徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

B型肝炎ワクチン、ラテックスアレルギー患者さんは要注意。

2017年03月23日 09時58分41秒 | 小児科診療
 日本で承認・使用されているB型肝炎ワクチンは2種類(ビームゲン®、ヘプタバックスII®)あります。
 このヘプタバックスIIのバイアルの蓋にはラテックスが使用されており、ラテックスアレルギー患者さんに接種すると副反応が発生する可能性があり注意が必要です。
 
 「私はラテックスアレルギーがないから大丈夫」

 と安心する前にもうひとこと。
 ラテックスと交差反応がある果物(アボガド、バナナ、クリ、キウイフルーツなど)にアレルギーがある人も注意が必要なのです。
 詳しくは下記記事をお読みください;

■ B型肝炎ワクチン、過量接種で注意喚起
2017.03.22:メディカル・トリビューン
 組換え沈降B型肝炎ワクチンのビームゲンとヘプタバックス-Ⅱについて、それぞれの製造販売元である化学及血清療法研究所とMSDは3月21日、10歳未満への接種量はいずれも1回0.25mLであるにもかかわらず、0.5mLが接種された事例の報告があるとして、過量接種に気を付けるよう注意を喚起した。
 両剤は、いずれも通常0.5mLを4週間隔で2回、さらに20~24週経過後に0.5mLを1回、皮下または筋肉内に投与するが、10歳未満の場合には同様の間隔で0.25mLずつ皮下投与する。しかし両社によると、10歳未満の小児に0.5mLを接種した事例が報告されているという。
 さらにヘプタバックス-Ⅱに関しては、バイアルのゴム栓に乾燥天然ゴム(ラテックス)が含まれているため、ラテックス過敏症がある人や、ラテックスと交差反応がある果物など(アボカド、バナナ、クリ、キウイフルーツなど)にアレルギーがある人でもアレルギー反応が起こる可能性があるとして、MSDは「接種前には予診票や問診でラテックスあるいはラテックスと交差反応のある果物などによるアレルギーの有無を確認してほしい」と注意を呼びかけている。なお、2016年12月31日時点でラテックス過敏症がある人における副反応疑い例は報告されていないが、ラテックスと交差反応のある果物(キウイフルーツ、アボカドなど)にアレルギーがある人で副反応疑い例が3例(1歳、27歳、30歳代)報告されているという。症状は蕁麻疹、発熱、注射部位膨脹、視覚障害、緊張性頭痛など。


 なお、ビームゲン®にはラテックス成分は使われておらず、ラテックスアレルギー患者さんでも安全に接種が可能です。
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殺虫剤のピレスロイドが子どもの行動障害に関連か

2017年03月21日 06時23分12秒 | 小児科診療
 殺虫剤成分が子どもの行動障害(相談して助けを求めることができない、反抗的・破壊的な行動)のリスク上昇に関連しているという報告を紹介します。
 問題のピレスロイドとは?
 「ピレスロイド系」でくくってみると、おなじみの製品(↓)ばかり!
 ん、でも「ピレスロイドに関連する別の化学物質は外在化問題行動のリスク低下に関連していた」という文章もありますね。はて、これらは問題視すべきなのでしょうか?
 



■ 殺虫剤のピレスロイドが子どもの行動障害に関連か
HealthDay News:2017/03/21:ケアネット
 殺虫剤のピレスロイドに曝露した小児では行動障害リスクが高くなることが、フランス、レンヌ大学病院のJean-Francois Viel氏らの研究でわかった。ピレスロイドは、農薬や一部の防蚊剤、頭シラミ・ダニ・ノミの駆除剤などに広く使用されている。
 ピレスロイドは他の殺虫剤と同様に、神経を障害する働きをもつため、近年、小児への影響が懸念されるようになっている。今回の研究は因果関係を証明したものではないが、重大な問題を提起する可能性がある。
 今回の研究では、数百人の母親とその子どもを対象として、妊娠中および子どもが6歳のときの尿中のピレスロイド代謝産物の濃度を調べることにより、ピレスロイド曝露量を測定。さらに、6歳時の子どもの行動を評価した。
 その結果、ピレスロイドと行動障害との間に関連が認められた。特に、妊娠中の母親においてピレスロイドに関連する特定の化学物質の尿中濃度が高い場合、小児の内在化問題行動(たとえば、相談して助けを求めることができないなど)のリスクが高かった子どもにおけるそれらの化学物質の尿中濃度は、外在化問題行動(反抗的・破壊的な行動)のリスク上昇に関連していた。しかし一方で、ピレスロイドに関連する別の化学物質は、外在化問題行動のリスク低下に関連していた。
 全体的にみると、ピレスロイド代謝産物の尿中濃度が最も高かった小児では、異常行動がみられる可能性が約3倍高かった。Viel氏らは、「ピレスロイドは脳内の神経シグナル伝達に影響し、行動障害の誘因となりうる。今回の研究は、環境中からのピレスロイド曝露を避けることが子どもの行動障害に関連する可能性があることを示唆している」と話している。


<原著論文>
・Viel JF, et al. Occup Environ Med. 2017 Mar 1.
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子どもの3割超が花粉症

