ヒロシマナガサキ
producer / director / editor >>Steven Okazaki
原爆 "Atomic Bomb" 投下から60余年を経た '07年、広島に原爆が投下された8月6日に、全米に向けてテレビ放映されたドキュメンタリー。アカデミー賞を含め多くの賞を受賞しているロサンゼルス生まれの日系3世 "Steven Okazaki(スティーブン・オカザキ)" 監督が、25年の歳月をかけて完成させた渾身の作品である。
日本ですらその惨劇の記憶が薄れつつある中、世界の多くの人々は被害の実態についてほとんど知らない。むしろアメリカでは、原爆が戦争を早期に終わらせ、日米両国民の多くの命を救ったのだという、いわゆる“原爆神話”が広く受け入れられているのだ。
以前にも原爆に関するドキュメンタリーは観ているが、それでも本作の映像に目を背けたくなるほどのショックを受け、被爆者たちの想像を絶する苦悩は決して「終戦」を迎えることなく続いていくことを、改めて思い知らされる・・・。
周知の事実通り、 実際に犠牲を払ったのは「広島」と「長崎」だが、当時投下の候補地として「函館」もリストに載っていたらしい。しかし昭和20年8月9日その日、函館は雲がたれ込めて B-29 が目標を捕らえるのが困難だったため、原爆は晴天の長崎に投下された。
ーーもしその日、函館が晴天で、原爆が投下されていたら、今の函館も自分も存在していなかっただろうし、もしかしたら自分がこの作品の中で病んだ身体を人目に「曝して」「語って」いたかもしれないのだ。
英訳された漫画『はだしのゲン』と出会ったことで、広島・長崎への原爆投下に関心を深めたオカザキ監督は、核の脅威を世界に知らしめることが自分の役目だと考えるようになり、本作ではその作者・中沢啓治氏の姿もある。
微力ながら、この作品を通じて悲惨な「事実」を知った上で、二度とこの惨劇を繰り返してはならないと、胸に刻んでもらえると嬉しい。
「百聞は一見にしかず」・・・観てください。