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ノロの日記

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医療大麻(1)

2006-07-19 | 医療大麻
まず、次の言葉を肝に銘じてから。

ダメ。ゼッタイ。


何の話をしようとしているかというと、大麻の話です。
しかもちょっとまじめな。

数年前、母を亡くしました。
56歳でした。ガンでした。

抗がん剤は服用せず、代替医療で治そうとしていましたが、だめでした。
自宅で療養していたのですが、もうどうにもならなくなり、入院しました。
でも、治すための入院ではなかった。医者がなにかできるというような段階ではありませんでした。

あとどれくらいも生きられないというとき、痛みを緩和するためにモルヒネを服用しました。末期のガン患者をごらんになったことがある人ならわかるでしょうが、ずいぶん苦しみます。痛さで死ぬことはないでしょうが、生きていてもしかたないと思えるのではないかと思うくらい、苦しそうです。

モルヒネのおかげで、少し楽になったようでした。

しかし、しばらくして、母はハッとした目を開け、ひどく不安そうな顔で「いま、ぼんやりしてた!?」といいます。
彼女が言うには、痛みはないが、自分が自分でないような、鉛にでもなったような、とてもいやな気持ちだった、と。

それから、彼女はどれだけ痛くてもモルヒネを拒みました。
このへん、ちょっと記憶があいまいです。徹底して拒んだのだったか、痛みが我慢できないくらいのときだけ服用したのだったか。
今「服用」と書きましたが、じつは、経口だったのか、注射だったのかも思い出せません。

お医者さんも、それ以上できることがなくて弱った様子でした。
しかし、母は、モルヒネが自分にとって必要なものではないということを、激痛の中で訴え続けます。それはお医者さんだって困るはず。でも、母のいうことも真実なわけです。モルヒネは痛みをやわらげるが自分を自分でなくしてしまう。それだったら痛いほうがましだ。でもこの痛みはなんとかならないものか。矛盾は矛盾なんですが、それは本当のこと。

その後、しばらくして母は亡くなりました。

このことから学んだことがふたつあります。少なくとも。

・末期ガンは想像もつかないくらいめちゃめちゃ痛い。
・痛みを取ったからといって「いい」わけではない。

とくに、痛みを取る=いいことではないというのは、ぼくにはかなり衝撃的でした。母がどのように言ったのか、正確なことは思い出せないけど、「無理やり生かされているような気分」だと言っていたように記憶しています。

モルヒネといえば、末期ガン患者には最後の希望(それを希望というなら)。
母も、服用するまでは、痛みをやわらげてくれるなら…という気持ちがあったかもしれません。でも、たしかに痛みはやわらいだけど、なにか肝心の部分までなくしてしまったような気がしたらしいのです。

それ以来、ずっとそのことが気にかかっていました。

それで最近、『医療マリファナの奇跡 アメリカで広がるがん・エイズ先端治療を追う』(矢部武、亜紀書房、1998)を買いました。

つまり、今回の目的は、ガン患者にマリファナがどんなふうに役立つのかを探ることです。長くなりそうなので、何回かに分けて書いていこうと思います。


さて、本題に入る前に。

マリファナをめぐる話はたいてい、全面肯定か全面否定の両極端です。
この本も、ちらっと見た限りでは全面肯定っぽい。

とくに全面肯定したいわけでもないぼくは、バランスをとっておくために冒頭に「ダメ。ゼッタイ。」をあげておいたわけです。

どうでもいいですが、このキャンペーンは1987年からポスターを作っていて、時の人気者を起用していたりします。見てみると、西村知美さん(だと思う)が大活躍しています(ぼくの目がおかしくなければ、1997年6月まで)。加藤あいとか、お、中田英寿もいますね。
ポスターを眺めていると、スポーツとの組み合わせが多いことにも気づきます。
サッカーが多い。それもJリーグ発足以前から。先見の明というべきか。ほとんどのポスターで女性タレントが採用されていますが、男一人で登場しているのはサッカー選手の中田と、…写真が小さいのでよくわからないのですが、手にサッカーボールを持っているので選手でしょう。髪のくせっ毛ぐあいから、ジーコかプラティニ?いずれにせよ、男一人で現れているのはサッカー選手だけ。おそらく当時人気絶頂だった貴乃花でさえ、西村知美との共演ですから、サッカー選手の威力はすごい。他には野球とか…なんででしょう。スポーツが厚遇されているのは。さわやか?

