ことばを鍛え、思考を磨く 

長野市の小さな「私塾」発信。要約力、思考力、説明力など「学ぶ力」を伸ばすことを目指しています。

子どもに好かれたい?

2006年08月30日 | 学習一般
先日、昔の全日本男子バレーボールチームの物語をテレビでやっていました。
東京五輪で銅メダルに終わってから、ミュンヘンで金メダルを獲るまでの一大プロジェクトの話です。

まだ「プロジェクト」という言葉自体も浸透していなかったあの頃、実に綿密に構築された計画のもとに悲願の金メダルを掴んだのだということがよくわかりました。
そう言えば「ミュンヘンへの道」というアニメ番組がありましたが、あれもプロジェクトの一環だったようです。

その番組の中で、当時の全日本代表監督だった松平康隆氏がこんなことを言っていました。
長期的な見通しで選手を育てていた氏は、その場でいい顔をして選手を甘やかすのではなく、たとえどんなに憎まれても後になって感謝されるような指導をしたといいます。
それこそ、鬼になって選手に接したのでしょう。

こういう、いわゆる「シゴキ」についてはいろいろ問題もあると思いますが、氏は上記のことを親子関係にもたとえて語っていました。

「今、いい親と思われたい」という気持ちで子どもに接していてはダメで、子どもの将来を考えて厳しくすべきところは厳しくする、「クソオヤジ!」と思われても譲れないところは絶対譲らない...。
そんなことの大切さを説かれていました。

今の世の中の親子関係を見ていると、この辺りのタガが緩んでいるように見えて仕方ありません。
ここで叱ったら反感を持たれるのではないか、あまり厳しくするのも可哀想...などと、子どもの顔色を窺い、変に「物わかりのいい親」になっている例が多いのではないでしょうか。

まだ必要ないと思っていても、「みんなが持っているから」と言われれば中学生にも携帯電話を買い与える。
勉強もきちんとしてほしいと思っていても、部活で疲れて眠ってしまえば「好きなことに打ち込んでいるんだから」と放っておく。

子育てとか教育についての確固たる信念が持てない、自信がないということもあるでしょうが、「子どもに嫌われたくない」と安易に迎合している面も少なくないと思います。

いつだったか、何の話の時だったかは忘れましたが、長男に「そんなこと言ってるから子どもに嫌われるんだよ!」と言われたことがあります。
私はすかさず言い返しました。
「子どもに好かれようなんて、これっぽっちも思っていない!」

核家族化が進み「ニュー・ファミリー」という言葉が出てきた頃から、「友だちのような親子関係」が一つの理想とされ、「親の威厳」とか「頑固オヤジ」などは時代遅れであるかのような風潮が広まったのだと思います。

もちろん私も親にはさんざん反抗したし、戦前の家長制度のような、有無を言わさぬ独裁制を支持するものではありません。
それでも、ここだけは譲れない、これだけは筋を通すというケジメだけは大事にしたいと思っています。

今はどう思われても将来のことを考えて...。
これは教育関係者にも求められる思想ですね。
「友だちのような先生」「和気あいあいとした楽しい塾」というだけでは、子どもたちは決して伸びないと思います。

ただ最近、「厳しくしてくれ」という親が減ってきているのも感じています。
自分たちが厳しくしていないから、子どもが耐えられないと思っているのでしょうか?
かくして、甘やかされた王子様、王女様が次々と世に送り出されることになります...。


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文武両道

2006年08月23日 | 学習一般
私は野球が好きだ。
若い人にはサッカーの方が人気があるようだが、相撲にも共通するあの「間」は野球ならではの魅力である。
打者と投手の心理の読み合い、駆け引きなどが興味深い。

4点差、5点差くらいでは、最後まで何が起こるかわからないというのも野球(特に高校野球)の醍醐味であろう。
ゴールがなかなか決まらず、入っても1点ずつ、しかも時間の制約があるサッカーではこうはいかない。

また、ルールは複雑で多岐にわたるが、これが実に良くできている。
たとえば無死で1塁に走者が出ても、送りバントだけでは本塁まで帰って来られない。
2塁に走者がいるとき、1アウトが2アウトになるとチャンスがしぼんだように思えるが、その一方で走者は思いきったスタートが切れるので、ヒットが出れば得点の可能性が高まる。
野球のルールは知れば知るほど面白い...。

高校野球も、いろいろ批判もあるし私なりに問題点も感じてはいるが、いざ始まると夢中になってしまう。
長男が高校球児だったこともあり、地方大会にも結構通う。
子どもたちの母校が負けても、決勝戦は夫婦で観に行ったりするのだ。