2017年03月18日 11時37分28秒 | 小児科診療
 そんな時代になりました。

■ 子どもの3割超が花粉症 食物アレルギーも要注意
共同通信社:2017年3月16日
 ロート製薬は、約2900人の子どもについて花粉症の有無を親に聞いたところ、「花粉症だと思う」との回答が31・5%に上ったという調査結果をまとめた。食物アレルギーも起こりやすいとして、対策を呼び掛けている。
 調査は2016年11月にインターネットで実施し、0~16歳の子ども2935人の実態について親から回答を得た。
前回調査に続いて3割を超える高水準。
 特定の果物や野菜を食べたときに出ることがある「口腔(こうくう)アレルギー症候群」は、花粉症との関連性が指摘されている。
 「果物を食べて口や唇、喉にかゆみやピリピリ感・イガイガ感を感じたことがある」と答えたのは、子ども全体でみると13・5%だったが、花粉症の実感があるという子どもに限ると20・6%に達した。
リンゴやモモ、キウイを食べて、口や唇、喉にかゆみを感じたという子どもが目立った。
 ロートは「子どもの症状は気付きにくいので見逃さないことが大事だ」と説明し、屋外ではマスクを着用させるなど、親による対策が重要だとしている。


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入園前の予防接種実施を要請した私立保育園

2017年03月16日 10時09分11秒 | 小児科診療
 今、小児科医の間で話題になっている事例です。

 前項の「麻疹」をお読みになった方は、もしワクチンを接種しない集団があれば大変な目に遭うことが想像できると思います。現在の日本は定期接種で集団免疫率を高く保っているから、流行せずに済んでいるだけです。
 また罹ったとしても、医療が発達し国民皆保険というフリーアクセスで医療機関を受診できるシステムがあるので、なんとかなるだろうというイメージがあるのでしょう。

 つまり「平和ボケ」状態の日本。

 江戸時代には「麻疹は命定め」と言われて恐れられました。
 実際に現在でも発展途上国では麻疹に罹った子どもの4人に1人が命を落とす感染症であり続けています。
 それはあくまでも外国の話で日本は大丈夫、と言えるでしょうか。

 みなさん、東日本大震災を思い出してください。
 避難所にたくさんの人が押し込められ、水も十分に手に入らない状況。
 感染症が流行したら制圧困難です。

 しかし結果的にそうはならなかった。
 理由は「予防接種をしてあったから」に間違いありません。

 実際に東日本大震災後、破傷風が10例発生しました。
 すべて50歳以上で、小児例はゼロ。
 つまり、子どもは予防接種(3種混合/4種混合ワクチン)で守られたのです。
 50歳以上では、ワクチンの効果が経年で減衰したため、発症リスクが高まったのです。

 しかし現行の日本の定期接種は努力義務はありますが、強制ではありません。
 園の言い分も、保護者の言い分も間違いではないと思います。
 あなたは、どう考えますか?

□ 予防接種受けない園児受け入れ拒否 こども園 国は認めず新潟市に通知
2017.2.10:新潟日報
 新潟市の私立保育園が、4月から認定こども園に移行するのを機に定期予防接種を受けていない園児を受け入れない方針を打ち出していたことが9日、分かった。是非を巡って関係省庁が協議し「未接種を理由に受け入れ拒否はできない」とする見解をまとめた。9日、新潟市に通知した。
 新潟市や保育園などによると、この保育園は移行に伴い、保護者と直接契約を結ぶ際に「子どもや妊娠している保護者の健康を守るための独自の方針」として定期予防接種を盛り込むことを決め、昨年11月に保護者に説明した。
 園は「集団生活で適切な環境を確保するための健康面の配慮。他の子に病気をうつす可能性もあり、集団生活をする上でのマナーだ」とする。
 これに対し、園児に予防接種を受けさせていない保護者の一人は「予防接種は努力義務であって強制ではない。未接種を理由に、受け入れないのは許されない」と訴えた。
 保護者や園から相談・報告を受けた新潟市保育課は国に照会した。同課によると、厚生労働省は「未接種だけでは拒否する理由にならない」との立場。一方、認定こども園を管轄する内閣府は当初、公衆衛生面から、園独自の方針として条件を付けることもあり得るとの姿勢を示し、協議が続けられていたという。
 新潟日報社の取材に対し、内閣府の担当者は「原則として予防接種を受けていないことだけでは、入園を断る理由には当たらないとの結論になった」と説明した。
 保育園の園長は「国は予防接種を勧奨し、施設には園児の健康を守るよう求めているのに、今回の国の判断はおかしいのではないか」と語った。

□ 入園断る姿勢は変えず 予防接種受けない子を拒む新潟の私立保育園
2017.2.10:新潟日報
 新潟市の私立保育園が、4月の認定こども園移行を機に定期予防接種をしていない子どもの受け入れを拒否する方針を示していた問題で、園は10日、予防接種の未接種だけでは拒めないとする国の見解を受け、保護者と契約を交わす書面を修正する考えを明らかにした。予防接種を求める方針は変えず、来週にも新潟市と協議した上で決める。
 この問題で、園は園児らへの健康面の配慮から、保護者と契約を結ぶ際の「重要事項説明書」で定期予防接種を受けていないと契約できないと明記していた。だが、国は9日に「未接種だけでは入園を断る理由に当たらない」とする見解を新潟市に通知した。
 園は見解を踏まえ、説明書に新たに「予防接種を意図的に受けない方は当園の方針と考えが異なるため、トラブル関係になることが明白」と明記。「トラブル関係は(園が保護者の申し込みを拒んではならないとする)応諾義務を拒否する正当な理由となるので入園の契約はできない」とすることにした。
 園長は「国の見解が示されたのでやむなく内容は変えたが、子どもの健康を守るため園の方針を変えるつもりはない」と話す。
 内閣府は取材に対し「応諾義務は重く、判断は慎重になされるべきだ」としている。


