ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

最後の戦い(1)

2007-12-24 | 放蕩息子Part2
動物王国は、いつの頃からか、夏ばかりが続くようになっていました。照りつける太陽は、どんどん強くなるようです。前なら、木陰に入れば、涼しい風に吹かれて、ほっと一息できましたが、今では、風が吹けばかえって暑く感じるほどです。小川の水は煮えているような熱さです。あまりの暑さに、動物たちの食べ物である、草や果物も枯れてしまいます。動物たちは弱っていきました。このままでは、動物王国は滅亡してしまうでしょう。

この暑さは、赤い魔女によって作り出されていました。赤い魔女は、動物王国を自分のものにしようとして、続々と赤鬼たちを送り込みました。赤鬼たちはひっそり影を潜めていたので、動物たちは、赤鬼たちの存在に気がつきませんでした。赤鬼たちは、自分たちの数が増えてくるにつれて、次第に悪さをするようになりました。赤鬼たちが悪さをすればするほど、動物王国は暑くなっていきます。暑くなればなるほど、動物たちは弱くなるので、ますます赤鬼たちは我が物顔に悪さをします。動物たちが、赤鬼たちを何とかしなければと考え始めたときには、もうすっかり手遅れ、でした。

動物王国の王様、ライオンが、動物たちを集めて、話をしました。

「私たちの王国は、今、滅亡の危機に瀕している。暑さのために、たくさんの仲間たちは、すでに力を失っている。また、食べ物も少なくなってきた。赤鬼たちは増え、強くなるばかりだ。このまま手をこまねいていては、近く、王国は赤い魔女にのっとられてしまい、私たちは死に絶えてしまうだろう。」

ライオンは、一本の細い糸を取り出しました。
軽く引っぱると、糸は簡単に切れてしまいました。

「一本では弱い糸も、
 こうして、寄り合わせると、
 強くなる。」

ライオンは、太い綱を取り出しました。
どんなにひっぱっても綱は切れません。

そして、言いました。

「さあ、みんな、最後の戦いのときが来た。戦う力の残っている者は、武器を持て。勇気のない者は、砦を守れ。弱っている者は、勝利の歌を歌え。誰も、戦いに加わらない者がいないように。動物王国のみんながひとつとなって戦うのだ。」

(つづく)