先日ドラえもんの映画2008の感想を書いたわけですが,
映画ブロガーの皆さんって,公開したらいち早く見て
Upしてるわけじゃないですか。他の人が参考にする点でも
早けりゃ早いほどいいわけで。
試写会は見てますし当ブログでも感想をUpしてますけど
初日挨拶を見てきた人の記事とか見てると,
何故かなんか俺って何もしてないなという気になっちゃって。
そんなことを思っていたら,
和田秀樹先生の初監督映画『受験のシンデレラ』が
公開初日を迎えるということで,新宿「K's Cinema」まで行ってきました。
舞台挨拶も聞くことができました!
和田秀樹 初監督作品『受験のシンデレラ』公式サイト
http://www.juken-movie.com/
ストーリーとしては,
東大合格率9割のカリスマ予備校講師として
富と名声を手に入れた絶頂のときに
食道がんで余命1年6ヶ月を告げられた男・五十嵐と
両親が離婚しバイトで生活を支えつつも
同居する母親が遊び呆ける貧乏生活を理由に
彼氏にも振られてしまうなど人生に希望を失った
高校中退少女・遠藤真紀が出会い,
東大合格を目指す-というもの。
私,一昨年の12月に『幸福な食卓』の感想を書いた際には
> グイグイ引きつけてドッカンドッカン盛り上げて
> 魅せていくエンタテイメントじゃない,静かな映画なので,
> 他と比べて「この作品がよかった!」というのは難しいのですが,
> 「こんな作品を生み出せる日本の映画(界)って,やっぱりいいな」
> とは,本当に強く思いました。
なんて書いてますけど,
『受験のシンデレラ』はそれにも増してドッカンドッカンくる
エピソードはありません。
真紀の大学受験と五十嵐の闘病,言葉にしてしまえば
この2つが最大ですべての映画と言ってしまえると思うのです。
が,「この作品がよかった!」とは
声を大にして言えます!
いいんですよ!2人のつながり感が。
和田監督が評されている(プログラム内インタビューより)ように
五十嵐役の豊原功補さん「いろんな作品に名脇役的に出ているけど
主役的な人。今回もどんどん役にのめり込んでいく(プロの)
役者さんの演技」,
真紀役の寺島咲さん「今どきの子としては純情すぎるくらいピュア」。
この2人が力を合わせて東大受験に向かっていく姿に
ほんとうに自然に感情移入できて106分の上映時間を
一気に過ごすことができました。
和田監督も知っておられますし私もブログで大絶賛している
『ドラゴン桜』(以下DZ)をどうしても思い出さざるを得ないわけですが
カリスマ受験講師の五十嵐は,DZの桜木と同様,アンチ爽やか系。
なんか斜に構えた,ぶっきらぼうで「受験は受験,
合格最低点をとって受かりさえすればいい」
というキャラ。
だからこそ人間くさいというか,
こんな彼が「夢を諦める人間をもう出さないと誓った」
気持ちを取り戻すと,その熱さが気持ちいい!
