随想

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2016-05-20 12:41:29 | 日記
商品と化した絵画

 1907年にピカソの『アヴィニョンの娘たち』が成立した。一般にこれを以て前衛絵画が始まるとされている。
実際、当時ではまさに前代未聞の絵画だ。売春婦とおぼしき裸婦が計五人画かれているが、左半分に画かれた裸婦はまだ人間らしい俤を留めているものの、右側の二人はまるで怪物だ。ピカソのアトリエの現場で、直接それを見て感心したのは、画商のカーンワイラー、一人だけである。先輩格の画商、ウーデも、それこそ大先輩の画商、ヴォラールも、また同じ画家仲間のブラックもドランも、それを賞讃するどころではなかった。ドランに至っては、「ピカソはそのうちあの絵の後ろで首を吊ることになるだろう」とまで言っている。これが、率直な正直な評価ではあるまいか。この初心の評価を大事にしたい。特に後期印象派にいち早く目をつけたヴォラールの評価は、一目も二目も置かれていい。
 しかし画商、カーンワイラーはその絵に購入の意欲を示し、更にピカソのほかの絵も買い続けて、画家の生活を支えている。彼はほかにもレジェ、ブラックなどの絵を買い続けている。つまりピカソをはじめとする立体派を支え続け、世に広めたのは、この画商だといっていい。つまり先に言った「共同幻想」の最初の有力な仕掛け人は、この画商である。
 こうなるためには、それなりの背景があった。(つづく)