嘆き人形

年中お人形遊び

Repertoire #1 / 「死骸の愛人」

2007-02-24 12:30:48 | ノベル

 

私は十字架。

人が死ぬたびに、私は生まれる。

死骸の飾りとして、命を失われた者の帰る場所。

私の体の上に、死者の名を刻む。

私はかの死者の代わりに生きる。

弔いではなっく、ただの思い出の印しとして、土の上に立つだけ。

私は私であって、同時に私じゃない。

私は死者の代り、人は私を私として見ない。

見ているのは私の下で眠ってる死骸だけ。

それでも私はは喜ぶ、私は生まれる。

私は必ず生まれる、どんな時代でも。

だから早く死んでください、私のために。

人の死亡こそが、私の生き甲斐。

そして私を見てください、たとえ心の奥に棲むのは別人でも。

それでも構わない。

だって…貴方もいずれは死ぬですもの。

その時、私は貴方を優しく包んであげる。

貴方の名は私が継げる。

だから…お別れを言いなさい、貴方の肉と霊魂。

私の中で安らかに眠りなさい。

そして、二度と目覚めないことを、私は祈る。

 


------お休みなさい、私の大好きな人たち。