 世界を見回すと、米国では規定の予防接種を済ませていないと小学校に入学できない、進級できないというルールがあるそうです。
 また、黄熱病のリスクが高い国々では、黄熱ワクチンの接種証明書(イエローカード)がなければ入国できません。

 この事例を受けて、日本小児科医会が声明を出しました;

□ 「保育園等の集団生活入所予定児に対し入園・入学要件として予防接種実施を要請することへの日本小児科医会の見解(2017.3.15)
 今般新潟市の私立保育園が、定期予防接種を受けていない園児を受け入れない方針を表 明したことに対して関係省庁が協議し「未接種を理由に受け入れ拒否はできない」とする 見解を新潟市に伝えるというニュースが報道されました。VPD(vaccine preventable diseases:ワクチンにより予防可能な病気)予防の普及啓発を進める日本小児科医会として、 この見解が国民に子どもの予防接種の重要性に関して誤解を招くメッセージとならないよ う見解を公表することに致しました。
 我が国では定期予防接種の実施については予防接種法で規定されており、小児の年齢に 応じて実施される予防接種は、予防接種対象者あるいはその保護者に対して接種を受ける 努力義務規定として第 9 条に記されています。対象疾病は A 類疾病に分類され「人から人 に伝染することによるその発生及びまん延を予防するため、又はかかった場合の病状の程 度が重篤になり、若しくは重篤になるおそれがあることからその発生及びまん延を予防す るため特に予防接種を行う必要があると認められる疾病」と定義されているものです。法 律内での表現は「努力義務」となっており、個人の判断で受けても受けなくても良いと解 釈できますが、日本小児科医会は免疫不全等の接種を受けることができない医学的理由や 定期接種年齢に達していない等の理由がない限り個人防衛の意味においても集団防衛の意 味においても接種を受ける必要があると考えています。
 また、厚生労働省が定める保育所保育指針の「5章.健康および安全」では、「子どもの 健康及び安全は、子どもの生命の保持と健やかな生活の基本であり、保育所においては、 一人一人の子どもの健康の保持及び増進並びに安全の確保とともに、保育所の子ども集団 全体の健康 及び安全の確保に努めなければならない。」とされています。さらにその解説 書には「感染症の集団発生予防 【予防接種の勧奨】」として、「予防接種は、子どもの感 染症予防にとって欠くことのできないものです。 特に保育所においては、嘱託医やかかり つけ医の指導のもとに、計画的に接種することを奨励することが望まれます。」と記載され ています。「子どもの健康の保持及び増進並びに安全の確保」の前提である定期予防接種は 「義務接種」ではなく「勧奨接種」にとなっており、前述の医学的、年齢的理由がない場 合においても、定期予防接種を受けさせないとの保護者の判断があればそれを保育所等は 受け入れざるを得ない状況となっています。
 欧米では就学前の予防接種を、例外規定を設けた上で義務付けているところが多くあり ます。日本の学校保健安全法では予防接種についての直接的な規定はないものの、第 4 節 「感染症の予防」の第 19 条(出席停止)に「校長は、感染症にかかっており、かかってい る疑いがあり、又はかかるおそれのある児童生徒等があるときは、政令で定めるところに より、出席を停止させることができる。」との規定があります。
 2008 年の麻しん流行時に秋田県では本規定を適用し、ワクチン未接種者に対して出席停 止とする措置が取られ、迅速な終息につながったことが、厚生労働省健康局が開催した平 2010 年 3 月 10 日の第 5 回麻しん対策推進会議でも報告されています。
幼保連携型認定こども園においても「校長」を「園長」と読み替えて準用することが、 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律施行令第 5 条に明記されています。
 1994 年の予防接種法改正に伴い義務接種が勧奨接種に変更され集団接種から個別接種へ移行し、ワクチンを受ける側に選択肢を与えることで、損なわれかけていた予防接種への 信頼はかなり取り戻されるにいたり、ここ数年ワクチンギャップが大きく解消されてきて いることについては高く評価しています。しかし、その運用にあたっては予防接種の必要 性について積極的な啓発を行い、広く国民の理解を深める必要があります。情報過多の時 代において偏らない情報を得ることが難しい状況下で予防接種を忌避する例は少なからず 存在し、今般の事例のような集団生活を営む子どもの健康や安全が脅かされる事態が各所 でおこっています。
 現在、定期予防接種の接種率は、多くが 90%を超える状況となっています。しかし一定 の割合で存在する、何らかの理由で予防接種を受けることができない児童個人を守るため の個人防衛の観点から、さらには疾病が発生した場合の周辺児童を守るための集団防衛の 観点から、できる限り多くの児童が予防接種を受けることにより、当該疾病に罹患する危 険性を低くすることは、安全な集団生活を営む上で極めて重要です。
 日本小児科医会は予防接種の意義、必要性、安全性について正しいメッセージを提供す る意味で、就園・就学の要件の一部として、「医学的、年齢的理由がある場合を除いて、 就園・就学までの間に必ず定期予防接種を受けておくこと」の一言を記載することは、き わめて重要な意味合いを持つものと考えられることから、ここに上記を見解として表明い たします。

 以上
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子どもの誤嚥事故と対策

2017年03月16日 06時52分42秒 | 小児科診療
 子どもの誤嚥事故に関する記事を紹介します。
 「誤嚥」とは飲み込んだものが食道-胃に落ちるのではなく、気管に入って詰まってしまい、呼吸困難を来すことです。
 子どもはトイレットペーパーの芯(直径3.8cm)を通る大きさのものは飲み込んでしまう恐れがあります。
 とくに1歳前後では、ものを口に入れて確かめる修正がありますので要注意。
 「誤嚥チェッカー」(日本家族計画協会)という製品も販売されています。

