徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

夏風邪(プール熱、手足口病、ヘルパンギーナ)が話題になる季節

2017年07月13日 10時22分58秒 | 小児科診療
 夏風邪(プール熱、手足口病、ヘルパンギーナ)が流行する季節になりました。
 北関東の当院ではまだチラホラ程度です。

 各感染症のポイントは、

プール熱:結膜炎と高熱が4-5日続く
手足口病:口内炎が痛くてつらい
ヘルパンギーナ:のどの痛みが強くて食事が飲み込めず大変

 といったところ。
 原因ウイルスをやっつける薬は存在しないので、対症療法でしのぐしかありません。

 この“夏風邪三兄弟”のうち、隔離義務があるのは咽頭結膜熱(プール熱)だけです。
 手足口病とヘルパンギーナは、一般の風邪と同じように「症状が治まって元気になったら」というアバウトな基準でOK。
 でも、これは「感染力がない」という意味ではありません。
 他人にうつす力(感染力)は症状が治まった後もしばらく残ります(便の中には数週間いるらしい)が、感染力の強さと症状の強さを秤にかけて妥協した措置と考えてください。
 「100%感染力がなくなるまで隔離」を完璧に目指すなら、夏風邪を引くたびに3週間保育園/幼稚園を休む羽目になります。
 これは現実的ではありません。

 ネット上の記事を紹介します。

■ 手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱 子どもの「夏風邪」増加
2017年7月11日;東京新聞
 手足口病や咽頭結膜熱(プール熱)など、5歳以下の子どもに多い「夏風邪」の患者数が増加傾向にある。高熱のほか、発疹や結膜炎などの症状が出るが、通常は安静にしていれば回復する。それぞれの感染症の特徴を知り、のどの痛みなどで水分が取れないなど、気になる症状がある場合は、早めに小児科医にかかりたい。
 「夏風邪のほとんどは、ウイルス感染が原因で特効薬はなく、症状を和らげることしかできない。高い熱が出ても数日から四、五日で治まりますが、のどが痛くて水分が取れない、嘔吐や下痢、せきがひどいときは医療機関を受診してください」。六月下旬、竜美ケ丘小児科(愛知県岡崎市)が、子どもの病気や子育ての知識を伝え、親が正しい判断ができるように開いたミニ講座。鈴木研史院長(49)らが、夏風邪の注意点や家庭での対処法を伝えた。
 国立感染症研究所に全国約三千の医療機関から報告があった手足口病の患者数は、六月二十五日までの一週間で一医療機関あたり二・四一人となった。西日本で多く、前年同時期の約六倍で、大流行する可能性もある。
 手足口病は手や足、口などに小さな水疱(すいほう)ができる感染症で、発熱する場合としない場合があり、熱が出ても一、二日で下がる。発疹は一週間程度で治る。
 エンテロウイルスが原因で、くしゃみなどの飛沫(ひまつ)で感染する場合や、おむつ交換などで手に付いた便から感染する場合がある。
 同じウイルスで起こる感染症にヘルパンギーナがある。のどが赤くなり水疱ができて痛む。三九~四〇度の高熱が出ることがあるが通常、一、二日で下がる。「のどの水疱が診断のポイント。発熱してもすぐにはのどに水疱が出ないため、元気な様子なら翌日に受診した方が診断できる」と鈴木院長は話す。
 これら二つの感染症よりも発熱が長く続くのがアデノウイルスが原因の咽頭結膜熱だ。四、五日と長めに発熱が続くことが多く、のどが赤くなり、へんとうにうみが付く。結膜炎で目が充血して赤くなり、目やにが出ることがあるのも特徴。国立感染症研究所によると、六月二十五日までの一週間の患者数は一医療機関あたり〇・九八人で、過去十年のピークを上回った。山梨、鹿児島県や北海道で患者が多い。
 感染力が強く、子どもがプールなどでタオルを使い回しをした場合などに感染することがある。咽頭結膜熱は学校保健安全法で予防すべき感染症とされ、主な症状が消えてから二日間は出席停止となる。
 注意が必要なのが肺炎などの合併症を引き起こすことがあることだ。鈴木院長は「四、五日たって熱が下がったらまた受診するよう指導しているが、それまでの間にせきがひどくなった場合はすぐ受診してほしい」と呼び掛ける。
 いずれの感染症もウイルスの型が多く、一シーズンに複数回発症することがある。予防は、患者との接触を避け、手洗いとうがいをすることが基本だ。おむつなどの排せつ物は、ビニール袋に入れて処理をする。症状がなくなってもしばらく便にウイルスが混じっていて感染することがある
 発症した場合は、小まめな水分補給に努め、のどが痛い場合はのみ込みやすい食事を与える。発熱の経過が診断に役立つため、朝、昼、夜の体温をグラフにする熱型表に記録しておき医師に伝えたい。