いっぽう東大を受験する主人公の遠藤真紀,
作品中で泣くんですよ。それも1度じゃない。
己の境遇に泣き,自暴自棄になって墜ちた自分の性根に泣き,
そしてかけがえのない恩師との別れに…。
それこそ涙をボロボロポロポロ流して泣くのですが
これでもらい涙を誘おうってわけじゃない。泣く場面は
ちゃんと別にあるんです。
ただ,彼女の涙はすごくきれいな涙なんですよ。
ともすればグジャグジャの汚い泣き方がリアルな涙と
いう考えとかもありそうな気がしますが,
監督が「ある種のおとぎ話」と語っていたこの映画の本質を
あの涙はすごく体現していると思うんですね。
本来の意味は偶然の出会いから始まるサクセスストーリーという
「おとぎ話」なわけですが,それを助ける男にとっても,
あんな愛すべき女の子(まぁ別に男の子でもいいですけど)
の人生を自分の力で好転させる,男の夢,おとぎ話なんですよ。
そこで相手がグジャグジャ泣く女の子だと
幼さ・弱さがひけらかされ過ぎて「女」と「男」の話くささが
出かねない。あのきれいな涙が語らずして純粋さを示し
見事な「おとぎ話」を演出・成立させてたように思うんですね。
■この『受験のシンデレラ』,
撮影は約1年前に終わり,作品も去年既に完成,
「2007モナコ国際映画祭」にて4冠達成
(最優秀作品賞/主演男優賞/主演女優賞/脚本賞)して
日本ではこのサクラサク季節にようやく公開となったわけですが,
かなり前々から和田先生もメルマガなどで映画には触れていまして
初監督作品,つまり世間で素人監督と見られることを
気にされているようでしたが,批評家のつもりで見れば
たしかに「俺ならこう撮る」みたいな点はあったかもしれません。
2人の出会い(正確には2度目)となる“当たり屋”シーンの
ところとかね。
けど…最初に「ドッカンドッカンくるエピソードはない」と
書きましたけど,シンプルに見えて緻密に組み立てられた
ストーリー,技巧を凝らしたように見えない(気付かない)ながらも
登場人物に寄りそった視点のカメラワーク,
そして真紀と五十嵐2人の間に流れる
とてもあったかく微笑ましい空気感。
すばらしいと思います。
脚本の最終稿からさらに変更されたという
真紀が五十嵐の病気について真相を知る場面,
そして2人の最後の会話のシーン,
この演出は映画の神様が降りてきて導いてくれた
かのような,ジグソーパズルのピースのように完璧なはまり方。
クライマックスに至るまでの流れの中でぐんぐん
盛り上がっていく緊張感,着々と打たれていく
感情の堤防決壊への布石。
そして,合格発表日の真紀が直面した絶望と感動。
私,まんまとはまりまして,不覚にも右の目尻から
涙がボタボタ流れ出してしまいましたよ(たぶん
右だけ鼻涙腺が詰まってたんでしょう)。
このシーン,画面に全く映ってないんですが豊原功補さん
まさに主演男優賞ものの存在感がありました。
まさか,あの「ただのゴミ」と呼ばれた紙の花に泣かされるとは…。
精神科医としても受験指導者としても成功されているだけに
その和田先生がもともと医者になるより映画を撮りたかったのだ,
次回作やその次も撮りたいと言われても
ピンとこないという人が大勢でしょうが,
この第1作は,意識されたという一連の伊丹十三作品,
あのジャンルを継承される能力・資格は十分あると
世に知らしめ得る作品になったと思います。
()だって,あなた,受験勉強なんて絵的に地味なテーマで
退屈しない,こんな感動できる映画が成立するんですよ!
■せっかく舞台挨拶を見られたので。
和田秀樹監督…会った人が口々に「頭の回転の速い人」といい,
本人は「その場に合った即妙な受け答えができない。
だからテレビのコメンテーターでも重用されない」と
正反対の評価をされる先生の喋り。
この日の挨拶では話の内容は明快で筋の通ったトーク。
特に,最初に司会の女性に桜が満開でここも満席と話を振られたときは
「こんな花見日和の日にわざわざ映画館に足を運んでいただいて
…このお客さんもサクラじゃないといいんですが」
と絶妙のツカミ。
いっぽう,喋り方はとても恥ずかしそうで,「えーと」を頻発。
教育関係の講演では喋り方も含めてとても上手なのですが…。
そして,豊原さんの発言を受けて「“よく生きる”こと」が
この映画のテーマかと話を振られ(え?!そんなんじゃないよ)
と少し面食らった様子で「受験や進路でも緩和ケアでも
可能なことなのに方法を知らないためにあきらめてしまっている
人に,やり方はあるんだということを知ってほしかった」
と,真面目に回答。このKYはいいKY。
というわけで,「頭の回転が速い/アドリブに弱い」
両方の見方に納得できましたw
寺島咲さん…「歳が自分と近い役で大変刺激を受け,
私も頑張らなくちゃと思いました」とかわいい感想。
私の目が悪いのと,彼女が長髪をおろしていたので
顔がほとんど見えませんでしたが,そこらの女の子とは
違う女優オーラが。
豊原功補さん…がんとなったカリスマ受験講師で
人生の最後を寺島さん演じる主人公の少女の指導に使う
という役柄自己紹介。おお,テレビで見るあの人だ!
