研究・論文作成のためのブログ

医学部で臨床医をしつつ大学院に進学し、博士号の学位を取るまでをつづります。

「羊水塞栓」という病気

2006年11月21日 | 日記・備忘録
みなさん、今日は病気についてのお話です。

「羊水塞栓」という病気をご存知ですか?あまり聞かない言葉だと思います。
羊水塞栓とは、簡単に言ってしまうと、赤ちゃん側の物質(羊水とか毛髪とか)が、何らかの原因でお母さんの血管内に入り込んで、それが肺などにつまってしまう病気です。
非常にまれですが、発症すると致死率が高いため産科医はみな恐れる病気です。

ここでみなさんに質問です。分娩のときにお母さんが羊水塞栓を起こして運悪く死亡しました。これは「事故」でしょうか?
警察が介入すべき「業務上過失致死」でしょうか???

先日、近くの開業医の先生のところで母体死亡があったのですが、警察が介入したそうです。事件性があるとでも思ったのでしょうか。
患者さんは大学病院のほうで解剖され、羊水塞栓であることが証明されたそうです。

こんなことでも、母体死亡というだけで警察やマスコミは大騒ぎします。
避けることの出来ない病気ですら、私たち医者のせいにされてしまうのでしょうか。

極端に言ってしまえば、心筋梗塞を起こした患者が救急車で運ばれてきたものの、治療の甲斐なく病院で亡くなったとします。そうすると医者は悪いのでしょうか??
それは違いますよね?

こういうことを警察があら捜しのように介入するようになると、医者の仕事はもはや成り立ちません。リスクのあるものには近づかないのが一番です。
道端で人が倒れていても、誰も見向きもしない、そんな時代が来るのかもしれません。




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