■ 感染力強い「手足口病」、大流行の兆し
2017年7月12日 読売新聞
 手や足、口の中に発疹ができる手足口病の患者が乳幼児を中心に増加している。
 ウイルス性の感染症で、今年は大流行の懸念があるとして、専門家が注意を呼びかけている。
 国立感染症研究所によると、7月2日までの1週間で、全国約3000の小児科から報告があった患者数は、1医療機関あたり3・53人で、昨年同時期の0・48人と比べて7倍程度多い。
 手足口病は、2~5ミリほどの 水疱(すいほう)ができ、発熱がある場合も数日中に治るが、まれに高熱を伴う髄膜炎や脳炎などを起こすことがある。
 感染力が強く、予防は、おもちゃやタオルの共有を避けることが重要だという。同研究所感染症疫学センターの藤本嗣人・第4室長は「感染していても症状が出ない人もいる。周囲にウイルスがあると思って予防してほしい」としている。



<参考>
□ 「夏風邪のお話」(当院HP)
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ワクチンの混合接種はなぜいけないのか

2017年07月11日 06時48分39秒 | 小児科診療
 この4月に小児に対する「混合接種」が問題になりました。

 「同時接種」「混合ワクチン」はいいけど「混合接種」はダメなんです
 その理由は「有効性・副反応が検証されていないから」。

 皆さんご存じのように、同時接種は複数のワクチンを同じ日にそれぞれ別の場所に接種することです。
 ただし、暗黙の了解として「ひとつの医療機関で同じ時間に」が原則です。
 複数の医療機関で午前と午後に分けて接種するのは「同日接種」と別扱いされ、自治体は定期接種として認めず、費用は自己負担、副反応が発生しても補償外になります。

 混合ワクチンは、複数のワクチンが混合されたものが製品としてはじめから存在します(例:四種混合ワクチン)。
 ひとつの混合ワクチンが開発され製品化するまでに膨大な時間とお金とが費やされ、動物実験・臨床試験が行われます。
 途中で「効果が低い」「副反応が無視できない」と消えていった混合ワクチンもたくさんあるわけです。

 ですから、製品として存在しない組み合わせのワクチンを接種前に混ぜて注射しても、効果が得られるか、副反応が問題にならないか、誰も予想がつきませんし、もしトラブルになった際も補償が受けられません。
 実際の今回問題になった「混合接種」を受けた児の抗体検査では、下記記事のように感染防御に必要な抗体価が得られていないというデータが示されました。

 「針を何回も刺すのがかわいそう」と考えて行った混合接種が、結果的には抗体価評価のための血液検査で針を刺し、抗体価が低いのでさらにこれから追加ワクチン接種、つまり2回以上追加して針を刺される羽目になりました。
よかれと思って行為が、残念ながら「ありがた迷惑」になってしまいました。


■ ワクチンの混合接種はなぜいけないのか
2017/7/10:日経メディカル
 今年4月、東京都品川区の小児科クリニックが、小児への予防接種で数種類のワクチン製剤を混合接種していたことが判明した。同様のケースは昨年3月、東京都北区でも起きた。品川区の小児科医は、ワクチンの専門家だった。
 品川区が予防接種事業を委託していた小児科クリニック(現在は閉院)で複数のワクチン製剤を混合接種していることが発覚したきっかけは「子どもの予防接種で、数種類のワクチンを混ぜていたが大丈夫か」という保健所への問い合わせだった。
 品川区が同クリニックを調査したところ、麻疹・風疹混合(MR)ワクチンと水痘ワクチン、おたふくかぜ(ムンプス)ワクチンの3種類や、四種混合(ジフテリア、百日咳、破傷風、不活化ポリオ)ワクチンとヒブワクチンの2種類を混合接種していたことが分かった。区によれば、院長(当時)の医師は2009年4月の開院当初から同様の方法で予防接種を行っていたという。
 このうち、区で保存している5年分の予防接種記録を調査したところ、独自のワクチン混合接種が行われていたのは358人に上った。2016年3月に発覚した東京都北区のケースも同様で、MRワクチンと水痘ワクチン、ムンプスワクチンの3種類を独自に混合し、38人に接種していた可能性がある。両区によれば、現時点で副反応など健康被害の報告はない。
 これらのケースを受け、日本小児科学会は今年5月28日、「異なるワクチンを1つに混ぜて接種することに関しては、その効果と安全性を保証するデータは存在せず、実施してはいけない医療行為」との見解を示した。
 海外では、ワクチン製剤を混合して接種する場合もある。例えば、凍結乾燥製剤のヒブワクチンを四種混合ワクチンに溶かして液剤とし、接種するケースがそれに当たる。ただし、見解を公開した日本小児科学会で予防接種・感染症対策委員会委員長を務める岡田賢司氏は、「海外での混合接種は、臨床試験の結果、有効性と安全性が確認された手順を遵守して行われている」と言う。国内では、いずれのワクチン製剤の添付文書にも「他のワクチンと混合して接種してはならない」旨の注意が書かれている。
 前述の2ケースで混合接種を実施していた医師の言い分は「子どもの肌に何度も針を刺すのがかわいそう」というものだった。岡田氏は、「同時接種で4回針を刺して泣かせるよりも、混合接種で1回で済ませてあげたいという思いは、一小児科医として私は理解できる」と共感を示す。品川区のクリニックの元院長から子どもが予防接種を受けたある母親も、「予防接種前には、子どもの服を脱がせて全身くまなく診てくれた。子ども思いの医師だった」と振り返る。
 元院長から指導を受けたことがあるという岡田氏によれば、元院長は複数のワクチン開発に関わったワクチンの専門家だ。「ワクチンには大変詳しい医師なので、生ワクチンと不活化ワクチンを混ぜるような単純な混合はしておらず、海外で製剤化されている組み合わせなどを参考に接種していたそうだ」と岡田氏は話す。
 とはいえ、不適切な方法で混合接種していたことが明らかになり、採血による抗体検査や再接種を実施することになれば、子どもに余分に針を刺すことになり、小児科医としての思いとは裏腹の結末となる。その点からも、確立されていない方法による混合接種は実施すべきでない。
 実際に、手順が確立されていない混合接種では、ワクチンの有効性が得られない可能性も指摘されている。北区のケースでは、ワクチンを混合接種されたと思われる子どものうち、希望者に区が抗体検査を実施。その結果、過去の感染症流行予測調査や論文などから想定される抗体保有率を、いずれも下回っていた
 岡田氏は、抗体保有率が想定値を下回ったことについて「手順が確立されていない混合接種で、期待される有効性が得られなかった恐れがある。混合ワクチン製剤の開発や混合接種の手順を検討する際は、有効性が得られるよう混ぜる順番やpHなどが総合的に検討される」と話す。
 現在、日本でも四種混合ワクチンにヒブワクチンを混合した「五種混合ワクチン」の開発が進行中だ。岡田氏は、「小児科医の思いに応える混合ワクチンの製剤開発が待たれる」と期待している。
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沖縄ではインフルエンザ流行中

