徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

人類は新型コロナとどう対峙するのが“正解”だったのか?

2023年10月08日 12時01分01秒 | 新型コロナ
新型コロナとのつきあい方は、当初から国により様々でした。
“ゼロ作戦”の中国や台湾、ニュージーランド、
あえて受け入れる“ノーガード戦法”のフィンランド…。

3年経過した今、振り返って、
どれが“正しい方法”だったのか検証することは大切です。
次のパンデミックに備えるために。

そんな内容を扱った記事が目に留まりましたので、
私の視点で読み込んでみます。

<ポイント>
・日本の事情:まんぼう(まん延防止等重点措置)は緊急事態宣言と比べると、人流の減りが弱い。行動制限をした方が、しなかった場合よりも感染者数を抑え込める。
・2020年時点では“ノーガード戦法”のスウェーデンは隣国(ノルウェー、フィンランド、デンマーク)比較して患者数が多く、死者数も圧倒的に多かった(ノルウェーの約10.6倍、フィンランドの約8倍、デンマークの約4倍)。しかし2022年になると隣国の感染者が急増し、スウェーデンを追い抜いた。
・2020~2023の3年間の100万人あたり感染者数で見ると、スウェーデンは他3国に追い抜かれたが、100万人あたり死者数では1位。
・スウェーデンはワクチンが無い時期にノーガード戦法を取ったため、多くの死者を出してしまった。振り返ってみるとやはり無謀だったのではないか。
・スウェーデンと隣国との比較からすると、行動制限に効果はあったと言ってよいが、これをまたやるのは無理ではないか…人間の我慢力には限界がある。 

新型コロナ流行では、全人類を巻き込んだ壮大な臨床実験が行われたとみることもできます。
医学的な結論は「ノーガード戦法は死者が多い」ということに尽きると思います。
ただ、新型コロナ禍では想定より早期にワクチンが開発されたため、このような結果になりましたが、もしワクチン開発に1年以上かかっていたら、また違う結論になったかもしれません。
社会学的には経済活動の要素も考慮すべきなので、上記は限定的な結論になります。
さらに心理学的には制限された生活がヒトの心に及ぼす影響の検証も必要です。


▢ コロナ禍の行動制限には結局、何の意味があったのか
…日本の実態、ノーガード戦法をとったスウェーデンのその後
2023/10/7:集英社オンライン)より一部抜粋;

・・・発生から3年を経過した新型コロナウィルス。緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置(まんぼう)はどのような効果をもたらしていたのか。3年分の蓄積されたデータから読み取ってみる。 『全検証 コロナ政策』 (角川新書) より、一部抜粋、再構成してお届けする。


◆ 緊急事態宣言とまんぼう、宣言のたびに人流は減った

コロナの感染経路は飛沫感染が主ですから、人流を抑制すれば、飛沫が飛ぶ機会も減り、その分感染も抑えられると考えられます。 そのような観点から、緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置(まんぼう)が数次にわたって発令されました。 
都道府県によって回数や時期が異なりますので、全国をまとめて分析することができません。そこで、最も感染者数が多い東京都に絞って見ていきたいと思います。東京都における緊急事態宣言とまんぼうの発令状況は次のとおりです。緊急事態宣言が合計4回、まんぼうが合計3回です。
 第1回緊急事態宣言 2020年4月7日~2020年5月25日 
 第2回緊急事態宣言 2021年1月8日~2021年3月21日
 第1回まん延防止等重点措置 2021年4月12日~2021年4月24日
 第3回緊急事態宣言 2021年4月25日~2021年6月20日
 第2回まん延防止等重点措置 2021年6月21日~2021年7月11日
 第4回緊急事態宣言 2021年7月12日~2021年9月30日
 第3回まん延防止等重点措置 2022年1月21日~2022年3月21日   
これと、内閣官房のサイトにある人流データを重ねてみましょう。このデータは、主要地点の8時と15時の人出及び歓楽街の人出(21時と28時の差)を示したものです。 緊急事態宣言が出ると確かに人流が減っていることが分かります。事前にアナウンスされるからか、宣言期間の少し前から減少が始まります。第1回の緊急事態宣言の際に一番人流が減っており、その後、宣言のたびに人流が減りますが、第1回ほどではありません。

◆ では行動制限に効果があったのか検証しよう
まんぼうは緊急事態宣言と比べると、人流の減りが弱いです。 なお、第3回緊急事態宣言と第4回緊急事態宣言の間に、第2回まんぼうが挟まっていますが、ここだけむしろ人流が増えています。 ただ、第1回まんぼうの時は減っていますし、第3回まんぼうの際も減っています。緊急事態宣言と比べると相対的に見て増えてしまうということでしょう。 第3回まんぼう後、特に行動制限はされていませんが、主要地点の8時と15時の人出及び歓楽街の人出(21時と28時の差)のいずれも、2019年の水準には戻っていないことが分かります。 
では、緊急事態宣言とまんぼうによって人流が実際に減ることが判明したところで、今度は東京都の新規感染者数と重ねると何が見えるでしょうか。 
行動制限の効果を見極めるには、「行動制限をした状態」と「行動制限をしなかった状態」と比較する必要があります。さらに、行動制限の有無以外の条件を全て同じにする必要があります。これを現実世界で厳密に実現しようとすると不可能ですが、2022年はこれに近い状況がありました。 22年において行動制限があったのは第3回まんぼうのみであり、それ以降、行動制限はありません。そして、22年において流行したのはオミクロン株です。厳密にいうと、オミクロン株といっても変異を重ねているため全く同じとは言えないのですが、同じ種類の株ではあります。

