goo

「理想的な淡水水槽」 10.6. 水草の病気 1/3

デュプラメソッド「理想的な淡水水槽」

10.6. 水草の病気 前編



水草は、非常に複雑な機能構造および新陳代謝システムを持つ生きた有機組織である。従って、我々人間や観賞魚だけでなく水草も病気になるということは少しも不思議ではないのである。

幸いなことに、ウィルスやバクテリアによって引き起こされる疫病は、水槽内ではほとんど見られない。時々病気により腐った水草の葉の部分にバクテリア類の増殖が確認されることがあるが、たいていはバクテリアの発生が病気の原因ではなく、他の原因により損傷した葉にバクテリアが繁殖しているのである。

発育状態が悪い、葉が腐る、葉に穴が開く、変色を起こす、また葉に擦り切れたような傷があるといった水草の症状は、多くの場合水の化学的な変化(例えば炭酸塩硬度が高過ぎ、それにつれてpHも上昇してしまう)や、特定の栄養素が不足あるいは過剰であるために起こる病気が原因である。

水草の葉の損傷が病気によるものなのか、あるいは魚や貝の食害によるものなのかは一見して判断するのは難しいが、我々はこれを正確に知る必要がある。以前エキノドルスの葉の表面が精巧にヤスリで削ったように傷ついていたことがあり、我々はルーペを使った数回の検査で、ようやくその傷がブッシープレコによってつけられたものであることを知った。そしてブッシープレコによって削り取られた部分は汚い黄色と茶色を呈し、元の葉色を取り戻すことはないことがわかった。

この本で我々が勧めている規則正しい水交換と、その際に行われる十分に考慮された適切な肥料の添加により、多くの水草の病気は予防できるだろう。しかしアクアリアナーは油断することなく、水槽の中の水草を常に観察しなければならない。

水道水の水質、光の強さ、光の色、二酸化炭素の添加量、魚の総数などから、その水槽に適した水草の種類や総数は簡単に導き出せる。そして、水槽の中に存在する水草の成長を妨げる要素が何であるか、また場合によってはその要素の発生原因や蓄積量なども推測することができる。これらの要素は、水槽内に不足すると水草の成長不振を招くもの、あるいは不足や過多により水草の損傷度合いが増減するものとに分けることができる。

これを車に例えてみよう。エンジンにガソリンが供給されなくなればエンジンは止まったままであるが、あらたにガソリンを入れてやればすぐにエンジンは動き出す。しかし車が走っているうちにエンジンオイルがなくなれば、それはエンジンに対して修復不可能な程度まで重大なダメージを与えることになるのだ。


写真1
Echinodorus major(ラッフルソードプラント)の葉に見られた鉄分不足の典型的な黄色化。葉と葉脈が白や黄色に変色し、組織が透き通っている。

写真2
栄養不足により矮小化したクリプトコリネ。このように葉が鞭状になる現象は、陸上植物でも見られる。水槽において適切な施肥が行われず微量元素が不足すると、このような症状が現れることがある。



写真3
黄色化を起こしているが、葉脈は緑のままであるEchinodorus bleheri(エキノドルス・ブレヘリィ)。この症状は、黄色化の原因が鉄分不足ではないことを示している。マンガン不足か過剰な窒素分によるものだろう。

写真4
水中の過剰な鉄分により損傷を受けた水草の葉。損傷度は写真下から上に行くほど大きい。鉄分は水草の成長に必要不可欠な栄養素だが、与え過ぎると葉の表面にリン酸鉄が沈着し、植物にダメージを与える。



写真5
マンガン不足により発症する、いわゆる「クリスマスツリー病」にかかったEchinodorus horizontalis(エキノドルス・ホリゾンタリス)の葉。鉄分が不足した場合も同じような症状が現れる。

写真6
鉄分の与え過ぎにより損傷を受けたCryptocoryne wendtii(クリプトコリネ・ウェンティ)の葉。




※10.6. 水草の病気 2/3へ続く






次のページ→

「理想的な淡水水槽」目次へ

Dupla&HOBBY exclusiv ブログトップへ

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「理想的な淡... 「理想的な淡... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。