ファミリー メンタル クリニック

児童精神医学,サッカー,時にテレビや映画、Macのネタ。
要するにひとりごと・・・

女王の教室から考えたこと 8 コイズミ的なものと

2005年09月24日 | 児童精神医学
このドラマが始まったときに,阿久津先生が和美ちゃんへのいじめが問題になり,更にクラス全員がこの子にいじめを激しくしていっても止めないので,教育上好ましくない!!番組を中止する声が大きかったらしい。日テレには40万もの反対のメールが入ったとか。

さて番組の第1回目から出てくる社会構造は,世の中は勝ち組と負け組がハッキリした世の中に変わってきた前提でのべられています。アメリカと同じようになっていくのです。なぜならそれがコイズミ的だからです。(もちろんそんなことは選挙前に放送されていた番組なので言わないが,もし露骨に言っていたら確実に放送中止だったでしょう。政治的な理由なのだが,教育上小学生や中学生に見せることが出来ないからとか言って。でも官僚も自民党もこんな番組は子供だましだからと放っておいたのが幸いでしたね。見る目のない人が多くて。)
番組で,6%の人しか幸せになれないとか,特権階級の人は良い医者に順番も待たずに治療してもらえるといった内容のことを話してます。(記憶がはっきりはしませんが)
ここに反応してしまうと,お父さんやお母さんは無意識に,負け組になる恐怖からこんな番組見るのはやめなさいと,無意識に発言してしまうのです。子どもに無用な不安を与えるからとか言って。

6年3組の生徒はコイズミ的な日本(アメリカ的な貧富のある世界)になっても生きていけるでしょう。
きっと周りの意見に流されず,世の中で知らないことがあると勉強するから。
好奇心に対して,自分の疑問に対して素直に答えを見つけようとするから。
暴力や感情だけでは勝ち残れないことを知っているから。
更に権力が必ずしも正しいものではないことを知ったから。

ハナシは変わります。最近blogをあちこち見ていて思うのは,コイズミ的なものとは,アメリカ的なものなのかなあと。
僕は開業医ですが,日本の医療システムは世界で例がないようなシステムです。
頭痛がするからMRI・・・イギリスに国に100台もないのでは・・・沖縄だけで10台以上はあります。
生活保護の人でも大学病院で教授の手術を受けることが出来ます。
オランダで生活していた方は精神科が近くにないのでドイツまで受診していたと言ってました。
日本くらいのものです。貧富の差もなく,どこの病院でも受診できるのは。
ではアメリカではどうでしょうか?各人の加入する保険制度の中でしか病院や医者を選べません。
貧富の差が歴然と出てきます。
TVドラマERではそんな場面がいやと言う程出てきます。
小児科医のロス先生が喘息の発作が激しい子どもの治療で,そのままでは貧しい家庭のこの子の保険ではちゃんとした治療が出来ないので,検査値をカルテで書き換えて,治療が出来る病院に行くように紹介した場面がありました。
これが現実だとその医者は保険会社から告訴され,その病院を辞めるしかないのです。
選挙前に医師会は何故そんなキャンペーンをしなかったのか不思議です。
案の定医療費抑制,保険点数改訂を打ち出してます。
今度の選挙は決して郵政民営化選挙ではないのは分かり切ったことだったのに。

さて,女王の教室で阿久津先生は,「今回の選挙では自民党が圧勝するでしょう。
だからアメリカのような貧富の差が増大する世界に突入していきます。あなた方の大半は負け組になります。
中流階級で成り立つバブル前の日本社会には戻れないし,残念ながらあなた方のお父さんお母さんは,そこまで考えて投票することはないでしょう。だから私はあなた達に現実を教えているのです。」そんなことまで言いたかったのかもしれません。

女王の教室に反論した大人は,教育的にこの番組は良くないと感情的に言っただけなのでしょう。
そうでなければ,無意識に自分が負け組になり,悲惨な生活を強いられる恐怖に耐えられなくなり,こんなことはどうせテレビのハナシだからといって逃れているのでしょう。
コイズミ的な政治がこのままいくと,
病気になってもこれまでの様にいつでも高度な医療が受けられる保証はありません。
景気が回復したといってますが,それは大企業でリストラ進んだことの裏返しです,ソニーさえ1万人リストラです。
厚生年金が高騰したので会社は正社員の雇用を減らしてくるでしょう。
真矢の言った通りの世の中ではないですか?

女王の教室で阿久津先生が醸し出す闇の世界は,もしかしてアメリカ的な(コイズミ的な世界が進んでいった先の)闇を映し出しているのかもしれない。
アメリカでの校内の事件は日本とは比較になりません。
そんな教育の荒廃を見つめる悲しいまなざしを,ぼくらはテレビから天海さんの表情から感じていたのかもしれません。

「その9 自己評価」へ続く

最新の画像もっと見る

8 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
TB有難うございました (旅限無)
2005-09-24 07:07:08
先日、某出版社の知人と話す機会が有りまして、彼がこのドラマを一度も観たことが無いとの事で、あらすじとサビを語ったところ、大きな衝撃を受けまして、早くソフトが発売されないかなあ、という事になりました。テレビ局は最終回での高視聴率でお祭り騒ぎらしいですね。でも、再放送やソフトの発売で騒ぎは再燃し、更に騒ぎは大きくなるのではないでしょうか?仰るように歴史的な選挙の直後に最終回が放送されたという偶然も、このドラマの歴史的な意義を増しているでしょうから、「小泉選挙記念」として多くの人が記録として再放送を録画したりソフトを購入したりするかも知れませんね。今回、医療制度の問題を題材にした御指摘、とても貴重なものだと思いました。
返信する
土曜日ですが (なかまた)
2005-09-24 07:48:01
これから出勤です。コメント拝見しました。