ところで、重要なことですが、「ダメ。ゼッタイ。」キャンペーンでは、もちろんマリファナの害が説かれています。

たとえばこんなふうに。

「大麻を乱用すると気管支や喉を痛めるほか、免疫力の低下や白血球の減少などの深刻な症状も報告されています。また「大麻精神病」と呼ばれる独特の妄想や異常行動、思考力低下などを引き起こし普通の社会生活を送れなくなるだけではなく犯罪の原因となる場合もあります。また、乱用を止めてもフラッシュバックという後遺症が長期にわたって残るため軽い気持ちで始めたつもりが一生の問題となってしまうのです。社会問題の元凶ともなる大麻について、正確な知識を身に付けてゆきましょう。 」

ところが、「いったい何を根拠にそう主張するのか?」と疑問に思い、このキャンペーンを推進する「麻薬・覚せい剤乱用防止センター」の大元である厚生労働省に問い合わせた人びとがいます。

少量の大麻の個人使用の容認と刑罰の軽減化を求める「カンナビスト」という人びとです。

彼らは情報公開法に基づいて、「日本国内で発生した、大麻摂取による精神錯乱が原因の二次犯罪に関する一切の情報」の元を開示してくれと求めました。

そして厚生労働省からは、「行政文書不開示決定通知書」が。開示できない理由は「開示請求に係る行政文書を保有していないため」だとのことです。意味がわかりにくいですが、「そういわれてもそういう文書がないんです。だから見せたくても見せられません」ということでしょう。

…頼むよ親方日の丸。

カンナビストはさらに、大麻のせいで脳が損傷した、白血球が減少した、免役能力が低下した、副鼻腔炎・咽頭炎・気管支炎・肺気腫・心不全・不整脈ETC…が発生したとする根拠などについて、次から次へと「情報開示請求」をするのですが、すべて、「開示請求に係る行政文書を保有していないため」のひとことでのりきります。

…って、のりきってない!
どんなくだらない論文でも資料の出所や参照文献は絶対に書いてある。
これでは信用しようにもしようがありません。

なんたる醜態。

たしかに、文書を書いたのは「麻薬・覚せい剤乱用防止センター」ですから、「カンナビスト」はなぜそちらに問い合わせなかったのかという疑問も残ります。

しかし、厚生労働省がこれらの事に関する資料を持っていないということは、判明しました。

厚生労働省はこの件に関してはいっさい当てにならないようです。
もう少しマシな否定的見解を聞きたいものです。

ついでながら、「麻薬・覚せい剤乱用防止センター」は、「がん疼痛緩和と医療用麻薬の適正使用推進のための講習会」を毎年開いています。ここでいう「医療用麻薬」とはマリファナではなくてモルヒネです。モルヒネの効用については、マンガ『ブラックジャックによろしく』でも取り上げられていますし、これについてはまた調べてみたいところでもあります。

to be continued

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3 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (midyari)
2006-07-19 23:41:39
そういえば、元(?)フランス代表のゴールキーパーF.バルテスがかつてドーピング検査に引っかかったことがあったと思う。



カナビスが検出されたらしい…笑。



続編、楽しみにしてます。
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考えさせられました (フロッガー)
2007-07-05 18:03:31
はじめまして。腫瘍内科医をしているフロッガーと申します。大麻開放論者でもあります。
http://blog.goo.ne.jp/dr-frogger
大麻取締法被害者センター(THC)のリンクから訪れました。
http://asayake.jp/
私自身、癌の終末期医療に数多く携わり、本当に患者さんの助けになれているのだろうか、と自問自答することも多いです。
モルヒネに関してのお母様の言葉はいろいろと考えさせるところです。現場から言うと、モルヒネ製剤は終末期医療の中心であり、ある意味唯一効果が期待できるものです。痛みをとるというだけではなく、苦痛を感じなくさせる作用があり、多くの場合有効なのですが、ぼんやりしてしまうことと本来あるべき苦痛が取れることでかえって自分の大事なものが失われてしまったように感じたのではないかと思いました。肉体的苦痛よりも人間らしく生きられないことが苦痛であったのでしょう。非常に立派な方だったのだろうと感じました。
終末期医療を考える上で、医療用は大きな助けになると私は考えています。疼痛コントロールの点でもそうですが、食欲増強作用や、気分のムードを変えるという点で有用と思います。現状では法律があり難しいですが、いろいろなところから声が上がってきています。お互い頑張りましょう。
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はじめまして (ノロ)
2007-07-05 21:20:36
こんにちはフロッガーさん。はじめまして。
お医者さんに読んでいただけたのはうれしいです。

>肉体的苦痛よりも人間らしく生きられないことが苦痛であったのでしょう。

このように読み取っていただけて幸いです。

はじめて「死んでいく人間」を目の当たりにしたのですが、知らず知らずのうちに、もう先がないのでせめて静かに・・・と思うようになっていました。そんな態度が伝わったのか、「死んでいく人を見るような目で見るな」と言われたこともありました。

モルヒネっていうのはそういう態度を薬にしたようなものなんじゃないかと思います。「せめて楽に死なせてあげたい」というのは、いったい誰の望みなのかと考えさせられました。そこから、医療大麻という可能性に注目するようになったわけです。

「立派」とおっしゃってくださいましたが、死ぬ間際までそうやってじたばたしていたのが母らしかったなあという感じです。

ごらんの通り、このブログ、医療大麻やガンをメインにしているわけではなくて、そういうことも日常生活のなかで考えていきたいというものなので、「大麻開放論」をぶち上げるとこまでは行きませんが、しつこくこだわっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。フロッガーさんのブログもまた拝見いたします。コメント、ありがとうございました。
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