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台湾新幹線の赤字原因:The Exodus of Taiwanese Businessmen

2009-07-19 | グローバル経済
2009年7月19日(金)

2年前に開業してから、発展途上国の「新幹線モデル」となりつつあった台湾高速鉄道は、技術的には快走を続けているが、商業的には、乗客数の伸び悩みから、採算分岐点に達せず、赤字が累積していると、Financial Timesが報じている。

このプロジェクトは、民間セクターが自己資金で、建設(build)し、一定期間操業(operate)して収益を上げたあとに、所有権を、政府に移管(transfer)するというBOT(Build-Operate-Transfer)と呼ばれている官民合同の開発手法がとられている。

台湾新幹線は、総工費約1.5兆円に達する世界最大のBOTプロジェクトである面からも、その操業状況は世界から注視されているが、現在のところ、台湾高速鉄道の債務は、1兆1700億円で、累積損失が2000億円に達している。

台北・高雄間の月間航空機利用者は、新幹線開通によって260万人から35万人程度に激減した。一方、操業初年度の急激な伸びを記録した後、新幹線利用客数は、280万人で頭打ちになっている。その結果、新幹線の月間営業収入は、採算分岐点90億円に対し、現在最高でも75億円にしか達しないという。

FTは、元台湾政府の新幹線担当局長の談話として、「乗客数の見込み違いは、ビジネス客として期待した、実業界の人々が、大陸の方に、大挙して移動してしまった」からだと、理由を説明している。開業とほぼ同時に、サブプライムローンに発する、世界金融危機が始まったことの影響をさしているのであろう。

台湾政府は、救済のため債務の一部に対して低利資金への借り換え融資に踏み切る方針である。このままの経営状況が続けば、プロジェクト自身も、政府が予定よりずっと早く「接収して」直接運営することになるかも知れないとも観測されている。

1980年代より、「ワシントンコンセンサス」と呼ばれる米国の世界戦略に立脚して、米国財務省・IMF・世銀が、発展途上国の外資導入・民営化・貿易自由化を「強力に指導」した時代が終わり、「やはり公共投資は政府中心」へと時計は、逆に回りつつあるのが、世界の潮流である。


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