その代わりに県の補助は、離島の場合通常より50%加算されることもあって実に手厚いものと記者の目には映る。人件費補助は雇用を生む効果を考えれば妥当とみる余地はあるとしても(推定で4人に一人分の人材費は補助金で賄えるはず)、コールセンターの業務上最大の費目と推定される通信費の75%が補助というのは“おんぶに抱っこ”という印象をぬぐえない。
地場への定着を
ともあれ、ビジネスサポート社はスタートを切った。業容がこの地で拡大成長することを期待したい。その上で、やや辛口の報告をしてきたのは二つの理由による。
ひとつは過去の当町においても或いはどこの過疎地でも、とかく誘致企業は優遇措置がある間は操業するものの、終われば程なく撤退するという事例に事欠かないからだ。国のIT産業育成の背景があり、情報通信産業(コールセンターが果たして先端的な意味合いが強い情報通信産業に該当するかはなはだ疑問なのだが)への補助が手厚いだけに、3年間の助成期間終了後も地場企業として定着しかつ業務分野も多様化するよう強く望む。
二つ目は人材観の面。冒頭に述べたように、コールセンターが企業の事務の外部委託という合理化の結果生れた業界。逆の動きが派遣社員受け入れで、これも正社員を派遣社員で代行させ人件費抑制を計るという合理化要求の産物である。激しい企業間競争時代を生き抜く企業の対応策としてやむを得ないとしても、派遣会社は多くの労働問題(雇用の不安定さ・賃金のピンハネ等)を引き起こしている。IT産業の周辺として新興のコールセンターは類似の事例はまだ聞かないけれど、ビジネスサポート社の採用要項にある「3か月ごとの昇級・昇格査定」や日給月給制などを考えると、思ったより業績が上がらない場合、人材使い捨ての方策に走る危険性はないかとの懸念が残る。この点では「他に雇用の場が少ないからできるだけ安定雇用に努める」という小田氏の付言どおりに安定雇用が維持されることを望む。
「県内離島初のコールセンター進出」と話題を集めた(株)ビジネスサポート社が、オフィスとなる旧有川港ターミナルビル二階の改修も順調に進み、3月28日をもって正式に業務をスタート。雇用状況が極端に悪化する中、150名余の応募者から61名(うちアルバイト15名)採用、久し振りに明るい材料となった。ここでは誘致の内実と意味、そして少し気になる問題点を含め報告する。
コールセンターとは
コールセンターはごく簡単にいえば、商品の受発注、諸種の受付など電話による応対業務の代行である。電話回線のデジタル化と自由化によって通信費は劇的に下がり、電話サービス業務などは拠点を都会に置く必要はなくなった。他方、パソコンとインターネットの普及で、リストラの一環として企業内部の事務・管理・営業などを外部委託(アウトソーシング)する動きが活発化。そこに生まれたのがコールセンター事業の分野である。
コールセンターの業務分野は大きく分けて二つ。インバウンドとアウトバウンドという。横文字で難しくいう必要はない。前者はイン=電話の受け入れで、例えば通信販売の受注、セミナーなどの際の参加者受け付け、秘書代行など向こうから掛かってくる電話への応対業務。後者はアウト=電話を掛ける方、市場調査、テレマーケティング、ダイレクトメールを打った後のフォローなどだが、つまりは電話による営業活動代行と考えたらよい。
電話での営業代行
今回誘致が決まったビジネスサポート社は、久留米に本社を置くベルディオ・アットマーク(株)の子会社。ベルディオ社は1979年に設立し、NTTドコモ代理店として携帯電話販売を中心に業容を拡大する一方、OA機器、生損保、自動車などの代理店事業にも進出。こうした取引先の蓄積と販売ノウハウを生かして、昨05年にビジネスサポート社を設立、久留米でコールセンターをスタートし、第二弾として本町への進出となったものだ。本町での業務は先の分類では後者、営業業務で、通信会社日本テレコムの“お得ライン”を全国の法人向けに電話で紹介する仕事が100%という。完全な電話営業代行だが、成約まで担当するわけではなく、見込みありそうな客に対する詰めの営業は久留米の本社に回される(開設準備室担当・小田哲也氏=ベルディオ社)。
県の助成手厚く
さて、ビジネスサポート社の本町への進出メリットは何か。小田氏はこの質問に「人件費と交通費負担の安さ」と即座に返答。たしかに9時~6時半の9時間半勤務で固定給151、000円(試用期間2000円減)は日給換算で6000円強、日給月給制だから休んだらその分引かれる。これに成果給が加わるが、ノルマがあるかとの問いには「目標は設定しますがノルマではない」とのこと。とすれば成果給加算率は低いとして、島では平均的な水準といえるものの、都会では低い額だろう。ちなみに61名採用者は男18名、女43名、年齢は男性は20代14、30代3、10代1、女性は30代18、20代11、40代6、50代5。意外に男性が多い。
ところで、誘致企業へは通常各種の公的補助がある。県の「情報通信関連企業立地促進補助金」に則した助成、これに町単独の補助金も含め、ビジネスサポート社に対する助成措置は別表のようになっている。
事業計画 見込補助金
人件費 100人(新規採用/2年間) 60万円/人
(採用1人につき町15万・県45万)
通信費 2600万円(年額) 1950万円×3年間(補助75%)
(含フリーダイヤル)
賃借料 318万円(年額) 119万円×3年間(補助35.5%)
投資額 1億3500万円 2025万円(投資額の15%補助)
