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「ボストン美術館 ~日本美術の至宝~」展へ

2013年03月04日 | Art
【記事アップ時には九州国立博物館様よりご提供いただいた展示風景写真を
 何点か使わせていただいておりましたが、
 今回、ブログでの写真掲載は展覧会期内との制約がありましたため、
 終了後、写真は削除いたしました】

○ボストン美術館 日本美術の至宝
 九州国立博物館【福岡県太宰府市】

去年、東京国立博物館で開催されていたこの特別展、
行きたいと思いつつ上京時叶わず、残念に思っていたら、
なんと地元福岡へ巡回されてきました(^^)

ボストン美術館の日本美術収蔵品は10万点を超えると言われ、
質量ともに世界有数のコレクションを誇っています。
今回はその中から選りすぐりの40数点が5つのテーマのもと集められ、
見やすく分かりやすい展示で私達の興味を引き出してくれます。

【第一章 仏のかたち 神のすがた】

中でも世界屈指と評されるのが仏画・仏像のコレクションです。
明治維新以降混乱の中で、貴重な仏教文化財の破壊や流出を見過ごせなかった3人
(岡倉天心、フェノロサ、ビゲロー)の尽力から始まったという解説がありました。

色あせた8世紀の仏画、
この仏様が被ってこられた様々な困難を思うと、
自分の目前にこの仏様がおられる奇跡に心から感謝したくなりました。

【第二章 海を渡った二大絵巻】

長い巻物が2巻。
ゆっくりじっくり見入る人が多く、見学には長い列が出来ていました。
中でも「吉備大臣入唐絵巻」は、
遣唐使として唐に渡った吉備真備の奇想天外・荒唐無稽な大活躍を描いています。
ストーリーも相当面白い(^^)ですが、絵画自体も生き生きと躍動感にあふれ、魅力的です。

【第三章 静寂と輝き 中世水墨画と初期狩野派】

絵の世界は静寂に包まれていますが、
鑑賞する私たちも言葉を失い、静かに真摯に絵画と向き合うのです。

「松に麝香猫図屏風」
背景の山水は墨で、前景の猫ちゃんなど動植物は彩色する、というのが
初期狩野派の特徴なのだそうです。
まず面積の小さな彩色部分に目が行き、それから全体を見るというバランスの妙。
ちなみにこの雌猫ちゃん、何かをじっと見ているようなのですが、
対の一隻(サントリー美術館収蔵「松下麝香猫図屏風」)には
雄猫が描かれているそうです。

【第四章 華ひらく近世絵画】
光琳、等伯といった近世絵画の巨匠たちの競演。
ダイナミックな屏風絵を中心に、迫力のある展示室です。

「龍虎図屏風」。
長谷川等伯晩年の傑作で、向かい合う龍虎の獰猛な表情が際立ち、
荒々しいテーマながら切り取られた一瞬の美に息をのみました。

尾形光琳「松島図屏風」。
波風の音が迫ってきそうな躍動感に溢れて、
大胆にデフォルメされた風景画はポスター絵を思わせます。
鮮やかな色彩と屏風図じたいの大きさもあって、とても印象的な作品でした。

【第五章 奇才 曾我蕭白】
スケールの大きな構図、エネルギッシュで個性的な筆致は少々斬新すぎて、
繊細な日本画に慣れた日本人より、先入観のない外国人によって評価が高まったのも、
個人的には無理ない気がします。
また、故事伝説などをテーマにした作品は、
聖書や神話に基づく絵画に慣れた西洋人にも身近で分かりやすかっただろうとも思います。

例えば「龐居士・霊昭女図屏風(見立久米仙人)」。
一見、隠者と娘を描いた屏風絵に見えて、
しかしその裏には好色のせいで力を失った仙人のエピソードを隠すという
二重の意味を持つシニカルな、でもユーモラスな絵画です。
女性を見つめる隠者(仙人?)の目の嬉しそうなこと・・(笑)
思わず見入ってしまい、その印象を引きずったまま通路を次の展示室に進めば・・

正面にいきなり、「雲龍図」が目に入るのです。
九博さんのこの展示の仕方、良いですね。大好きです。

この「雲龍図」は寺院の襖絵だったのだろうとのこと。
でも、周囲ぐるりとこの絵の襖で囲まれていたら・・
あまりそういうお部屋に長居したくないかも(涙)
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今回は駆け足での鑑賞でしたが、
最後の蕭白の展示室では、時間ぎりぎりまで粘ってしまいました。
この迫力ある絵画の後ろから透けて見えるのは、画家の強い意志、まなざし。
対峙するのも覚悟が要る、そんな絵たちに私も勇気をもらったような気がします。

こうした優れた作品群が海外へ持ち出されたことには、
当然様々な意見があろうかと思いますが、
でも少なくとも、いまそれらの作品が存在するのは、
どこであろうと保管されていたおかげです。
今回、こうして日本へ里帰りし、多くの人の目に触れたことで、
このコレクションも次のステージに向かうのかもしれません。

☆特別展「ボストン美術館」の会期は3月17日(日)まで。

※この記事はぶろぐるぽにエントリーしています。

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