■ 食べ物で窒息死の子、5年で103人 半数が0歳児
2017.3.16:朝日新聞

窒息死事故の原因となった食品と発生件数

(イラストをクリックすると拡大します)

 14歳以下の子どもが食べ物を気管に詰まらせ、窒息して死亡した事故が、2014年までの5年間で103人にのぼったことが、消費者庁の分析でわかった。0歳児が49人で全体の半数を占めており、同庁は15日に注意喚起を行った。
 同庁が、自治体が作成する「人口動態調査死亡票」をもとに、窒息死した子どもの死因を分析した。
 詰まらせた食べ物は、マシュマロやゼリー、団子など菓子類が11人と最多だった。ブドウやパンに加え、から揚げやナッツ、そうめんもあった。不明は72人。0歳を含め年齢別の原因については、「個人の特定につながる恐れがある」(同庁消費者安全課)として明らかにしなかった。
 日本小児科学会などに寄せられた情報によると、2歳児が直径3センチ大のブドウを丸ごと食べた際、泡を吹いて意識を失った。0歳児が離乳食を詰まらせ、一時意識不明になった事故もあった。3歳児が口を大きく開けたときの大きさは39ミリで、これより小さなものは乳幼児が詰まらせる恐れがあるとされている。豆やミニトマトなど丸くて表面がツルッとしたものは特に注意が必要だ。
 同庁は予防策として、
・小さく切って食べやすい大きさにする
・ピーナツなどのナッツ類は3歳ごろまで食べさせない
・遊びながら、歩きながらは食べさせない

を呼びかけている。


<参考>
□ 「冬の病気と室内事故の予防と対策(MIKU)
□ 「誤飲したもので応急処置が違う!子どもが異物を飲み込んだ時の対処法」(保育のお仕事)
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麻疹の怖さを再確認

2017年03月15日 13時30分22秒 | 小児科診療
 麻疹の知識をアップデート。

「麻疹」(CDC Watch No.30 2010年7月)
概要
・麻疹についての最古の記録は9世紀のアラブの医師の医療記録。
・1954年、ボストンにおいてエンダーとピーブルズが麻疹ウイルスを分離した。
・麻疹ワクチン導入前は、すべての小児が15歳になるまでに麻疹に罹患していた。
伝播力
・感染力が強く、免疫を持たない人が感染者に接触すると約90%が感染する。
・麻疹ウイルスは環境表面に最大2時間生き続ける。
・麻疹はヒトの感染症であり、他の動物には感染しない。
合併症
・麻疹を発症した小児1000人あたり1-2人が麻疹により死亡する。妊婦では流産、未熟児、低出生体重児を引き起こしうる。低栄養やビタミンA不足がよくみられる発展途上国では、麻疹により4人に1人が死亡する。麻疹により毎年、世界では約100万人の小児が死亡する。
・麻疹患者の約30%が一つ以上の合併症を経験し、5歳未満と20歳以上に多い。
・肺炎:小児感染者20人に1人の頻度で、幼児で最も多い死因である。
・脳炎:小児感染者1000人に1人。小児の聾や精神遅滞を引き起こしうる。
亜急性硬化性全脳炎> SSPE:subacute sclerosing panencephalitis
・幼児期に感染した麻疹ウイルスによる中枢神経系の致死的変性疾患。
(以下は1989-1991年の米国での流行時のデータ)
・発生率は麻疹患者10万人あたり4-11人。1歳未満では18人/患者10万人、5歳以降では1.1人/患者10万人。
・麻疹感染後、平均7-10年後(1ヶ月〜27年後)に発症。
・平均生存期間1〜2年。
・脳組織から分離ウイルスはすべて野生株であった(麻疹ワクチンがSSPEを引き起こすというエビデンスはない)。


参考
・「病院における麻疹の集団発生」(CDC Watch No.50 2012年3月

 最近の記事も紹介します;

「はしかで毎日400人の子どもが死亡」とユニセフ、75%がコンゴ民・エチオピア・インド・インドネシア・ナイジェリア・パキスタンの6カ国
2016-11-10:ganas

 ユニセフ(国連児童基金)は本日、世界保健機構(WHO)などと共同で報告書「Progress Toward Regional Measles Elimination — Worldwide, 2000–2015」を発表し、はしかによる死亡数は2000年から2015年の間に79%減少したものの、現在でも毎日400人近くの子どもがはしかによって亡くなっている、と指摘しました。

◇ はしかから守られた幼い命
 「はしかを過去のものにすることは、不可能ではありません」とユニセフ予防接種部門チーフのロビン・ナンディ は述べました。「私たちにはそれを可能にする手段と知識があります。私たちに足りないのは、どんなに遠く離れていたとしても、すべての子どもたちに予防接種を届けるという政治的意志です。この決意がなければ、子どもたちは簡単かつ安価に予防できる病気によって、命を落とし続けるのです」
 ユニセフ、WHO、GAVIアライアンス(ワクチンと予防接種のための世界同盟)および、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、はしか予防接種キャンペーンの大規模な実施や、はしかの定期予防接種普及率の世界的な伸びによって、2000年から2015年の間に推定2,030万人の幼い命が守られました。
 しかし、この前進は均等ではありません。2015年には、約2,000万人の乳児がはしかの予防接種を受けておらず、13万4,000人の子どもがこの疾病が原因で亡くなりました。世界ではしかの予防接種を受けていない乳児の半数、および、はしかが原因で死亡する人の75%が、コンゴ民主共和国、エチオピア、インド、インドネシア、ナイジェリア、パキスタンの6カ国に集中しています。