今年は阪神が不甲斐ないので、その分高校野球に力が入っているかも...。

さて、前置きはここまで...。

今年の夏の高校野球はいつも以上に面白かった。
終盤に逆転で決着がつくゲームが多く、決勝戦は再試合にまでもつれこんだ。
仕事の都合上、夜のプロ野球はほとんどテレビ観戦できないのだが、朝からやっている高校野球なら結構見られるので、ずいぶん楽しませてもらった。

優勝した早実の斉藤投手は、大人気で家にも帰れないようである。
確かに素晴らしい投手だった。
真夏の甲子園で延長も含んで4連投し、なおあのスピードとキレ、コントロール...。
今すぐにでも阪神に欲しいくらいだ。

おまけにあの顔立ちとクールな振る舞い...。
女性ファンが放っておくわけがない。
昔の坂本や荒木、松坂以上のフィーバーぶりも納得が行く。

さらに、忘れてはならないのが早稲田実業の生徒だということ。
失礼ながら、私が都立高校を受験した頃の早実は、偏差値的には今よりずっと低かったのではないかと思う。
私の中に「実業」という校名に対する偏見があったのかも知れないが、早稲田高等学院に比べたら容易に入れるというイメージがあった。

それが、30年経って様相が大いに変わったらしい。
国分寺市に移転し、男女共学になり、商業科を廃止し、新しい早実に生まれ変わった。
中等部まででき、高校の受験偏差値は今や高等学院を上回るそうだ。

野球部の生徒も、スポーツ推薦で入学した者だけでなく、一般入試の難関をくぐり抜けてきたつわものも少なくないという。
斉藤投手も、受験時の評定(中学での)は平均4.4だったという記事を読んだ。

入学してからも学業優先という校風があるようだ。
野球部も試験休みはしっかり取るし、テストの成績が悪ければ練習に参加できないという。
斉藤も夜中の3時まで勉強してテストを乗り切ったそうだ。

まさに文武両道!
甲子園にはときどき「進学校」としての実績を持つ高校が出てくる。
以前の国立(西東京)小松(石川)慶応(神奈川)、今回も出場した今治西(愛媛)、今回初出場の福岡(富山)などなど...。

長野県予選でも、県立のいわゆる「進学校」が上位に残ることは多い。
練習環境の整った私立の強豪に負けて甲子園までは届かないことも多いが、これこそが高校野球のあるべき姿ではないか。

先日部活の功罪についての記事を書いたが、要は勉強と部活の切り替えが如何にうまくできるかである。
「部活のせいで」「勉強のせいで」というのは言い訳に過ぎない。
両立できる生徒にこそ部活をやる資格があるのであり、両立できないなら学業を優先すべきであると私は思う。


しかし、斉藤投手は文武両道に加え、ルックスまで良いのがシャクの種ではある。
神は三物を与えたか...。


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効率的な勉強法?

2006年08月16日 | 学習一般
「ウチの子は勉強の仕方がわからないようだ」
「時間をかけて勉強しているのに成績が伸びない」
...生徒の親からこんな声をよく聞きます。
だから、効率的な勉強法をアドバイスしてほしいということです。

私は本来、勉強の仕方は万人に共通するものはなく、ひとり一人が自分に合った方法を模索しながら身につけていくものだと思っています。
誰かから「はい、この通りにやりましょう」と言われてそれに従って、それだけでみんなが効果が出るほど、甘いものではないはずです。

それでも最近あまりに上記のような声が多いため、「勉強の仕方」という栞を作って中学生に配布しました。
学校での授業の受け方やノートの取り方、家庭での学習法、塾の活用の仕方、そして国・数・英の具体的なポイントなどにも一応言及していますが、最も量を割いているのは<原則>の部分...。
こんなことが書いてあります。

1:人に頼るな!
2:「わからない」を楽しめ!
3:間違いをおそれるな!
4:「めんどくさい」は禁句!
5:「覚える」のではなく「理解する」!
6:たくさんやろうとするな!


つまりは、このブログでもずっと話題にしてきたような内容を生徒向けにまとめたものです。

中には「総論はどうでもいいから、もっと具体的な勉強法を教えてほしい」という生徒や親がいるかも知れません。
でも先にも書いたように、これらの原則の上に、あとは自分で工夫してほしいのです。

金儲けもそうですが、「どこかにもっとうまい方法があるはずだ」「楽に成功できる方法を知りたい」と、幻想ばかり追いかけている人間が増えているように思います。
少ない努力であまり苦労せずに効果が上がる勉強法などあるはずないし、仮にあったとしても、安易にそれを与える塾にはしたくありません。

学校や塾に、何かを与えてくれることを期待しているだけでは絶対に伸びません。
理解できないと先生の教え方のせいにする、家庭ではうまく勉強できないから塾に頼る...。
特に親がこういう考え方を持っていると、ちょっと通って効果が確認できないとすぐに塾を変わる、いくつもの塾を渡り歩いてどれも中途半端...という状態になりがりです。

