ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

島に来たお医者さん(1)

2008-03-10 | 放蕩息子Part2
あるところに小さな島がありました。島の人たちは、みんな仲良く、平和に暮らしていました。ところが、ある日、奇妙な病気が流行りだしたのです。その奇妙な病気というのは、突然、牛が狂ったようになってしまいます。そのあと、だんだん弱って、死んでしまうのでした。

島の人たちは、病気になった牛に、島で一番きれいな水をかけてみましたが、効き目はありませんでした。香りのいい草を食べさせてみましたが、やっぱりダメでした。上質の木を燃やした灰を付けたり、貴重な塩をふりかけたり、満月の光に当てたりしましたが、やっぱりダメでした。牛の周りで、みんなで踊ったり、歌ったりもしてみましたが、何をやっても、牛は良くなりませんでした。

島の牛は、次から次へとこの病気にかかっていきます。大切な牛が病気で死んでしまうので、島の人たちは、困り果てていました。

島に、一隻の小さな船がやってきました。船には、男の人が一人と犬が一匹乗っていました。

男は、島の人たちに言いました。
「私は、医者です。この島で、奇妙な病気が流行っていると聞いて、やって来ました。その病気を研究して、治療の方法を見つけ出したいと思っています。本当にその病気をなくすことができるのか、正直なところわかりません。でも、できるだけのことをするつもりです。ぜひ、私をこの島に置いてください」

島の人たちは、それまで、医者という人にあったことがありませんでした。研究とか治療とかいわれても、それがなんだかわかりません。けれども、その人があまりにも一生懸命頼むので、島に住まわせてあげることにしました。

(つづく)