といえばどんな感じだったか伝わるでしょうか。
浅田美代子さん…「この映画に関わることで和田監督,先生から
いろいろなことを教わることができてためになりました」と。
何もいうことのない真っ当なコメント。
映画やドラマの役柄もバラエティ番組での凶器的な
天然キャラも,そして今日のコメントもすべて
完璧に演じ分けるナチュラルボーンアクトレスなのかなと。
星野みちるさん…自ら作曲し秋元康先生が詞をつけてくれた
という主題歌の紹介。元AKB48の方なんですね。
かわいかったです。
ここで出た,「よく生きる」という言葉。
映画には全く出てこない(五十嵐の友人の医師・小宮が
五十嵐の最後の仕事を全力でサポートするというくだりは
あるくらい)のですが,見終わった人の感想として,
この言葉が浮かぶ,印象に残る確率は高いんじゃないかと思います。
そのくらい五十嵐の生き様が鮮烈で,
この映画のすばらしいところの1つだと思います。
「あきらめるな,方法はある」というテーマ,メッセージは
「おとぎ話」ですからほんのり伝わればいいんじゃないでしょうか。
あまりストレートに伝わる「これがテーマ」と受け手にわかる
ようでは説教臭く娯楽作品に昇華されてないともいえるわけで。
まあ,私が五十嵐の歳に近い男の大人だからそう感じるだけで
真紀の年齢に近い少年少女にはストレートに伝わってるかもしれませんし。
では,どんな層が見てたのか?
舞台挨拶のあった12時05分の回は,40代以上の男女,
受験生の親世代や教育関係者世代の比率が
けっこう多かったように思います。親子連れは1,2組
くらい,あと中学生くらいの女の子グループがいました。
次の14時20分(この日は15分順延)の回は,もっとばらけていた
というか,若いカップルや中学生くらいの親子連れ,
受験生くらいの年代からお年寄りまでかなり均等に
各世代の人たちが観に来ていたように思います。
え?舞台挨拶の回のほか次の回って?
そうなんですよ。私,舞台挨拶の回が満席で,
次の回を見たんです。
これがねぇ…個人的な話なんで興味のない方は
この色の字のところは飛ばしていただけたらと思うんですけど,
この日のことは,うれしい偶然・巡り合わせが本当にいくつも重なってるんですよ。
そもそも,私はふだんの生活で超どケチ&出不精で,わざわざ出かけて千円以上もの金を払って映画を見ようなんてめったにしません。前回金を払って見たのは株主割引で見た『続・三丁目の夕日』(先日のドラえもんはすでに2枚の切符があったし,そもそも子ども関係の支出は別物)。その前となるともう思い出せないくらい。それが,和田先生の映画なら上映中に見ておこうと漠然と思っていたことと最初に書いたように映画を公開初日に観たいという気持ちが重なったこと,29日の土曜にはちょうど東京に出かける用事があって,時間的にそれを済ませた後,新宿k's Cinemaの舞台挨拶に間に合いそうな目算が立ったことでよし,今日観に行っちゃおうという気になったわけです。
新宿の東南口は初めてでしたが特に迷わずすんなり映画館に着くと,なんとちょうど和田秀樹監督も来られたところで,3階の映画館に行く同じエレベータを待つ状況に。先生にケータイ写真をお願いしたところ快く撮らせてくださいました。
