9月3日(土)21時~
相振り飛車の一戦。
先手の意欲的な構想に後手は堅陣で迎え撃つ。
先手の小技を軽手で切り返し、のちに大技をかけた
後手の反撃にも注目です。
先手 太陽神さっさんさん
後手 Kagetsuさん
▲76歩△34歩▲16歩△44歩▲56歩△32銀
▲58飛△43銀▲68銀△32飛(図)
先手の中飛車に対して後手は三間飛車。
序盤構想が最も大切ともいわれる「相振り飛車」に定まりました。
本譜の双方の構想に要注目です。
▲57銀△52金左▲55歩△64歩▲56銀
△63金▲96歩△94歩▲38金△74歩▲48銀
△72銀▲49玉△62玉▲77角△71玉(図)
本局は、太陽神さっさんさんが作成された自戦記が
記録されています。本記事と合わせてご覧ください。
http://sp.ch.nicovideo.jp/chot_soyer/blomaga/201609
▲86歩△35歩▲85歩△82玉▲15歩△73銀(図)
8筋を伸ばし、攻めの足掛かりの一つを主張。
対する後手、高美濃から矢倉に組み換え
厚みを強化させます。
▲66歩△72金▲86角(図)
△36歩▲同歩△同飛▲37歩△32飛▲77桂(図)
次に▲65歩や▲68飛から6筋を狙えば
▲86角との連携が強く攻略が望める。
一見、後手が困ったようですが・・
△62金寄(図)
この一手が6筋を受ける唯一の一手。
▲65歩△同歩▲同桂に△64銀と上がった時、
▲64角△同金▲53桂成を防いでいます。
これは角換わり腰掛け銀の一局面。
ここで△42金と寄るのが本譜同様の▲45歩の受け方で、
この金寄りは戦型問わず大いに応用が利く手筋です。
本譜に戻します。
▲65歩△同歩▲同銀△64歩▲56銀△34飛(図)
△65歩を▲同銀と取り、一歩を入手。
後手は浮き飛車に設置させ、攻守ともに
バランスのとれた構えをみせます。
先手は入手した歩を活かすべく、戦線を拡大し
リードを狙います。
▲95歩△同歩▲同香△同香▲同角(図)
端に狙いをつけたのが機敏な動き。
守りと香と攻めの香の交換と考えると
難解ながらも成功と考えられます。
ただ、この瞬間に反動が生じたのも事実。
それを後手は見逃しません。
△75歩▲67銀△76歩▲同銀△45歩
▲56飛△74歩(図)
桂頭を責める△75歩が、▲95角の瞬間を
捉えた鋭い切り返し。
▲67銀と撤退させ、△45歩と角道を通して
一気に視野が広がりました。
▲86角△44銀(図)
一旦は角を引き揚げ様子をうかがう先手。
対する後手、△44銀と進出し飛車の圧迫を狙います。
先手はそれを回避しつつ、後手の弱点を捉える
勝負順を繰り出します。
▲26飛△24歩▲23香△33角▲21香成(図)
▲26飛が、△22角・△34飛型の隙間を
かいくぐる細かい動き。
△24歩で一旦は受かるものの、直後の▲23香が
駒得を確定させる厳しい一手。
戻って、ここで△24香と受けるのはどうか。
一見、手放すようでもったいないですが、
2筋は左辺に比べると先手の弱点でもあり、
端を活かした1筋からの逃走も防げます。
ただ、▲16飛(図)と逃げると局面自体は互角。
先手の香は5筋・6筋など自由に使えるので
このあとの応酬でどちらがリードを奪えるかの
将棋になると考えられます。
本譜に戻します。
一見は先手の勝負順が実りリードしたようですが、
次の三手一組が後手の待望の反撃でした。
△55銀▲11成香△44角(図)
駒得は確定しましたが、それを実現させるために
▲26飛と回った位置、この機を後手は
待っていました。△55銀と出たのは、
△44角と進出し飛車に圧迫をかけるためで、
のちに△11角と成香を捕獲できるのも強みです。
ここで▲16飛は後手の注文通りなのが辛いところ。
飛車取りを手抜いて自陣を整えますが・・
▲67銀△26角▲同歩△89飛(図)
▲67銀と引き、▲58銀など守りに使うなど
将来的に大いに有効な一手ですが、この場合は
飛車をとっての△89飛の両取りが厳しい。
ここは角を取らせ、端の弱点、小駒を駆使し
後手の技に負けない反撃で迫ります。
▲78銀(図)
