本日のロック

酸性雨ってまだ降ってるの?って聞かれたんだ。

本日の滋養

2007-07-04 19:32:05 | Weblog

すみません。ちょっと、リハビリです。

 

クイックジャパン 72号』 

この雑誌を講読していることを知るや、「え! まだあったんだ」、「あぁ、サブカルの」、「芸人が表紙の奴でしょ」などという冷たい対応をされることが多く、甚だ心外なのですが。情報なんてタダで手に入るものと思われて久しい昨今、敢えて“雑誌”に執着する、同誌編集者の特殊で、愛すべき姿勢には感動すら覚えます。

確かに最近は、お笑い、と言いますか、吉本芸人を扱うことでかなりの部数を担保している感は否めません(ちなみに今号の表紙を飾ったのは松本人志。恥を忍んで告白すると、僕はこの人物の作った笑いが全く理解できません。本当に、一欠けらも)。それでも支持したくなるのは、売れ線の芸能人の記事と共に(例えば今号に限っても)、坪内祐三が「東京」という連載で「両国」を題材にしたエッセイを寄せ、草森紳一が「伊丹十三」との付き合いを振り返り、黒田洋介が『おおきく振りかぶって』アニメ版について語り、小西康陽と今里(ストラグル・フォー・プライド)が対談する等々、もうね、混沌としか言いようがない。しかし、混沌を失って何が雑誌なのでしょうか。カタログが並んでいれば満足なのかしら。

若年層向けの情報誌として、隔月刊というのは大きなハンデだと思いますし、実際、購入段階で既に鮮度が落ちてしまっている記事も目に付きます。が、それを企画力と、地道なネタ集めと、偏執的なまでのデータ収集で乗り切ろうとする姿は、本当に好ましく、頼もしく思えるのです。

と、読み進めるうちに次号から編集長が交代するとの告知を目にしました。

坪内祐三のエッセイも終了するようで、「一読者として私は『クイックジャパン』が毎号楽しみでした。それが次号から変わってしまうとしたら私はかなり寂しい。雑誌らしい雑誌がまた一つ消えてしまうことが」という一文を寄せていました。「かなり」に傍点をふって強調されているのですが、そこから類推するに、雑誌の根幹に関わる大掛かりな変化がある気がします。『宝島』のような変遷を辿るのも雑誌の常。僕も読者として見守って行きたいと思いますが、坪内祐三の連載は単行本化して欲しいところです。


ちょっと

2007-06-29 19:51:04 | Weblog
旅に出てきまっす。更新は週明けまでお待ちください。

携帯電話とロック

2007-06-28 16:57:25 | Weblog

携帯電話が床に落ち、「ゴッ」という嫌な音が響いた。

「あー、やっちゃったー」

という酔っ払いの声が聞こえ、そんなことは落とした僕自身が一番分かっているわけで、こういう酔っ払いの物言いには、ムカつくことこの上ないのだが、そんなことよりも携帯の健康状態が心配。拾い上げてみると、液晶とデータが無事なので安堵する。

「そんな小っちゃな機械に振り回されるってのも、考えてみりゃ情けない話だよな」

あぁ、もういい加減に帰りたいが、そうもいかない。出張先の地方都市で、まだ仕事が終わらない相手方を待つためにふらっと入ったカウンターバー。さっきからうるさく絡んでくるのは、席が隣り合った地元のオッサン(自営業)である。

 

「娘なんか、携帯だけあれば、他に何もいらないっていうんだよ」

オッサンが続ける。

「俺もさぁ。 カミさんから『仕事用に』って持たされたんだけど。 頼んでもいないのにメールがついててさ」

「あー」

「メールが来ると、返さなきゃいけないだろ」

「そりゃ、そうですよね」

「面倒だよなぁ」

「まぁ、確かに」

 

一見の客が困っている時に、従業員がどういう対応をとるかで、その店の良し悪しは分かる。この店のマスターは、僕が酔っ払いのオッサン相手をしている間、カウンターの奥で、椅子に座って『週刊スピリッツ』を読んでいた。この街に来ることがあっても、この店にはもう二度と来ない。

 

