ぼくは、自分に、言い聞かせた
たぶん、ぼくは、これから、傷つくことになる
でも、これは、自分が、長年望んできたこと
これが、夢を叶えるということだ
逃げてはいけない
夢を、叶えるんだ
ぼくは、手紙を書きながら、そんなことを思っていた
カジュアルな服に身を包んだ男性シンガーが歌っている姿を見ながら、ふと、思った
今までの人生は、この瞬間のためにあったんだと
勇気を出して、踏み出した旅へのはじめの一歩も、
墜落するんじゃないかと思いながら身をこわばらせていた20時間のフライトも、
ヘルシンキからここまで来る間に何度も味わってきた、街や人との出会いと別れも、
旅に出る前のぼくなら、あと一歩、たったの一歩、勇気を振り絞って、踏み出すだけで、夢が叶う、そんな場面に、立つこともなかった
たとえ、そんな場面に立ったとしても、背を向けて、その夢から、逃げ出したに違いない
旅に出る前のぼくには、何もなかった
勇気も、自信、それらを生み出す、積み重ねた経験も
でも、その時のぼくには、最後の一歩を踏み出すために必要なものが、すべて、揃っていた
同時に、後悔もあった
どうして、今になって気づいたんだろう
すべての過去の積み重ねが、人生に訪れる、大事な戦いの勝敗を、決めるのだ
勝ち負けに、運は関係ない
幸運とは、その勝負に出会えること
そして、努力を怠らずに、積み上げてきた者だけが、その戦いに勝ち、チャンスをものにすることが、幸せを手に入れることが、できるのだ
ぼくは、多分、傷つくことになる
ぼくは、もう一度だけ、自分に、そう言った
でも、それは、旅に出たから、勇気を出して、戦ったから、手に入れることのできる、宝物なんだ
旅に出なければ、傷つくことすら、できないまま、大切なことに気づくこともできないまま、退屈に、大切な時間を、浪費することになっていたのだろう
世界を憎みながら
ぼくは、すでに、幸せだった
恐れることなんて、何もなかった
5/7/13:21
ぼくは、夢を叶えた
あれほどまでに、満ち足りた1時間は、それまでの旅どころか、その何倍も長い人生の間にもなかった
それから、しばらく、その場に腰を下ろしたまま、呆然と、幸せを、かみしめていた
それから、さらに、しばらく経ってから、ぼくは、立ち上がり、カフェに行って、キャロットケーキとアメリカンコーヒーを口にした
それから、ぼくは、キングスクロス駅に行って、ハリーポッターショップに入り、ルーナの杖を買い、パブに入って、ダークビールを飲み、フランスと形の違うコンセントについて話を聞いたイギリスのおじさんに絡んで一緒に写真を撮らせてもらい、グランボロー駅について駅員さんに伺い、彼女を笑わせ、お兄さんにも聞いたが問題は解決せず、仕方がないからカンタベリー大聖堂まで歩こうと思い、いい感じに人生を積み上げてきた感じの老夫婦にカンタベリーまでの道を尋ねたはいいけど、思いの外離れているのだという事実を聞かされ、仕方がないから駅の周りを歩いていたら大英図書館と大英博物館が近くにあるのだということをしない地図によって知らされ、向かった大英図書館が閉まっていたので、道路を渡り、駅方面に向かい、出くわしたパブでいっぱい引っ掛けようと思ったらいっぱいじゃきかなくて、ノリの良いパブで働くにーちゃんやねーちゃんに、ビールやフィッシュアンドチップスを頼んだは良いけど物足りなくて、フィッシュアンドチップスのフィッシュだけってのぁーできますかねー、厨房に聞いてきますねええできますよ、じゃー頼みますわイギリスの料理はあんまりおいしくないって友達から聞いてたけどそんなことないねここのフィッシュは最高だよ、私どものフィッシュがありがとうって言ってますHAHAHAHAHAAAAaaaaaaaaaAAA!!!!!!!!!!!! なんて笑いあって、スポーツを楽死んで、トイレに行って、トイレから出てきたときに出会ったミナちゃんサイズの女の子に、ビールは好きかいって聞いたら、可愛い笑顔でノーって言われて、あんなちっちゃい子がパブにいて良いのかよとか思いながら席に戻ったら女の子が目の前のボックス席のご家族に合流して、時折こっちを見てくるミナちゃんに手を振ったり笑いかけたりしながら大画面のサッカーを見て、イギリスにおけるアジア人の扱いに少しだけ寂しくなりながら、俺は俺だ、と自分を励ましていると、女の子がこっちをニヤニヤと見て立っているのに気がついて、ああ帰るんだぁ、と思いながら、彼女に、笑いかけて手を振ったら、満面の笑顔で飛び跳ねていて、やっぱり子供って可愛いけどユーキくんだけは変態だな、とか思いながらビールを飲み、パブを出て、キングスクロスで、おねえさんを呼び止め、酔っ払っていることを笑われながら、国際バスターミナルまでの道を聞き、何が何やらなままに日本人が大好きだという彼女の友達に紹介され、ふと、おねえさんの目が綺麗だというけどに気がつき、ダンスに誘うも真顔で断られ、寂しい気分のまま、キングスクロスのすぐ隣の駅からウォータールーに向かい、そこでボーンアルティメイタムに思いを馳せながら、少しだけ駅の周りを歩き、馬鹿高いWASABIのおにぎりを笑い、地下鉄を使って、国際バスターミナルまで行き、閉まりきったシャッターに背を預け、通りの向かいの物陰で用を足していく老若男女の酔っ払いや、輝く星空を見ながら、ぼくは、眠りについた
