ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

天国の秘密(1)

2008-04-21 | 放蕩息子Part2
ある日、ある男の人が亡くなりました。そして、彼は、天国の入り口に立ちました。それは、人がたった一人通るのがやっとの小さな門でした。しばらく列に並んで、男は、順番を待ちました。

門のところまで来ると、そこには、カウンターがありました。カウンターの天使が、男に名前を聞きました。男が自分の名前を告げると、天使は、後ろの棚にびっしりならんでいるファイルから一冊取り出して、ページをめくり、男にもう一度名前を確認しました。ファイルと照合ができると、天使はにっこり笑って、「ようこそ天国へ」と言い、バーを開いて、門の中に入れてくれました。

男は、ほっとして、門の中を進みました。


するとすぐに、また天使が立っていました。「セキュリティチェックです。手荷物をこちらに載せてください」とベルトコンベアーみたいなところを指差しました。男は、担いでいたバックパックをその上に載せると、ベルトが動いて、荷物は機械の中に入っていきました。機械の向こうには、別の天使が座っていて、モニターを眺めていました。その天使は少しけげんそうな表情をして、立っている天使に合図しました。

その天使は、ベルトに乗って機械の向こう側から出てきた荷物を、ちょっと離れたところにあるテーブルの上にていねいに置きました。そして、微笑みながら、「かなり重たいですね。中を確認させていただいてよろしいでしょうか」と聞きました。男は、実は、ちょっとドキドキしました。それでも断るわけにはいきません。「ええ、どうそ」と言うと、天使が「開けていただけますか」と言います。男は、緊張しながら、バックパックのチャックを開きました。

天使「これはなんですか」
男 「これはとても大事なものです」
天使「どうして、これを天国に持ち込みたいのですか」
男 「はい。私の人生をかけて手にしたものなのです。だめでしょうか」

天使は言いました。「そうですね。ダメというわけではないのです。ただ、天国でこれらのものを持ち歩くのは、どうかと」
男は言いました。「いいえ。ここに一生の労があると言っても過言ではありません。重さなんて、何でもありません。ぜひ、持ち込ませてください」
天使は言いました。「まあ、あなたがそこまで言うなら、かまいませんが・・・」

男は、チャックを閉め、重たいそのバックパックを背に担ぎ、歩き出しました。後ろから、天使の声がしました。「ご自分の家に行かれる前に、ぜひ、天国見所ツアーに行ってください。ようこそ天国へ」

(つづく)