2017年07月07日 18時20分16秒 | 小児科診療
 毎年のことなので有名になりましたが、沖縄では夏でもインフルエンザが流行します。

■ 夏なのに… 那覇市でインフルエンザ流行注意報発令
2017年7月6日:沖縄タイムス
 那覇市保健所は5日、インフルエンザの流行が拡大する恐れがあるとして、市内にインフルエンザ流行注意報を発令した。市内12定点の患者報告数は、第26週(6月26日~7月2日)に1定点当たり10・25人となり、注意報発令基準の10人を超えた。同所は手洗いやうがい、室内の換気など予防を呼び掛けている。
 第25週には中学1校と小学2校の計3クラスが学級閉鎖。保育所1園から集団発生報告があった。
 那覇市は1月下旬から5月上旬までインフルエンザ流行警報を発令。B型に加え、例年は夏場に落ち着くA型の感染が続いているという。
 県によると、南部保健所でも注意報レベルとなる1定点当たり11・14人の患者報告数があり、那覇市や南部地域を中心に患者が増えている。
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恒例の「ワクチン・パレード」

2017年07月07日 09時25分15秒 | 小児科診療
 毎年恒例の「ワクチン・パレード」が今年も行われました。
 暑い中、皆さんご苦労様でした。

 しかし予防接種・ワクチンでは毎年いろんなことで悩まされます。
 現在は「日本脳炎ワクチンが手に入らない」こと。
 当院でも入手できず、未だに予約停止状態が続いています。

 誰の責任?
 国の管理が甘いのか、
 製造メーカーの読みが甘いのか、

 ・・・まあ、「誰も責任を取らない」のが日本社会の特徴ですから、最近「腹を立てても無駄」とあきらめています。



■ 日本脳炎などワクチン安定供給を 患者団体が訴え
(2017年7月6日:NHK)
 去年の熊本地震などの影響で、日本脳炎などのワクチンが一部の医療機関で入手しづらくなっていることを受けて、6日、患者団体などが東京都内の街頭を行進し、国が安定供給に向けた体制を整えるよう訴えました。
 6日は、ワクチンの接種で防げるはずの病気にかかった子どもを持つ保護者で作る団体などのおよそ50人が東京・霞ヶ関で行進を行いました。
 このうち、日本脳炎のワクチンは熊本地震などの影響でメーカーの1つが出荷できなくなっていることや、ここ数年、子どもの発症が報告されたことで需要が増えていることなどから、一部の医療機関で入手しづらくなっています。
 このため、行進の参加者は、日本脳炎やはしか、それに風疹などのワクチン接種を希望する人すべてが受けられるよう、国が責任をもって安定供給の体制を整えるよう訴えました。
 このあと、参加者は厚生労働省を訪れ、塩崎厚生労働大臣に要望書を手渡しました。
 患者団体で共同代表を務める可児佳代さんは「医療が進んでいるはずの日本でワクチン接種を受けられない人がいるのはおかしい。国は責任をもって対応してほしい」と話していました。

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太陽光発電の今。

2017年07月04日 12時32分02秒 | 小児科診療
 クリーン・エネルギーとして東日本大震災以来普及してきた太陽光発電。
 私の通勤路でも太陽光パネルを見かける場所が増えました。

 そこに目にとまった下記記事。
 順調に再生可能エネルギーへ変換していっていると思いきや、こんな事情があるとは思ってもみませんでした。

■ 負担は2兆円超へ 太陽光のいま
(2017年6月29日)
◇ 月々の電気料金の明細を詳しく見ていますか?
「再エネ発電賦課金」という項目がいくらになっているか確かめてみてください。



再生可能エネルギー(再エネ)の太陽光発電が増え、買い取り費用が膨らんでいることで、私たちの負担がいま急増しています。
その額、実に年間2兆円! それが、毎月の電気料金に上乗せされているのです。地球温暖化への対応のためにも太陽光発電に期待する人は多いと思いますが、あなたは普及のためにどれだけ負担できますか?