このときふと気付くとエレベータのドアの横に映画館の張り紙が。「12:00 満席」って。まぁしかたがないですよね。映画館の受付で次回分の入場整理券を受け取ると,整理番号が「3」(「1」の人,ショックだったろうな…)。私も舞台挨拶の回は入れないってんで内心がっかりしていると,この回の整理券をゲットした観客が入り終わった後に「どうぞ」と入れてくださって,関係者と一緒に立ち見で舞台挨拶を観ることができたんですよ。ありがたかったです。
で,この回の入場整理券がとれなかったおかげで,舞台挨拶が終わった監督たちと外でお会いできたわけですよ(サインの準備など全くなかったですが,チケットの半券に書いていただけました)。出待ちのマニアックっぽい方々もけっこういらっしゃいまして,豊原功補さんはけっこう何人かにサインを書かれてました。寺島さんや星野さんは移動の車が到着した直後に出てきてそのまま乗り込んで行かれました。みなさん撮影NGなんですね。
というわけで,出不精とどケチを払拭してこの日のこの時間この場所に見に行くこともそこまで行く気になる条件がたまたまうまく揃ったからですし,たまたま舞台挨拶の回の開始時間には間に合いながらも席がとれないタイミングで着いたために,映画本編のほか舞台挨拶と出待ちと1粒で3度おいしい経験ができて。そして映画そのものも十二分に楽しめて。
いや,本当,よかったです。
実は一晩かけてこんな時間までダラダラ書いてきまして
あげくgooブログの制限にひっかかる1万字オーバー
してしまったんで,分割しました(>>続きはこちら)
読まれる方にとっては苦痛かもしれませんが
よろしければ続きも読んでください。
本当,この映画1本で,酒のつまみに一晩飲めますよ,私。
********************
この駄文を読んで,参考になった,興味をもったという方は
→人気ブログランキングにジャンプ
もしくはブログランキング にほんブログ村
********************
和田秀樹のヒデキワダ・ドットコム[hidekiwada.com]
http://www.hidekiwada.com/
※公務員の飲酒運転に対するバッシングに異議を唱えたり
朝青龍問題を全面擁護,「えっ?!」と思わせながら筋の通った
メールマガジンも読み応えありますよ。登録オススメ。
片岡信和オフィシャルブログ 「curiosity killed the cat」powered by Ameba
真紀の(元)彼・ユウタ役。「炎神戦隊ゴーオンジャー」のブルー。
星野みちる公式ブログ - ちるちるの青い鳥ぶろぐ
和田秀樹先生関連エントリー
病気腎移植問題で思うこと(2007-02-06)
万波医師がバッシングされるけれど,和田先生によれば
批判している日本移植学会の前理事長は違法要素だらけ,
殺人的な膵腎同時移植を行った人間。
現理事長も将来確実に病気になるという点では万波医師の
病気腎移植よりたちが悪いとも言えるFAP生体肝
ドミノ移植を行っている。
鬼畜。 子ども遺体サイト変態教師(2006-12-03)
紳助会見,和田秀樹先生も同じ見解(04/11/21)
映画ブロガーの皆さんって,公開したらいち早く見て
Upしてるわけじゃないですか。他の人が参考にする点でも
早けりゃ早いほどいいわけで。
試写会は見てますし当ブログでも感想をUpしてますけど
初日挨拶を見てきた人の記事とか見てると,
何故かなんか俺って何もしてないなという気になっちゃって。
そんなことを思っていたら,
和田秀樹先生の初監督映画『受験のシンデレラ』が
公開初日を迎えるということで,新宿「K's Cinema」まで行ってきました。
舞台挨拶も聞くことができました!