たぶん、ぼくは、これから、傷つくことになる
でも、これは、自分が、長年望んできたこと
これが、夢を叶えるということだ
逃げてはいけない
夢を、叶えるんだ
ぼくは、手紙を書きながら、そんなことを思っていた
カジュアルな服に身を包んだ男性シンガーが歌っている姿を見ながら、ふと、思った
今までの人生は、この瞬間のためにあったんだと
勇気を出して、踏み出した旅へのはじめの一歩も、
墜落するんじゃないかと思いながら身をこわばらせていた20時間のフライトも、
ヘルシンキからここまで来る間に何度も味わってきた、街や人との出会いと別れも、
旅に出る前のぼくなら、あと一歩、たったの一歩、勇気を振り絞って、踏み出すだけで、夢が叶う、そんな場面に、立つこともなかった
たとえ、そんな場面に立ったとしても、背を向けて、その夢から、逃げ出したに違いない
旅に出る前のぼくには、何もなかった
勇気も、自信、それらを生み出す、積み重ねた経験も
でも、その時のぼくには、最後の一歩を踏み出すために必要なものが、すべて、揃っていた
同時に、後悔もあった
どうして、今になって気づいたんだろう
すべての過去の積み重ねが、人生に訪れる、大事な戦いの勝敗を、決めるのだ
勝ち負けに、運は関係ない
幸運とは、その勝負に出会えること
そして、努力を怠らずに、積み上げてきた者だけが、その戦いに勝ち、チャンスをものにすることが、幸せを手に入れることが、できるのだ
ぼくは、多分、傷つくことになる
ぼくは、もう一度だけ、自分に、そう言った
でも、それは、旅に出たから、勇気を出して、戦ったから、手に入れることのできる、宝物なんだ
旅に出なければ、傷つくことすら、できないまま、大切なことに気づくこともできないまま、退屈に、大切な時間を、浪費することになっていたのだろう
世界を憎みながら
ぼくは、すでに、幸せだった
恐れることなんて、何もなかった
5/7/13:21
ぼくは、夢を叶えた
あれほどまでに、満ち足りた1時間は、それまでの旅どころか、その何倍も長い人生の間にもなかった
それから、しばらく、その場に腰を下ろしたまま、呆然と、幸せを、かみしめていた
それから、さらに、しばらく経ってから、ぼくは、立ち上がり、カフェに行って、キャロットケーキとアメリカンコーヒーを口にした
それから、ぼくは、キングスクロス駅に行って、ハリーポッターショップに入り、ルーナの杖を買い、パブに入って、ダークビールを飲み、フランスと形の違うコンセントについて話を聞いたイギリスのおじさんに絡んで一緒に写真を撮らせてもらい、グランボロー駅について駅員さんに伺い、彼女を笑わせ、お兄さんにも聞いたが問題は解決せず、仕方がないからカンタベリー大聖堂まで歩こうと思い、いい感じに人生を積み上げてきた感じの老夫婦にカンタベリーまでの道を尋ねたはいいけど、思いの外離れているのだという事実を聞かされ、仕方がないから駅の周りを歩いていたら大英図書館と大英博物館が近くにあるのだということをしない地図によって知らされ、向かった大英図書館が閉まっていたので、道路を渡り、駅方面に向かい、出くわしたパブでいっぱい引っ掛けようと思ったらいっぱいじゃきかなくて、ノリの良いパブで働くにーちゃんやねーちゃんに、ビールやフィッシュアンドチップスを頼んだは良いけど物足りなくて、フィッシュアンドチップスのフィッシュだけってのぁーできますかねー、厨房に聞いてきますねええできますよ、じゃー頼みますわイギリスの料理はあんまりおいしくないって友達から聞いてたけどそんなことないねここのフィッシュは最高だよ、私どものフィッシュがありがとうって言ってますHAHAHAHAHAAAAaaaaaaaaaAAA!!!!!!!!!!!! なんて笑いあって、スポーツを楽死んで、トイレに行って、トイレから出てきたときに出会ったミナちゃんサイズの女の子に、ビールは好きかいって聞いたら、可愛い笑顔でノーって言われて、あんなちっちゃい子がパブにいて良いのかよとか思いながら席に戻ったら女の子が目の前のボックス席のご家族に合流して、時折こっちを見てくるミナちゃんに手を振ったり笑いかけたりしながら大画面のサッカーを見て、イギリスにおけるアジア人の扱いに少しだけ寂しくなりながら、俺は俺だ、と自分を励ましていると、女の子がこっちをニヤニヤと見て立っているのに気がついて、ああ帰るんだぁ、と思いながら、彼女に、笑いかけて手を振ったら、満面の笑顔で飛び跳ねていて、やっぱり子供って可愛いけどユーキくんだけは変態だな、とか思いながらビールを飲み、パブを出て、キングスクロスで、おねえさんを呼び止め、酔っ払っていることを笑われながら、国際バスターミナルまでの道を聞き、何が何やらなままに日本人が大好きだという彼女の友達に紹介され、ふと、おねえさんの目が綺麗だというけどに気がつき、ダンスに誘うも真顔で断られ、寂しい気分のまま、キングスクロスのすぐ隣の駅からウォータールーに向かい、そこでボーンアルティメイタムに思いを馳せながら、少しだけ駅の周りを歩き、馬鹿高いWASABIのおにぎりを笑い、地下鉄を使って、国際バスターミナルまで行き、閉まりきったシャッターに背を預け、通りの向かいの物陰で用を足していく老若男女の酔っ払いや、輝く星空を見ながら、ぼくは、眠りについた