「カメラもまで付いてるんだぜ」

オッサンは更に続ける。

「ということはだよ。 いま、日本中の人間がカメラを持って歩いているってことだろ。 ゾッとするよな」

あ。 それは僕も考えたことがある。

「街頭の監視カメラにはあーだ、こーだ言うくせによ。 携帯のカメラはいいのかよ。 立派な監視社会じゃないの」

「あー、そうですね」

「よく知らんけど、あれだよな。 ド○モもさ、警察から言われれば、情報くらいは出すだろ」

「それは知らないけど」

「いや、まぁ、仮によ。 そうだとしたらさ。 お国は何の労力も使わずに個人情報を手に入れられるわけだよ」

「なるほどね」

「まぁ、何でもかんでも携帯ってのは、ちょっと嫌だよな」

「エロ画像までありますからね」

「お前なぁ。 女を口説くのと同じ機械でマスをかくなんて、ちょっと笑えないだろ」

 

 

本日のBGM : 「現代人」 ピチカートファイブ


本日の滋養

2007-06-26 04:03:24 | Weblog
やせる旅』 都築響一

『ロードサイドジャパン』や『夜露死苦現代詩』など、挑発的な作風が非常に好ましい作家(であり、写真家であり、編集者)による、旅行ダイエット本。ANAの機内誌である『翼の王国』に連載されていたコラムです。出張の往復の際に、ほとんどを読んでいました。が、夏に向けて5㌔減を目論んでいるため、単行本での再読を決意。

著者の写真の変化(激痩せ!)にもビビりましたが、何より、ひとつのアドバイスに驚愕しました。食べても太らない為には「残せばいい」。あー、なるほど。でも、出来ないよねー。実際、著者も「残す」という行為を全肯定しているわけではありません。「あとひとくちを残す勇気」というタイトルの文章で、

「『残したらお百姓さんに悪いでしょ』と母に叱られた食卓。『全部食べるまで教室から出さない』と先生に睨まれた給食の時間。食事を残すことに罪悪感を植えつけられた世代にとって、減量の秘訣ともいえる『チョロ残し』を実践するのは、非常につらい」

と、その効能を認めながらも、半ば諦め気味に書いています。

注文の時に「少なめにしてください」と言っても、やはり気持ち多めですし、何となく見た目にも寂しいし。でも、普通に頼んだら残せないよなぁ、感じ悪いよねぇ、という小心者の僕は、とりあえず「もずく」ばかり食べています。


意外性とロック

2007-06-23 18:10:16 | Weblog

意外性だとか、ギャップだとか、そういうものに魅力を感じるのはよくある話だと思う。

先日、僕に宛てて一通のメールが届いた。送信元は全く面識のないアドレスで、しかもヤフーのフリーメールだったため、日々、大量に届けられる出会い系の類であろうと推察。即、削除するつもりだったのだが、次の瞬間、目に飛び込んだのは「蝶々結びが出来るんですか?」というタイトルであった。

「団地妻の秘密クラブ」、「恵美様がご連絡を待っています」、「ナンバー1キャバクラ嬢の痴態を激写」などのタイトルにトキメくことは既になく、「ご無沙汰してます」や「先日は失礼しましたm( )m」などに対しても疑いの目を向けるようになって久しいが、「蝶々結び」とは、一体、どういう意味なのであろうか。

恐る恐る開いてみると、

「S美から聞いたんですが、アソコで蝶々結びが出来るんですよね。 私も胸が大きいのが自慢です。 私と大物対決しませんか?」

という内容。その下には出会い系のホームページアドレスが貼り付けられていた。

予想通り、といえばそれまでなのだが、果たしてアソコで蝶々結びが出来る人間が実在するのだろうか。広告というのは、潜在的な顧客の購買意欲を喚起するもので、「アソコで蝶々結びを出来る人達」が存在しなければ広告自体の価値を疑がわざるを得ないと考えた。というか、それが一般的だと言われれば、僕だって自信をなくす。が、世の中は広く、この、筒井康隆の小説のような性質を自慢とする層がいないとは限らない。これは難しい話である。

早速、ムカイ君とコバヤシさんに話を振ってみた。実は、意外性を狙った高等戦術で、僕はまんまと嵌められたのではないか(別に返事は出していないけど)という話もあったが、二人のアソコを考慮しても、蝶々結びは望むべくもなく、「担当者がヤケになったんでしょ」という結論に落ち着いた。確かに、折りたたむまでは良いとしても(僕はこの段階で候補から外されるが)、さすがに蝶にして結ぶという行為は現実的ではないだろう。