和田秀樹 初監督作品『受験のシンデレラ』公式サイト
http://www.juken-movie.com/
ストーリーとしては,
東大合格率9割のカリスマ予備校講師として
富と名声を手に入れた絶頂のときに
食道がんで余命1年6ヶ月を告げられた男・五十嵐と
両親が離婚しバイトで生活を支えつつも
同居する母親が遊び呆ける貧乏生活を理由に
彼氏にも振られてしまうなど人生に希望を失った
高校中退少女・遠藤真紀が出会い,
東大合格を目指す-というもの。
私,一昨年の12月に『幸福な食卓』の感想を書いた際には
> グイグイ引きつけてドッカンドッカン盛り上げて
> 魅せていくエンタテイメントじゃない,静かな映画なので,
> 他と比べて「この作品がよかった!」というのは難しいのですが,
> 「こんな作品を生み出せる日本の映画(界)って,やっぱりいいな」
> とは,本当に強く思いました。
なんて書いてますけど,
『受験のシンデレラ』はそれにも増してドッカンドッカンくる
エピソードはありません。
真紀の大学受験と五十嵐の闘病,言葉にしてしまえば
この2つが最大ですべての映画と言ってしまえると思うのです。
が,「この作品がよかった!」とは
声を大にして言えます!
いいんですよ!2人のつながり感が。
和田監督が評されている(プログラム内インタビューより)ように
五十嵐役の豊原功補さん「いろんな作品に名脇役的に出ているけど
主役的な人。今回もどんどん役にのめり込んでいく(プロの)
役者さんの演技」,
真紀役の寺島咲さん「今どきの子としては純情すぎるくらいピュア」。
この2人が力を合わせて東大受験に向かっていく姿に
ほんとうに自然に感情移入できて106分の上映時間を
一気に過ごすことができました。
和田監督も知っておられますし私もブログで大絶賛している
『ドラゴン桜』(以下DZ)をどうしても思い出さざるを得ないわけですが
カリスマ受験講師の五十嵐は,DZの桜木と同様,アンチ爽やか系。
なんか斜に構えた,ぶっきらぼうで「受験は受験,
合格最低点をとって受かりさえすればいい」
というキャラ。
だからこそ人間くさいというか,
こんな彼が「夢を諦める人間をもう出さないと誓った」
気持ちを取り戻すと,その熱さが気持ちいい!
いっぽう東大を受験する主人公の遠藤真紀,
作品中で泣くんですよ。それも1度じゃない。
己の境遇に泣き,自暴自棄になって墜ちた自分の性根に泣き,
そしてかけがえのない恩師との別れに…。
それこそ涙をボロボロポロポロ流して泣くのですが
これでもらい涙を誘おうってわけじゃない。泣く場面は
ちゃんと別にあるんです。
ただ,彼女の涙はすごくきれいな涙なんですよ。
ともすればグジャグジャの汚い泣き方がリアルな涙と
いう考えとかもありそうな気がしますが,
監督が「ある種のおとぎ話」と語っていたこの映画の本質を
あの涙はすごく体現していると思うんですね。
本来の意味は偶然の出会いから始まるサクセスストーリーという
「おとぎ話」なわけですが,それを助ける男にとっても,
あんな愛すべき女の子(まぁ別に男の子でもいいですけど)
の人生を自分の力で好転させる,男の夢,おとぎ話なんですよ。
そこで相手がグジャグジャ泣く女の子だと
幼さ・弱さがひけらかされ過ぎて「女」と「男」の話くささが
出かねない。あのきれいな涙が語らずして純粋さを示し
見事な「おとぎ話」を演出・成立させてたように思うんですね。
■この『受験のシンデレラ』,
撮影は約1年前に終わり,作品も去年既に完成,
「2007モナコ国際映画祭」にて4冠達成
(最優秀作品賞/主演男優賞/主演女優賞/脚本賞)して
日本ではこのサクラサク季節にようやく公開となったわけですが,