◇ 定期予防接種の普及とモニタリングの強化
 「毎年何百万人もの子どもが予防接種を受けられない、ということは受け入れ難いことです。はしかの感染を予防し命を守ることのできる、安全で効果の高いワクチンがあるのですから」と、WHOのジャンマリー・オクオ・ベレ医師(Dr. Jean-Marie Okwo-Bele)は述べています。「今年、北米から南米までの米州全域で、はしかの撲滅が宣言されました。これは、はしかの撲滅が可能だということの証明です。今こそ、世界の他の地域のはしかを撲滅させなければなりません。それは、予防接種から始まるのです」
 「はしかは、国の予防接種システムの強度を示す主要な指標であり、また、はしかの流行は、国が抱える深刻な問題に対する最初の警告になることが、しばしばあります」と、GAVIアライアンス事務局長のセス・バークレー医師は語りました。「ワクチンで予防可能でありながら、幼少期の子どもにとって世界で最も致命的な病気の一つであるはしかの撲滅に取り組むためには、定期予防接種の普及とモニタリングの強化に向けた、各国政府やパートナー団体の固い決意が必要なのです」

 はしかはウイルス性の感染症で、感染力がとても高く、接触感染および空気感染により拡大します。世界の幼い子どもたちの主要な死亡要因の一つである一方、安全で効果の高いワクチンを、適切な時期に2回接種することで予防が可能です。
 はしかの流行は、定期的な予防接種や大規模な予防接種キャンペーンに空白期間が生じることで引き起こされており、現在も多数の国で発生している深刻な問題です。2015年には、エジプト、エチオピア、ドイツ、キルギスタン、モンゴルで大規模な流行が報告されています。ドイツとモンゴルでは、より年齢の高い人々が感染したことから、はしかの予防を受けたことがない青少年や若い成人に対する予防接種の必要性が明らかになりました。
 はしかはまた、すべての子どもに対する予防接種が困難な、紛争下の国や人道危機にある国で流行する傾向があります。昨年は、ナイジェリア、ソマリア、南スーダンで流行が報告されました。

◇ すべての子どもに予防接種を届ける
 WHOが区分する世界6地域のうち4地域におけるはしかの撲滅は、世界的なワクチン行動計画(Global Vaccine Action Plan)の中間点における世界的目標です。「世界はこの目標を達成できていませんが、米州で出来たように、はしかの撲滅の達成は可能です」とアメリカ疾病予防管理センター代表のレベッカ・マーティン医師は述べました。
 「アフリカの格言で『子どもは村全体で育てるもの』とあるように、子どもたちをはしかから守るためには同じ地域の村々と世界の村々との協力した取り組みが必要です。はしかを撲滅することは可能ですが、そのためには、全員が与えられた役割を果たす必要があります。
 今年の報告書は、WHOが掲げたはしか撲滅に関する2015年までの目標が、達成できなかったことを示しています。その理由はすべての子どもに予防接種を届けられなかったためであり、そこには格差が存在しているのです。これらの格差を埋めることが必要です。
 格差を埋めるには、すべての子どもたちに予防接種を届けるために適切な人的・財政的資源を確保・活用し、はしかのあらゆる症例を見つけて対応し、さらなる感染を予防するための決意を確実なものにする必要があります。
 これらの努力は次世代のリーダーとなる子どもたちを守ります。そうすることで、すべての国が、感染症が流行した場合にその脅威を食い止める強力なセーフティー・ネットを保持し、確実に世界を脅威から守ることができるのです」(マーティン医師)

参考情報

・「世界的なワクチン行動計画」(Global Vaccine Action Plan)は、2015年までに世界の4地域ではしかを撲滅する目標を設定し、2012年の世界保健総会で採択された。すべての子どもに予防接種を届けられず、目標は達成されなかった。

・2000年以降、大規模なはしか予防接種キャンペーンを通じて、約18億人の子どもがはしかの予防接種を受けた。ユニセフは、米国赤十字社、国連財団、アメリカ疾病管理予防センター、WHOと協力し、2001年に、「はしか・風疹イニシアティブ」を開始。

・GAVIアライアンスは、ユニセフ、世界保健機関(WHO)、世界銀行、ビル&メリンダ・ゲイツ財団などが協同で行っているワクチン提供のためのパートナーシップ。2016年~2020年計画では、約10億米ドルの予算をかけて、百万人以上の命を救うことに貢献する開発途上国における総合的なはしか予防の取り組みに対する支援を予定している。

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「風疹ワクチンは2回接種を」(2017年啓発ポスター)に違和感

2017年03月15日 08時07分32秒 | 小児科診療
 有名人による風疹ワクチン接種啓蒙活動の記事が目にとまりました。
 ん・・・これは子ども対象の啓蒙?
 近年問題になっているのは、30-50歳代の男性が風疹に罹り、妊娠女性がそれをもらって生まれた赤ちゃんに先天性風疹症候群を発症することなので、この年齢層に対する強力な啓蒙が必要なはずですが、こちらにはノーコメントですか?