ちなみに、その場で行われた「第一回 こういうタイトルだったら何となく開いちゃうよね選手権」の結果、

 

「ハハキトク レンラクコウ」    

(これはビビる。 というか振り込め詐欺か)

「同窓会の件」           

(まるで縁がないと知りながらも気になる)

「TSU○AYAからのお知らせ」  

(多少、思い当たる節がある)

「焼肉ご馳走さまでした」      

(プライベートっぽい響きがいい)

などの強豪を抑え、

 

「メアド変えました」

 

に決定した。


雨傘とロック

2007-06-22 17:53:48 | Weblog

東京は雨降り。一時的に風強し。

『よつばと!』という、それはそれは素晴らしい漫画があって、第5巻の「よつばとあめ」は、確か、主人公の「よつば」が雨の中、買い物に行く話で、よつばは傘を差しているのにびしょ濡れになってしまい、一緒にいたお父さんから「おまえ、傘が下手な」と指摘され、レインコートを買ってもらう。「傘が下手」。この表現に唸ってしまった。

そして、僕は、少し異なる意味で傘が下手だ。

 

さっき、後輩と買出しに出掛けたときの話だが。

ふたりで信号待ちをしていると、少し強い風が吹いた。その時、僕の傘が風に煽られて、骨組みごと逆さに捲れ、バタバタバタバタ!と鳴り出してしまった。台風の時に同じような経験をした人は多いと思うが、僕の場合、傘を差すといつものようにそうなってしまうのだ。

 

「ダイスケさん、大丈夫ですか」

呑気な言葉を掛けてくる後輩。懸命に傘を元通りに直しながら、

「おぅ! すまんすまん」

と、カラ元気を発揮する僕だが、内心はヒヤヒヤもの。さすがに27歳にもなって傘を満足に扱えないことが知れれば、先輩としての沽券に関わる。

セブンイレブンで、なだ万のほうじ茶とフリスクを購入して店を出た。そして、風に逆らい、かなり慎重に傘を広げたのだが、その瞬間、「ばふん!」という音を立てて、またもや傘がひっくり返った。

「・・・・・」

さすがに後輩も無言。僕も無言。

「ダイスケさん、あれですか。 調子悪いんですか?」

「え? 俺は全然平気よ。 なんで?」

「いえ、ダイスケさんじゃなくて、傘の調子です」

「あ・・・。 あー、あー、これね、ちょっともう古いんだよねー」

「今朝、買ったって言ってませんでした?」

「あー、そうね・・・」

 

仕事の覚えは悪いくせに、何でそんなことは覚えているのだろう、そして、なぜそれを口にするのかな、と軽く殺意が芽生えた僕は、(以下略)。そして、内緒でお聞きしますが、どうしたら傘はひっくり返らないのですか。

 

本日のBGM : 「今日の雨はいい雨だ」 The Chang


制服とロック

2007-06-21 21:21:58 | Weblog

僕の勤務先の最寄り駅にはエスカレーターが設置されておらず、今日も今日とて、恨めしい思いを抱きながら、長い長い階段を上っていた。

本来なら休日であるはずの水曜日に、わざわざ出社する羽目になったのは、「誰を責めることも出来ないが、とりあえず今日中に誰かが処理しなければならない問題」が発生し、その煩わしい作業を、関係者のなかで最も年少である僕が、当然の結果として任されたからに他ならない。

それだけでも、かなり「渋々」感は否めないのだが、加えてこの暑さである。駅に到着したのは午後4時頃だったが、体感温度は昼間と全く変わることがない。仕方なく階段を行く。途中の踊り場付近に至り、僕のもみあげからひと筋の汗が滴り落ちた。立ち止まった僕の脇を、ワイシャツの背中に大きな汗の染みを作ったオジさんが通り過ぎる。あーあ。

と、そのとき。

階段を見上げた僕の目に映ったのは、手摺りの反対側を降りてくる女子高生の2人組だった。勤務先の近くに位置する(別に悪く言うつもりはないけど、彼女達と同じ制服を着た女の子達が、近所のコンビ二にたむろして、駐車場で胡坐をかきながらラーメンを啜っているのをよく目にする。 そんなあまりお行儀の良くない)高校の生徒のようだ。