かなり前々から和田先生もメルマガなどで映画には触れていまして
初監督作品,つまり世間で素人監督と見られることを
気にされているようでしたが,批評家のつもりで見れば
たしかに「俺ならこう撮る」みたいな点はあったかもしれません。
2人の出会い(正確には2度目)となる“当たり屋”シーンの
ところとかね。
けど…最初に「ドッカンドッカンくるエピソードはない」と
書きましたけど,シンプルに見えて緻密に組み立てられた
ストーリー,技巧を凝らしたように見えない(気付かない)ながらも
登場人物に寄りそった視点のカメラワーク,
そして真紀と五十嵐2人の間に流れる
とてもあったかく微笑ましい空気感。
すばらしいと思います。
脚本の最終稿からさらに変更されたという
真紀が五十嵐の病気について真相を知る場面,
そして2人の最後の会話のシーン,
この演出は映画の神様が降りてきて導いてくれた
かのような,ジグソーパズルのピースのように完璧なはまり方。
クライマックスに至るまでの流れの中でぐんぐん
盛り上がっていく緊張感,着々と打たれていく
感情の堤防決壊への布石。
そして,合格発表日の真紀が直面した絶望と感動。
私,まんまとはまりまして,不覚にも右の目尻から
涙がボタボタ流れ出してしまいましたよ(たぶん
右だけ鼻涙腺が詰まってたんでしょう)。
このシーン,画面に全く映ってないんですが豊原功補さん
まさに主演男優賞ものの存在感がありました。
まさか,あの「ただのゴミ」と呼ばれた紙の花に泣かされるとは…。
精神科医としても受験指導者としても成功されているだけに
その和田先生がもともと医者になるより映画を撮りたかったのだ,
次回作やその次も撮りたいと言われても
ピンとこないという人が大勢でしょうが,
この第1作は,意識されたという一連の伊丹十三作品,
あのジャンルを継承される能力・資格は十分あると
世に知らしめ得る作品になったと思います。
()だって,あなた,受験勉強なんて絵的に地味なテーマで
退屈しない,こんな感動できる映画が成立するんですよ!
■せっかく舞台挨拶を見られたので。
和田秀樹監督…会った人が口々に「頭の回転の速い人」といい,
本人は「その場に合った即妙な受け答えができない。
だからテレビのコメンテーターでも重用されない」と
正反対の評価をされる先生の喋り。
この日の挨拶では話の内容は明快で筋の通ったトーク。
特に,最初に司会の女性に桜が満開でここも満席と話を振られたときは
「こんな花見日和の日にわざわざ映画館に足を運んでいただいて
…このお客さんもサクラじゃないといいんですが」
と絶妙のツカミ。
いっぽう,喋り方はとても恥ずかしそうで,「えーと」を頻発。
教育関係の講演では喋り方も含めてとても上手なのですが…。
そして,豊原さんの発言を受けて「“よく生きる”こと」が
この映画のテーマかと話を振られ(え?!そんなんじゃないよ)
と少し面食らった様子で「受験や進路でも緩和ケアでも
可能なことなのに方法を知らないためにあきらめてしまっている
人に,やり方はあるんだということを知ってほしかった」
と,真面目に回答。このKYはいいKY。
というわけで,「頭の回転が速い/アドリブに弱い」
両方の見方に納得できましたw
寺島咲さん…「歳が自分と近い役で大変刺激を受け,
私も頑張らなくちゃと思いました」とかわいい感想。
私の目が悪いのと,彼女が長髪をおろしていたので
顔がほとんど見えませんでしたが,そこらの女の子とは
違う女優オーラが。
豊原功補さん…がんとなったカリスマ受験講師で
人生の最後を寺島さん演じる主人公の少女の指導に使う
という役柄自己紹介。おお,テレビで見るあの人だ!
