話が続けて出来そうなので、『今、半分空の上にいるから』を続けます。
公吉に会う前、大学1年の禄郎が刑事さんと知りあった時の話です。
10月のある秋の日の午後12時半頃。
学校の図書館で課題に取り組んでいた禄郎は、必要な本だけ借り、急いで鞄に詰めました。
今日は13時10分発の新幹線で、このまま東京へ帰省する予定でした。
今にも雨が降りだしそうな空の下、駅に向かう通りを歩いていた時、禄郎は突然周囲を物騒な雰囲気の男達に囲まれました。
「おう、ちょっとこっちこいや。」
禄郎は男達に路地裏へ連れて行かれました。
「お前か。最近薬を売ってんのは?」
禄郎は否定しました。
「いや、何の事かさっぱり分かりませんが。
しかもヤクじゃなくて、クスリ?」
「本当にこいつか?」
男の一人が、他の男に聞きました。
「なんやそうゆっとったで。」
「あの…、誰かと間違えているかと。」
禄郎が訴えた時、少し離れた空が光り、しばらくして雷鳴がなりました。禄郎の目に雷光に映った何かが見えました。
「あなた方って、もしかして、こんなマークの方ですか?」
禄郎は指で代紋らしきマークを宙に書きました。
「そうや。」
一人が答えました。
「そこの人だけ、そのマークが見えないんだけど。」
禄郎に指差された男は激怒しました。
「何ぬかしとんねん!おう!?」
禄郎の目に、怒った男の背後に黒い亡霊達が張り付いているのが、はっきり見えた瞬間、少し離れた木に稲妻が落雷しました。
「わっ!!」
禄郎と男達はその場からふっ飛ばされました。
「…何なんだよ!!一体…。」
禄郎が体を起こして目を開くと、全然違う景色の場所にいました。
「ここ東京の実家の庭だ…。……あ、でも半分天上界にいるのか。」
禄郎は慌てて鞄を肩から掛けているのを確認すると、ほっとして息を吐きました。すると、禄郎の目の前に雷(いかずち)を操る神様が現れました。
「驚かせたね。」
建御雷神之男神は禄郎に話し掛けました。
「面倒事に巻き込まれていたので助かりました。」禄郎は答えました。
「ちょっと君に人を探してもらいたいんだけど。」
「人?」
「君と同じ、半分天上界の力を持った青年。」
「半分天上界の力?」
「探している内に、自然に出会えるから、会ったら須佐之命の下まで連れて行ってほしい。」
「はあ…。」
「君と須佐之命の契約はそこで終わる。」
「やります!」
禄郎はキッパリ言いました。
建御雷神之男神は微笑むと半分天上界から消えました。
禄郎は地上界に降り、鍵を開け、実家の玄関の中に入ると、急に強い目眩に襲われ、その場で倒れ込んで、意識を失ってしまいました。
そして倒れたまま、夕方帰って来たお母さんに119番通報され、救急車で病院に搬送されるはめになりました。
ただ、禄郎が幼い時に半分天上界の力を持った頃から、しばしばある事で、一日入院しても結局原因不明のまま回復し、そのまま退院になりました。
退院後、数日間実家で過ごし、用事も済ませて、大学に戻りました。