はじめから「効率的な勉強法」を与えることばかり考えていては失敗します。
まずは家庭での学習習慣をつけること、そしてコツコツ努力することを惜しまない姿勢を育てることが大切ではないでしょうか。
根本にそれがあれば、やがて自分なりの工夫で効果的な学習法を見つけ出すはずです。
学校や塾に頼るのではなく、逆にどう利用するかという主体性が大切なのだと思います。


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主語と述語

2006年08月09日 | ことば・国語
夏期講習が終わり、ようやくいつものペースに戻りました。
今回はいくつか新しい試みも採り入れたのですが、その一つに中学生対象の「国語力増強講座」というのがありました。

国語のリスニング、おかしな日本語を直す、句読点の位置による意味の違いを考える...など、このブログでも話題にした題材の他、物語の続きを考えたり、漱石の「三四郎」を使って語彙を増やしたりという教材も作成し、幅広い面から国語力を鍛える講座です。

その中で、これはお決まりの「主語・述語を見つける」という問題もやらせたのですが、これがまあ、思った以上にできないのです。
使った教材自体も難しめなのですが...。

たとえばこんな問題です。
ためしに皆さんも主語と述語を答えてみてください。
なお、いずれも複数あったり、一つもない(省略されている)ものもあります。

1:モンゴルにはこんなことわざがある。
2:君こそ、この役にふさわしいよ。
3:激しい風に加え、雨さえ降り始めた。
4:こんなにたくさん、象だって食べられない。
5:生きているって、どういうことだろう。
6:私たちのクラスでは、ヒロミツ君しか休んでいません。
7:こんな遅くまでどこに行っていたんだ!
8:体にピッタリくっついているのに、蒸れないぞ。
9:今年の夏は、ハワイで休暇を過ごしたんだ、二週間。
10:虫歯予防には、食後の歯磨きをすすめます。
11:日本の郵便制度を始めたのは、前島密だ。
12:青森で有名な果物はリンゴだ。
13:ぼくはチャーハン!
14:聞こえるでしょう、ほら、笛の音が。
15:妹も姉も、かわいくてやさしい。
16:野球は、1872年にアメリカ人によって日本に伝えられた。
17:カエルには、ヘソがない。
18:おや、カズエさん、どちらへ?


さあ、いかがでしょう?スラスラできましたか?

生徒の書く文章を見ていても、主語と述語がねじれているためにおかしな文になっているものが少なくありません。
そして言うまでもなく、英語を学ぶ上で主語と動詞についての意識と理解度の差は、その上達を大きく左右しますね。

だからこそこれらの問題をやらせたのですが、多くの教材ではまず主語を見つける練習をするようです。
で、そのあとに述語を抜き出す練習...。

この順番ってどうなんでしょう?
実際に解いてみればわかりますが、難問になればなるほど、述語を先に見つけた方がわかりやすいような気がします。

たとえば1:の文では、「モンゴルには」を主語とする子が少なくないのですが、述語「ある」に対する主語を考えれば、自然と「ことわざが」が主語だとわかると思うんです。
9:でも、述語が「過ごしたんだ」だとわかれば、「夏は」が主語ではなく、省略されている「私は」が主語だと思い至るはずです。

13:や18:のように述語がない場合はどうしようもありませんが、一般的には述語を探し出す練習を先に徹底する方がいいように思います。

もう一つ気がついたことがあります。
主語や述語が省略されているものでは特にそうですが、>英語ではどう言うかを考えると日本語の主語・述語が明確になるのです。

10:ではIを補わないと英文にならないし、13:もwantなりlikeがないと意味が通じません(まさかamじゃないですよね...)。
主語も述語もない18:では、さらにそのことが実感できます。
これを英語で言おうとしたらyouやgoが必要ですよね...。

先にも書いたように、日本語で主語・述語を意識することは英語の学習にも役立ちます。
と同時に、どうも英語で考えると日本語の主述関係にも敏感になってくるということが言えそうですね。
そしてそのことで、日本語の難しさに比べて、いかに英語の構造が論理的でわかりやすいか実感できると思うのです。

英語で考えるという体験の第一歩を、こんな形で始めるのも悪くないかなと考えています。


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立秋前なのに...

2006年08月03日 | 日々雑感
塾の夏期講習で疲れ切っていて、新しい記事がなかなかエントリーできません。
今日は、生きているということだけご報告!

梅雨が明けて、さすがの信州も猛暑です。
それでも夕方にはぐんと涼しくなりますが...。

昨日、クマゼミやヒグラシに混ざって、1匹だけツクツクホウシが鳴いていました。
いつもこの蝉が鳴き出すと「夏も終わり」と感じるのですが、今年はまだ立秋前ですよ...。

いろいろなところで環境や生態が狂っているのでしょうか?
ま、1匹くらい変わり者がいても不思議はないですが...。

今朝もその鳴き声を確認...なんだか応援したくなりました...。