■ 風疹ワクチン「2回接種を」 クリス・ハートさんが啓発
2017年3月10日:朝日新聞
 お子さんの風疹ワクチンは2回目も――。風疹予防のためにワクチン接種率を向上しようと、厚生労働省は9日、米国出身の歌手クリス・ハートさんを起用した啓発ポスターを作製し、発表した。クリスさんも発表会に参加、「忘れずに接種を」と呼びかけた。
 風疹は、発熱や発疹などの症状が出るウイルス性の感染症。女性が妊娠初期に感染すると、赤ちゃんが心臓病や難聴などの先天性風疹症候群になる恐れがある。
 ワクチンは現在、定期接種として1歳と小学校入学前1年間の計2回受ける。1回では、感染を防ぐ抗体が十分作られないケースがあるためだ。だが、2015年度の定期接種では1回目の接種率は96・2%だったが、2回目は92・9%で、国の目標である95%以上に届かなかった。


 みなさん、覚えていますか?
 2012〜2013年の大人の風疹流行で先天性風疹症候群の赤ちゃんが45例発生し、そのうち11人が亡くなったことを。
□ 「先天性風疹症候群・その後」(当院ブログ)
 何の罪もない赤ちゃんが生まれながらに障害を持たされ、命を奪われることもある病気です。
 しかも「風疹ワクチン」という防ぐ方法があるのに、です。
□ 「たぁたんさんの体験談」(トーチの会
□ 「先天性風疹症候群(CRS)という経験を通じて」(風疹をなくそうの会『hand in hand 』

 ちなみに、今までに国がつくった「風疹予防啓発ポスター」はこちら;

□ 『妊婦さんと赤ちゃんを守るために成人男性も風しんの予防接種を受けましょう


□ 『生まれてくる赤ちゃんのために「風しんワクチン」


□ 『風しんの予防接種で未来の赤ちゃんを守れます


□ 『風しんの予防接種で未来の赤ちゃんを守れます


□ 「妊娠1ヶ月で50%以上

 ・・・う〜ん、どれを見ても「エッ?おれのこと?」と中年男性の注意を引くものがありません。
 
残念!


<参考>
□ 「ストップ!風疹」プロジェクト(NHK)
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「風邪に抗生物質投与は控えて」 厚労省が手引書

2017年03月10日 08時28分13秒 | 小児科診療
 おやおや、今更ながら厚労省が重い腰を上げて耐性菌対策に積極的に乗り出しました。
 近隣の非小児科専門医から処方される「とりあえず抗生物質」(「とりあえずビール」感覚で風邪に抗生物質が使われれいる現状)が変わるといいなあ。

■ 「風邪に抗生物質投与は控えて」 厚労省が手引書
(2017/3/6 日本経済新聞)
 厚生労働省の有識者委員会は6日、軽い風邪や下痢の患者に対する抗生物質(抗菌薬)の投与を控えるよう呼びかける手引書をまとめた。抗生物質を使いすぎると薬剤耐性菌が増え、治療に有効な抗生物質が将来なくなる事態が懸念されているため。早ければ今月中にも、日本医師会などを通じて全国の医療機関に配る。
 手引書では、一般的な風邪の原因となるウイルスには抗生物質が効かないことから、「投与を行わないことを推奨する」とした。医師が患者に説明する際に「抗生物質は効かない」と告げた上で、症状が悪化する場合は再受診するよう指示しておくことが重要だとしている。
 一方、ふだんより排便回数が1日3回以上増える急性下痢症は、ウイルス性、細菌性にかかわらず自然と良くなることが多い。そのため安易に抗生物質を使わないよう呼びかけている。
 厚労省によると、薬剤耐性菌への対策を取らなければ、2050年には同菌によって世界で年1千万人が亡くなるとの推計もある。


<参考>
□ 「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2016-2020
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子宮頸がんワクチン副反応被害から回復した人たちの声

2017年02月11日 08時01分47秒 | 小児科診療
 HPVワクチン(=子宮頸がんワクチン)に関しては、医学学会は推進、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会は訴訟に踏みきり、間に挟まれた国は右往左往して動きが取れない状況です。

 そんな折、下記の記事が目に留まりました。

 「被害者連絡会」に入会した副反応被害者が、民間療法の施術で回復した旨を会に報告すると、その有用な情報は会員に共有されること無く、会幹部により握りつぶされてしまったという驚くべき事実が明かされています。
 さらにその情報を広げないよう圧力をかけられ、会から除名に等しい扱いを受けたと。
 
 これを読んで私はガッカリしました。
 被害者連絡会を運営している人たちは被害者の回復を目指すのではなく、訴訟に不利になることは覆い隠すという体質が見え隠れしたからです。

 そしてさらにガッカリしたことは、これらの声を取材したメディアの記者達が「このニュースは当社では扱えない」と告白していること。
 つまり、「ワクチン反対」という情報は世間の注目を浴びるので記事にしやすいが、その逆の記事(ワクチン被害を覆す=ワクチンを褒める・推進する)は記事にならないというのです。

 もう、お手上げです。
 やはりメディアは信じられない。
 みなさん、メディアは「ワクチン反対」というマイナス情報しか報道しません。
 残念ながら日本のメディアには真実を報道する心意気はないのでご注意を!