◆ 行動制限をした方が、しなかった場合よりも感染者数を抑え込めるのではないか
そこで、22年以降だけ見てみると、第3回まんぼうが発令された時は6波の最中でしたが、そのピークは2月8日の2万39人です。その後、今まで最大となる第7波がきましたが、1日のピークは6波の約2倍となる4万406人(7月28日)となりました。 さらにその後第8波がきましたが、ピークは12月27日の2万2063人です。 このように、行動制限のあった第6波と比べると、第7波はその約2倍、第8波は2000人ほど上回りました。 特に、何の行動制限も無かった第7波の感染者数ピークが約2倍となったところを見ると、全く同じオミクロン株ではないということを考慮しても、行動制限をした方が、しなかった場合よりも感染者数を抑え込めるのではないかと思います。 ここで、日本よりももっと厳しい行動制限を実施したヨーロッパに目を向けてみましょう。ヨーロッパの場合、当初全く行動制限をしないノーガード戦法をとったスウェーデンがありますので、それと他国とを比較すれば、行動制限の有無でどれくらいの違いが出るのかが分かりやすいでしょう。まずは2020年のヨーロッパにおける100万人あたり感染者数を多い順に並べたグラフを見てみましょう。

◆ ノーガード戦法のスウェーデンは正解だったのか
これを見ると、スウェーデンはデータのある49の国または地域のうち17位であり、やや上の方にはいますが、飛びぬけているわけでもありません。しかし、隣国であるノルウェー、フィンランド、デンマークと比較してみると、違った姿が見えてきます。違いが分かりやすい2020年1~8月のこの4か国における新規感染者数の推移を見てみましょう。 ・・・感染者数の推移が全く異なります。4か国いずれも同じくらいのタイミングで感染者増加が始まりましたが、スウェーデンを除く3か国は減少に転じた一方、スウェーデンは減らず、それどころかさらに高い感染の波を記録しました。隣国同士でこのような違いが生まれる原因は、行動制限の有無以外に無いでしょう。 
では、2020年1年間で見るとどうなったのか見てみましょう。・・・スウェーデンが他を大きく引き離して1位です。ただ、フィンランドとノルウェーに比べると、デンマークも多いです。スウェーデンとデンマークだけ文字通り「桁違い」になっています。 デンマークが多いのは、他と比較してPCR検査の回数が多いことも影響しているのではと思います。これは後ほど触れます。

◆ 20年の死者数はスウェーデンが圧倒的1位だったが…
死者数についてはどうでしょうか。 これもスウェーデンが圧倒的に1位です。感染者数よりも差が大きく、ノルウェーの約10.6倍、フィンランドの約8倍、デンマークの約4倍です。 では、この後はどうなったのでしょう。2020~22 年の各年の100万人あたり感染者数を並べて比較してみましょう。 このように、21年になると、この4か国の中ではデンマークが1位になりました。さらに、22年には、スウェーデンは最下位となり、デンマークが圧倒的1位になっています。
 20~22年の3年間の100万人あたり累積感染者数の推移を見てみましょう。このように、デンマークが急激に感染者数を伸ばし、他3国を大きく引き離しています。デンマークの伸びが凄すぎて霞かすんでしまうのですが、ノルウェーとフィンランドの伸びも凄まじく、結局スウェーデンを追い越しています。 線の推移を見れば分かるとおり、当初ノーガード戦法で臨んだスウェーデンが他3国を大きく引き離していましたが、2022年になって急激に他3国が伸び、累積でスウェーデンを追い越す、という結果となりました。 では、100万人あたりの死者数についてはどうでしょうか。これも、各年ごとに並べて見てみましょう(図35)。 2020年はスウェーデンが圧倒的1位、21年も1位です。21年でも2位のデンマークの2倍近くありますので、その差は非常に大きいです。ところが、22年になると、フィンランドが急激に増えて1位になりました。スウェーデンは下から2番目になりました。

◆ 3年間の累積でみるとどうなるのか
では、3年間累積で見てみるとどうなるでしょう。 累積で見ると、まだスウェーデンが1位であり、かつ、他3国との差も大きいです。 このように、100万人あたり感染者数で見ると、スウェーデンは他3国に追い抜かれましたが、100万人あたり死者数ではまだ1位です。ワクチンも無い時期にノーガード戦法を取ったため、多くの死者を出してしまったことが影響していると言えるでしょう。振り返ってみるとやはり無謀だったのではないかと思います。 このように、スウェーデンと隣国との比較からすると、行動制限に効果はあったと言ってよいでしょうが、これをまたやるのは無理ではないかと思います。本書では詳しく分析していますが、客観的に見て財政的・金融的に無理なのですが、何よりも気持ちの面で無理でしょう。 私がコロナ禍で学んだのは、「人間の我慢には限界がある」ということです。今後感染状況がどれだけ悪化しても、強い行動制限は国民から支持されないでしょう。



コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 沖縄、ウクライナ・・・パワハラ... | トップ | 今、新型コロナワクチンを接... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

新型コロナ」カテゴリの最新記事