三方五湖の湖のひとつ、三方湖にいる天然うなぎは、普通のうなぎに比べて口が細く尖っている。前ビレから口先までが長く、おへそ(肛門)より後ろの部分、尻尾が太く長い。
これは、三方湖に生息する沙蚕(こがい)や、手長エビを食べているからだ。沙蚕は淡水湖では生息しない。三方五湖は、日向湖(ひるがこ)が海水、久々子湖(くぐしこ)・菅湖(すがこ)・水月湖(すいげつこ)が汽水(海水と淡水が入り混じっている)、三方湖は淡水の湖だ。
ところが、三方湖は、実際には水月湖との境界の辺りが微かに海水が混ざっており、沙蚕が生息するのに適しているらしい。しかも水深が1.7mくらいでうなぎが生息するには快適な深さだという。
三方湖のうなぎは、泥底に生息する沙蚕を好んで食べるため、口が細くなっている。この口細青うなぎが美味しいのは、この沙蚕を食べているからだという。さらに、手長エビを食べるためにからだを丸く回転させ、尻尾の筋肉が発達し、太く長くなるのだという。
この口細青うなぎ、三方湖にいるうなぎ全てが口細青うなぎではないらしい。水月湖との境界辺りで沙蚕を食べて育っているうなぎだけが、口細青うなぎであり、もっとも美味いうなぎなのだ。脂っこくなく、繊細な味、皮はパリッとしている。とにかく大味ではない。主人みずから漁に出てうなぎを捕ってくるという「うなぎ淡水」はこの口細青うなぎにこだわっている。ここのご主人は、全国のうなぎを食べ歩いたが、この三方五湖の環境で育った口細青うなぎが一番うまいという。
ここ三方湖のうなぎは越冬する。いわゆる冬眠だ。水温が12度を下回ると餌を食べなくなる。ちょうどこれからの時期、越冬するために、餌をたくさん食べ一番脂が乗っている。口細青うなぎを食べるなら、11月頃が最高に美味い。1月、2月は越冬中のため、天然うなぎはあまり捕れないという。
本当に美味いうなぎを食べたいなら、今の時期を逃してはいけない。