◇ 5年で10倍以上の負担増
標準的な家庭の電気料金は月額6000円。そのうち「再エネ発電賦課金」はおよそ700円。年間ですと8000円を超えます。決して少ない金額ではありません。
ちょうど5年前の7月1日、太陽光発電など再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が始まってから、私たち電気の利用者が負担するようになりました。
再生可能エネルギーを普及させようと始まったこの制度。国は、電力会社に太陽光などで発電した電気をすべて買い取るよう義務づけました。その代わり、買い取り価格の一部を月々の電気料金に上乗せすることを認めました。
つまりメガソーラーと呼ばれる大規模な太陽光発電所の電気も、住宅の屋根に太陽光パネルを載せて発電している電気も、結局のところは私たちが買っているのです。
実は制度が始まった5年前は、負担額は毎月50円程度で済んでいました。しかし、再エネ発電が増えるにつれ、当然のことですが、買い取り額も増えます。その結果、私たちの負担額は5年間で10倍以上、今年度はおよそ700円まで膨らむことになったのです。
国民全体の年間の負担総額はと言いますと、今年度は、ついに2兆円を超える見込みです。

◇ 太陽光ブーム 5年で明暗
東日本大震災で東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きて以降、日本は発電のほとんどを火力に頼っています。
地球温暖化対策で二酸化炭素の排出を抑えるためにも、火力の割合を下げる必要があります。それには太陽光や風力などの再生可能エネルギーを増やすしかありません。国は2030年度に、発電全体のうち22~24%は再エネで賄うことを目標に掲げました。
目標達成のためには、多くの企業に太陽光発電に参入してもらわなければなりません。そこで国は、企業が巨額の投資をしても、十分にもうかるよう「高い価格」で電気を買い取ることにしたのです。
具体的には、太陽光発電の電気は1キロワットアワー当たり40円という価格を設定しました。これに多くの企業がメリットを感じ、こぞって発電事業に参入し、日本中が太陽光発電ブームに沸きました。
発電量は5年間でおよそ7倍に急増し、発電全体のうち再エネの割合は15%まで上がりました。登山で言えば、5合目までは猛スピードで駆け上がってきたと言っていいと思います。
しかし「高い価格」で「大勢」が参入したわけですから、太陽光発電の買い取り費用は膨張し、私たち電気の利用者の負担も急増しました。これ以上の負担を果たして利用者が受け入れられるのか?という状況に至り、国も軌道修正に乗り出し、買い取り価格の大幅な引き下げを始めました。
今年度の買い取り価格は21円。当初のほぼ半額まで引き下げました。「太陽光パネルの生産コストは年々下がっているので、この水準まで買い取り価格を下げてももうかるはずだ」と国は説明しています。
しかし太陽光発電の事業者に話を聞いたところ「その価格ではやっていけない」と口々にいいます。発電所の工事にかかる人件費などは依然として高いし、発電に適した広い平地はすでに使われていて、開発できるのは、地面を平らにする工事が必要な条件のよくない斜面などが多いというのです。
以前ほど参入のメリットがなくなると、たちまち新規の建設が減り、ここに来て太陽光の発電量が伸び悩み始めています。

◇ 太陽光の普及と負担のバランスは?
買い取り制度の導入から5年がたち、再エネは今、曲がり角にさしかかっています。
ベストなのは、利用者の負担を増やすことなく普及がどんどん進むことです。しかし、それには技術革新などで太陽光発電所が、今よりはるかに安く建設できるようになる必要があります。
国は、5月に専門家による研究会を設けて、どうすればコストを下げられるか本格的に議論を始めましたが、具体策はといえば時間がかかりそうです。
それだけに、再エネの「普及」と私たちの「負担」のバランスをどう取るのか。その難問に向き合う必要に迫られています。
日本よりも先に同じような制度を導入したドイツでは、発電全体に占める再エネの比率が日本の倍のおよそ30%に達しています。その分、電気料金も日本のおよそ2倍に上昇していますが、国民はそれを受け入れているといいます。
「日本も再エネを普及させるためにさらなる負担を覚悟してもいいのでは」という意見の人もいるでしょう。その逆に「そこまで負担をしたくない。太陽光のコストダウンが進むまで火力発電に頼ってもいいのでは」という意見の人もいると思います。
原発事故や地球温暖化と向き合う中で、再生可能エネルギーに対する期待が急速に高まってきたのは間違いありません。しかし、再エネの普及のために利用者がどこまで負担するのかという議論は、これまで、それほど盛り上がってはいませんでした。国が選択肢を示し、利用者の意向を問うこともありませんでした。
制度が始まってちょうど5年になる今、立ち止まって議論する時期が来ていると思います。
太陽光発電の普及のために、あなたならば、どれくらい負担できますか?
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家庭用血圧計は正確ではない。