女王の教室から考えたことのシリーズで書いたblogですが,はしょって舌足らずの部分もありますが,それこそ一気呵成に書き上げたので,乱文 ごめんなさい。

この4年間行われてきた改革は,社会の大きな不安の上に成り立っているのですが,偏差値教育を行ってきた成果が十分に現れたようです。自分で物事を判断することが出来ない国民が十分に育ってきたので,次の一歩を狙ってくるのでしょうね。

公立学校廃止とかね。だって民間で出来ることは民間で!です。

私立の学校には毎年数十人も東大に合格している高校があります。

そのノウハウで公立高校も勉強させて,優秀な人材を作るのが国歌100年の計だとか,美辞麗句を並べ立て,完璧に文部省の支配下に置くのではないでしょうか。少し妄想的でしたかね。
返信する
Unknown (バクダットカフェ)
2005-09-24 09:02:41
「女王の教室」ついに終わりましたね。

ちなみに、こちら、関東圏では、最終回当日にも『最終回直前スペシャル!』みたいなのが1時間番組としてやっていました。



さて、院長先生のようなアカデミックなことは言えないのですが(笑)、最終回を見た感想を。

以前、ドラマ半ばくらいの感想として『「教師と子ども」を超えて「子どもと大人」の関係の在り方について考えさせられました。』と投稿したのですが、今は、さらに、『「教師と子ども」を超えて「子どもと大人」の関係の在り方も超えて、「自分」について考えさせられました。』といったところでしょうか。



院長先生のおっしゃるように、各人の無意識にはたらきかけるロールシャッハ的な番組だったようです。



文言はうろ覚えですが、反応した部分は(笑)、『将来のことばかり考えて不安になるのはやめなさい』『今できることをやりなさい』でした。これは子どもだけではなく、自分も含めた大人にもいえることですね。自分は特にちょうど、将来のことばかり考えるだけで、目の前のことに手をつけず現実逃避していたところだったので思いっきり反応したのかも知れないですけど(笑)。



でも、選挙的に考えると、「定年後に年金がちゃんともらえるか?ばかり気にするのはやめなさい。今できること(選挙)をやりなさい。」ってことなのか?!そうなると、もしかしたら、視聴率のみならず、投票率の向上にも少しは貢献したのかもしれないですね。

返信する
Unknown (バクダットカフェ)
2005-09-24 09:27:20
追伸です。



「女王の教室から考えたこと」シリーズ、なるほどなあと、興味深く読みました。



『「女王の教室」の診察室』(仮題)



として、ドラマの脚本を精神分析的な側面から検証する&真矢と院長先生の対談(「まやさんは、小学生の頃、どういう子どもだったんですかね」みたいな)&天海さんや製作サイドの放映中の心理などをとりあげるような企画本、読みたいですね。日テレさんに期待!です。

院長先生、企画依頼があったら受けてくださいね。
返信する
バクダットカフェさんどうも (なかまた)
2005-09-24 15:20:41
相変わらずするどいご指摘ありがとうございます。

番組前半で女王の教室はこのblogでとりあげました。毎週欠かさずみたドラマは、本シーズンでこれだけ。

気になるドラマでしたね。このドラマの前半のコメントは、おっしゃるとおりロールシャッハ的な構造なのです。(直接は表現しませんでしたが)

優れた脚本や演技とはこのようなものです。

ただ今回のシリーズ8は政治的な発言で少し趣旨が阿久津先生からそれてましたが。
返信する
森田氏の指摘です (なかまた)
2005-09-25 21:43:37
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/

2005.9.24

2005年森田実政治日誌[359]

日本の政治に関する米紙NYタイムズ報道に抗議した日本外務省のナンセンス



参考にどうぞ
返信する
こんにちは (azaminosoturedure)
2005-09-26 10:32:52
こんにちは、ドラマの感想興味深く拝見しました。私は、実は全くこのドラマ観てないので、(天邪鬼なもので、高視聴率と聞くと大体見なかったりします)語る資格はないと思いますが、私がふっと思うのは、こういうドラマを子どもに見せるのはどうだろうと思うのです。知り合いの子どもさんも見ていたようなのですが、大人が現代に対する問題提起的なドラマを観ることには異論はないのですが、経験も少なく影響されやすい子どもも観ていたという事実には何か違和感を感じます。印象でしか語ってないのですが、現実はそうであっても、実際の子どもの成長に必要なもの(もっとシンプルなメッセージ)は、あのドラマの中には無い気が私にはするんです。何か子どもの耳年眞的な状況を助長するのではないかと思うので。それと私が敬遠していた一番の原因はいかにも芝居がかった演技のせいかもしれませんが。最近の高視聴率と言われるドラマほど俳優さんの感情表現が平板(マンガ的)な気がして見る気がしないのですが・・。
返信する
番組HPでは (なかまた)
2005-09-26 14:37:40
azaminosoturedureさんどうも。

この番組は、見たくない人は見ないし、見ることがつらい人は見ないのだと思います。

ただ、最終回を前にした数回の番組公式HP掲示板では(と言うことは私もそれを覗いていたのですが(笑))、小学生からのコメントが多かったです。

案外、番組は番組と割り切っているようでした。大人の方が妙に感情移入が強かったのでは・・・と思いました。

これだけ熱く番組の感想を述べていますが、大量消費時代の現在はインディージョーンズの最後のように、この番組もその他大勢の一つにしか過ぎません。(でも・・・という気持ちはありますけど)
返信する