といえばどんな感じだったか伝わるでしょうか。
浅田美代子さん…「この映画に関わることで和田監督,先生から
いろいろなことを教わることができてためになりました」と。
何もいうことのない真っ当なコメント。
映画やドラマの役柄もバラエティ番組での凶器的な
天然キャラも,そして今日のコメントもすべて
完璧に演じ分けるナチュラルボーンアクトレスなのかなと。
星野みちるさん…自ら作曲し秋元康先生が詞をつけてくれた
という主題歌の紹介。元AKB48の方なんですね。
かわいかったです。
ここで出た,「よく生きる」という言葉。
映画には全く出てこない(五十嵐の友人の医師・小宮が
五十嵐の最後の仕事を全力でサポートするというくだりは
あるくらい)のですが,見終わった人の感想として,
この言葉が浮かぶ,印象に残る確率は高いんじゃないかと思います。
そのくらい五十嵐の生き様が鮮烈で,
この映画のすばらしいところの1つだと思います。
「あきらめるな,方法はある」というテーマ,メッセージは
「おとぎ話」ですからほんのり伝わればいいんじゃないでしょうか。
あまりストレートに伝わる「これがテーマ」と受け手にわかる
ようでは説教臭く娯楽作品に昇華されてないともいえるわけで。
まあ,私が五十嵐の歳に近い男の大人だからそう感じるだけで
真紀の年齢に近い少年少女にはストレートに伝わってるかもしれませんし。
では,どんな層が見てたのか?
舞台挨拶のあった12時05分の回は,40代以上の男女,
受験生の親世代や教育関係者世代の比率が
けっこう多かったように思います。親子連れは1,2組
くらい,あと中学生くらいの女の子グループがいました。
次の14時20分(この日は15分順延)の回は,もっとばらけていた
というか,若いカップルや中学生くらいの親子連れ,
受験生くらいの年代からお年寄りまでかなり均等に
各世代の人たちが観に来ていたように思います。
え?舞台挨拶の回のほか次の回って?
そうなんですよ。私,舞台挨拶の回が満席で,
次の回を見たんです。
これがねぇ…個人的な話なんで興味のない方は
この色の字のところは飛ばしていただけたらと思うんですけど,
この日のことは,うれしい偶然・巡り合わせが本当にいくつも重なってるんですよ。
そもそも,私はふだんの生活で超どケチ&出不精で,わざわざ出かけて千円以上もの金を払って映画を見ようなんてめったにしません。前回金を払って見たのは株主割引で見た『続・三丁目の夕日』(先日のドラえもんはすでに2枚の切符があったし,そもそも子ども関係の支出は別物)。その前となるともう思い出せないくらい。それが,和田先生の映画なら上映中に見ておこうと漠然と思っていたことと最初に書いたように映画を公開初日に観たいという気持ちが重なったこと,29日の土曜にはちょうど東京に出かける用事があって,時間的にそれを済ませた後,新宿k's Cinemaの舞台挨拶に間に合いそうな目算が立ったことでよし,今日観に行っちゃおうという気になったわけです。
新宿の東南口は初めてでしたが特に迷わずすんなり映画館に着くと,なんとちょうど和田秀樹監督も来られたところで,3階の映画館に行く同じエレベータを待つ状況に。先生にケータイ写真をお願いしたところ快く撮らせてくださいました。
このときふと気付くとエレベータのドアの横に映画館の張り紙が。「12:00 満席」って。まぁしかたがないですよね。映画館の受付で次回分の入場整理券を受け取ると,整理番号が「3」(「1」の人,ショックだったろうな…)。私も舞台挨拶の回は入れないってんで内心がっかりしていると,この回の整理券をゲットした観客が入り終わった後に「どうぞ」と入れてくださって,関係者と一緒に立ち見で舞台挨拶を観ることができたんですよ。ありがたかったです。
で,この回の入場整理券がとれなかったおかげで,舞台挨拶が終わった監督たちと外でお会いできたわけですよ(サインの準備など全くなかったですが,チケットの半券に書いていただけました)。出待ちのマニアックっぽい方々もけっこういらっしゃいまして,豊原功補さんはけっこう何人かにサインを書かれてました。寺島さんや星野さんは移動の車が到着した直後に出てきてそのまま乗り込んで行かれました。みなさん撮影NGなんですね。