2017年07月04日 12時15分56秒 | 小児科診療
 我が家にも複数ある家庭用血圧計。
 購入の際、家電量販店で数種類を比較して一番低い数字が出る製品を選んだような記憶があります。

 現在は手首に巻くタイプを使用していますが、高さを5cm変えると確実に数字が変わってきます。測定条件も同じにしないと比較するのは難しいと思いました。

 というわけで、正確性はそれなりだと思いますが、あらためて指摘されるとちょっと気になるところ。

■ 家庭血圧計の測定値、7割に誤差―カナダ調査
HealthDay News:2017/06/28
 健康管理のために家庭血圧計を使用している高齢者は珍しくないが、その測定値の約7割に5mmHg以上の誤差があったとするカナダの小規模研究の結果が「American Journal of Hypertension」7月号に掲載された。
 アルバータ大学(カナダ)のJennifer Ringrose氏率いる研究チームは今回、オシロメトリック法の家庭血圧計を自宅に保有し、上腕の周囲長が25~43cmで収縮期血圧(SBP)80~220mmHg、拡張期血圧(DBP)50~120mmHgの患者85人(平均年齢66.4歳)を対象に研究を実施。家庭血圧計で測定した血圧値と、訓練を受けた測定者がゴールドスタンダードである水銀式血圧計で測定した血圧値を比較した。
 その結果、家庭血圧計による測定値の69%で5mmHg以上の誤差があり、10mmHg以上の誤差も29%で認められた
 しかし、既に家庭血圧計を購入して使用している場合、それは無駄ではない。Ringrose氏によると、「家庭血圧計の測定値を血圧管理の主な指標とする場合は、その前にクリニックでの測定値と比べておく」「複数回の測定値に基づいて治療を決定する」ことなどによって、家庭血圧計による誤差を最小限にとどめることができるという。
 なお、同氏も家庭血圧計の使用者に対するアドバイスとして、1度はクリニックに家庭血圧計を持参し、クリニックで手動式で測定された血圧値と比べ、精度を確認するよう勧めている。

<原著論文>
・Ringrose JS, et al. Am J Hypertens. 2017 Jul 1. [Epub ahead of print]
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決め手のない「水いぼ」の治療

2017年07月02日 07時08分31秒 | 小児科診療
 夏になると水いぼ(伝染性軟属腫)の相談が増えます。
 学会の声明では、「水いぼはプールの水ではうつらないので入ってもよい、ただ、接触感染するのでボードやタオルの共用は好ましくない」とのことですが、実際にはたくさんできていると入れてくれない施設もあるようです。

 さて、その水いぼの治療ですが、検索すると実にさまざまな方法がヒットします。
 視点を変えれば「決め手がない」ことの表れと云えるでしょう。

 以下に紹介する論文も「決め手がないから自然治癒に任せた方がよい」という論調です。
 しかし、放置してたくさん増えてしまうと目も当てられない状態になってしまうことがあります。

 この夏も水いぼの扱いは悩ましい・・・。

■ 水いぼに効く薬はある?あらゆる治療を検証〜文献の調査から
from The Cochrane database of systematic reviews
2017.06.11:MEDLEY
水いぼは子供に多い皮膚の病気です。痛みやかゆみはないことが多く、通常は自然に治ります。治療としてこれまでに報告されている方法の調査が行われました。
水いぼは医学用語では伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)と呼びます。
オランダなどの研究班が、伝染性軟属腫に対する治療の効果の研究報告を調査し、これまでに報告されている内容をまとめて『Cochrane Database of Systematic Reviews』に報告しました。2006年・2009年にも同様の調査が行われていましたが、以後の情報も含めるよう更新されました。
調査対象として、伝染性軟属腫の治療法を評価するために、治療法をランダムに割り当てる方法の試験を行った報告を集めました。免疫不全状態ではない人を対象にしたものを選び、性的接触により感染した場合のものを除きました。

◇ 治療が有効と言える質の高い証拠はない
調査によって22件の研究が見つかりました。
外用剤(塗り薬など)として使われる5%イミキモドを、基剤(有効成分以外の成分)と比較した研究がありました。次の結果が出ていました。

・5%イミキモドは基剤に比べて短期的・中期的・長期的治癒に効果がない
・5%イミキモドが何らかの有害作用を起こす割合は基剤と差がないか、あってもわずか
・塗った箇所の反応に限るとイミキモドのほうが多い

