デュプラメソッド「理想的な淡水水槽」
10.6. 水草の病気 2/3
※10.6. 水草の病気 1/3より続く
二酸化炭素(CO2)の不足は、水槽内の多くの水草が成長しなくなった時、すでに起こっている。そして二酸化炭素の不足は、たいていの場合pHの上昇と結びつく。特にカボンバやハイグロフィラ、アルテルナンテラの仲間は二酸化炭素の不足に大きな影響を受ける。二酸化炭素の不足とpHとの関係については本書9.4.5.二酸化炭素の理想的な添加量で詳しく述べている。
一方水槽内に鉄分が不足すると、水草は黄色くガラスのように透き通り、最後には枯れてしまう。この典型的な兆候として、葉脈や葉の組織の黄色化が起こる。しかし葉脈などの葉の一部は緑色のままで他の部分が黄色くなるのは鉄分不足ではなく、マンガンが不足することで引き起こされるクリスマスツリー病の症状である(前ページの写真参照)。いずれにせよこれらの症状が見られる時は、栄養素の決定的な不足というよりもいわゆる「目には見えない不足」が、たいていの場合問題となっているのである。そもそもマンガンは水草にほんの少しの量しか必要とされていない。加えて、水槽内で各種栄養素の均衡が取れておらず、栄養素同士が明らかにお互いに張り合っている場合にも不足の兆候は見られる。例えばマンガンは、過剰な鉄分によって徹底的に排除されてしまうことがある。そして水槽内に水草が消費できない量の鉄分が供給されると、水草が利用できない形態の鉄がどんどん蓄積され、鉄分過剰の状態となってしまう。しかし良質な鉄分肥料(Dupla Plant24)を適切な用法で使用している限り、このマンガンと鉄の争いや余剰鉄分による問題は起こらない。
多すぎる鉄分は水槽内からマンガンや微量元素を排除するだけでなく、特に重要な植物の栄養素であるリン酸塩と結びつき化学反応を起こしてしまう。リン酸鉄の沈殿につながるこうした化学反応は、水中だけでなく植物の体内でも起こる。多くの水草の葉が茶や黒に変色する際に、その水槽内でリン酸鉄の沈殿・沈着が認められている。直後に起こる葉の溶解を、この変色は示しているのである。
そこで我々が勧める原則について記しておく。水槽設置後は、水交換の時のみ信頼できる基礎肥料(Dupla Plant)を使用して、水中から失われやすい栄養素を補給する。さらに鉄分については24時間ごとに液体肥料(Dupla Plant24)を与えるということだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/05/d698df77a9c6b6aa4e9d716d21e6b46e.jpg)
写真1
エキノドルスの葉に開いた緑色の擦り切れたような穴。プレコの仲間による力学的な損傷の例。
写真2
茶色く変色したクリプトコリネの葉。炭酸塩硬度(KH)が高く、遊離二酸化炭素が少ない水槽の中では、水草がこのような症状を現し、時には枯死するほどのダメージを受ける。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/ea/80527584ee03a950c895f3be8c72e7de.jpg)
写真3
この写真で問題となるのは、もちろん水草の栄養素の欠落ではなく、スネールの食害による葉のダメージである。
写真4
いわゆる「クリプトコリネ病」の典型的な症状。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/53/1d1259cfb822ad14d2694e55d5ef4bcd.jpg)
写真5
赤外線写真により早い段階で水草の発病を知ることができる。これは健康な葉である。
写真6
表面はきれいに見える葉でも、赤外線写真で見ると明らかに栄養素の欠陥を示している。葉脈間の組織に既に発病している。
※10.6. 水草の病気 3/3へ続く
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