というわけで,出不精とどケチを払拭してこの日のこの時間この場所に見に行くこともそこまで行く気になる条件がたまたまうまく揃ったからですし,たまたま舞台挨拶の回の開始時間には間に合いながらも席がとれないタイミングで着いたために,映画本編のほか舞台挨拶と出待ちと1粒で3度おいしい経験ができて。そして映画そのものも十二分に楽しめて。
いや,本当,よかったです。
実は一晩かけてこんな時間までダラダラ書いてきまして
あげくgooブログの制限にひっかかる1万字オーバー
してしまったんで,分割しました(>>続きはこちら)
読まれる方にとっては苦痛かもしれませんが
よろしければ続きも読んでください。
本当,この映画1本で,酒のつまみに一晩飲めますよ,私。
********************
この駄文を読んで,参考になった,興味をもったという方は
→人気ブログランキングにジャンプ
もしくはブログランキング にほんブログ村
********************
受験のシンデレラ (小学館文庫 わ 8-1)和田 秀樹/小学館※監督の和田先生自らの筆によるノベライズ本です。 |
和田秀樹のヒデキワダ・ドットコム[hidekiwada.com]
http://www.hidekiwada.com/
※公務員の飲酒運転に対するバッシングに異議を唱えたり
朝青龍問題を全面擁護,「えっ?!」と思わせながら筋の通った
メールマガジンも読み応えありますよ。登録オススメ。
片岡信和オフィシャルブログ 「curiosity killed the cat」powered by Ameba
真紀の(元)彼・ユウタ役。「炎神戦隊ゴーオンジャー」のブルー。
星野みちる公式ブログ - ちるちるの青い鳥ぶろぐ
和田秀樹先生関連エントリー
病気腎移植問題で思うこと(2007-02-06)
万波医師がバッシングされるけれど,和田先生によれば
批判している日本移植学会の前理事長は違法要素だらけ,
殺人的な膵腎同時移植を行った人間。
現理事長も将来確実に病気になるという点では万波医師の
病気腎移植よりたちが悪いとも言えるFAP生体肝
ドミノ移植を行っている。
鬼畜。 子ども遺体サイト変態教師(2006-12-03)
紳助会見,和田秀樹先生も同じ見解(04/11/21)
凄くいい映画なのですね~
是非、見に行こうと思います
情報凄くありがたいです
僕のブログでサイト紹介させてもらいますので
よろしくお願いします。
公開初日にご覧になったのですね。
私も上映館を探してみます。
ものすごく詳しく熱く語られていて感動しました。
私もトラックバック返させていただきました(^^)
みなさん本当にあたたかいコメントありがとうございます。
○クローズさん
こちらこそご丁寧にありがとうございます。
ぜひお薦めです!
紹介記事の件,合わせてお礼申し上げます。
「受験のシンデレラ」関連記事に関しましては著作権フリーってことで,どなたもお好きなように使ってください。
○Ho-saさん
ありがとうございます。
おかげさまで小説版も読み終わりまして
(一段落ついてレスさせていただいているところです)。
次エントリーで書いたいろいろな疑問の答えが
きっちり書かれていて「やられた…」という感じです。
本と映画,どちらが先でも楽しめるクオリティですね。
○佳奈さん ○anonさん
ありがとうございます。
直球ストーリーの映画なのでネタバレにさほど神経質にならなくていいとはいえ(ちょっとは気を使ってますが),思いついたままを書き連ねた駄文にお付き合いいただき感謝至極です。
この作品のすばらしさが少しでも伝われば本当にうれしいです。
トラックバックありがとうございました。m(__)m
受験に限らず、よりよく生きる方法を知ることで人は変われるということを教えていただいた感じがする作品でした。(^_-)-☆
DVDが出たら、また、観たいと思います。(^_-)-☆