以下の治療の効果が報告されていましたが、いずれも証拠の質は低いと判断されました。

・5%イミキモドより冷凍スプレーのほうが有効
・5%イミキモドより10%水酸化カリウムのほうが有効
・10%オーストラリア産レモンマートル油がオリーブオイルよりも有効
・10%過酸化ベンゾイルクリームが0.05%トレチノインよりも有効
・5%亜硝酸ナトリウムと5%サリチル酸の組み合わせは5%サリチル酸単独よりも有効
・ヨウ素と茶油の組み合わせがヨウ素単独または茶油単独よりも有効

以下の優劣は不確か

・10%水酸化カリウムと生理食塩水の比較
・ホメオパシーのカルカリア・カーボニカ(カキの殻)と偽薬の比較
・5%水酸化カリウムと2.5%水酸化カリウムの比較
・10%ポビドンヨード溶液と50%サリチル酸絆創膏の組み合わせと、サリチル酸絆創膏単独の比較

薬の副作用やその他の原因による症状など(有害事象)として最も多く報告されていたものは、使用したときの痛み、赤み、かゆみなどでした。
研究班は以上の結果を「伝染性軟属腫の治療に有効と確信できることを示された単独の治療はない」とまとめたうえ、「見つかった証拠からはどの単一の治療が優れているとも言えなかったため、伝染性軟属腫に対処するには自然治癒がいまだに有力な方法である」と結論しています。

◇ 水いぼは放置が一番?
水いぼ(伝染性軟属腫)に対して質の高い証拠から有効と言える治療はないという報告を紹介しました。
治療に効果がなく副作用があるならば何もしないほうが合理的な判断です。
伝染性軟属腫は普通、見た目以外の症状がなく、数か月程度で自然に治ります。直接触れることやタオルなどを介してうつる場合がありますが、感染力が強いものではありません。
焦って治そうと薬を探すよりも、触らないことなどに気を付けるほうが大事と言えるでしょう。

<参考文献>
Interventions for cutaneous molluscum contagiosum.
Cochrane Database Syst Rev. 2017 May 17. [Epub ahead of print]
[PMID: 28513067]


水いぼはウイルス感染症です。
根本的な治療は、このウイルスをやっつける抗ウイルス薬ですが、まだ開発されていません。
なので、皮膚科を受診すると医師の方針はバラバラで、ドクターショッピングをすればするほど患者家族は混乱します。

そんな患者さんが当院を受診した際は、私は以下のような説明をします;

「基本的に自然治癒しますが、大きくなると治っても痕が残ります。それが心配なら皮膚科の処置を優先してください。ただ、痛くて嫌がり通いきれないなら、漢方薬が効くことがありますので、ご希望なら処方します。有効率は50%くらいです。」

<参考>
□ 「水いぼQ&A」(日本小児皮膚学会)
□ 「小児の水いぼ治療
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子宮頸がんの今

2017年07月02日 06時59分51秒 | 小児科診療
 HPVワクチンの積極的接種勧奨中止から4年が経過しました。
 世界の国々では子宮頸がんのリスクが減る中、日本は接種開始前の水準に戻ってしまったという記事;

■ 子宮頸がん、ウイルス感染リスク、導入前水準に ワクチン接種勧奨中止から4年
(2017.6.11:産経新聞)
 子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するワクチンの積極的勧奨が中止されて4年がたち、接種者が大幅に減ったことにより、国内の女性の20歳時点でのHPV感染リスクがワクチン導入前と同程度に高まるとする予測を大阪大の上田豊助教(産婦人科)がまとめたことが10日、分かった。同ワクチンをめぐっては、体のしびれや痛みといった接種後の副反応が報告されたとして、積極的な接種勧奨が中止されている。
 HPVは主に性交によって感染し、女性の多くが一度は感染するとされる。多くは自然に治り、ウイルスは排除されるが、まれに感染が長く続き、がんの前段階を経て子宮頸がんになることがある。
 上田助教は、ワクチンの公費助成開始時に助成の対象年齢を超えていた平成5年度生まれの女性の20歳時点での2種類のウイルス型の感染リスク(感染者の割合)を1と設定。公費助成が始まった際に助成対象の16歳だった6年度生まれ以降の感染リスクをワクチン接種率から計算した。すると、約7割の人がワクチンを接種したことで、20歳時点での感染リスクは約3分の1にまで減った。
 ところが、25年度以降のワクチンの接種率は4~0%に激減。今年度に定期接種の対象年齢(12~16歳)を超えて17歳になる12年度生まれの女性の20歳時点での感染リスクは、0・96とワクチン導入前と同水準になると予測した。



【子宮頸がんワクチン】 子宮頸がんの主な原因であるHPVの感染を予防するワクチン。筋肉注射で3回接種する。ウイルスには多くの型があるが、悪性度の高い2種類の型を防ぐ。「接種を促すはがきを送る」といった積極的勧奨は平成25年6月から差し控えられている。世界保健機関(WHO)や日本産科婦人科学会は子宮頸がん患者が増える恐れがあるとして勧奨再開を求めている。
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夜尿症の治療について

2017年06月30日 06時35分30秒 | 小児科診療
 当院に相談に見える夜尿症患者さんの特徴は、
1.小学生になっても毎晩ある
2.検査すると膀胱型(膀胱が小さくて尿がためられない)
 などがあります。