水色のワイシャツを景気よく開け放ち、スカートも、まぁ、暑いのはよく分かるが、しかし、そこまでたくし上げなくてもいいのではないか、と思うほどの短さ。そこからニョキッと生えた4本の足は、見せびらかすにしてはあまりにも太く、セクシーの欠片も見当たらない。更にウンザリしたのは(これは主観の問題だけど)、どちらも個人的にはあまりお付き合いしたくないルックスをしていたことだ。

悪いことに、電車がホームに入る音が聞こえた。僕の背後から熱風がどっと押し寄せ、短か過ぎるスカートを襲う。彼女達はスカートを両手で抑えなながら

「マジなにこれ! ありえねー!」

「うわ! 風、やっべ!」

とか何とか、楽しそうにキャイのキャイのはしゃぎ出した。風がやばいとはどういうことか。僕と、僕の前を行くオジさんは俯いたまま無言で階段を上る。次の瞬間、僕の視界の端で、彼女達のスカートが大きくはためくのが分かった。

僕が顔を上げると(あぁ、何故、顔を上げてしまったのだろうか)、果たして彼女達のスカートは完全に捲れ上がっていた。

 

僕の目に飛び込んできたのは、鮮やかな水色。

二人とも、お揃いの水色。

そう、水色の、恐らくは体育で使うであろうハーフパンツタイプのジャージだった。

 

ありえねー。

 

僕は駆け足で階段を上りきり、深呼吸した。彼女達には、「暴力的なまでに短いスカートをこれ見よがしに穿く権利」がある。しかし、僕には、「怠惰で肥えた太股を見せ付けられ、なぜだか知らないが罪の意識に苛まれる義務」しかないのだった。

駅出口の前にある横断歩道で立ち止まると、さっきのオジさんと目が合った。彼はニコリともせず首を横に振った、ように見えた。

 

本日のBGM :  ミドリ「あんたは誰や」


ハーヴェストとロック

2007-06-20 19:10:02 | Weblog

あのさぁ、飲み屋での会話を断りなく掲載するわけないじゃないですか。 そんなことしたら色んな人に迷惑かけちゃうでしょうが。 あ、ちょっと待って、クシャミ出そう。 いやだから、もう完全に、・・・フィッ、フィッ、フィックション!  ズズッ・・・。 あぁ、また悪い噂を流されているようです。これ位で勘弁してくださいよ。


ハーヴェストとロック

2007-06-19 20:38:02 | Weblog

昨夜のハーヴェストには、いつもと少し違う空気が流れていた。

僕が寄ったのは午前1時過ぎのこと。ただ一人カウンターに座ったオバさんと、マスターのタカシさんが話し込んでいる。タカシさんは僕に気付くと「おぉ、ごめん、ごめん」と言って近づいて来た。そして、

「悪いんだけどさ、これからちょっと、あの人と大事な話があるんだわ」。

「あ、じゃ、今夜は帰りますよ。 すみませんお邪魔しちゃって」

と告げ、踵を返そうとした。のだが、

「別にいいわよ」とオバさん。

「いや、いいっすよ。 僕の家は近くですし、いつでも来れますから」

という僕の返事の裏には、もしかするとタカシさんはこのオバさんの愛人で、別れ話が拗れているのでは、という邪推があったのだが、オバさんはそんなことにはお構いなく、

「せっかくいらしてくれたお客さんを帰すなんて、あなたそれでも商売人なの?」

と、タカシさんに向けて意地悪な笑顔。タカシさんは苦笑いを浮かべながら、僕にオーダーを聞いてきた。そして、コロナを手渡し、

「まぁ、危ないことにはならないけど、あんまり関わらない方がいいから。 本当に悪いけど、それ飲んだら帰ってくれないか」

そこまで言われると、気になってしまうのが僕の性格で、ちびちびと普段の半分位のスピードで瓶を傾けていた。まぁ、指輪やらネックレスやらブレスレットやらで、ゴテゴテに武装したオバさんには全く興味がないのだけど、彼女とタカシさんとの関係は気になる。 母親? いやいや。やはり愛人だろうなぁ。

などと考えていると、僕の背後で店の扉が開く気配がした。

入ってきたのは一見してチンピラ風の30代位の男(以下「チンピラ」)。眼つきからしてあまり友達にはなれなそうな印象だ。チンピラはざっと店内を見回すと、僕の後ろを通り抜けてオバさんの隣の席に、どっかと腰掛けた。