この額をどうみるかはいろいろ意見はあろう。町の助成はせいぜい3年間で最大1000万円、見返りに遊んでいた旧有川港ターミナルビルの賃借料が入るわけだから、町にとっては好条件の誘致といえようが、その代わりに県の補助は、離島の場合通常より50%加算されることもあって実に手厚いものと記者の目には映る。人件費補助は雇用を生む効果を考えれば妥当とみる余地はあるとしても(推定で4人に一人分の人材費は補助金で賄えるはず)、コールセンターの業務上最大の費目と推定される通信費の75%が補助というのは“おんぶに抱っこ”という印象をぬぐえない。
地場への定着を
ともあれ、ビジネスサポート社はスタートを切った。業容がこの地で拡大成長することを期待したい。その上で、やや辛口の報告をしてきたのは二つの理由による。
ひとつは過去の当町においても或いはどこの過疎地でも、とかく誘致企業は優遇措置がある間は操業するものの、終われば程なく撤退するという事例に事欠かないからだ。国のIT産業育成の背景があり、情報通信産業(コールセンターが果たして先端的な意味合いが強い情報通信産業に該当するかはなはだ疑問なのだが)への補助が手厚いだけに、3年間の助成期間終了後も地場企業として定着しかつ業務分野も多様化するよう強く望む。
二つ目は人材観の面。冒頭に述べたように、コールセンターが企業の事務の外部委託という合理化の結果生れた業界。逆の動きが派遣社員受け入れで、これも正社員を派遣社員で代行させ人件費抑制を計るという合理化要求の産物である。激しい企業間競争時代を生き抜く企業の対応策としてやむを得ないとしても、派遣会社は多くの労働問題(雇用の不安定さ・賃金のピンハネ等)を引き起こしている。IT産業の周辺として新興のコールセンターは類似の事例はまだ聞かないけれど、ビジネスサポート社の採用要項にある「3か月ごとの昇級・昇格査定」や日給月給制などを考えると、思ったより業績が上がらない場合、人材使い捨ての方策に走る危険性はないかとの懸念が残る。この点では「他に雇用の場が少ないからできるだけ安定雇用に努める」という小田氏の付言どおりに安定雇用が維持されることを望む。
個人が雇用を求めるのは最初の一歩と思いますが、できれば、企業に雇われながらも自立できる集団が育って欲しい、それほどのしたたかさが当たり前になって欲しいと思いました。
私達住民がその視点を忘れないようにしたいと私も思います。
某新聞記事でもコールセンターの誘致を知りましたが
どのような経緯で此処へ至ったのか疑問点と興味があり、
「上五島町」と「コールセンター」の検索でこちらへ辿り
着き概要がわかりましたが更に疑問点が残りましたのでコ
メントさせていただきます。
地球の裏側からでも瞬時にしかも安価にアクセスし、情報
をやり取りすることの出来るIT技術は素晴らしいものです。
それは場所や時間に制約されることもなく展開できる優れ
た産業です。
技術の進歩や産業の発展は地域社会に大きな変化を与え、
人々の営みに潤いをあたえるものでなくてはならないもの
です。
それらに反する技術や産業は地域社会に根付くことなく
衰退又は撤退の道をたどることになります。
今回のコールセンター誘致は企業と自治体に取っては金銭
的に大きなメリットがあります。
地域住民にとっても雇用の場として捉えれば期待感はあり
ますがその仕事の内容は日常の生活や価値観に大きな影響
を与えることも忘れてはならないことです。
かっての重厚長大産業は環境と地域社会を踏みにじり荒廃
地を残して去っていきました。
コールセンターは環境には優しいと思いますが五島の純情
な地域社会と住民に優しい事業とは感じられません。
一日中デスクと電話にしがみつき、美しい心を消費する代
償となる経済効果の見込みはあるのでしょうか。
連日のごとくコールセンターからの売り込みに悩まされて
いる投稿者としてはしごく当たり前に気に掛かることです。
>話がそれますが、島のよさを生かしたやりかたで、国内の定年退
職者に、移住もらえるよう、工夫することは不可能でしょうか?やは
り、人口減少が一番のネックだと思えます。町の議員さん達は、ど
のように考え、どのような対策を練ってるんでしょうね。
これらの事は何処でも一度や二度は話題に上がるようですね。
でもどのような立場の人であるか、そして何処の人達が話題にするか
によって考え方も自ずから異なってくるようです。
私は単純に自然が素晴らしくそして人情味溢れる処で第二の人生が送
れないものかと模索している一人です。
縁遠い私と家内が移り住んだとしても島の人達や自治体にとっては迷
惑なことだと思います。
でも、もしこのような考えの人達が大勢いればかなりの経済効果が期
待でき、まだまだ元気な高齢者は新たな知識を身につけ自然の中で生
産性のある活動もできるはずです。
五島は一度も足を運んだことはありませんから分かりませんが余所の
似たような地域では強い排他性を感じます。
企業が取り組む場合は大規模に土地を手当てし移住者の住居や生活支
援施設を整備します。地主や自治体は実入りがあり、周辺産業も仕事
にありつける効果はありますが本来の地場産業や地域文化は少しも進
展しませんね。
島を上げ、
島民は農業は漁業は商工業は自治体は農協は漁協は学校は、、、、、
Uターンの移住者はIターンの移住者は、、、、、、、、、、、、、、
貴男が貴女が、、、、、一人一人が創造性を持ち、
出来るところから一つ一つ取り組み、そしてそれらの全てを統括し融
合するような考え方で取り組めば素晴らしい五島が復活する筈です。
夢のまた夢でしょうかね。
NHKの番組でも問題提起されていたように、コールセンター誘致も、当座の雇用を生み出すことはあれど、町広報紙の表紙を飾って諸手を挙げて歓迎すべきものなのかどうか、その真価がこれから問われると思います。