 下記夜尿症の記事では、「夜尿症は小児科で治療できる」「効果が出るまで3ヶ月〜半年程度」とありますが、現場の印象ではそう簡単には解決しません。

私も長らく夜尿症の治療に関わってきましたが、難敵です。

効果が出やすいのはデスモプレシンという薬(抗利尿ホルモン)が有効な多尿型(尿量が多いタイプ)の話であり、膀胱型は家族の負担の多いアラーム療法を導入しないと効果が期待できません。

■ 夏の行事の前に今から夜尿症を治す
ケアネット:2017/06/14
 フェリング・ファーマ株式会社は、5月30日の「世界夜尿症(おねしょ)デー」を前に、夏のお泊まり行事の不安に関する親子アンケートを実施。その結果を発表した。
 夜尿症(5歳までは「おねしょ」)は、わが国の小中学生の罹病率が6.4%と推察され、アレルギー疾患に次いで頻度の高い慢性小児疾患である。その治療は保険診療の対象となっている。
 夜尿症の原因として、第一に、夜間の抗利尿ホルモンの分泌が不十分なため、就寝中に尿の生成が増加し夜間多尿となり、尿量が夜間の機能的膀胱容量を超えてしまうこと、第二に、就寝中の膀胱容量低下によるものが挙げられ、これらのいずれか、または両方、さらに尿意による覚醒ができないことなども原因として指摘されている。
 治療では、生活改善、薬物療法、アラーム療法(行動療法)などが行われている。生活改善指導として、規則正しい生活、水分/塩分摂取への配慮、就寝前の排尿といった取り組みを行うことで、1~2割程度の子供の夜尿が消失する。薬物治療は、抗利尿ホルモン製剤であるデスモプレシン(商品名同)などがあり、「夜尿症診療ガイドライン2016」では第1選択薬とされている。アラーム療法は、夜尿をセンサーが察知し、アラームや振動により覚醒を促す機器を用いるものである。前述のガイドラインでは、これらを組み合わせて治療することを記している。
 「おねしょに関する調査」は、2017年4月に全国の小学校1~3年生の子供とその保護者500組1,000名にインターネットアンケートで実施された。
 これによると子供(n=500)の27%が「おねしょ」について「とても心配/心配」と回答し、上位となった項目「ひとりで眠れるか」(同29.4%)、「ホームシックにならないか」(同28.4%)と比較しても割合に差がなく、心配の度合いが高いことが示された。そして、「おねしょが心配」と回答した子供の保護者(n=217)に対策の実施状況を聞いたところ、34.1%しか対策を実施していないことがわかった。具体的な対策(n=96)としては、(複数回答で)寝る前の水分の摂取制限(61.5%)が一番多く、おむつの使用(38.5%)、夜間起こしての排尿(25.0%)が挙げられ、病院へ連れていくという回答はわずか7.3%であった。
 保護者(n=500)に「小児科で相談・治療できることを知っているか」の質問では、44.6%が「知っている」と答え、「保険診療できることを知っているか」の質問では、32.0%しか「知っている」と回答しなかったことで、医療機関で受診できることが知られていない状況が明らかとなった。
 同社では、夜尿症という疾患啓発のためのプロジェクト「おねしょ卒業!プロジェクト」を企画運営し、情報提供WEBサイト「おねしょドットコム」上で正しい知識や対応方法について発信を行っている。
 通常、夜尿症は、治療を始めてから効果が表れるまで少なくとも3ヵ月~半年程度かかることから、夏の帰省旅行やキャンプなど子供たちの宿泊を伴う行事が始まる前に、早めに小児科医などに相談を行い、治療が必要なケースかどうかを確認してほしいと期待を寄せている。


<参考>
日本夜尿症学会HP〜「夜尿症診療ガイドライン2016
夜尿症(当院HP)
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日本脳炎ワクチンが足らなくなった理由

2017年06月28日 10時55分47秒 | 小児科診療
 当院でも日本脳炎ワクチンが手に入らず、現在予約を停止しています。
 そしていつも厚生労働省は「全国的には足りているはず」と高みの見物。
 ホント、ワクチン関係ではいつも振り回され、日本の管理体制の甘さにあきれるばかりです。

 さて、今回のワクチン不足の原因は「需要増加&供給減少」という構造で、具体的には下記記事によると2点あるようです;

1.推奨年齢(3歳以降)以外の年齢で希望者が増えた。
 2015年に千葉県で生後11ヶ月児が日本脳炎罹患しました。ワクチン推奨年齢の3歳より小さい子です。しかし実は、日本脳炎ワクチンは生後6ヶ月から接種可能です。推奨年齢まで待っていて罹ってしまっては元も子もない、と知識のある医師・親たちは積極的に低年齢でも受けさせるという動きを取りました。

2.熊本地震の影響で製造量が減った。
 ワクチン製造元の一つ「化血研」の工場が熊本にあり、地震で被害を受けたため出荷量が減ってしまった。

 ワクチン製造量が十分と仮定すれば、あと問題になるのは「偏在」です。
 ワクチン出荷から現場の医療機関まで流通経路をトレースすればわかることですが、なぜやらないのでしょうか?


