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「平山郁夫 ーシルクロードの軌跡ー」展へ

2012年04月16日 | Art
☆平山郁夫 シルクロードの軌跡 ー人類の遺産にかけた画家の人生ー
九州国立博物館【福岡県太宰府市】
開催中~5月27日(日)

今回の特別展は「平山郁夫とシルクロード」。
遠い昔、○HKシルクロード特集が何より楽しみな子供(←変?)だった私には見逃せません。
ちょうど来福した両親と共に、見学に向かいました。

日本画家平山郁夫氏の活動の軌跡が、
豊富な作品群と、縁の深い遺跡文化財の展示を通じて紹介されている今回の特別展。
その第一章は「釈迦追慕」。


生涯を通じ、常に平和への強い思いを抱き続けた平山郁夫氏の原体験は、
15歳のときの広島での被爆だったと言われます。
その祈りの気持ちは、まず初期の代表作「入涅槃幻想」や「受胎霊夢」など、
仏教を主題にした幻想的な作風の絵画にもあらわれるのです。
それぞれ身近な家族の死や誕生をきっかけに描かれたとのこと、
説得力のある美しい絵でした。

その後、平山氏は大学の学術調査団の一員として、
海外のキリスト教壁画の模写に携わったのをきっかけに、
様々な国と地域で文化遺産の修復保存活動に関わるようになります。

第二章「壁画模写と文化財保護」では、その頃の平山氏の活動を紹介。


遺跡のスケッチ、修復のための模写や、資料として収集された石像などが展示されています。


第三章は「シルクロードと仏教伝来の道」
シルクロード沿いの遺跡を描いた平山氏の絵画や、
遺跡から出土したり縁のある美術品が並び、展覧会もいよいよ佳境です。
まず印象的なのが有名な2枚、「パルミラ遺跡を行く・朝」「パルミラ遺跡を行く・夜」。
遺跡のある砂漠をラクダに乗ったキャラバンが渡って行くのですが、よく見れば全員女性。
絵の舞台となったパルミラは3世紀、ゼノビア女王の時代にローマに滅ぼされた国。
その史実へのオマージュなのです。
「朝」はオレンジ色の背景、「夜」はブルーの背景で左右対称の美しく大きな絵。
並べられた2枚の前のベンチに座り込んで、私はしばし見入ってしまいました。

ところで今回、各所に「画伯の目線を体験してみよう」コーナーが設けられていました。




絵画の舞台となった場所の写真を拡大し、その前に小さな折りたたみ椅子が置かれています。
つまり、その椅子に座って画伯がスケッチをした現場を再現しているわけです。
この位置での目線で眺めると、対象がより迫ってくるようで、臨場感があります。
こうしたユニークな体感コーナーは、九博ならでは。
毎回楽しみにしている企画のひとつです。


(この画像はバーミヤン大石仏を目の前にした「画伯の目線を体験」コーナー。
 石仏は実物の1/5サイズです)

遺跡は、たとえば気候の変動や政治的な都合などが理由になることもありますが、
大半はいつの時代も、戦争によって破壊されたり、放置された結果です。
またひとつ、シルクロードの遺跡に新たなページを加えてしまったのが、
近年のアフガニスタン、タリバーンによるバーミヤン石窟の破壊です。
「修復せず、人類の負の遺産としてこのまま保存する」ことを提唱した平山氏。
その厳しい視線と苦しい胸中を察するにつけやりきれない気持ちになりますが、
問題提起をされたのは後世を生きる私たち。無視することは出来ません。

さて、シルクロードの終着点といえば日本。
「大仏開眼供養記図」は、東大寺大仏の開眼供養を描いた平山氏の代表作のひとつです。
荘厳でスケールの大きな、華やかなイベントが見事に描き込まれており、見応えのある作品でした。

晩年の平山氏は、こんどは日本古来の「道」に関心を深め、多くの作品を残しました。
第4章は「日本回帰ー平和への祈り」。


展示室内には比叡山や厳島神社の絵画も展示されていましたが、
太宰府天満宮と飛梅を描いた絵は、場所的な一致もあり、興味深く鑑賞しました。


今回の特別展は平山郁夫氏の足跡を辿るという明確なテーマがあり、
いつにも増して非常に分かりやすく、興味も追いやすい展覧会でした。
絵画の画像をこの記事内で紹介できないのは(当然とは言え)残念ですが、
やはりそれは実物を見ないことには、真の感動も得られないですから、
興味のおありになる方はぜひ、直接お出かけください。

※この記事はぶろぐるぼにエントリーしています。
 記事中の写真は九州国立博物館さまよりご提供いただきました。転載はご遠慮ください。
 なお、今回は平山郁夫氏の遺族の意向により、平山氏作品の写真は含まれておりません。
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