永遠に、幸せになりたい。    by gorosuke

真夜中、いいおっさんが独り海に向かって延々と竿を振る。
アホだな。でもこのアホ、幸せなんだよなあ。

女釣り師とミラクルナイト               3月30日

2011-04-01 | メバル
福井の女釣り師みずのがやって来た。

彼女は能登外浦おいらのフィールドと相性がいい。
これまで数度やって来て一緒に出かけたが
昨年のメバル29.5センチといい、イカの爆釣といい、
ことごとく彼女にとってメモリアルフィッシングとなった。

1月末にもやってきたが、思わぬ悪天候と大雪で
釣りは断念、代わりに雪掻きを手伝ってもらった。

今のところ、福井越前海岸はとんとデカメバルが釣れないらしい。
彼女も度々出かけてみたものの20センチを越えないのだとか。

だから、今回こちらでの釣りにははち切れんばかりに胸を膨らませていた。


ところがこちらも胸を張っていいぞ!!とは言えない状況だった。
前回も寒さの中、粘りに粘って、なんとか時合いに当たったが、
あの寒さの中の粘りを彼女に強いることは出来ない。

で、彼女がやって来る2日前、本命ポイントに様子見釣行に出かけてみたが
大潮は過ぎ、月もなく真っ暗な海は凪いで、予想通り釣れなかった。
加えてマイナス2度という気温に身も心もかじかんでしまった。
やはりここは月と波がないと駄目なのだ。




さて、どうするか。
様子見釣行からして本命ポイントはキビシいだろうし、大物は狙えないが灯りもありそこそこ楽しめる場所にしようか、くるくると迷うのであった。

予報を見ると気温はいくらか上がったようだし、追い風である。それにこのところ凪いでいた海も少し荒れて来た。
1.5メートルの波らしい。

月はないが、その他の条件は悪くない。

で、ともあれ本命ポイントへ行ってみようと決断。



晩飯後出かけ、現場に着いたのは9時だった。

車から出ると風を見る。予想通りの追い風だった。よし。

はやる心を押さえ、静かにポイントに向かう。
海を見る。凪ではなかった。暗闇の中、白い波頭が幾重にも見える。よし。

釣り座に立つと、足下はサラシの渦であった。サラシの際まで15メートル、およそ1.5メートルの波と見た。
風は背後から狙う方向へ3~4メートルの強さ。
それになんといっても寒くないのが嬉しかった。

月明かりはないものの、ひょっとして釣れるかも知れない。
心は弾んだ。


まず、みずのに右側の本命釣り座に立ってもらい、一番可能性のある方向へキャストしてもらう。
遠くの民家の灯りがかろうじて届き、微かに照らす海面だ。
10グラムの飛ばしウキで遠く、サラシのうんと向こうを狙ってもらう。30~40メートルの距離か。
表層をゆっくりと引いてくる。
この状況ではこれが一番可能性が高いとみた。

おいらは左側の釣り座から左のテトラ際を狙う。
こちらは民家の灯りも全く届かず、文字通り真っ暗な海である。
まずプラグを投げてみるが音沙汰なし。

そのうちみずのがヒット。
20センチ弱。



でかくないが、それでも「今年の自己記録」と嬉しそう。

ともあれ釣れた。
やはり海の状況は悪くない。
2日前と違って海に活気があった。



彼女と並び、おいらも飛ばしウキをセットし本命方向へ投げてみる。
ワームはカルティバのロックンベイト2インチ。
尾を振りながら泳ぐ小魚系のワームだ。

風に乗せてフルキャスト、40メートルは飛んだか。
表層をゆっくり引いて来る。時々引くのをやめる。そしてまた引く。
すると、コツっと当って来た。
で、また当って来る。合わせる。乗った。
遠くだ。おそらく25メートルか30メートル辺り。



ブルーバック25センチ。まあまあのグッドサイズ。

暫くしてみずのにまたヒット。
22センチ。





そしてダブルヒット。




その直後25センチ。ブルー。




そしてみずの。
23センチ。確実にサイズアップしている。




おいら26センチ。



25センチ。




27センチ。



26センチ。




みずののアタリが止まっていたが、プラグをつけて
20センチ。
小さいが、彼女にとって初めてのプラグでのヒットだ。





コンスタントに釣れるが、ワンサイズアップを狙ってガルプの枠を差し、思い切り遠くへ。
リールを少し巻いたところでゴゴときた。小さいアタリだが雰囲気があった。
これはと思い、大事に合わせようと少し間を置き、しっかりくわえ込んだタイミングでクンと合わせた。
ドラグが鳴り、これまでなかった重さと引き。しっかりフッキングしているようだった。
ゴリ巻きし、力任せに抜き上げる。
重かった。

思った通り尺クラス。ブルー。よし!!


(左上の黄色いやつがガルプの枠。小さい突起のところにベビィサーディンが並んでくっ付いていた。)

測ってみると、29.5センチは越えているものの30センチに僅か届かない。
泣き尺。

みずのが泣き尺ではなく、「ほぼ尺」だと前向きな言葉でホローしてくれるが
しかしな、どう言ったところで尺には届かない。


気を新たに尺を狙った。
チャンス到来なんである。

尺クラスの群れが何処からかやって来て、
今まさに眼前の海中に悠然と屯しているんである。
その姿が見えそうであった。

数投後、やはり来た!!
先程と同じようなアタリ
慎重に合わせる。
グンと重さがロッドに乗った。よし!!

またドラグが鳴る。
かまわずゴリ巻きする。

暗い海面、魚は白い筋となって近づいてくる。

バレるなよ。祈る気持ちだった。
足元まで寄ったのを確認して抜き上げた。
折れ曲がる83ディープ。うまく上がった。
またブルーの尺クラスだった。




計測。
今度は先程より5ミリ大きく、確かに30センチを僅かにオーバーしていた。
ジャスト尺。よし!