そこからの会話は省略するが、簡単に説明すると、オバさんは会社経営者で、その社員の男がチンピラの知り合いと喧嘩となり、怪我をさせたということのようだった。チンピラは終始、丁寧語で話していたが、言葉の端々から脅迫めいた雰囲気が伝わってくる。

「そのとき、突然ね、殴られたっていうんですよ。 さすがに僕らでもそれはしないなぁ」、「いや、社長ほどの人を責める訳にはいかないけど、もう少しね、社員の面倒をみてやってもいいんじゃないですか」

 

警察に被害届を出せば済むと思うのだけど、そうではないらしい。一方的に殴られたというのに、相手から名刺を受け取っているというのも解せない。目的は単純にお金なのだろう。タカシさんは無言でグラスを磨いている。オバさんはカチャカチャと宝石をいじりながら、チンピラの話を受け流していた。それが30分も続いただろうか。

 

「分かったわ」

と、オバさんが言い放った。

「あなたの言いたいことは分かった。 確かにそれが事実なら大問題ね。 彼からはきちんと事情を聞いてみますから、安心して」

「ありがとうございます、社長」

深々と頭を下げるチンピラ。口元に薄ら笑いが見て取れる。オバさんは、ううん、いいのよ、と首を何度か横に振ってそれに応えた。

そして、

再びオバさんとチンピラの目が合ったそのときだった。

「ところで」

と、オバさんが静かに切り出した。 明らかにさっきまでとは雰囲気が違う。全身を覆う豪奢で下品な貴金属の輝きが一瞬にして失せ、彼女自身が圧倒的な存在感を放ち出した。

「今度は私が聞く番。 ねぇ。 私みたいなオバサンが、社長でいられるのは何故だと思う?」

意外な展開に、チンピラは明らかに怯んでいた。

「えっ? それは、まぁ、やっぱり社長の才能と人望と・・・」

しどろもどろな言葉を遮って、彼女は畳み掛ける。

「そうじゃないの。 私はもともとお金の計算が得意じゃないし、根っからの小心者だから大きな判断をするたびに怖くなる。 結局のところ、ビジネスなんて向いていないのね。 でも、そんな私が今の地位にいられるのは、周りの人達の支えがあったからなの。 私が選んだ信頼のおける人達のおかげ。 ただそれだけなのよ」

チンピラは「はぁ」と、気のない返事。オバさんは更に続ける。

「私に、唯一誇れる才能があるとすれば、それは人を見る目なの。 この人は何に幸せを感じるのか。 何を嫌っていて、何を守りたいのか。 筋を通す人間かどうかは目を見れば分かる。 そういうことを見抜く力だけは他人に負けないつもりなの」

「えぇ・・・」

「分かるかしら。 私は彼のことを心から買っているし、信頼しているの。 だから、今、あなたが話していることは、私の才能に対する挑戦でもある」

「えぇ!? いや、そんなことじゃなくて・・・。 ただ、さ、あの」

「もちろん、彼に誤りがあれば私は決して許しません。 首根っこひっ捕まえて、あなたの前で土下座でも何でもさせましょう。 でもね。 万が一にも、あなたの情報に間違いがあれば、それは私に対する最高の侮辱です。 それだけは十分に理解しておいてくださいね」

 

 

ここまで気持ちのいい啖呵を聞いたのは久しぶりだった。

あとで聞いた話だが、このオバさんはタカシさんの昔からの知り合いで、ハーヴェストの開店資金も融資してもらっているそうだ。当然のことながら、件の男性社員が完全な被害者とは思えない。それはオバさんも承知の上だろう。それでも、ここまで言ってくれる上司がいるというのは幸せなことだと思う。このオバさんが誰に似ているかと言うと、僕の嫌いな細木数子なのだが、このオバさんになら人生相談をしてもいいかな、と思った。

チンピラが帰った後、オバさんは初めてタカシさんに飲み物を注文をした。僕自身は酒飲みだけど、飲み屋でホットコーヒーを頼む人は、大概、嫌いになれない。


悲劇とロック

2007-06-19 16:29:49 | Weblog

あぁ、またやってしまった。

果たして、書いている途中で(正直、僕が悪いのかよく分からないけれど、恐らく僕が何か余計なことをした結果として)消してしまった文章達は一体どこに行くのだろう。もう書き直す気力は残っていない。きちんと成仏しただろうか。