徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

ジャスティン・ビーバーのコンサートに始まる麻疹流行、続報

2016年09月08日 08時01分38秒 | 小児科診療
 読売新聞に今回の経緯を説明したわかりやすいイラストがありましたので紹介します。
 可能であれば、ワクチン接種歴の有無も明確に記載していただきたいですね。

■ 関西空港はしか拡散...追跡困難、さらに感染連鎖の恐れ
(2016.09.06:読売新聞)
 関西空港で、8月中旬から麻疹の集団感染が広がっている。5日までに関空の従業員32人と、その診察や搬送にあたった医療関係者2人、一般客3人の計37人が発症。今後も拡大が心配されている。国際線だけで1日数万人もの利用客がある〈空の玄関口〉で麻疹の感染はどのように広がったのか。



◇ 7月31日
 「関空を7月31日に利用した誰かから広がったとみるのが有力だ」
 関空を運営する関西エアポート幹部は、関空関係者らが次々と麻疹に感染する「関空ルート」の起点を7月末と推定する。
 根拠は、厚生労働省などによる麻疹感染者の行動調査。国内で8月9〜11日に、麻疹を発症した4人が全員、7月31日に関空にいたことがわかり、麻疹の潜伏期間(10〜12日)から逆算すると、この時期に関空にいた「誰か」から感染したとみられるためだ。
 4人の内訳は1人が関西エアポートのグループ会社の従業員、残り3人は一般客で、麻疹の遺伝子型も同じ「H1」で中国やモンゴルで多い型だった。
 さらに、感染した一般客3人のうちの1人については、兵庫県内の家族4人と、8月に行った千葉市でのコンサート会場にいた2人の発症が確認されており、「関空外」にも感染が広がっている。

◇ 「風邪」と診断
 関西エアポートによると、7月末に感染したとみられる従業員は、国際線でカウンターなどの接客を担当。8月9日に勤務中、発熱し、医療機関では当初、「風邪」と診断された。
 診断後、従業員はいったん休んだが、熱が下がり、同13日に出勤。だが再び発熱して同日、早退し、2日後に体調が悪化して救急搬送され、17日に麻疹と診断された。
 その後、この従業員の同僚らが8月27日以降、次々と発症。大半が20〜30歳代で、ワクチンの定期接種を1回受けるか、受けそびれたとみられる若い世代だ。また関連は不明だが、8月28日に関空対岸の商業施設を利用した30歳代の男性1人も麻疹と診断された。
 関西エアポート幹部は「8月9日の診察時点で『麻疹』と診断できていれば、拡大は防げたかも」と話すが、麻疹の発生件数は全国でも2015年は35件と少なく、同年3月、世界保健機関(WHO)は日本に土着のウイルスがいない「排除状態」と認定。大阪府医療対策課の幹部はこう話す。
 「麻疹は日本ではほぼなくなったとされているうえ、風邪と見分けがつきにくく、医師も気付けなかったのだろう」

◇ 1日最高6万人
 麻疹の集団感染は今夏、関空とは別ルートで千葉県松戸市などでも起きているが、1日に数万人が行き交う「関空ルート」での調査対象の規模は、同市などに比べて、はるかに大きい。
 今夏のお盆の時期は、1日の利用客が国際線で約6万人と1994年の開港以来、最高を記録。厚労省担当者は「利用者の行動を追うのは、至難」と指摘する。
 また、麻疹の潜伏期間を考慮すると、二次感染した関空従業員らから、さらに感染が広がる三次感染の発症時期が9月上旬にあたり、「今後も油断はできない」(関西エアポート幹部)と警戒する。


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5 コメント

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Unknown (のりお)
2016-09-09 08:07:04
ワクチン接種を2回した患者が4割もいて、こちら関西はちょっとしたパニック状態です。ワクチン効かない型か?と心配しています。
ワクチン2回接種者も感染? (管理人)
2016-09-09 09:37:39
コメントありがとうございます。
麻疹のニュースが流れる度に「ワクチン接種歴を知りたい」と気をもんでいます。

ワクチン2回接種者も感染しているのですか?
麻疹ワクチン(≒MRワクチン)の有効率は、1回接種で95%、2回接種で99%とされていますから、それが事実だとしたら大問題です。

引き続き、情報収集に努めたいと思います。
Unknown (のりお)
2016-09-09 18:20:04
上記の割合は、関空の従業員の感染者のことです。
大阪府庁のホームページから「麻疹」のところをたどっていけば、円グラフで接種歴が書かれています。
33人中、13人がワクチン接種歴2回みたいです。
行政の悪い所か全ての情報は発表されていません。
40代の救急隊員と医者が感染したことには触れられていません。ワクチン接種歴と自然感染罹患歴は情報を公開してほしいのですが・・・。
麻疹に関心のあるネットユーザも2回接種してるのに、なんでこんなにも感染者がいるのか?が一番の論点になっているようです。
抗体値の低下が著しいのでしょうか・・・。
接種歴を勘違いしているのか・・・。
麻疹ウイルスが単一血清型なら遺伝子が違っても効果はちゃんとあるはずなのに、でも、変異が著しく大きいなら、感染者の数はもっともっと多いはずだし・・・。
僕(47歳)は、4歳の時に自然感染をしてますが、終生免疫が付いているのか正直不安です。
関西ではワクチン不足です・・・。
(僕は昔、医学書出版社に勤めていた単なるサラリーマンです)
SVFの可能性 (管理人)
2016-09-10 06:47:29
大阪府のHPはこれですね;
https://www.google.com/url?hl=ja&q=http://www.pref.osaka.lg.jp/iryo/osakakansensho/mashinsyudan.html&source=gmail&ust=1473543250922000&usg=AFQjCNHlyeW2vCOBYyrcfiJuZhTYal01Kw

感染者は20-30歳代で10歳代ではありません。
つまり、ワクチンを2回済ませていたとしても、ある程度年数が経過しています。

するとSVF(secondary vaccine failure)の可能性が考えられます。
これは、ワクチン接種後に免疫が付きますか゛、その後減衰して感染防止可能ラインを下回ってしまう現象で、大まかに生ワクチンでは10年、不活化ワクチンでは5年程度とされています。

生ワクチンが発明された当初、その効果は「一生もの」と考えられていたのですが、そうでもないことが判明し、2回接種が導入されました。
しかし2回接種してもその10年後にはまた必要になるのです。
つまり、ワクチンで感染防止抗体を維持するためには10年ごとに一生ワクチンを打ち続ける必要があります。

このことが今まで話題にならなかったのは、麻疹が小流行を繰り返していたからです。
その際に麻疹ウイルスが体に入ると、免疫系を刺激して抗体をたくさん作るため、減りつつあった免疫が再度強くなります(これをブースター効果と呼びます)。
ワクチン追加接種をしなくても自然に免疫抗体が維持されるカラクリです。

2015年、日本は「麻疹排除国」とWHOから認定されました。
大変誇らしいことですが、視点を変えると「麻疹の小流行がなくなった」ので自然ブースター効果が期待できなくなります。

以上の理由から「2回接種者でも感染した」と想定されます。
Unknown (のりお)
2016-09-10 07:46:30
ありがとうございます。
他の女医さんのブログにもSVFだろうと書かれていました。
早く収束してくれればいいのですが・・・。
妊娠中のママさんや0歳児を持つ親御さんは本当に心配されてると思います。
ありがとうございました。

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