 これは「情報操作」という犯罪ではないでしょうか。
 過去に何回か新聞やTVから取材申し込みがありましたが、断ってよかった。

■ 子宮頸がんワクチン被害者から、「決意の重大告発」相次ぐ
2017.02.09:Business Journal
上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

 2016年11月26、27日の2日間にわたり、「現場からの医療改革推進協議会シンポジウム(現場シンポ)」を開催した。今年で11回目だ。
 このシンポジウムは、私と鈴木寛・東京大学教授(当時参議院議員)が呼び掛け人となって10年前に始まった。さまざまな分野の専門家が集まり、議論を深め、自分たちでできることからやっていこうという主旨だった。
 今年もテーマは多岐に渡った。そのなかで、とりわけ参加者の注目を集めたのは、子宮頸がんワクチンの副反応から回復した人たちの経験談だった。
 このセッションには、4名の母親が登壇した。彼女たちの話にはリアリティーがあった。娘の調子がおかしくなったときに、非常に心配したこと、最初に受診した医師は十分に話を聞いてくれなかったこと、情報を集めるために、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会(被害者連絡会)に加入したこと、最終的には自らの判断で食事療法などの民間診療を選択し、娘が回復したことなどを紹介してくれた。
 彼女たちは、非常に理性的だった。ワクチンの問題を強調せず、多くの副反応に心因的な要素が強いことを認めた。ある母親は「症状はワクチンがトリガーとなった心因性である子がほとんどでないか」と主張した。
 一方で、西洋医学的アプローチが娘たちの症状の回復にあまり貢献しなかったことを強調した。このことは示唆に富む。民間診療の専門家と比較し、私たち医師はコミュニケーション力が弱いのだろう。
 対照的に、民間診療の専門家は患者の意見を傾聴し、共感し、そして自らが信じる治療行為を提供した。ある母親は「R先生の施術であっさり痛みがとれた」という。ここでは、施術の科学的妥当性は議論しない。医学的・薬学的には効果のない薬品投与や治療によって患者が回復や治癒することを「プラセボ効果」と呼ぶが、そのような民間診療の専門家の診療態度が、患者に対して「強力なプラセボ効果」を与えたのではなかろうか。治療者として見習うべき点が多い。そして、このような経過こそ医学論文として記載し、世界の人々と情報を共有しなければならない。
 意外だったのが、情報開示・共有に否定的な人がいたことだ。彼女たちが、娘が回復した旨を被害者連絡会に伝えたところ、この情報を会員には提供せず、むしろ彼女たちにこの情報を開示しないように圧力をかけてきたそうだ。
 ある母親は、「娘が回復した時、 連絡会に食餌療法で回復したことを伝え、連絡会内でも回復情報を共有してほしいと提案したが、却下された」と明かした。 別の母親は、「当時会がつくっていた掲示板にその旨を書き込んだところ、掲示板自体が消された。数日後、事務局長から電話があり治ったことを告げたら、『もう連絡いらないわね』で話が終わる。次々にSNSでブロックされる。事実上会から除名されたような状況となった」と配付資料に記した。
 彼女は「被害者連絡会はなくなるべき」と主張する。これでは、被害者そっちのけでもイデオロギー闘争に明け暮れている感じだ。いい加減、こういうことはやめてはどうだろうか。
 こうした証言について、事実確認も含めて被害者連絡会の見解を聞くべく、今月上旬に4日連続(平日ベース)で複数回にわたり同会HP上に掲載の電話番号に電話をかけたが、いずれも不在であった。

◇ 徹底的な議論が必要
 当日は、大勢のメディアの方も来ていた。シンポジウムのあと、お母さんたちのインタビューをとった記者もいた。果たして、記事になるだろうか。ちなみに、ある新聞の記者に話したところ、「うちは、この問題は社内の都合で扱えない」と言われた
 また、シンポジウムには国会議員や官僚、医学界の重鎮の方々もいた。彼らは、この問題を国会や審議会で議論できるだろうか。
 現場シンポのモットーは、それぞれが自分の現場でベストを尽くすことだ。子宮頸がんワクチンをいかに日本社会に根付かせるか、そのためには国民の合意形成が欠かせない。メディアが正確な情報を伝え、そのような公開情報をベースに政府や議会でオープンに議論すべきだ。医学界でも、患者視点に立ち、徹底的な議論が必要だ。
  今回のシンポで、お母さんたちは勇気を振り絞って、自らの経験を説明した。これからは我々医師の出番だ。私たちの矜持が問われている。


 私なりに裏を読んでみると・・・

・被害者連絡会が回復した患者さんの声を握りつぶした。
→ 訴訟は被害者を救済する=裁判で勝つことが至上命題であり、真実がどうであるかは関係ない。これは過去の予防接種裁判でも同様です。

・メディアの記者が上記の事実を知りながらも記事にしない。
→ 読者である国民は「ワクチンの批判」「人の悪口」を好み、「ワクチンを褒める」「人を褒める」ことには興味がない。出家している瀬戸内寂静さんも「人の悪口を言いながら食べる食事ほど美味しいものはない」と断言しています。人間の煩悩ですねえ(^^;)。
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花粉症に使う点眼薬(目ぐすり)のお話

2017年02月05日 11時21分34秒 | 小児科診療
 インフルエンザ流行のまっただ中ですが、スギ花粉症が始まりました。
 私自身が患者なので、鼻をグズグズさせながら診療しています(^^;)。

 私が使用している薬を内緒で公開します;

1.内服薬;①と②を併用してます
① 抗アレルギー薬;下記のどちらか
クラリチン(ジェネリックでは「ロラタジン」)
アレグラ(ジェネリックでは「フェキソフェナジン」)
② 漢方薬:苓甘姜味辛夏仁湯(119)
3.点眼薬:パタノール点眼
4.点鼻薬:リノコートパウダースプレー(ジェネリックでは「ベクロメタゾンプロピオン酸エステル点鼻薬」)

