今、半分空の上にいるから

『硬式野球部を造ってみたら』からタイトル変更しました。
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今、半分空の上にいるから 雷(いかずち) その2

2017-07-31 00:31:23 | 今、半分空の上にいるから ② (完結)
 大学に戻った禄郎が図書館の閲覧用の新聞で調べると、あの日、男が一人変死していると言う記事を知りました。
 
 驚いて読むと、どうやら、雷に撃たれて亡くなったのではなく、病死の様子でした。

 数日後、大学にいる禄郎の下に、年配の刑事と若い刑事が二名訪れました。

 「菖蒲禄郎君?」
 「ちょっと、話を聞きたいんだけど?」

 「はい…?」

 禄郎はおそらく男が変死した件だろうと思いましたが、直後に東京に飛ばされた事の説明が出来ないので、最初から黙っている事にしました。

 「君、丁度一週間前に、駅近くの路地でヤクザ風の男達に絡まれなかった?」

 「いいえ。」

 「君に似た大学生ぐらいの子が絡まれていたと言う、同じ大学の学生の目撃証言と、近隣の住人の110番通報があるんだけど?」

 (110番通報されてたのかよ…。)
禄郎はやれやれと思いましたが、否定しました。
「その日は大学から、新幹線で東京の実家に向かいましたので。」

 「何時の?」

 「13時10分発上りです。ヤクザ風な人達はなんて言ってるんですか?」
禄郎は刑事達に聞いてみました。

 「それが、落雷のショックで皆前後の記憶が曖昧になっていて、ちっとも要領を得ないんだ。」
若い刑事が答えました。

 (無関係な素人を追い込んだのを警察に追及されると、面倒だもんな。)
禄郎は思いました。

 「午後1時頃に、辺りに雷が鳴ってたの知ってる?」
年配の刑事が聞きました

 「はい。何か結構近くに落ちましたよね。」

 「雷が落ちた時は何処にいたの?」

 「駅に行く途中でした。」

 「で、13時10分発の上りの新幹線に乗ったと。」

 「途中の新大阪でのぞみに乗り換えました。」
禄郎は大抵いつも利用する様に説明しました。

 「何時の?」

 「時間までは…。その日は体調が良くなかったので、途中の事はあまりはっきりと覚えていません。」
禄郎は誤魔化しました。

 「体調が悪かったの?」

 「東京の実家に着いたら倒れて、救急車で呼ばれて、入院しました。」

 「入院!?」
刑事達は驚きました。

 「一日で退院しましたが。」

 「大丈夫なの?」
若い刑事が心配して聞きました。

 「あ、もう全然大丈夫です。」

 「救急車で搬送された時間は分かる?」
年配の刑事が聞きました。

 「午後5時過ぎ頃だったはずです。」

 「午後5時過ぎかぁ。」
若い刑事が手帳を確認しながら言いました。

 「何か?」

 「ああ、いや、変死者の死亡推定時刻が落雷の直後ではなく、しばらく経った、午後1時15分頃だからさ。」

 「はあ。」

 「君の家、東京駅からどのくらい?」

 「乗り換えや徒歩も合わせて、移動時間全部で1時間ぐらいです。」

 「そうなると、午後1時10分の新幹線に乗らないと、午後5時過ぎに実家には居られないな。」
年配の刑事が考えながら言いました。

 「人違いだと思いますよ。」
禄郎は言いました。

 「やっぱり人違いなんですかね?」
禄郎と別れてから、若い方の刑事鈴木が聞きました。

 「いやあ、冷静なもんだね。」
年配の刑事の佐藤が言いました。
「まるで警察が来るのを知ってるみたいに。全く無関係で、突然警察に事情を聞かれたら、普通もう少し動揺するけど。」

 「うーん、そう言えばそうですね。警察が何をそんなに調べているのかとか、こちらの事を全く聞いて来ませんでしたね。」

 「彼、見た感じでは、薬を扱っている風には見えないがな。」
佐藤は言いました。

 「結局何情報だったんでしょうね?被害者の病死も薬物のオーバードーズっぽい感じですね。」

 「検死結果見るとそうだな。東京行って彼のアリバイの裏付けをしないと。」佐藤は言いました。

 「そうですね。」
鈴木も頷きました。
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小説
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