8月20日(土)20時30分~
ピックアップ対局より。
高段者同士の一戦。
激しい攻防と読みがぶつかり合う、
迫力満点の対抗型の一局です。
先手 そてつさん
後手 めんたむさん
▲76歩△34歩▲96歩△44歩
▲48銀△42飛▲46歩(図)
ここで早くも後手が揺さぶりをかけます。
△45歩▲同歩△同飛▲68玉(図)
直接的に、この動きを咎めるのは
難しい。
一旦は駒組みを進めます。
△62玉▲78玉△72玉▲58金右
△32金▲47銀△41飛▲48飛(図)
△94歩▲46銀(図)
ここで再び、後手のレーダーが
戦機を捉えました。
△88角成▲同銀△65角(図)
▲56歩△同角▲47歩(図)
ここは大きな分岐点。
考えられるのは、ばっさり△46飛から
猛攻撃を仕掛けるか、
歩得を主張し、無難に駒組みを進めるか。
本譜は後者だったので、
ここで△46飛が成立するか、
独自に検証してみます。
△46飛▲同歩△29角成▲44角(図)
以下、考えられるのは
△33桂▲53角成△19馬。
次に△51香と打てたら成功。
ただ、囲いが未完成なので
▲48飛などを駆使して働かされると
アウト。
棋風によって見解が分かれそうです。
では、ここで
△46飛▲57金(図)
このように受けるのはどうか?
先に▲56歩と突き捨てた効果もある。
以下、考えられる進行は
△47角成▲同金△41飛▲58金(図)
▲58金は大事な一手で、
怠ると△39銀が厳しい。
図は、角銀交換だが歩切れ。
このあとは慎重な指し方が求められます。
本譜の進行を辿ります。
二つ例を挙げましたが、
いずれも何ともいえない形勢でした。
本譜は中盤戦らしく、
双方腰を据えた駒組みに進みます。
△62金▲57金△65角▲77銀△22銀
▲75歩△33銀▲55銀△35歩▲88玉(図)
▲88玉と寄った瞬間は不安定。
ここで戦いに持ち込むべく、
機敏な動きを見せます。
△44銀(図)
しかし、先手は見事な
切り返しを用意していました。
▲66銀上△76角▲78飛(図)
▲78金と上がっていれば
この角取りが成立しないのを考えると、
いわば「誘いのスキ」
だったかもしれません。
図から、どう指しても
▲76飛が受からないのが
お分かりだと思います。
序盤の段階から機敏な後手の
リードを奪い返すべく、
一本ホームランを決めました。
本譜の進行を辿ります。
△55銀▲76飛△66銀▲同飛△44飛(図)
▲86飛△84銀▲78金△54飛(図)
8筋に狙いをつけ、
銀を使わせてから▲78金。
このあたりは中盤戦においての大事な呼吸。
しかし、銀を使わせたという意味合いでは
▲78銀と美濃を構築するのも有力です。
角を二枚持たれてる以上、
普通に進めると不利に陥ってしまう。
ここで大きく揺さぶりをかけます。
△54飛(図)
▲66角と受けるのは△85銀打がある。
ここは強く対抗します。
▲56飛△24飛▲26歩△33桂(図)
このような動きの激しい展開では
一歩でも弱気を見せると
たちまち形勢を損ねてしまう。
本譜は例にもれず、
一気の終盤戦の展開も辞しません。
しかし、▲56飛とぶつけた局面で
△同飛▲同金△58飛(図)
実際に、一気に決着をつける順はどうか?
これには
▲65角△69銀(図)
この進行が予想されます。
▲79銀と受けるのは
△78銀成▲同銀△68金(図)
▲79銀と受けるのは、
△同金▲同玉△59飛成で危険。
戻って
ここでは▲68銀と受けるのが最善。
以降の研究は膨大なので省略しますが、
後手が一手でも攻め遅れると
▲65角の存在が大きいため
先手が良くなります。
本譜の進行を辿ります。
▲51銀(図)
△52金には▲41角を用意。
豊富な持ち駒を活かして
後手陣に食いつきます。
△61金▲21角△31金▲43角成△51金(図)
▲33馬△42金左▲11馬(図)
△75銀▲66金(図)
激しい攻防が飛び交う中盤戦。
双方、一切妥協のない応酬で
終盤戦に突入していきます。
△45銀▲59飛△66銀▲同馬△26飛(図)
▲86香(図)
右辺は要塞と化している後手陣、
唯一のほころびを左辺と
考えると、▲86香は
強大な主砲。
豊富な持ち駒を蓄えられて
▲83香成と突撃されると危ない。
一旦受けに回ります。
△82銀▲15角△28飛成▲75桂(図)
△24歩▲55飛(図)
▲42角成を防ぐとともに
角を無力化を図る△24歩、
対する先手、▲55飛と飛び、
銀取りとのちの▲85飛を狙います。
△69銀(図)
戦いはいよいよ終盤戦に。
歩切れで受けに困ったようですが、
うまく切り抜けます。
▲83桂成△同銀▲同香成△同玉▲79歩(図)
左辺を破ると共に、
受けの名手である底歩を投入。
すぐには攻め切れないと共に、
次に▲85飛が厳しい後手、
ここは格言に沿った受けに回ります。
△72玉▲45飛△82香(図)
一旦早逃げをし、銀をとらせて△82香。
左辺さえ守れば怖い所がなくなるのを
考えると、この指し回しは
冷静かつ正確な判断。
長い戦いを経て、後手が大きく
ゴールに直進しました。
▲84銀(図)
・・と、いうのもつかの間。
左辺を直接破りにいくかのごとく、
先手から激しい勝負手が飛びました。
しかしここは堂々と応じます。
△84同香▲83銀△同玉▲84馬(図)
図は、文字通り勝負を決める
ふたつの分かれ道。
取るか、逃げるか。
しかし、後手に待ち受けていた運命は
非情なるものでした。
△同玉▲86香△93玉▲84銀(図)
図の局面で終局となりました。
△82玉には▲42飛成!があり、
ぴったり詰んでしまいます。
戻って
ここで△72玉と引けば、
難解ながら後手の勝ちだったようです。
以降、考えられる進行は
▲83銀△62玉▲44香(図)
△76金(図)
この手が△79銀からの詰めろで、
適当な受けも難しい。
ここまで冷静かつ正確に
指していた後手にとっては
とてつもなく惜しい将棋となってしました。
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本譜は、序盤から後手が
ビシビシ積極的に動く将棋で、
振り飛車党の方にうってつけ。
対して先手も、居飛車党らしく
堂々と構え、流れを察知した呼吸も
対抗型を研究される方に非常に参考になります。
めんたむさん、そてつさん、対局お疲れ様でした!