 使用理由も記しておきます。

1.クラリチンアレグラは眠くなりません(医学的には「脳内移行が少ない」と表現・・・下表参照)。飛行機のパイロットに許可されている抗アレルギー薬はこの二つだけ、と昔から有名です。ただ、効果は今ひとつかなあ・・・なので次の漢方薬を併用してます。

<鎮静性比較:非鎮静性〜軽度鎮静性〜鎮静性>



 学会講演を聴いていると「鎮静性と効果はパラレルではない」(眠くなる薬がよく効くわけではない〜眠くならない薬でも十分効果がある)と演者の偉い先生は強調します。
 しかし、効果と眠気をプロットした下図も見つけましたので、さもありなん、ですね(^^;)。

<抗ヒスタミン薬の比較>
(「花粉症対策まとめ」より)



2.以前は小青竜湯(19)を使っていました。麻黄(≒エフェドリン)という生薬が入っているので鼻汁だけでなく鼻閉も楽になります。最近発売されたディレグラはアレグラ+プソイドエフェドリンという内容で、私がしてきた治療内容を後から真似たようなもんです(^^)。
 しかし私の健康上の理由で小青竜湯が使えなくなったため、その裏処方と言われている体に優しい苓甘姜味辛夏仁湯(119)を飲んでいます。鼻汁のグジュグジュ感が楽になります。

3.パタノール点眼薬の成分は「オロパタジン」です。内服薬では「アレロック」という薬でベストセラーですね(なぜ名前を変えたんだろう?)。この点眼薬のいいところは、しみないこと。

4.リノコートは液体ではなく細かい粉です。そのため、刺激や液だれなど子どもが嫌がる要素が少ないため採用しています。自分で使うと「あれ、薬は出ているのかな?」と疑いたくなるほど刺激がありません。

 さて、今回は点眼薬について少々書いてみます。

 花粉症に用いられる点眼薬は大きく「抗ヒスタミン薬」と「メディエーター遊離抑制薬」(難しい名前ですねえ)の2種類に別れます。前者の方が即効性があると言われています。
 点眼薬は“差しごこち“”が大切です。
 私は以前、アレギサール点眼薬を使用したことがありますが、ジワーと目頭が熱くなる違和感がありました。
 パタノール(=オロパタジン)はそんなことはありません。
 何が違うかというと、pH(酸性度)。
 ヒトの体はpH7.0に保たれていることはご存じですね。
 点眼薬のpHがそれに近いほど刺激感が乏しく“優しい差しごこち”なります。

 下表(「非眼科医でも抗アレルギー点眼薬の積極処方を」2017.1.31、日経メディカルより)を見ていただくと、各点眼薬のpHが記されていますので参考にしてください。


 ただし「刺激がないこと=よいこと」とは限らないのが面白いところ。
 「しみないと効いた感じがしない」という患者さんもいらっしゃいます。
 お年寄りが湿布薬を貼る際に「においがしないシップは効いた感じがしない」というのと似てますね(^^)。

 それから、高校生以降になるとコンタクト・レンズ使用者が増えてきます。
 これも悩ましい。
 私は1日2回で済むアレギサール点眼薬を処方し「コンタクトを入れる前と外した後に使ってください」と指導しています。
 ところが近年、コンタクト・レンズを装着したまま使用できるアレジオン点眼薬が登場しました。
 当院ではこれから導入予定です。

 どの点眼薬を使用しているか、医師にアンケートをして記事(「抗アレルギー点眼薬:3人に1人はオロパタジン」2016/10/20:日経メディカル)では、

1.オロパタジン(=パタノール)
2.エピナスチン(=アレジオン)
3.ケトチフェン(=ザジテン)

だったとのこと。2のアレジオンは急速にシェアを伸ばしているそうです。これはコンタクト装着中も使用できることがメリットとして働いてのことでしょう。



 4位以下は次の通り。
4.レボカバスチン(リボスチン他) 8.8%
5.クロモグリク酸(インタール他) 8.4%
6.トラニラスト(トラメラス、リザベン他) 3.2%
7.アシタザノラスト(ゼペリン) 2.6%
8.ペミロラスト(アレギサール、ペミラストン他) 1.7%
9.イブジラスト(ケタス他) 0.9%
10.アンレキサノクス(エリックス、ソルファ) 0.8%
11.グリチルリチン酸(ノイボルミチン) 0.3%


とっても古いケトチフェンが3位に入っているとは驚きです。おおっ、インタールが5位だ!
きっと超ベテランの先生方が使っているんだろうなあ。

実は上記以外にも“禁断の点眼薬”があります。
それはステロイド点眼薬です。
目は脳神経が向き出しになっている唯一の臓器であり、副作用には十分注意する必要があります。
(例)リンデロン点眼薬フルメトロン点眼薬(0.1%と0.02%があります)
有名な副作用は眼圧が上がる「緑内障」で、耐えられないような眼痛発作が現れるそうです。
しばらく前に、TVで「急に目を痛がった幼児の原因がステロイド点眼薬だった」という内容を観ました。
もちろん、本人に処方された薬ではなく、おばあちゃんに処方された薬を目が赤いからと流用したのが理由です。
なので、基本的に私は処方していません。
内服薬+抗ヒスタミン薬点眼でも目の痒みがつらいときは漢方薬(越婢加朮湯が効きます)を追加するか、漢方を希望されない方は眼科へ誘導しています。
どの教科書にも「ステロイド点眼薬を長期に使用する場合は眼科専門医の管理下に置くべきである」と記されています。
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