△86飛成▲94桂△93玉▲99香△96歩▲43角(図)
後手玉を端に追いやり、香車を設置し
▲43角と飛車・竜に狙いをつける。
たった5手の間で攻めの急所・拠点を
的確に捉えました。対する後手、
ここは一旦飛車を逃げるよりありません。
△44飛▲87角成△同竜▲同銀△88角(図)
竜と角の交換に応じ、その瞬間手番を
握った後手、△88角とおろし
攻めの根本である香・桂馬に狙いをつけます。
先手としては、特に香を取られるのはまずい。
この瞬間に技を仕掛けます。
▲91飛△92香▲96香(図)
▲91飛と退路を防ぎ、▲96香と走ったのが
△88角の裏をかく素早い動き。
先手が手順を尽くし、後手玉を直接狙える
態勢を築きました。
戻って、ここで△88角に代えて
△91香(図)
このように受けるのはどうか。
▲71飛は△72角、🔺96香は△88角や
△75角でどうか。
▲91飛を打たせない考え方としては有力です。
本譜に戻します。
△95歩▲同香△77角成▲96歩△72角(図)
香車の突破を防ぐべく△77角成としますが、
この瞬間、▲82桂成ならば即詰みが生じていました。
本譜は▲96歩と土台を守り、確実な寄せを目指します。
対する後手、△72角が△81桂を手堅く守る
強靭な受け。まだまだ熱戦が続きます。
▲82桂成△同玉▲92香成△71玉
▲78金△66馬▲59香(図)
奪った香を59に設置し、自陣の強化を図ります。
ここで銀を取られては面白くない。
手番を守りながら先手玉に迫ります。
△56桂▲57銀△同馬▲同香△61金(図)
△56桂と大きな拠点を設置、
直後に馬を切り飛ばし△61金と引き、右辺を
広くさせ先手の攻めを逃れます。
緩急自在の指し回しで後手が追い上げますが、
ここで先手が厳しい反撃を繰り出します。
▲93角△62玉▲81成香(図)
▲93角が、左辺を完全に食い破る急所の一手。
△62玉とかわしますが、▲81成香と進軍できたのは
先手にとって大きなポイント。
戻って、ここで△56桂~△57馬と、
馬を切り飛ばし先手を弱体化させる順に代えて
△82銀(図)
この一手はどうか。▲同成香よりありませんが、
△同玉▲95飛成とさせて本譜順で迫れば、
いくらか自陣の安全を確保しながら先手玉を狙えます。
本譜に戻します。
後手は自陣の受けは難しい。
攻め合いに転じ、スピード勝負にすべてを懸けます。
いよいよ最終盤の幕開けです!
△65桂▲56香△同銀▲55桂△57桂成(図)
▲71成香△82銀打▲72成香△同金▲51角(図)
持ち駒を投入し手堅く受けながら
先手玉に迫りますが、角を奪っての▲51角が
急所を捉えた厳しい一手。
後手としては、先手の攻めを耐えたのちに
△47銀成を間に合わせたい。
△52玉▲33角成△91銀▲63桂成△同玉
▲44馬△82銀引(図)
△91銀を飛車を奪い、先手玉に迫れる強力な駒を確保、
つづいて△82銀とひきつけ、角の撤退を迫ります。
対する先手、ここで引いては反撃を許してしまう。
持ち駒を駆使して後手玉に強く迫ります。
▲55桂△73玉▲84金△62玉▲63歩
△71玉▲53馬△81玉(図)
ここで自玉の安全を見切り必至に追い込む
決め手がありました。
▲82角成△同銀▲62歩成(図)
現状、後手に角を渡しても先手はぎりぎり詰まない。
それを見越して▲82角成、▲62歩成と
一気に追い込みました。
△84歩▲72と△92玉▲82と△同玉
▲64馬△73桂▲91銀△83玉▲82金
△94玉▲95飛(図)
△84歩と金を奪い、先手にも必至をかけますが
▲72と以下即詰みが生じていました。
最終盤からの先手の強い踏み込みが光り、
金銀で覆われた堅陣の後手陣を攻略しました。
図の局面で終局となりました。
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本局は、序盤から双方の構想が真っ向からぶつかり、
中盤に入っての小技・大技の応酬、
最終盤においての、手番を握らせない先手の攻め、
手筋がちりばめられた攻防戦が随所に見られます。
Kagetsuさん、太陽神さっさんさん、対局お疲れ様でした!