その後、みずのもヒットするが・・・



デカイのが来ない。
釣っても釣っても25センチを越えてくれない。


あくまで、今夜の主役は彼女なんであり、彼女に釣ってもらわなければこの釣行の意味は半減しちまう。


殆ど同じタックル、同じメソッド、同じ方向、同じワームなのに何故か彼女に来るのは小さいのばかり。
考えてみれば、彼女は近くでヒットし、おいらは遠くでヒットしている。
とすれば、飛距離か。

彼女のキャストを見ると、悪くないがちょっとテイクバックが多すぎるような気がした。
意識を前方遠くにし、テイクバックを少なくして腕だけでなく体全体を使って素早く振り抜き、弾道低く遠くに飛ばすことをレクチャーする。


時間は12時を過ぎていたが、帰ろうなんて気はさらさらないという彼女だった。

「とにかくみずのが25センチオーバーを釣らん限り今日は帰らんぞ」と宣言し気合いを入れ直す。


彼女のキャストは格段に良くなり
振り抜く音もヒュンとキマってきた。

二人ともガルプの枠を付けていたが、状況は変わったと見え、なかなかヒットしない。
コツコツ当って来るものの銜えるところまではいかない。
メバル釣りはどんどん状況が変わるんである。

で、彼女にガルプの小さいやつ、ベビィサーディンに替えてみたらどうかと。


小さいガルプに付け替えた彼女はキャストを続け、おいらは休憩、キャストする彼女の背中を見ながらポットに入れた甘コーヒーを呑んだ。
月はなく春の星々が綺麗な夜だった。

真上には北斗七星の柄の彎曲をそのまま目でなぞって伸ばしたところのアルクトゥルス、そしてスピカが煌煌と瞬いていた。
一昨日とは打って変わって寒くない。

活気のある海を前に心は弾み、内からポカポカと暖かい。
こんな夜は滅多にない。



と、みずののロッドが折れ曲がっていた。
ロッドの曲がりからして25センチは越えていた。
必死で抜き上げる。

ブルーの27.5センチ。いきなり25オーバーと来た。



やっと釣れたと喜ぶみずの。


一応これで帰ってもいいのだが、
彼女の顔はまだまだ、と言っていた。


その直後、再びみずののロッドが折れ曲がった。バッドからだ。
それは先程の27.5よりさらにでかそうだった。
懸命にリールを巻くみずの。
こんな真剣な顔見たことない。

「一気に巻け、巻けー!!負けんなー!!」
と励ます。

そして抜き上げた。うまくいった。
薄暗闇にデカイ魚のシルエットが浮かんだ。
ライトに照らしてみるとその迫力たるや凄かった。
デカイ目がギラリとこちらを睨む。

測ってみる。おお!!!
30.5センチ。文句なしの尺越えブルーであった。




みずのは予想だにしなかった現実を前に、顔は紅潮し、膝はガクガクと震えていた。

そして、暫くして目の前の事件をしっかり受け止めるや
やったー!!やったー!!と欣喜雀躍飛び跳ねるのだった。
もう身体全部が笑っていた。






考えてみれば、彼女と釣りに出かけると、結局いつも釣り負けていた。
何故だかイカもメバルも一番でかいのは彼女だった。

今回はおれだろうと思っていると、これである。
僅かだが、みずのの尺のほうがデカイ。

で、先輩のプライドをかけて最後の力を振り絞った。


数投目、ゴッと掛かった!!

慌ててゴリ巻く。
ドラグが唸った!!
重かった。
でも巻く、ぐんぐん巻く。
巻きながらドラグがジジー、ジッと出て行く。
構わず巻く。

鈍重な引きと重さ。メバルに違いなかった。
しかし、これまでの尺とは迫力が違った。
こいつはでかい・・・

一瞬、師匠つーさんが言った言葉が脳裏をよぎった。
「能登にはきっと35センチを超えるような怪物がいますよ。」
そして、その怪物の圧倒的な魚体が目に浮かんだ。

バックン!心臓が鳴った。


引いて来る途中、一カ所、テトラの背を超えなければならない。
これまで尺クラスも強引に寄せることでなんなく超えて来た背だが
今回は違った。
そこで止まった。背の向こうで魚は踏ん張った。いや重さで引っ掛かった。

まずい!!
だが構わずロッドを立てて引いた。
と・・・・・・

スコン!!
抜けてひっくり返りそうになった。
あんらら~~~~

暫しボーゼン。心臓の高鳴りはしばらく収まらなかった。

気を取り直し、キャストするがそれまで。
釣れるには釣れたが、27.5センチどまりだった。




午前2時を回り、風向きが真横に変わったのを潮に打ち止めにした。



それにしても、
2日前は全く駄目だったこの海が
打って変わってのこの活況である。
これが釣りであり、特にメバル釣りの深さであり面白さである。

今回、釣れたのはリリースした小さいやつを除いてみんなブルーバックだった。
ということは、居着きというより回遊してきたやつだと思われる。

もうひとつ、このポイントは月がないと駄目と思っていたが
それは単なる思い込みだった。
月の明かりよりも重要なのは風向きと荒れの状態だと。


結局、女釣り師みずのにまた釣り負けちまったわけだが
二人揃っての尺。
おいらとしては今期4匹目の尺であり
今期の目標達成まで後一匹と迫ったのだった。



まさに


ミラクルナイトだった。












(追記)

2日後、みずのが帰っていった日の夜、ミラクルナイトの続きを期待して一人で出かけてみたが・・・・

サッパリ釣れなかった。

うっひょ~~!!