■ 日本脳炎ワクチン品薄 医療機関、接種数量確保に苦労
毎日新聞2017年5月31日
 蚊が媒介する感染症・日本脳炎を予防するワクチンが、品薄状態になっている。厚生労働省は「全国的に足りている」としているが、安定した数量確保に苦労している医療機関もある。同ワクチンは予防接種法が定める重要性の高い「定期接種」の対象だ。医薬品の在庫や流通の管理が厳格な日本で、なぜこうした事態が起こったのか。【熊谷豪、野田武】
◇ 15年に千葉で発生、契機
 「いつ入荷するか分からない」「注文通り販売できるか分からない」。東京都内のある小児科診療所は、今年初めから日本脳炎ワクチンを注文するたび、医薬品卸売りの担当者から、そう言われているという。在庫がなくなりかけ、接種予約受け付けの中止を考えた時期もある。院長は「患者が殺到して、かかりつけ患者を断ることがなければいいけれど……」と気をもむ。
 品薄になったきっかけの一つは、2015年9月に千葉県で25年ぶりに、生後11カ月の乳児患者が確認されたことと言われる。



 日本脳炎はブタが持つウイルスがヒトに感染して起きるが、感染して抗体を持つブタの割合は西日本に多い。このため近年発生する患者の大半は西日本在住だ。
 それだけに、千葉県での患者発生は関係者にとって驚きだった。しかも国が示す標準的な予防接種スケジュール(初回は3~4歳)を下回る年齢。日本小児科学会員で予防接種に詳しい岡田賢司・福岡看護大教授(小児科)は「従来の流行地域でなく、患者が1歳未満だったこともあり、全国的に対策を取らねばと考えた」と話す。
 同学会は、ブタのウイルス抗体保有率が高い流行地域では、生後6カ月から接種するよう呼び掛けた。その結果、千葉では54市町村のうち47自治体が6カ月での接種を勧めるようになるなど、前倒しが広まった。
 さらに、全国で唯一、40年以上発症例がないことを理由に定期接種の対象外だった北海道でも、本州との往来が増えて感染リスクが高まったとして昨年4月から定期接種が始まった

◇ 熊本地震で製造施設被災 問題抱える供給側
 こうして需要が高まる一方で、供給側には問題があった。
 日本脳炎ワクチンのメーカーは2社しかない。その一つの「化学及(および)血清療法研究所」(化血研、熊本市)は、昨年4月の熊本地震で製造施設が被災して、稼働が2カ月ほど止まった。ワクチン製造には通常1年半かかり、再稼働後の製品が完成するのは来年1月。それまでは在庫の前倒し出荷でしのぐ予定だったが、5月上旬に底を突いてしまったのだ。
 もう1社の「阪大(はんだい)微生物病研究会」(微研、大阪府吹田市)は増産体制を取り、販売元の田辺三菱製薬も地域ごとに必要量を割り当てて、その本数以上を出荷しないようにした。化血研も微研も出荷量を公表していないが、厚労省によると流通量は医療機関への納入量を大きく上回る見通しで、品薄とはいえ大きな問題は起きていないという。
 ただ、医療機関が買い占めなどに走ると地域間で偏在が生じる恐れもあるため、厚労省は今月8日、卸売業者に地域間の在庫融通を求める通知を出した

◇ 厚労省、業界再編を促す 国際競争力強化にらみ
 定期接種対象のワクチンは、対象年齢を迎える子どもの数が把握できるため、計画的に生産しやすい。その分、余剰が少ないために、定期接種以外の需要が一時的に高まると品薄感が生まれやすい面もある。昨年、関西国際空港を中心に麻疹(はしか)患者が集団発生した際も、ワクチン不足が心配された。
 こうした状況を踏まえ、厚労省はワクチンの安定供給を目指した業界再編を目指している。昨年10月には同省対策チームが「競争力や経営基盤の向上のため、統廃合による企業規模の拡大を促す」との提言をまとめた。
 大学の研究所から出発し、化血研や微研のように一般財団法人の形態を取っている小規模メーカーが多いことにも触れ、経営基盤を強化した株式会社に変更するよう促した。これには予防医学の観点からワクチン産業の成長が世界的に見込まれる中、海外のグローバル企業に並ぶ競争力を国内メーカーに持たせたいとの狙いもある。
 化血研では15年、国の承認と異なる方法で血液製剤を長年作っていたことが発覚。厚労省は110日間の業務停止命令を出した上で「本来なら許可取り消しに相当する」として、製造部門を他社に譲渡するよう求めた。化血研は一時、アステラス製薬と交渉をしたが、自主存続の意向が強く、最終的に条件面で折り合えず決裂した。
 一方、微研は今月、ワクチン製造の株式会社「BIKEN」を設立した。同社は田辺三菱製薬の技術協力を受ける予定で「生産システムや管理手法を融合し、生産基盤の強化を加速させる。ワクチンの安定供給に貢献する」とうたっている。


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